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「損をしたくない人は使わないほうがいい」累計3億円を集めた男が語るクラファンのダメなところ

プレジデントオンライン / 2021年10月1日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

商品化のため広く消費者から出資を募る「クラウドファンディング」の市場が広がっている。しかしその利用には商品化が頓挫するというリスクもある。大手クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」顧問で、自身もオーナーとして累計3億円を集めてきたbamboo氏は「損をしたくない人は利用しないほうがいい」という――。

※本稿は、bamboo『推される技術 累計3億円集めた男のクラウドファンディング冒険記』(集英社)の一部を再編集したものです。

■バンドの「海外公演」費用を募った

自分がクラウドファンディングと出会い、初めてプロジェクトを手掛けたのは2013年のこと。美少女ゲームメーカーOVERDRIVE代表兼ロックユニットmilktubのボーカルとして、何もかも手探りのところから始めて、その後クラウドファンディングを使いに使って使い倒してきた。

われわれのバンド「milktub」が2014年、ドイツのボンで開かれるアニメコンベンションイベント「AnimagiC2014」にライブアクトとして招聘されたときのこと。「海外公演」はミュージシャンだったら一度は夢に見る体験で、われわれも全力で臨みたい。だが、先方からのオファー条件は「メンバーふたりで、演奏はカラオケで歌唱での参加」というものだった。

当時の海外のコンベンションなどのアニメ系イベントは、現地スタッフたちの熱意と手弁当で開催されており、物価の高い日本のミュージシャンをバンド&スタッフごと招聘する予算を捻出するのはかなり難しい状況だった。それでも一生に一度になるかもしれないイベント。この時点での最高の演奏、最高の布陣で挑みたかった。予算の都合上、主催者がバンドでの招聘費は出せないというのなら、自分たちで出して行っちゃるわ! と、この費用を募るプロジェクトを立ち上げたのだ。

■あの手この手で“リターン”を創造

題して「milktub海外公演支援計画」。この“俺たちをドイツに連れていってくれプロジェクト”は、言ってみたら自分たちのロマンとわがままばかりで、正直、ファンにはあまりメリットがないものだった。だって予算の関係上、俺たちのライブを実際にドイツで見る、という現物としてのリターンを出すことはできないからだ。

それでも、できることはなんでもやるぞとばかり、「現地の絵はがきで書いたお礼状やお土産(むろん、自腹で購入)がもらえる」とか「フェスの映像をYouTubeで配信」といったあの手この手の策でリターンの価値を出すことに奔走した。

結果、目標金額140万円に対して支援総額は約180万円、130%でのフィニッシュとなり、おかげでめでたくバンドとしてフェスに参加することができた。

■先に予算があると、どんな可能性が広がるのか

また、同じ年にはクラウドファンディングでアルバムも作ってみた。弊社タイトル『DEARDROPS』でボーカルを務めた「Prico」の新しいユニットとして「Prico with DEARDROPS」としてアルバムをリリースすることになった。こちらも350万円の目標に対して800万円以上の支援を頂いた。

アルバムを作るにあたって、実は予算で諦めることはけっこう多いので、予算が先にあるというのは制作においては良いことずくめだ。例えばレコーディングした音源を仕上げる作業に「マスタリング」という工程があるのだが、「もう少し資金に余裕があったら、あそこのスタジオの職人エンジニアさんに頼むんだけどなぁ……」とか、レコーディングするスタジオも「予算がないから安いスタジオ使おうか」と泣きを見ることが過去に多々あった。

予算を圧縮するテクニックもなくはないが、毎度毎度「すまん! 今回はこれでお願い!」と安い金額で仕事してもらうにも限度はある(ミュージシャンやエンジニアは職人なのだから、それ相応の対価を払わないといけない)。

その点、先にまとまった予算があれば、早い段階で「通常より良いスタジオで作業できる」「入れたい楽器を頼みたいミュージシャンにお願いできる」「腕のいいエンジニアに仕事をお願いできる」などの判断ができてアルバムの質が向上するし、事前に広告費などをゲットすることでプロモーションにも幅が出せる。CDなどの盤物が売れなくなっている今の時代だからこそ、先に予算があるというのは非常に重要なことなのだ。

■1億3200万円を集めて「資金調達額日本一」に

その後、自らプロジェクトを起案するだけでなくキュレーターとして複数の案件を手掛けるうちに、国内大手のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」の顧問になった。さまざまなプロジェクトの資金調達に協力し、そして2018年にはうっかりクラウドファンディング資金調達額で日本一になったりもした(1億3230万2525円)。

高校時代の偏差値は42で、Fラン大学法学部を5年かけて卒業した自分だが、知識ゼロからクラウドファンディングを学び、これまでに自身が立ち上げたプロジェクトでは約3億円、キュレーター案件を含めると6億円以上の資金を集めてきた。そこで得た知見から、「支援すべきプロジェクトとそうでないものの見分け方」や「プロジェクトページを見る際のポイント」を自分なりにまとめてみたので参考にしてほしい。

■プロジェクトを見分けるポイント

・プロジェクトオーナーの人間性を見よ

自分は「年間100案件」を目標にあらゆるプラットフォームで数々のプロジェクトを支援してきたが、それで見えてきたのがオーナーの人間性がいかに重要かということだ。一見、意外に聞こえると思うが、これはプロジェクトの成否に大きく関わってくる。オーナーのブログやSNS、TwitterやFacebookなど、確認できるものがあればなるべく目を通し、「信頼のおける人物かどうか」を見極めることが重要だ。

ちなみに俺はSNSを一切、使っていない人に対してはよほどのことがない限り、支援しないことにしている。理由は簡単。「支援に足りる人物かどうか」を判断する材料がないからだ。かといって著名人が起案した案件ならば安心かと言われればそれも違っていて、実際にクソみたいなものは多々あるので、油断は禁物だ。

・プロジェクトページで見るべきポイント

まずは、そのプロジェクトの具体的なビジョンがきちんと書かれているかどうかをチェックしたい。文字だけのページやテンプレを埋めただけのページ、具体的なスケジュールの記載がないものも地雷度が高い。またプロジェクトのFAQがきちんと書かれているかもチェックしよう。特に想定外のことが起きた際の対応については大きな判断基準になる。ここがしっかりしていれば、それだけプロジェクトについても綿密に考えているといえるだろう。

■「ふわっとしてるな」と思ったら要注意

・ロマンにだまされるな

プロジェクトを立ち上げる側から言うと「ロマン」は大事なんだけど、支援する際には、「ロマンが立ちすぎているモノ」は注意したほうがいい。

例えば「こんな便利機能があるガジェットです!」と機能ばかりをうたっていて、肝心の開発スケジュールや商品の到着に関してはふわっとしか記載のないページがあったりする。今はCGも発達しているので、見た目に「すげー!」と思えるアイテムは動画や画像で簡単にブチ上げることができてしまう。

たとえ試作品が出来上がっていても、試作と量産は難易度がまったく違う。実際、自分が支援した中でも、起案の段階ですでに試作品ができていたのに、それから2年、いまだに商品が届かず絶賛炎上中のプロジェクトが存在していたりもするから、ロマン先行のプロジェクトほどシビアな目で見るべきだろう。重ねて書くが製品を「企画する」ことと、「量産する」ことは別次元の行為で、それぞれに起こりうる問題は別ベクトルで発生するのだ。

・どんどん質問しよう

支援する前に疑問や不安なことがあれば、プロジェクトオーナーに直接、どんどん質問するべきだ。そこで納得できれば支援すればいいし、できなかったら支援をやめるだけだ。また、質問に対するオーナーの対応の仕方で、プロジェクトの具体性やオーナーの人間性も見えてくる。ちなみに俺がプロジェクトオーナーの立場のときは、支援者の質問は「プロジェクトの脆弱性を指摘してくれる最高の意見」と考えているので、いつでもウエルカムだ。

■あくまで「計画」にお金を出すもの

・書いてあるとおりにコトが進むとは限らない

「○○年夏頃完成予定!」と書いてあったとして、それが守られるとは限らない。それはあくまでも現時点での予定であって、ズレ込むことは普通にあると心の片隅で思っておくべき。開発費を集めるようなプロジェクトは、あくまでも「開発を支援」するもので、現物が手に入るのは開発が成功した上でのリターンなのだから事前予約販売とは性質がちょっと違うと心得ておこう。

これをキュレーターが言っていいものかどうかはわからないが、クラウドファンディングは「計画」にお金を出すものだがら、その性質上、どうしたってバクチ要素はある。バクチに勝つにはどうすればいいのか。それは競馬なんかと同じく、「情報収集」しかないのだが、それをしたからって絶対に勝てるという保証はない。だから「絶対に失敗したくない人」にはそもそも向かないシステムなのだ。それでも数多く支援していくと徐々に「やべえプロジェクト」が見えてくるのもまた真理なのだ。

■クラウドファンディングは儲からない

結局のところクラウドファンディングとはいったい、なんなのか?

bamboo『推される技術 累計3億円集めた男のクラウドファンディング冒険記』(集英社)
bamboo『推される技術 累計3億円集めた男のクラウドファンディング冒険記』(集英社)

経験上、クラウドファンディングだけで大儲け、ということは今までただの一度もなかった。そこそこの金額を集め、高い達成率を出している俺でも、正直言えば体感として「クラウドファンディングは儲からない」と感じている。「クラウドファンディングで一獲千金」を夢見ている人も一定数いるみたいだけど、個人的にはまったくオススメできない。

クラウドファンディングは「儲けるための試作品を形にするための資金集め」に使うものであって、クラウドファンディングそのものでお金を稼ごうという性質のモノではない。儲けたいのであれば、まずはクラウドファンディングで資金を得て、それで開発や制作をして、「出来上がったモノ」を使って儲ける、という順番になる。

もちろん想定の何十倍、何百倍と資金が集まれば、それは「クラウドファンディングで儲かる」に似た状況になることも考えられるけど、税金や送料もかさむわけだし、開発というのは底抜けにカネのかかるモノ、そんなに甘くはないんやで。

■「モノの価値」をブーストしてくれる面白さ

クラウドファンディングの最大のメリットは「モノの価値をブーストしてくれる」こと。例えば、あなたは今イベント開催やCD制作などやりたいことがあり、その実現には100万円が必要だとしよう。

しかし、そこに300万円あったらどうだろうか。イベントだったらより豪華に、アルバムだったら曲数が増えるかもしれない、ガジェットならより高いスペックを狙えるようになるかもしれない。あなたの思い描いた夢の価値をブーストしてくれる可能性がある、それがクラウドファンディングの魅力だし、面白さなんじゃないかな。

「コンビニで働く兄ちゃんが思いついたアイデアが、クラウドファンディングで○億円集めた! って記事が雑誌『BUBKA』に掲載される」――自分が考えるクラウドファンディングというのは、これぐらい俗っぽくていいと思っている。メルカリなんかも“フリマ界の闇市”なんて呼ばれているけど、便利だし、その玉石混淆っぷりが大きな魅力にもなっている。

今現在、クラウドファンディングを利用している層は主にITにある程度通じているか、ネットにアクセスする時間が多い人だが、今後はもっと裾野が広がっていくはずだ。それこそマイルドヤンキーが使い始めたら国民的プラットフォームとなっていくんじゃないか、とも考えている。

■利用者の裾野が広がれば商売の幅が広がる

利用者の裾野が広がる、ということは商売の幅が広がるということだし、「ワンチャン」も生まれやすくなる。「思いつきのアイデアで○億円集めた」みたいなことが増えていくのはやっぱりロマンがあって楽しいじゃん。

海外には「クラウドファンディングマニア」みたいな人たちがたくさんいて、それこそ「裏山に穴掘りたいんだけど、支援よろしく!」みたいなアホなプロジェクトでもサクセスをしてしまい、クラウドファンディング界を盛り上げてくれている。今後は日本でももっとプラットフォームが「クラウドファンディングマニア」を育てていったらいいなと思っている。

クラウドファンディングはまだ新しい仕組みで、「お金を集める」というシステムの性質上、メディアなどで報道され、話題になるのは炎上案件が目についてしまうが、最近はピーキーなガジェットを入手する方法としては非常に優秀だという認識は広まっているように思う。

実際、中国や香港などのとがった発明品を展示会で見つけて、それを日本で販売するためにクラウドファンディングを利用するという流れは、すでにビジネスに組み込まれつつある。ガジェットに特化したプラットフォームも存在する。

Kickstarter のウェブサイト
写真=iStock.com/GoodLifeStudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoodLifeStudio

■今後ますますハードルが下がって一般化していく

一方でまだまだ「なんか胡散くさい」というイメージは、そりゃそうだろうなと思う。特にガジェット系のバクチ感ったらない。日本のプロジェクトでもコケるところはコケるけど、海外サイトのバクチ度はその比じゃない。実際、俺が「Kickstarter」で実際に支援した案件は20件中8件がコケている。もちろん金は返ってこないし、そのプロジェクトオーナーは大炎上だ。

でも、クラウドファンディングは本来そういう側面があるものだし、確実性の高いプロジェクトばかりがお行儀よく並ぶよりも、玉石混淆のほうが面白いんじゃんと俺は思っている。例えは悪いけどまずいラーメン屋に当たったときにこそ、うまいラーメン屋が輝くみたいな(笑)。その意味で、「クラウドファンディングは神経質な人、金の損失が絶対に許せないタイプの人には向かないよ」と先に言っておいたほうがいいかもしれない。

それでもこれから先、クラウドファンディングはどんどんハードルが下がって、日本ならではの雰囲気を携えながら、より一般化していく可能性が高いと思っている。それに伴いプロジェクトの質も「玉石混淆」っぷりを強めていくんじゃないかな。「こんなバカな企画、誰も金出さねえよww」と思いつつ「でもうっかり買ったら便利だったわ!!」みたいなヒットがたくさん生まれることを心から願っています。

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bamboo(ばんぶー)
ミュージシャン・ゲームプロデューサー
結成30周年を迎えるロックバンドmilktubのボーカルとして、数々のテレビアニメの主題歌などを担当。また、ゲームレーベルOVERDRIVEのプロデューサーとして、多数の作品を世に送り出した。2016年より大手クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」顧問。キュレーターとして主にゲーム、音楽、声優などのカテゴリーのプロジェクトを担当している。

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(ミュージシャン・ゲームプロデューサー bamboo)

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