東大卒の異才・山口真由が考える「国算理社」で一番重要な科目【2021上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2021年9月30日 15時15分
※本稿は、齋藤孝・中野信子・山口真由『人生の武器になる 「超」勉強力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■「勉強ができる人」は生まれつきの才能ではない
みなさんは、勉強ができる人というのはいったいどんな人だと思いますか?
地頭がいい人? それとも、長時間机に向かう根性がある人でしょうか?
わたしの答えは明確です。それは、「自分の勉強法」を確立している人です。
勉強とは、新しい知識を得て、それを理解していくことです。そして、このプロセスを短時間かつ効果的に行うための方法が「勉強法」。つまり、勉強ができる人とは、自分にとって最適な方法をわかっていて、それにしたがって進んでいける人のことなのです。
勉強法といっても、なにか特殊なノウハウを覚えるわけではありません。自分にとっていちばん「楽」で、余計なことを考えずに続けていける方法、それが自分に合った勉強法です。
結局のところ、方法論は人それぞれです。わたしの場合は、小さい頃から本が好きで読むことが得意だったので、「7回読み勉強法」をはじめ、読むことに特化する勉強法を編み出しました。
いずれにせよ、勉強をつまずかせる原因のひとつが、自分がやっている方法を「これでいいのだろうか?」と疑ってしまうことです。そうなると、あれこれ気が散って勉強に無駄が多くなり、他人の勉強法に手を出してしまうなど、負のサイクルにはまり込んでしまいます。
勉強ができる人は、生まれつき才能に恵まれた人ではありません。そうではなく、自分がもっとも楽な方法で勉強ができる人のことなのです。
逆にいうと、どんな人でも自分なりの勉強法を見出すことができれば、確実に結果を出せます。
■勉強は「才能」ではなく「回数」
わたしが、読むことを軸にした勉強法を推奨すると、「もともと文章の要旨を掴む才能があるのでは?」といわれることがあります。
でもわたしは、「文章に意味さえあれば、どんなに難解でも、誰もが必ず理解できる」と考えています。
なぜそう言い切れるのか?
それは、どれだけ難しいと感じる文章でも、10回、20回と繰り返し読むことで、必ず要旨を見つけ出せるからです。
もちろん、難解な専門用語が多い文章の場合は、何度読んでも理解できないかもしれません。その場合は、専門用語の一つひとつをていねいに説明している別の基本書を先に読めば、やがて文意を理解することができるでしょう。
つまり、才能ではなく「回数」の問題なのです。
難解な文章をあっさり理解するような人がいても、そこには、これまで文章を相当程度読んできた経験によるちがいがあるだけです。すぐに理解できる人は、おそらく背景知識を得るための膨大な読書を積み重ねてきたのでしょう。
「それって生育環境のちがいでは?」
そう思う人もいるかもしれません。たしかに環境要因はあるものの、わたしは読むことを軸にした方法は、汎用性が高いと考えています。
そして、大人には経験や意思の力があり、焦点を絞った勉強もできます。たとえ何歳であっても、その時点から回数を重ねていけばいいのです。
むしろ、「これまでの経験があるから理解できるのだ」と考えることで、人生を変える一歩を踏み出せるのだと思います。
■すべての勉強の基本は「国語力」にある
わたしは、すべての勉強の基本は「国語力」にあると考えています。ここでの国語力は、インプットのための「読解力」と、アウトプットのための「表現力」を指します。
とりわけ読解力は、すべての勉強における最重要要素です。
なぜ、読解力があるといいのでしょうか? その理由は、文章を読んだときに、次のことを明確に掴めるからです。
・書いた人はなにがいいたいのか?
・なにが問われているのか?
個人的な経験では、大学受験はもとより、司法試験やロー・スクールの試験でも、国語力が結果を大きく左右すると感じました。
もちろん、後者ははるかに難易度が上がりますが、「なぜこのエピソードがここに書かれているのか」「著者にどんな意図があるのか」「この問題はなにを書かせたいのか」といったことを文章から正確に読み取れたからこそ、課題を的確にクリアできたのです。
国語力を上げる方法は、これに尽きます。
ていねいに読む。
コツは、本当にこれだけです。国語力が低い人は、自分でも気づかないうちに文章を読み飛ばしたり、自分の思い込みで勝手に意味を補ったりして、解答が著者(出題者)の意図から離れていく場合がとても多いのです。
わたしは、国語力を上げるために特別な教育を受けたわけではなく、ただ人よりも多く本や教科書をていねいに読み続けただけです。そうして国語力に偏重したことでハーバードまで行けたと、わたしは本当に思っているのです。
■大切なのは継続・反復、そして「素直さ」
勉強するときは、「続けること」「反復すること(復習すること)」が大切だとよくいわれます。加えてわたしは、ある程度の「素直さ」も、勉強する姿勢として重要だと考えています。
勉強の過程で、「このゴールでいいのだろうか?」「この課題設定はおかしくないか?」と、疑いを持つことがあります。最近では、むしろ枠組み自体を疑うことが推奨されています。
ですが正直なところ、それがいいか悪いかはともかく、いわゆる「勉強」が得意な人たちというのは、たとえば試験のあり方そのものや、いまの社会のルールの根本をあまり疑いません。素直にルールにしたがってまっすぐに成果を出しているのが実情です。
そもそも、「この試験のあり方はおかしいのでは?」「これを勉強する意味はなんだろう?」ということが気になるなら、むしろそこから、「自分のための学び」に入ったほうがいいでしょう。とくに自分のための学びには、自分なりの問いを、つねに立てていく姿勢が必要です。
わたしはこれまで勉強する過程において、そんな感情に引っかかったことがほとんどありません。目標を達成するために必要な課題を、素直に粛々と受け入れたからこそ、コツコツと勉強を続けられたと自覚しています。
そうして勉強のレベルが上がっていくにしたがって、ある程度疑う力がついてくるし、それによって自分のための学びに近づいていく場合もあるのでしょう。
ただ、明確に設定したゴールに向かって行う勉強の過程では、疑わずに素直に取り組むことが実際には効率的だと考えています。
■自分の向上を評価できるマークをつくる
わたしにとって勉強は、ある程度強制的な要素によって、課題(目的)が設定されているものです。そのゴールに向かっていく手段(過程)が、勉強というわけです。
「自分のための学び」は少しちがいますが、勉強はゴールがかなり明確で、また、たいていの場合ゴールにたどり着けば報酬が用意されています。
「その過程の勉強が苦しいんだけど……」という人もいるでしょう。
苦しい過程をやり抜くポイントは、少しでも自分の向上を見つけ出すことです。そのため、ぜひ「自分は前へ進んでいる」と評価できるマーキングをしてみてください。
わたしの場合は、書き続けて減ったボールペンやメモパッド、また指にできたペンだこなど、物理的に勉強量がわかるものを見ると「前へ進んでいる実感」を持てます。
やり方は人それぞれですが、努力の過程をうまく「見える化」すれば、進んでいる実感が得られ、その達成感はさらに進んでいくモチベーションになります。
一方、論文に取り組むときは、「つまらなくてもいいから1日5ページ書く」と決めています。論文を書く作業は、質にこだわると時間がかかりがちで、「自分は前へ進んでいない……」と自己嫌悪に陥る場合が多いです。向上している実感を得るために、わたしの場合は量を基準としています。とにかく文字を積み重ねていくわけです。
このように自分の向上を評価できるマークをうまく設定できれば、勉強や学びはきっと楽になっていくと思います。
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信州大学特任教授/ニューヨーク州弁護士
1983年生まれ。北海道出身。東京大学を「法学部における成績優秀者」として総長賞を受け卒業。卒業後は財務省に入省し主税局に配属。2008年に財務省を退官し、その後、15年まで弁護士として主に企業法務を担当する。同年、ハーバード・ロー・スクール(LL.M.)に留学し、16年に修了。17年6月、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、日米の「家族法」を研究。20年、博士課程修了。同年、信州大学特任准教授に就任。21年より現職。著書に『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)などがある。
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(信州大学特任教授/ニューヨーク州弁護士 山口 真由)
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