「自分は本番に弱い」そんな言い訳をする人が根本的に勘違いしていること
プレジデントオンライン / 2021年10月11日 12時15分
※本稿は、小林剛『なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■メンタルが強い2種類の人
「メンタルが強い人」には、2種類います。1つ目は、神経が図太い人。細かいことを気にせずにいられる人です。これはもう、才能というか、生まれつきの資質です。私は細かいことを気にしてしまうタイプの人間なので、そういう人のことを「うらやましいなぁ」と思います。
2つ目は、物事を論理的(ロジカル)に考えられる人です。「ロジカル」と「メンタル」、一見関係なさそうですが、実は大いに関係があります。
メンタルの強さは、「思考法」しだい。たとえあなたが繊細で、傷つきやすい人であっても、論理的なものの考え方を身につけることさえできれば、今この瞬間からあなたの心は強くなるのです。
■今のあなたは「これまでの選択の結果」である
私、小林剛は「鋼のメンタル」「サイボーグ」と言われるほど、メンタルが強いとされている麻雀のトッププロです。
プロ歴はまだ20年ですが、最高峰のタイトル「将王」を3度獲得し、トッププロが集う麻雀リーグ「RTD リーグ2018」でも優勝。チーム戦でも、AbemaTV(現在はABEMA)で全対局の動画配信が行われる「Mリーグ」で、私が率いるU-NEXT Piratesが2019年に優勝するなどの成績を収めています。
麻雀は人生と似ています。それは、どちらも「選択の連続だ」ということです。
働いている人なら、今日は何時に出社するか、誰に声をかけるか、どういう順番で仕事をこなすか、残業するかしないか……など、一瞬一瞬で小さな選択を積み重ねています。
休みの日なら、何時に起きるのか、ジムに行くかどうか、誰と会ってどこに行くか。子育てをしている方なら、子どもにどんな声をかけるか、何を買い与えるか。
その選択の結果が、今現在のあなたです。私は、麻雀も人生も、よりベストな選択を積み重ねた人が勝つし、豊かな人生を送ることができると思っています。
もしあなたが現状に不満を抱いているのなら、よりベストな選択を積み重ねることができなかったからかもしれません。
しかし、不安やプレッシャーに押しつぶされて、いつもよりも悪い選択をしてしまうこともあるでしょう。よりよい選択を重ねていくには、ブレないメンタルが必要なのです。
■「失敗したらどうしよう」と思うと失敗する
私は、けっして図太い人間ではありません。けれども、なぜか「どんな場面でもまったく動じない人間だ」と思われています。図太くなくても、物事に動じない。これが両立できるのは、なぜでしょうか?
それは、私は物事を論理的に考えることができているからです。
まず簡単に説明してみましょう。まず、メンタルが弱い人の心の中を、私が代弁してみます。
「もし失敗しちゃったらどうしよう……」
「そうならないように、絶対に失敗しないように頑張ろう」
「失敗しちゃダメだ、失敗しちゃダメだ……」
「……不安で集中できない、いつも通りの力が発揮できない」
「やっぱり失敗してしまった……私はダメな人間だ……」
ちょっと誇張して言ってしまいましたが、多かれ少なかれ、こういう不安や自信のなさで悩むこともあるのではないでしょうか。
こういう人は、失敗はあってはならないものだと考えています。そのために「失敗したらどうしよう」という不安で押しつぶされてしまいます。
そもそも「絶対に失敗しない」なんて、「絶対に無理」です。それに、このようにメンタルが揺れていては、本来の力を発揮することはできず、失敗する可能性も高まってしまうでしょう。
■「絶対に失敗しない」なんて「絶対に無理」
では、論理的な人は、どう考えているのでしょうか。私が代弁してみましょう。
「この件はおそらく、40%くらいの確率で失敗するだろう」
「失敗は十分にあり得るし、そうなったらもう仕方がないな」
「今回の成功率は60%だが、どうしたらこの確率を引き上げられるだろうか」
「……少しアプローチを変えると、70%くらいまで成功率を上げられそうだ」
「30%の確率で失敗するが、その場合のリカバリープランも考えておこう」
「さあ、失敗するかもしれないけど、いつも通り淡々とベストを尽くそう」
「どうやらうまくいったようだ。気負わずにできたからかな」
論理的に考えれば、「絶対に失敗しない」なんて、「絶対に無理」なのです。金メダル候補の超有力選手が、予選落ちすることもあれば、無名のアマチュア選手が、名だたる強豪を抑えて頂点に立つこともある。
成功も失敗も、めったに起きないハプニングでさえも、一定の確率で起こりうる。何が起きても、驚くべきことではありません。これが、私の言う「確率思考」です。
■「成功する確率の高い選択をする」ことだけ考える
しかし、「失敗する確率」「悪い偶然が起こる確率」から目を背けている人が、あまりにも多いのではないでしょうか。あなたがすべきことは、緊張することでも、不安に思うことでもありません。
「成功する確率」「よい偶然が起こる確率」が高い選択を重ねていくことだけです。
「すべては一定の確率で起こることだ」と知っていれば、失敗を悔やむことも、不安に思うことも、力むことも、必要ないことがわかります。
■ミスをしないようにするのではなく、ミスした場合を考える
「ミスは絶対にするものだから、気楽にやったほうがいい」
ミスして落ち込んでいる人や、普段通りの麻雀が打てなくなってしまう人に対して、私はこうアドバイスしています。
私はプロ雀士なので、視聴者や観客の前でプレーすることがほとんどです。皆さんもプレゼンやスピーチなどで、人前に出ることがあるかもしれませんね。
人前に出れば、大なり小なりパフォーマンスは下がります。外から冷静に見れば気づくことでも、舞台に立っている本人には見えない。何か大切な兆候を見逃してしまう。これは誰にでも起こり得ることだと思ったおいたほうがいいでしょう。
ごくまれに、「多くの人前でこそスーパープレイができる」という人もいるかもしれませんが、それは例外中の例外です。プレッシャーがかかる局面でなくても、ミスは起こります。
「今後はしない」と、どんなに心に誓っても、やっぱりミスはなくならないのです。
■ミスをしてしまった後に考えるべきこと
したがって、考えるべきことは、ミスをした直後にどう思うかです。ミスを気にする人は、それを気にして判断が揺れることで、どんどん深みにはまっていくことがほとんど。これではなんのプラスにもつながりません。
ミスをしてしまったとき、私自身はどうしているか。忘れるか、笑って済ませることにしています。
「あ、ミスしちゃったよ! ワハハハ」という感じです(まあ対局中笑うわけにはいきませんが)。だからよく言われるように、顔に出ないのだと思います。
そういう心境になれたのも、失敗を何度も繰り返してきたからと言えます。何度もつまらないミスをして、ミスそのものに慣れてしまったこと。
そこでいちいち後悔し動揺することが、なんの得にもならないということ。これを、身をもって実感し続けてきたからかもしれません。
■「本番に弱い」は言い訳にならない
ちなみに、私はミスをしたときに、自分に腹を立てる気持ちは起こりません。なぜなら、「頻繁にミスをする」ところまでが自分の実力だと思っているからです。
もし「普段しないミスをしてしまった……」と腹を立てているなら、「自分をミスをしない人間だ」と過大評価しています。もちろん、ミスの頻度には個人差があると思いますが、そのミスの発生頻度も含めたところまでが実力だと認識すべきです。
これは学校の勉強にも似ているかもしれません。練習問題のときからよく間違えていたのに、試験の結果が悪かったことだけ取り上げて「あ〜俺は本番に弱い」「ツイてない」と嘆くのはおかしいと思うのです。
私自身、学校のテストでは、ミスが非常に多い学生でした。今思うと、そこから自分のミスに慣れてしまったのかもしれないですね。
ミスに対するこういう考え方は、私が人に麻雀を教える機会を重ねるうちに、言語化していったものです。
麻雀を教えるとき、技術の話をする人が多いですが、それはあくまで枝葉の話。それよりは、「麻雀というゲームの本質はこういうものだよ」という基本的な考え方、麻雀の捉え方を教えるほうが大事だと思っています。
その本質の一つが、「ミスはするものなので後悔する必要はない」ということ。そう考えることができれば、麻雀に限らずなんでも楽しく早く上達できるはずです。
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麻雀プロ
1976年生まれ、東京都八王子市出身。麻雀界最高峰の「Mリーグ」2019年シーズンにおいて所属するU-NEXT Piratesを優勝に導き、2020シーズンでは個人賞の4着回避率で首位に。個人では、所属する麻将連合の最高タイトル「将王」を3度にわたり獲得。ほかにも、トッププロが集う「RTDリーグ2018」優勝、オンライン麻雀の最高位「天鳳名人位」を2度獲得するなど、麻雀界屈指の実力をもつ。著書に『スーパーデジタル麻雀』(竹書房)、監修に『アガリ率5%アップ 何切る』(竹書房、竹内隆之 著)、共著に『麻雀技術の教科書』シリーズ(池田書店、井出洋介)などがある。
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(麻雀プロ 小林 剛)
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