医学部教授「精神を病んでしまう人に共通するデスク回りの"ある共通点"」
プレジデントオンライン / 2021年9月24日 11時15分
※本稿は、D・カーネギー『超訳 カーネギー 道は開ける エッセンシャル版』(弓場隆訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■整理整頓を心がける
さまざまな案件に関する書類が机の上に散らかっている人でも、重要案件だけを残して机の上をきれいに片づけると、仕事が以前よりもはかどる。それは効率よく働くための絶対条件だ。
整理整頓はビジネスの鉄則である。ところが多くのビジネスマンの机は、何週間もほったらかしの書類であふれているのが現状だ。そんな机を見るだけでも、ストレスがたまり、憂うつな気分になってしまう。未処理の案件が山積していることをたえず思い知らされると、心労が重なって血圧が上がり、心臓の調子を悪くし、胃潰瘍を患いかねない。
ペンシルベニア大学医学部のジョン・ストークス教授はアメリカ医師会の総会で、「やらなければならない案件がたくさんあって重苦しい気分になることが、精神を病んでしまう最大の原因のひとつだ」と指摘している。
■時間に解決させる
ホープ教会のジョン・ミラー牧師はこう言っている。
「数年前、私は心の持ち方を変えることによって心配事をなくせることを発見した。心配事は自分の外部にあるのではなく自分の内面にあることに気づいたからだ。
やがて私は、時間が心配事の大半を解決していることがわかった。実際、1週間前に自分が何を心配していたかを思い出せないことがよくある。そこで私は、少なくとも1週間が経過するまでは問題について悩まないことにした。もちろん、1週間にわたって完全にそれを忘れられるわけではないが、1週間が経過するまではそれが心を占有しないようにした。その結果、9割の確率で1週間以内に問題が自然に消滅した」
■退屈すると疲労を感じる
疲労は肉体的な状態よりも精神的な状態と密接な関係がある。
数年前、ジョゼフ・バーマック博士が、退屈が疲労を引き起こすことを示す実験結果を心理学の雑誌に報告した。学生たちに関心がないことをさせたところ、疲労と眠気を感じ、頭痛と眼精疲労を訴え、場合によっては胃の不調を感じたという。
これは単なる想像だろうか? そうではない。臨床検査をしたところ、退屈しているときは実際に血圧が下がり、酸素の消費量も減少したが、作業に興味がわいて楽しみを感じ始めたとたん、全身の代謝が改善したのである。
私たちはワクワクしているときに退屈を感じることはめったにない。最近、私はロッキー山脈の中を流れる川でマス釣りをした。森の中の険しい道を歩いたが、8時間経っても疲れをまったく感じなかった。行きは釣りが大好きなのでワクワクしていたし、帰りはマスを6匹も釣れて達成感が得られたからだ。だが、もし釣りが嫌いだったら、標高2000メートルを超える高い山を上り下りしなければならないので疲労困憊していたに違いない。
■いやな顔をせずに仕事をする
興味深い仕事であるかのように振る舞って恩恵を得た女性の実話を紹介しよう。
「会社には4人の事務員がいて、手紙をタイプする仕事を任されていました。ある日、上司が長文の手紙を最初からやり直すように言ってきたので、私は『やり直さなくても、少し修正すれば済むはずです』と主張したのですが、上司は『それなら代わりの者に頼む』と言ったのです。私は腹が立ちましたが、自分の代わりがたくさんいることに気づきました。そこで、仕事を楽しんでいるかのように振る舞ったところ、重大な発見をしました。
仕事を楽しんでいるかのように振る舞うと、それをある程度は楽しむことができるということです。さらに、実際に仕事を楽しむと効率が上がることを発見しました。とすれば、残業する必要がめったにないということです。心の持ち方を変えたおかげで、私は高い評価を得て上司の秘書に抜擢されました。私がいやな顔をせずに仕事をしてくれるというのが理由でした」
■うまくいっている九割に意識を向ける
少し立ち止まって「自分は何について心配しているのか?」と自問してみよう。たぶんそれはどちらかというと些細なことだと気づくはずである。
たいていの場合、私たちの人生の約9割はうまくいっていて、約1割はうまくいっていない。だからもし幸せな気分にひたりたいなら、うまくいっている9割に意識を向け、うまくいっていない1割を無視すればいい。
しかし、たえず心配をして胃潰瘍を患いたいなら、うまくいっていない1割に意識を向け、うまくいっている9割を無視すればいいということになる。
■ふだん得ている恩恵を思い浮かべる
イギリス国教会の表玄関には「ふだん得ている恩恵を思い浮かべて感謝しよう」という標語が刻印されている。この標語は私たちの心の中にも刻印されるべきだ。
ふだんの生活の中で感謝すべきことをすべて思い浮かべ、自分がその恩恵を得ていることに感謝しよう。
■暇を持て余すと心配性が忍び寄る
ほとんどの人は特に苦労しなくても忙しく過ごすことができる。日々の仕事に励めばいいからだ。
しかし、仕事が終わった後の時間が危険である。余暇を楽しむゆとりができると本来なら幸せを感じるはずだが、心配性という悪魔が忍び寄るからだ。その結果、自分はこれからどうなるかとか、上司に言われたことについてあれこれ悩んだり、病気になるのではないかと不安になったりする。
忙しく過ごしていないと、心は「真空状態」のようになり、そこにいろんな雑念が入り込んでくる。心配や恐怖、憎悪、嫉妬、羨望などのネガティブな感情は非常に激しい力を持っているので、平和で幸福な気分が吹き飛んでしまうのだ。
■周囲の人を助けることに関心を抱く
助けを求めて精神科医のもとに駆け込む人たちの約3分の1は、もし周囲の人を助けることに関心を抱けば、たぶん自分の力で治るはずだ。これは私の考え方ではなく、精神分析学者のカール・ユングが指摘していることである。
彼はこう言っている。
「私の患者の約3分の1は神経症と診断できるものではなく、空虚な生活態度のために思い煩っているだけである」
彼らは周囲の人を助けようとせず、周囲の人に助けてもらうことばかり考えている。そして精神科医のもとを訪ねて、自分の満たされない思いをぶつけるのだ。
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アメリカ・ミズーリ州の農家に次男として生まれる。地元の教育大学を卒業後、セールスマンや俳優などを経て、ビジネスマンを対象に話し方教室を開いて好評を博す。その後、ニューヨークにデール・カーネギー研究所を設立し、累計約45万人の受講生に人間関係の原則などの成人教育をおこなう。代表作の『人を動かす』と『道は開ける』は自己啓発の金字塔であり原点であるとされ、今もなお世界中の人々に読み継がれている。
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(著述家、教育者、実業家 デール・カーネギー)
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