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「勝負に弱い人ほど心が揺れる」最強の麻雀プロが鉄のメンタルを維持するためにやっていること

プレジデントオンライン / 2021年10月18日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/powerofforever

勝負に強い人は、どうやってメンタルを鍛えているのか。麻雀プロの小林剛さんは「流れやツキを信じてしまうと、ベストな選択をとれず負けてしまう。どんな結果が起きても心を揺らす必要がないとわかれば、メンタルは強くなる」という――。

※本稿は、小林剛『なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■「今日はツイているから」はオカルトの始まり

私はプロ雀士の鈴木たろう、村上淳とともに「オカルトバスターズ」というものを結成し、麻雀界にはびこる「オカルト」の撲滅運動に勤んでいます。

まずは、そもそも私が何をオカルトと言っているのか、誤解されないようにちゃんと説明しておきたいと思います。オカルトと聞いて一般的には「超常現象」「怪奇現象」「幽霊」等のキーワードを思い浮かべる人が多いと思います。

もちろんこれらはオカルトの代表例ですが、私が意味しているのは、もう少し幅広く、根本的で、身近なものです。私が言うオカルトとは、「科学的根拠に基づかない事象、推測、思考」のことです。

「心霊スポットに行ったら、翌日肩が重くて上がらなくなった。きっと霊に祟られてしまったんだろう」
「ナスカの地上絵は、当時の技術では到底描けることのできない規模のものだ。だからきっと、宇宙人がUFOでやってきて描いたんだろう」

これらは一般的に言われるオカルトだと思いますが、これと、「今日はツイているから、次もいい牌がツモれるだろう」と言うのも、同じく「オカルト」だと思うのです。なぜなら、事象と事象の間に、科学的な根拠に基づく論理性がないからです。

当然、この世では、不思議な出来事が数多く起こります。その不思議な出来事一つひとつは、現在の科学では説明がつかないようなこともあります。

しかし、だからといって、それが「幽霊」だったり、「宇宙人」だったり、「神様」だったり、「運」や「ツキ」の仕業と決めつけてしまうことこそが、オカルト思考だと思っています。

■「負けに不思議の負けなし」と考えることの大切さ

オカルト思考に陥ってしまうと、その根拠や理由を自分の頭で考えることがおろそかになってしまうので、次につながりません。

たとえば、これまで「今日はずっとツイている」と言うことで、通常よりも強引な攻めをして失敗し、「ああ、調子に乗ったからバチが当たった」「ツキがなくなってしまった」で終わらせてしまうような場合です。

通常では打たないような、勝つ確率の低い選択肢をとったから失敗したわけです。その失敗で「過去がどうであれ、ツモは確率通りに起こる」という当たり前のことを学び次に活かせればいいのですが、それを運や神のせいにしてしまっていては、正しい学習ができなくなってしまいます。

監督として3度のプロ野球日本一を達成した野村克也さんが、生前、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を残されました。

麻雀の世界に限って言えば、私は正直、負けにも不思議の負けがあると思います。運悪く、最悪の悪い配牌になったりすることは当然あるからです(私は、運がいい・悪いがない、と言っているわけではありません)。

しかし、ここで野村克也さんが言おうとしたことは、何事も「不思議だなぁ」で終わらせてしまおうとする思考停止にこそ問題があるのだ、ということだと思います。

「負けてしまったことを運のせいにして、そこで誤った判断をしていたり、新たにわかった傾向を見逃したりしていては、勝負で勝つために積み上げていけるものは何もない」と言いたかったのではないでしょうか。

たしかに、オカルト思考でなんでも運やツキのせいにしたり、迷信を信じきってしまうのは楽です。でもそれでは上達は望めないのです。

■勝負の「流れ」は本当に存在するのか

麻雀業界には、昔からオカルト的な発想をする人がかなりいました。

具体的には、

「ツイているときは負けないから押せ(自分がアガることを優先し、危険牌も切っていくこと)」
「ツイていないときは我慢しろ」
「いいプレーをすると見返りが来る」

「麻雀の神様は見ている」というような考え方です。

私自身も先輩から、「お前、ツイてるんだからそこは押さなきゃダメだろう」とか「今は逆流にいるんだから、我慢しなきゃダメだ」というアドバイスをもらうことも多々ありました。

私が麻雀プロになりたての頃は、麻雀理論にもこうしたオカルト的な発想がはびこっていて、特に「流れ」についてはほとんどの方が言及していました。

私はプロ入り当初からオカルトを否定してきたので、私のことをよく思わない先輩方も多くいたと思います。ですから私の成績が悪かったときには、鬼の首を取ったように「だからお前の麻雀は浅いんだ」などと言われていたことを思い出します。

■麻雀界で“オカルト”が広まった要因

麻雀の世界でこのようなオカルト的な思考が主流になってきたのは、古くは阿佐田哲也さんの本などからの影響もあったかもしれません。昔から言われる「麻雀はツキのやりとりだ」というような発想は、このあたりから生まれたと思います。

阿佐田哲也さんの著書で、麻雀というゲームが広く浸透したという功績は非常に大きいものだと思います。しかし、こうしたオカルト発想が一人歩きした結果、麻雀の科学的な思考を妨げてしまった側面は、少なからずあったと思います。

もちろん昔の時代にも「麻雀の流れというものはデタラメだ」と、オカルト的な発想を否定する方もいました。また、10人に1人くらいの割合で、実はオカルトを否定しながらも、表向きは大人しく語調を合わせてきていたようなプロもいらっしゃったようです。

最近は科学的な考え方が浸透してきましたが今でも流れが意識される面は少なからずあるようです。「ツイている」「ツイていない」ことで、通常であればとらない手を打牌しているようなケースも時々見かけます。

そのような打ち方が勝ちにつながるかといえば、私は疑問だと言わざるを得ません。

■なぜ人は非論理的な「流れ」や「ツキ」を信じるのか

こうしたオカルト理論が好まれ、流行ってしまう背景には、いったい何があるのでしょうか? おそらく、多くの人たちが麻雀のプレイにストーリー性を見出したいと考えるからだと私は思います。自分のやっていることにおそらく意味を持たせたいのでしょう。

日本人の文化・思想にもある「いいことをやったら報われる(報われたい)」「悪いことをしたらバチが当たる(当たってほしい)」という願望から来ているところも、あるかもしれません。

しかし、いいことをしたのに悪い結果になることもあります。反対に、悪いことをしたのに、いい結果になってしまうことだってあるのです。

理論的な裏付けがしっかりしている人たちが、勝負を盛り上げる意味でオカルトを語るのはまだいいと思います。

しかしそうでない人は、物語に乗ったオカルト的なセオリーを鵜呑みにしてしまい、さも証明されている真理のように捉えてしまうのです。

カジノでお金がなくなった男
写真=iStock.com/sanjeri
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sanjeri

数字に弱い人や論理的な思考に慣れていない人ほど、そういうストーリーに酔ってしまう傾向があると思います。こうしたストーリー性に引っ張られ、現実を見誤ってしまうのです。

セオリーを取り入れるとき、自分の頭で論理的に考えて疑い、本当にそうなのか検証してみることなく、やみくもに取り入れてしまうのは、思考停止です。

麻雀界に理系・文系の偏りはあまりない印象ですが、いずれにせよ数字に強い人がプロになっているはず。そんな世界においてもこの状況です。ちなみに私が在籍した東京理科大学の理学部数学科にも、オカルト派はたくさんいました。

また、麻雀漫画の影響も大きいかもしれません。特に昔の漫画はオカルト100%と言っていいくらいです。漫画でオカルト性を完全に排除してしまうと、実につまらない作品になってしまうでしょう。

漫画でオカルトが誇張されるのは、仕方ないのかもしれません。漫画の影響で麻雀ファンになった人は、きっとオカルト的なものを前提として麻雀を打つようになるでしょう。それで広まってしまった面もあるかもしれません。

■結果は過去のもので未来に影響しないもの

「流れ」という言葉も曖昧です。「結果の偏り」のことを「流れ」と言うならば、流れは存在します。だからといって、「未来も、その流れが続く」ということは絶対にありません。

小林剛『なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?』(飛鳥新社)
小林剛『なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?』(飛鳥新社)

注意していただきたいのは、私はここで決して「麻雀には流れはない」と言っているわけではないことです。流れはもちろんあるとして、麻雀の対局と対局との間にその因果関係がない、ということを伝えたいのです。

たとえばプロ野球の巨人対阪神の3連戦で、阪神が初戦を勝ったとしましょう。だからといって、2戦目、3戦目に阪神が勝つ確率が高まるわけではありません。もちろん、勝って士気が上がったり、自信がついたりして、動きがよくなることもあるでしょう。

しかし、3戦はそれぞれの確率で、個別に勝ち負けが決まるので、一緒くたに考えるべきではありません。一戦一戦、目の前の一球に対してベストな判断をし、一歩ずつ勝ちに近づいていくことしかできないのです。

これは、サイコロを転がしているのと同じです。何度転がそうが、それぞれの目が出る確率はいつも6分の1です。仮に同じ目が続いて出たとしても、次にその目が出る確率が上がったり、下がったりするようなことはありません。

たくさんのサイコロ
写真=iStock.com/Baiaz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Baiaz

1回1回の「サイコロを振る」という行為の間には、因果関係がないからです。これを統計の世界では「独立した事象」などといいます。

たまたま悪い偶然が繰り返し起こる、あるいはよい偶然が繰り返し起こる。

これは確率的にはわずかであっても、起こりうる現象です。起こった「結果」が偏ったとしても、それは過去の出来事であって、この先の現象を予定するものではありません。

そのようなもののために、強気になりすぎたり、逆に弱気になりすぎてしまって、ベストな選択がとれないようでは、ビジネスでも人生でも、勝利は遠のきます。

ですから、どんな結果が起ころうが、心を揺らす必要はないのです。それを理解したときに、きっとあなたのメンタルは強くなるのだと思います。

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小林 剛(こばやし・ごう)
麻雀プロ
1976年生まれ、東京都八王子市出身。麻雀界最高峰の「Mリーグ」2019年シーズンにおいて所属するU-NEXT Piratesを優勝に導き、2020シーズンでは個人賞の4着回避率で首位に。個人では、所属する麻将連合の最高タイトル「将王」を3度にわたり獲得。ほかにも、トッププロが集う「RTDリーグ2018」優勝、オンライン麻雀の最高位「天鳳名人位」を2度獲得するなど、麻雀界屈指の実力をもつ。著書に『スーパーデジタル麻雀』(竹書房)、監修に『アガリ率5%アップ 何切る』(竹書房、竹内隆之 著)、共著に『麻雀技術の教科書』シリーズ(池田書店、井出洋介)などがある。

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(麻雀プロ 小林 剛)

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