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「一緒に遊ぶだけで判断力がみるみる育つ」お金に強い子をつくる"あるゲーム"

プレジデントオンライン / 2021年10月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

お金に強い子を育てるにはどうすればいいのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「トランプやボードゲームを使えば、危なくないようにお金のリスクを体験できる。投資教育はそれからでいい」という――。

※本稿は、荻原博子『親が子供に教える一生お金に苦労しない12の方法』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■「30万円!」と書かれたチラシを見つけた健一くん

8歳の健一くんは、小学校から帰って玄関に入る前に、郵便受けから手紙を取ってくるのが毎日のお仕事です。手紙と一緒に入っているチラシにはときどきピザの割引券などもついているので、そういうものもお母さんのところに持っていきます。

その日は、郵便受けに白地に赤く「30万円!」という字が書かれたチラシが入っていました。30万円がすごい大金だということは、健一くんも知っています。前にお父さんの給料を聞いたら、35万円だと言っていたからです。

まだ漢字は読めないのですが、カタカナはなんとなくわかります。そこには「カンタン」「チャンス」などの字が躍っていたので、「お母さん、すごいチラシが入っていたよ!」と早速お母さんに持っていきました。

「これで、お金持ちになれるんじゃないの」

それを見たお母さんは笑いながら言いました。

「う~ん、残念だけど、これじゃあお金持ちにはなれないよ」

■「甘いセールストーク」の裏は、わかりやすく説明するといい

世の中には「いい儲け話がありますよ」という言葉が氾濫しています。けれど、甘いセールストークにはほとんど裏があります。

そうしたことに子供が興味を示したら、できるだけわかりやすく説明してあげましょう。

健一くんが持ってきたチラシには、「家でできるカンタンな仕事です。空いた時間を有効に使って誰でもできる仕事で、中には月に30万円くらい稼いでいる人もいます」とありました。

そのチラシを見せながら、お母さんは言いました。

「このお仕事を始めるには、まず、会社が用意しているパソコンを買わなくてはいけないって書いてあるでしょう。次に、会社がやっている講習会に出て、お金も払わなくてはいけないの。それに30万円くらいかかるけど、必ず30万円が手に入るわけじゃない。朝から晩までご飯も食べずにずっと働かないと、30万円を稼ぐのは難しいみたい。健ちゃんの面倒を見る時間もなくなっちゃいそう」

「えっ、そんなにずっと働いたら、病気になっちゃうよ!」

「そう。このチラシを見て、お母さんがやりますって申し込んだら、まず30万円を払わなくちゃならないし、健ちゃんやお父さんのご飯をつくってあげる時間もなくなるかもしれないし、病気にもなっちゃうかもしれないよ」

「そんなの、ダメだよ!」

せっかく儲かる話かもしれないと思ったのに、健一くんはがっかりしました。

■投資ノウハウよりも、儲け話に騙されない知識が必要

「儲かります、なんて書いてあるチラシを見る時には、こういう小さなところから見た方がいいの。

ほら、この隅の方に小さく、『最初に講習料として30万円かかります』って書いてあるでしょう。小さく書いてあるのは、最初に30万円出さなくてはいけないことをあまり知らせたくないのね。だから、月に30万円の収入のところはこんなに大きく書いてあるのに、最初に30万円払わなくちゃいけないことは小さい」

「ほんとだ、小さい字でもちゃんと読まないと、騙されちゃうね」

「そうね。申し込んでしまった後に、『知りませんでした』って言っても、『チラシにちゃんと書いてありますよ』と言われちゃうからね」

今、子供にお金をあげて株を買わせてみるというような投資教育が流行っています。それはそれでいいのですが、その前に、投資の裏側に潜んでいるリスクを知るということが大切ではないかと思います。

株式市場
写真=iStock.com/phongphan5922
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/phongphan5922

「ちょっと変だな」と思ったら、むやみやたらに投資に乗り出さない。そういうことを日常の中で教えてあげておけば、子供は無茶な投資もしないようになるでしょう。

自己責任の時代を生きていかなくてはいけない子供にとっては、投資のノウハウも必要かもしれませんが、大前提として「儲け」に足をすくわれない知恵が必要でしょう。

■「アメ」を賭けてブラックジャック

9歳の千晶ちゃんの家では、日曜日の晩に時々、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと4人でトランプをします。

千晶ちゃんができるのは「7ならべ」か「神経衰弱」ですが、その日はお母さんとお兄ちゃんが用事ででかけていたので、お父さんと二人。お父さんが、新しいゲームをやろうと言い出しました。

それは「ブラックジャック」というゲーム。配られたトランプの数字の合計が21を超えてはダメで、21に近い人が勝ちというゲームです。

お父さんが親になり、自分と千晶ちゃんに2枚ずつトランプを配りました。配られたカードの数を足して自分が勝つと思ったらそこでストップと言い、これでは勝てないと思ったら、カードを追加できます。ただし、21なら勝ちですが、22以上になるとアウトとなります。

「どうせやるなら、本格的に何か賭けてみよう」

そう言うと、お父さんは台所からアメを持ってきて、千晶ちゃんに10個渡しました。「千晶がもし勝ちそうだと思ったら、自分のアメを賭ける。もしいい数字になって絶対に勝てると思ったら、アメを2個でも3個でも出して、当たればそれだけの数をお父さんからもらえるけれど、外れたら、そのアメはお父さんがもらうことにしよう」

■10個のアメを減らさないように、堅実に賭ける

「ブラックジャック」はカジノでも人気のゲーム。その仕組みを、お父さん流に簡単にしてゲームが始まりました。アメを賭けているので千晶ちゃんは真剣です。

荻原博子『親が子供に教える一生お金に苦労しない12の方法』(中央公論新社)
荻原博子『親が子供に教える一生お金に苦労しない12の方法』(中公新書ラクレ)

最初に良い数字が来たので勝てると思い、なんと無謀にも5個のアメを賭けました。ところが、結果はお父さんの方が21に近い数字だったので、負けて5個のアメを取られ、残りは5個になってしまいました。

そこで千晶ちゃんはもうちょっと慎重になって、勝てると思ってもアメは1個ずつ賭けるようにして、確実にお父さんからアメを取り返していきました。

そうやって、アメが13個になった時に、千晶ちゃんは思い切ってアメを3個賭けました。

「3個も賭けて大丈夫か?」

とお父さんが言うと、千晶ちゃんは笑って、

「大丈夫、3個なくしてもまだ10個あるから、スタートに戻るだけ」

残念ながら、3個のアメはお父さんに取られてしまいましたが、そこからはまた慎重になってアメを賭けるのは1個ずつにし、10個よりもアメの数が増えていたら、増えたぶんを大きく賭けるという作戦で、なんと千晶ちゃんは最後にはお父さんが持っているアメをすべて奪うことができました。

常に、最初もらった10個のアメを減らさないようにしながら賭ける千晶ちゃんを見て、お父さんは「この子はなかなか堅実な勝負をする」と感心しました。

■ゲームを使えば安全に「リスク」を体験できる

千晶ちゃんの家では、トランプのほかに、花札や双六など月に何回かは家族みんなでゲームをします。そのたびに、アメを賭けたりミカンを賭けたり、いろいろなものを賭けて遊びます。

一番みんなが喜んだのは、「モノポリー」という財産版人生ゲーム。あらかじめおもちゃのお金を配り、サイコロを振って、出た目の数だけ進むのですが、止まったところに指示があり、そこで土地を買ったり募金をしたり、税金を払ったり、家を建てたりします。その家を売ったり、貸したりするとお金が入ってきて、大金持ちになったり破産したりしますが、破産した人は負けになります。

最初は千晶ちゃんには難しかったのですが、学年を経るに従って「コンサルタント料」とか「権利書」とか「抵当」などの言葉もわかり、「交渉」もできるようになってきました。

今はさまざまなゲームが売り出されています。「モノポリー」のように、人生でいろいろと起きそうなことを想定してゲームできるものも増えています。

まずは、こうしたもので危なくないようにさまざまな「リスク」を体験させ、慣れたら実際に投資に進むといった順番がいいのではないでしょうか。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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