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専門医が教える「今すぐ病院に行くべき頭痛」と「飲み薬で治る頭痛」の見分け方

プレジデントオンライン / 2021年10月6日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

突然の頭痛の1割には命の危険があるといわれている。横浜市立大学附属市民医療センターペインクリニック内科の北原雅樹医師は「頭痛を放置してはいけない。特に『物が二重に見える』『ろれつが回らない』など6つの兆候がある際には、すぐに医師の診断を受けてほしい」という——。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)

■すぐに医者に行くべき「急性の頭痛」を見分ける6つのポイント

ひとくちに頭痛といっても、頭痛は脳血管障害など原因となる疾患のある「急性の頭痛(二次性頭痛)」と、それ以外の「慢性の頭痛(一次性頭痛)」に大きく分類されます。

これらの頭痛をしっかりと見極め、特に急性の頭痛が疑われる場合は、すぐに医療機関の脳神経外科か神経内科を受診しましょう。これが頭痛から命を守る大原則です。

くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、髄膜炎、脳炎など脳の異常や、副鼻腔炎、帯状疱疹後神経痛などから来る「急性の二次性頭痛」は、命に関わる怖い頭痛です。新たに起こるゆえに「急性」なのですが、数カ月続く場合もあります。頭痛患者の約1割がこの頭痛です。

はっきりとした原因があるわかりやすい頭痛なので、すぐに頭痛の専門医や脳神経外科、神経内科に行き、画像診断、精密検査のうえ適切な治療をすれば、たいていは短期間で治すことができます。次の6つの神経学的所見や兆候があったときは、急性の頭痛を疑ってください。

【北原式 急性の頭痛6つのチェック】
1.物が二重に見える。
2.ろれつが回らない(言語障害)。
3.手足が思うように動かない(歩行障害や手のしびれ)。
4.発熱、倦怠感、体重が急に減少(全身的な症状)。
5.新たに始まった、最近急に起きた頭痛(特に50歳以降)。
6.今までとは明らかに症状が違う(最近3~6カ月以内の急な変化)
・右側だけだった片頭痛が両側になった。
・急に吐き気がひどくなった。
・意識障害を伴って起こる激しい頭痛。
・朝起きた時だけ痛む。

基礎疾患のない人が危険な急性の頭痛にかかることはまずありませんが、糖尿病で感染しやすい人、高血圧、高脂血症の人は頭蓋内感染や脳血管障害などが原因で急性の頭痛になるリスクは高いと言えます。

■「慢性の頭痛」であっても、放置してはいけない

いわゆる一般に「頭痛」と呼ばれ、頭痛の約9割(約3000万人)を占める慢性の頭痛は、「ズキンズキンの片頭痛」と「頭全体が締めつけられる緊張型頭痛」、「一筋縄ではいかない薬物乱用頭痛」の3つに分かれます。急性の頭痛と異なり「すぐに命には関わらない」ものの、「健康寿命には大いに関わる」ため、決して侮れません。

慢性の頭痛がやっかいなのは、少し我慢すれば何とか日常生活を続けられるからです。だからといって素人判断で放置したり、誤った治療を受けたり、生活習慣を改めないでいると、QOL(生活の質)とADL(日常生活の活動度)が明らかに下がってしまいます。

薬の効かない緊張型頭痛なのに薬を飲み続け、効かないまま「そのうち治るだろう」と放っておくと、まず首から肩のコリがひどくなっていきます。さらに腰、ひざ、下肢と徐々に痛みが広がっていきます。

われわれが歩いている時に視野がぶれないのは、首から上で体のブレをコントロールしているからです。長引く頭痛によってそれがうまく機能しなくなると、下半身でバランスをカバーするようになり、腰痛、ひざ痛、下肢痛を招き、寝たきりリスクが高まります。

寝たきりのリスクについては、著者の神戸利文さん、上村理絵さんと私の鼎談(ていだん)を収録した『道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』(アスコム)の第6章をご覧ください。健康寿命の延伸、患者・家族の医療リテラシーの向上に加え、医者も知らない急性痛と慢性痛の違いもここで説明しています。

書籍タイトルの通り、青信号の間に道路を渡れないリハビリ難民が日本には200万人いると言われています。スタートラインで頭痛の見極めを間違えると、痛みをこじらせ、身体機能を弱らせ、怖くて道路を渡れないため買い物にも行けなくなり、健康寿命にすら影響する可能性があります。

■3つの要素が絡み合う慢性の頭痛

本当に慢性の頭痛に対処したいのなら、頭痛に対するとらえ方を根本的に変えなければなりません。「片頭痛」「緊張型頭痛」は「血管性」「筋性」「心理社会的」の3つの要素が何らかの形で原因として絡み合っています。

これをわかりやすく図式化したものが、図表1です。国際頭痛学会の頭痛の分類はもっと細かいのですが、臨床的にはこのシンプルな分類でほとんどが対処可能です。

一次性頭痛の関係図
提供=北原雅樹医師

■片頭痛は“引き金”を見つけることが重要

片頭痛は、特に血管性要素が強い頭痛です。脳の血流が低下して脳の血管が広がり、血管をとりまく神経を刺激するために痛みが生じるのが血管性の頭痛ですが、その中でも、何らかの理由で急に血管が広がったことで起こるのが片頭痛です。日本の患者数は約840万人で、以下のような症状があります。

【北原式 片頭痛8つのチェック】
1.頭の片側だけに起こる
2.拍動性(ズキンズキン、ドクンドクン)がある
3.痛みはだんだんとひどくなり、我慢できない、仕事にも支障
4.体を動かすと痛みが悪化
5.様々な刺激(光、音、匂い)に敏感になり、酷くなることがある
6.吐き気や、むかつき、羞明(しゅうめい)(まぶしさ)などを伴う
7.筋肉のコリを伴うこともある
8.30%程度の患者には「前兆」がある(目の前がチカチカする、視野が狭くなり、光が走ったりする、生あくびが出る)

中年男性に多く、しばしば「片目の眼球の奥をえぐられるような」と表現されるほどの激しい痛みは「群発性頭痛」を疑います。

対処法は、治療と予防の両面から必要ですが、ほとんどの片頭痛の場合、痛みが起きた時の治療、すなわち薬を飲むことだけに集中しているのですが、ほんとうに大切なことは「起こさないようにする」ことです。

多くの場合、片頭痛を起こすきっかけ(トリガー)があります。起こさないためには、それを見つけて対処するのです。片頭痛のトリガーになりえるものとしては、

・睡眠不足、過労
・アルコール
・脱水
・低血糖状態(空腹)
・生理時(片頭痛の女性の50%程度は生理時に起こる)
・特定の食べ物:発酵チーズ、チョコレート、赤ワイン、発色剤、ナッツ類など

などで、これらが1つ、あるいは複数重なると、ひどい片頭痛が起こりえます。生活習慣、食生活を見直して改善し、予防することが一番重要です。かつて私自身も片頭痛を持っていましたが、トリガーとなる食べ物を制限し、過労をできるだけ避けるようにしただけで、この十数年間は症状が出ていません。

お酒を飲んで酔っている人
写真=iStock.com/South_agency
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/South_agency

■頼りすぎが怖いほど、治療薬が劇的に効く片頭痛

片頭痛の治療薬としては、血管の拡張を劇的に抑える「トリプタン系薬剤(以下トリプタン)」、一般的な鎮痛薬(アセトアミノフェン、NSAIDs)などがあり、吐き気止め(メトクロプラミド、プロクロルペラジン)を併用することもあります。

片頭痛の場合、とにかく早めに薬を使うことが望ましく、我慢してから使うとかえって効果が悪くなります。

トリプタンが劇的に効くことがあるので、片頭痛は慢性の頭痛の中で最も治療が簡単で楽といえます。それだけに思わずそこだけに頼ってしまいがちです。そうすると薬物乱用頭痛という新たな障害の温床になりますので、使い過ぎにはくれぐれも注意しましょう。

とはいえ、片頭痛の頻度が増えてくると、どうしてもトリプタンに頼ってしまいます。もしもトリプタンを月5回以上使用しなければならないときは日常的に予防薬の服用を考えます。

また、治療薬がどうしても効かない、副作用などで治療薬を使えない、薬物乱用頭痛になっているときなども予防薬を検討します。具体的な予防薬としては、

・抗けいれん薬系:バルプロ酸系、トピラマート(よく効くが日本では保険適応外)
・ベータ拮抗薬系
・カルシウム拮抗薬系
・抗うつ薬系
・抗CGRP抗体

などがあり、これらの予防薬を効果や副作用や患者さんの好みなどを考慮しながら1つずつ試していって、最も効果が高いものを選んでいくわけです(筆者註)

多数の薬
写真=iStock.com/noriver
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/noriver

■市販薬には限界がある

片頭痛の予防はほぼ治療とイコールになります。治療薬/予防薬はあくまで一手段と考えて、運動療法、ストレスマネジメント(心理療法)、生活習慣の改善の3つを治療/予防のメインとし、薬物療法は援護射撃と考えましょう。

他の慢性の頭痛と異なり片頭痛の場合は、発作の最中は運動療法がかえって症状を悪化させることが多いため、運動療法は予防のためにとどめておきます。片頭痛を自分で和らげたいときは入浴を控え、静かな暗い場所で安静にし、少しでも睡眠をとることです。痛む箇所を冷たいタオルで冷やすのもいいでしょう。温めたり揉んだりは控えましょう。

※筆者註:参考文献は以下の通りです。
◎片頭痛の予防:Kahriman A, et al. Migraine and Tension-Type Headache. Semin Neurol. 2018;38:608-618. Marmu The Acute Treatment of Migraine in Adults: The American Headache Society Evidence Assessment of Migraine Pharmacotherapies - Marmura - 2015 - Headache: The Journal of Head and Face Pain - Wiley Online Library
◎片頭痛薬物療法のエビデンス評価:HA H, et al. Migraine Headache Prophylaxis. Am Fam Physician.199:17-24; 2019. Migraine Headache Prophylaxis - American Family Physician(aafp.org)

残念ながら片頭痛に劇的に効くトリプタンは市販されていません。そして片頭痛や群発性頭痛には市販薬で大きな効果は期待できません。医者に処方してもらいましょう。

薬が効かないといわれる緊張型頭痛(ストレス頭痛)でも、あえて市販薬や漢方薬を飲んでおけばいいケースがあります。以下の通りです。

・頭痛の発作が月4回(週1回)以下であること
(1箱12錠入り頭痛市販薬が3カ月程度でなくなるペースが限界)。
・特に30代前半までで、たまに起こる程度の軽い頭痛。
・常備薬を飲めば治まるパターンが長い期間できている軽い頭痛。
・眼精疲労による頭痛と診断されていて、常備薬を飲めば治まる頭痛。
・かかりつけ医からの診断、治療をすでに受けていて、症状が変わらない頭痛。
・年1回の健康診断や人間ドックの頭部MRI検査の結果、脳に大きな異常がないうえでの頭痛。

ただし、適切な使用方法で適切な量を飲みましょう。市販薬、漢方薬にも種類がありますので、胃の負担に注意し、ご自身の体に合ったものを選びましょう。市販薬、漢方薬を飲んでも改善されない場合は、早めに医者に行きましょう。

■「慢性の頭痛」でも市販薬だけに頼るのはNG

頭痛についての文献をいろいろと検索をすると、世界の慢性疼痛診療ガイドラインはこの30年間ほとんど変わっていません。基礎的な研究は進んでいるものの、臨床的には変化がないのです。なおかつ、日本の慢性痛治療は欧米に比べ30年遅れています。

だからこそ医者任せにせず、ましてや頭痛を放置せず、頭痛としっかりと向き合うことが何よりも大切です。頭痛の頻度や程度が増してきたら、市販薬ですぐ治せるレベルを超えているサインです。必ず医者に行ってください。

次回は、健康寿命を延ばすための「緊張型頭痛」の対処法をご紹介します。

(詳しく知りたい方はこちら)
・慢性痛に関するYouTubeチャンネル「慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾」
第53回:頭痛総論
第54回:片頭痛
・慢性痛についての総合的情報サイト「&慢性痛 知っておきたい慢性痛のホント」

(注1)本稿での解説は、世界最高峰の痛みの研究組織、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターでの5年間の留学時代に習得し、日本帰国後に臨床に応用し多くの症例を積み重ねたうえで多少改変した、痛みの専門医として有効性が高いと感じる個人的見解、私論であります。意見には個人差がありますので、あくまでも主治医の先生と相談のうえ、どの治療を選択するかは自己責任としてくださいますよう、お願い申し上げます。

(注2)私の在籍する横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科では、現在、神奈川県内の患者さんのみ受け付けています。全国各地からのお問い合わせは「慢性の痛み政策ホームページ」の全国の集学的痛みセンターの一覧をご参照ください。

(注3)厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」の電話相談窓口はこちらです。

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北原 雅樹(きたはら・まさき)
横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科診療教授
1987年東京大学医学部卒業。1991〜1996年、米国ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターに臨床留学。帝京大学溝口病院麻酔科講師、東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、麻酔科准教授を経て、2017年4月から横浜市立大学附属市民総合医療センター。2018年4月から現職。専門は難治性慢性疼痛の治療。複雑な要因が重なる痛みの「真犯人捜しの名探偵」。西洋のリハビリと東洋の鍼を融合したトリガーポイント療法「IMS」を日本に導入した。日本麻酔科学会指導医、日本ペインクリニック学会専門医、日本疼痛学会、日本運動器疼痛学会所属。公認心理師の資格を持つ。著書に『肩・腰・ひざ…どうやっても治らなかった痛みが消える! 原因解明から最新トリガーポイント治療法のIMSまで』(河出書房新社)、『慢性痛は治ります! 頭痛・肩こり・腰痛・ひざ痛が消える』(さくら舎)、『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム、共著)などがある。

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(横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科診療教授 北原 雅樹 聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)

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