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「河野太郎首相だけは絶対に阻止すべし」自民党の実力者4Aが密約を交わした残念すぎる理由

プレジデントオンライン / 2021年9月17日 18時15分

自民党総裁選候補者共同記者会見を前に、撮影に応じる(左から)河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行=2021年9月17日、東京・永田町 - 写真=EPA/時事通信フォト

自民党総裁選は9月17日、告示された。世論調査では河野太郎・行革担当相が優位に立ち、第100代首相への就任が有力というような報道が目立つ。しかし、一方では安倍晋三・前首相、麻生太郎・副総理兼財務相、甘利明・党税調会長の「3A」が「河野首相誕生」の阻止にうごめいている。そして、「河野首相は許さない」という4人目の「A」の存在が事態を動かしつつある――。

■なぜ野田聖子氏が「20人」を集められたのか

4人目の総裁選出馬表明は、告示前日の16日夕だった。

「推薦人を整えていただき、出馬することになった」

野田聖子・党幹事長代行が総裁選に名乗りを上げた。河野氏、岸田文雄・前政調会長、高市早苗・前総務相に続く出馬表明だ。

野田氏は10年以上前から「女性初の首相候補」と呼ばれ、総裁選があるたびに出馬の意欲を見せてきた。しかし、その都度、立候補に必要な20人の推薦人を集められず涙をのんだ。「18人集まった。あと2人だった」などと説明されたが、実際は10人にも満たなかったともいわれている。今回も「出馬に意欲」と報じられ続けていたが、「やはり無理だろう」というのが大方の見立てだった。ところが、締め切り間際の出馬表明である。

■この結果、「小石河連合」の戦略は大きく狂った

総裁選は国会議員票383票、党員票383票の計766票で争われ、過半数獲得者がいない場合には上位2人による決選投票となる。

野田氏の場合、国会議員票は20票から大幅な上積みは期待できない。党員票も、報道各社が行う自民党支持層対象の調査をみると苦戦は必至。野田氏には失礼な話だが、「4位に沈む」という可能性が高い。そのことは本人もよく知っている。当選の可能性の低い候補が1人加わっただけなのだが、野田氏の出馬は、永田町ではかなりの衝撃を持って迎えられている。

「痛いなんていうものではない。戦略が大きく狂った」

河野陣営からは、こんなぼやきが漏れてくる。今回の総裁選では1回目の投票で河野氏が1位となることは、ほぼ確実だ。河野氏は党員票で大量得票が期待できる。議員票でも知名度の高い石破茂・元幹事長、小泉進次郎・環境相らの支援を受けて「小石河連合」を構築した。2位は議員票で河野氏と競る岸田氏、高市氏は3位になりそうだ。

今、注目は、各候補の順位ではなく「河野氏が1回目で過半数を取れるかどうか」。過半数を取って一気に「河野総裁」を決めるか、岸田氏との決選投票となるか、ということだ。

■安倍氏は「高市氏が当選する」と考えているわけではない

その観点から「野田氏出馬」の影響を考えてみる。野田氏の得票は議員票、地方票あわせて50票に満たないかもしれない。しかし、その票によって河野氏が過半数、つまり384票に届かなくなる可能性が高まる。つまり野田氏の出馬は、本人の意思とは関係なく「河野総裁阻止」の役割を果たす。

今回の総裁選の裏テーマは、党実力者による露骨な「河野つぶし」でもある。

安倍氏は、自身が首相の時に外相、防衛相などで重用はしてきたが、「脱原発」路線や、女系天皇の容認にも含みを持たせるなど、河野氏のリベラルな政治姿勢は受け入れがたい。パフォーマンス色の強い政治手法にも違和感を持っている。

安倍氏は今回、いち早く高市氏の支援を打ち出した。安倍氏は、自身の政治路線の継承を明言する高市氏が当選すると考えているわけではなく、決選投票によって岸田氏が浮上することを着地点と見ている。

国会議事堂
写真=iStock.com/PhotoNetwork
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PhotoNetwork

■麻生氏は「50代の河野氏に権力が移るのは早すぎる」

安倍氏の「反河野」は日を追うごとに鮮明になっている。これは安倍氏にとって「天敵」でもある石破氏が河野氏支援に回ったことで決定的になった。さらに河野氏支援に回った小泉氏が「他陣営から露骨な引きはがし、働きかけがある」などと、安倍氏が事実上のオーナーである細田派などの動きを批判するような言動も、しゃくに障っている。

安倍氏は、小泉氏の父・純一郎氏が総裁になった20年前の総裁選を念頭に「純一郎さんが総裁になれたのは清和会(現・細田派)が全力で応援したからなのに」と周囲に不満を隠さないという。

河野氏が所属する麻生派のリーダー・麻生太郎財務相は本来ならば河野氏を全面支援するところだが、出馬は容認しつつ、「支持」と明言はしない。50代の河野氏に権力が移るのは、あまりに早急だと受け止めているのだ。

もう1人、安倍、麻生氏とともに「3A」を構成する甘利明・党税調会長も麻生派幹部なので本来なら河野氏を推してもおかしくないが、「菅(義偉)首相がダメだと、たたかれた一番の原因が、ワクチンの迷走といわれているのに、ワクチンの担当大臣の評価が上がるとは、よくわからない」と河野氏を痛烈に皮肉っている。

■もう1人のA、「元参院のドン」が河野氏を恨むワケ

あまり知られていないが、もう1人、「A」がいる。かつて「参院のドン」と言われた青木幹雄・元参院議員会長だ。引退して10年以上たった今も、党竹下派を中心に隠然たる力を持つ。その青木氏が、河野氏をこころよく思っていないという。

2010年、参院選を前に青木氏は軽い脳梗塞で倒れ、長男の一彦氏を後継候補にした。この時、幹事長代理だった河野氏は党会合で「青木さんは世襲のために公募をせず、倒れるという芝居じみたことをやった」という内容の発言をしたことがある。竹下派幹部によると、青木氏は今もこのことを忘れていない。

今回、野田氏が立候補するにあたっては、竹下派の参院議員3人が推薦人に名を連ねた。この他、参院竹下派の幹部が、野田氏の推薦人集めに尽力したことも伝えられている。河野氏の当選を阻むため、青木氏による10年越しの恨みがにじんでいるのか。

15日、青木氏の事務所に河野氏の父・河野洋平元総裁が訪れたと報じられた。会談の中身は明らかになっていないが、過去の恩讐を少しでも和らげようという親心による訪問だったとみられている。

自由民主党
写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

■野田氏は「森友調査」と言うが、それでもいい

野田氏の名誉のために書いておくが、野田氏は河野氏の総裁就任を阻止するために出馬するわけではない。安倍氏らの別動隊でもない。

17日の演説会で野田氏は、森友学園問題を念頭に「総裁になったら党に解明チームをつくる」と言明。「野田内閣」では閣僚のうち半分を女性とする考えを明らかにした。

これらは、安倍氏の考えとは一致しない。でも、安倍氏らにとっては、河野氏に流れそうな安倍氏に批判的な票を、少しでも野田氏が集めてくれれば、それでいいのだ。そもそも野田氏が総裁に就任する可能性はほとんどないと考えれば、その発言内容に目くじらを立てる必要もない。

■決選投票でカギを握るのは二階氏か

政策や政治手法の違い、世代間の争い、そして個人的な怨念。これらを巻き込み、河野氏は「4A」と対峙している。その象徴のひとつが野田氏の出馬といえるのかもしれない。出馬表明の際の「推薦人20人を整えていただき」という言葉からも、自分の意思とは違うところで20人が「整った」ことが垣間見える。

この結果、総裁選は河野氏と岸田氏の決選投票となる可能性が高まり、最終的に岸田氏が勝つ道も見えてきた。決選投票となれば4A側は岸田氏の側につくことになるだろう。

派閥の縛りが溶けて新しい構図になってきたという評価もある今回の総裁選だが、一皮むけば、むき出しの権力闘争であることは何ら変わらないのだ。

最後に、もう1人、より複雑な動きをみせる人物の話を書いておきたい。二階俊博幹事長だ。二階氏も、河野氏の政治手法に違和感を持ち、急速な世代交代を警戒している1人だ。野田氏の推薦人には二階派議員8人が名を連ねた。そこまでは「4A」と同じだ。

ただし、河野氏と岸田氏の決選投票となると4Aと二階氏の間では、違う思惑が見えてくる。

岸田氏は総裁選出馬にあたり、幹事長などの党役員を「3期3年まで」という公約を掲げ、事実上の「二階外し」を画策。二階氏を激怒させた。「岸田か、河野か」という選択になった場合、二階氏は究極の選択として「河野氏のほうが、よりまし」という選択をするかもしれない。この結果、決選投票にもつれこめば、きわめて複雑な数合わせとなるだろう。

(永田町コンフィデンシャル)

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