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「あいつは使えないから」そんな言葉遣いが周囲を嫌な気持ちにさせる本当の理由

プレジデントオンライン / 2021年10月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

「あいつは使えないから」。そんな言葉で他人を評価する人がいる。心理カウンセラーの五百田達成氏は「なぜモヤモヤするのかといえば、それは『人を道具扱いしている』から。ひとりの人間をつかまえて、『機能的かどうか』『自分にとって使い道があるかどうか』だけで判断し、それを声高に主張する。それは寒い考え方だ」という――。

※本稿は、五百田達成『繊細な人 鈍感な人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■「神目線」の分析に歯止めが効かない人たち

1.あいつは無能だから
4コマ「あいつは無能だから」
マンガ・イラスト=りゃんよ

「あいつってけっこう優秀だよね」
「確かに。それにひきかえあいつはダメだな、ホント無能」

職場の片隅や飲み会でこんな会話が聞こえてきたら、どう感じますか? 私なら、なんだかゾワゾワします。たとえほめているのだとしても、どこか血の通っていない冷たい響きに怖くなるからです。

自分の話じゃなくても、知ってる人の名前が出てくると「一方的に決めつけられてかわいそう」と悲しくなったり、「私も知らないところで言われてるのかな」と不安になったりしませんか?

優秀・無能、できる・できない。これらは人を「評価する」言葉です。評価とは、自分のことを棚に上げて他人のことを好き勝手に言うこと。「神目線」で一方的に分析すること。ですからある種の人は「評価」が大好きです。仲間内で好き勝手に言い合っては悦に入る。気持ちよくなってしまって歯止めが効かない状態ですね。

もちろん上司や人事部が社員を評価するのは悪いことではありません。それは彼らのお仕事ですから。でもそういう人たちは人に聞こえるようにウワサ話をしたりは絶対にしません。人目もはばからず同僚をジャッジする人たちは、モラルも常識も欠けているというわけ。

■ウワサ話はドラッグのようなもの

同じウワサ話でも、これが個人的な感想ならまだいいのです。

「彼はいつもいいタイミングでサポートしてくれるから、助かる」
「あいつ、ま〜た報告しないで抱え込んでるんだよ。困るんだよな」

そこには血が通っているし「あくまで主観」とお互いがわかっているから。いわゆる「Iメッセージ」ですね。

そうではなく、この人たちはまるで「周知の事実」かのように言い切るのも特徴。なぜなら、そのほうが「オレはそうは思わないけどな」と反論されにくいから。安全だから。ネットでもよく見かける、ずるいコミュニケーションです。

毎日こんな話を聞いていたら、あなたの心には確実にダメージがたまっていきます。心が冷たくなったら、すかさずその場を離れましょう。ちょっと休憩でもして、ダメージを回避してから席に戻ります。

間違ってもそんなうわさ話に乗ってはいけませんよ。ドラッグと同じで、そこは闇の世界への入り口ですからね。

■ネットで話題になった「母親ならポテサラくらい作れ」論争

2.○○なんだから
4コマ「○○なんだから」
マンガ・イラスト=りゃんよ

少し前に世を騒がせた「ポテサラ論争」。覚えているでしょうか?

ある女性が子どもと一緒にお惣菜のポテトサラダを選んでいたら、見知らぬ人から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われた、という話でした。

SNS上では「『ぐらい』って何? つくるのけっこう大変なんだから」などさまざまな批判が集まったわけですが、この発言の一番寒いところは「母親=料理をするもの」という「らしさの決めつけ」でした。

あなたもきっとこれまでの人生で「らしさ」を押しつけられてきた経験があるでしょう。「女の子なんだから部屋くらい片づけなさい」「新人なんだからお茶くみぐらいしろ」……。そのたびに、「確かにそうかも」と従ってしまう自分と、「イヤだ」と反発する自分が、頭の中でせめぎあったのではないでしょうか?

「らしさ」というのはなかなか厄介です。男らしさ、女らしさ、子どもらしさ、大人らしさ……。その属性ごとの特徴・傾向はあるかもしれませんが、もちろん絶対ではありません。当たり前ですが人によります。

そう、この「人それぞれ」を許さない雑な圧力こそが「らしさ」の正体なんです。

人はそれを「偏見」と呼んだりもしますし、「同調圧力」の変形バージョンとも言えます。

■相手の個性を無視する行い

私の知人が南米の友人と食事したとき、彼がお酒を飲めないのに驚き、つい「えっ、ラテン系なのに?」と言ったそうです。すると彼は笑って「じゃあ、『アフリカ系なら全員リズム感いい』って、本気で思ってるの?」とたしなめてきたのだとか。

同様に「女の子=整頓」「新人=お茶くみ」というのも、よく考えるとまったく関係がありません。雑なカテゴリーに押し込めることは、ただでさえ相手の個性を無視する行い。ましてや「こうしろ、ああしろ」と行動を押しつけるのは最悪です。

もし「らしさ」を押しつけられたら、すぐに「○○がみんな○○するわけじゃないよ」と、心の中で正論を唱えてきちんと抵抗しましょう。仮に片づけをするにしてもあなた自身がしたいと思ったからであって、決して「女の子だから」ではない……。

毎回「それとこれは関係ないからね」ときちんと頭の中で確認しないと、本当の「あなたらしさ」がどんどん損なわれてしまいます。

■「人を道具扱いする」寒い考え方

3.使えない
4コマ「使えない」
マンガ・イラスト=りゃんよ

「あいつ、ほんと使えないんだよな」
「わかる。それにひきかえ、あいつはまあまあ使える」

……聞くだけで気持ちがザラッとするいやな言葉ですよね。自分が言われたら傷つくし、誰かがそう言われているのを聞くのだって不快です。

なぜモヤモヤするのかというと、「人を道具扱いしている」から。ひとりの人間をつかまえて、「機能的かどうか」「自分にとって使い道があるかどうか」だけで判断し、それを声高に主張する。自分はあくまで「使う」側だと周囲にアピールする。

「生産性のある人・ない人」という政治家の発言がしばしば問題になりますが、これなども人に対して「生み出す機能を持っている・いない」線引きをする考え方。

人を道具と見なしている点、自分は管理する立場であることをアピールしている点、どれをとっても「使える・使えない」と同じ、寒い考え方です。

会社員をやっていると、こうした「利益を生み出す人・生み出さない人」という尺度を当てはめられることは多々あります。会社に貢献できなければ存在価値がないかのような錯覚に陥ることもあるでしょう。繊細な人であれば「ちゃんと役に立たないと!」「使える人材になろう!」と自分を追い詰めることもあるかもしれません(この「人材」という言葉もまた、道具っぽくて気になりますが)。

■世の中の数ある考え方のひとつに過ぎない

ですが、それは世の中にあるたくさんの考え方のひとつに過ぎません。

そうですねー、右側通行か左側通行か、ぐらいのことです。右側を歩く人が多い中でたまたま左側を歩いたからといって、人として否定されるいわれ、ないですよね?

「使える人」になる必要なんてありません。「使う側」になる必要もありません。使うとか・使わないとか、そういうのじゃないところにこそ、あなたという人間のすばらしさはあるのです。

「使える・使えない」の話が耳に入ったら、「わー、よくわからない話だなあ」「宇宙人の会話かな?」ぐらいに聞き流しましょう。

■「私は親切だ」という雰囲気

4.君のためを思って
4コマ「君のためを思って」
マンガ・イラスト=りゃんよ

「営業職なら、絶対この本読んだほうがいいよ。読んでないとかあり得ないから」
「えー! ウニ食べられないなんて、人生の半分損してるー」

……親しくもない人からいきなりこう言われると、気持ちがザワザワしませんか?

急かされているような、責められているような居心地の悪い気分。正直、「放っておいてほしいな」と思いますよね。でもこういう人に限って、放っておいてくれないんです。

「いや、君のためを思って言ってるんだよ」
「悪いことは言わないから、試してみなよ」

と、あたかも「あなたのために言ってる私は親切だ」という雰囲気を出してきます。そうすると、あなたも「せっかくの親切をスルーしちゃいけない……?」と自分を責めてしまったり。

■ただのエセ親切押しつけに過ぎない

でもですね! こういう人って別に、親切で言ってるわけではないんです。単に言いたいだけ。単に自分の好み・感想を押しつけたいだけ。それなのにまるで「親切アドバイス風」に言ってくるから、モヤモヤしてしまうんです。

五百田達成『繊細な人 鈍感な人』(PHP研究所)
五百田達成『繊細な人 鈍感な人』(PHP研究所)

それならいっそのこと、

「一緒に語りたいから、この本読んで、お願い!」
「ほんとに美味しいから、このウニ食べてみて! 頼む」

ってまっすぐ言われたほうがよほどスッキリしますよね! そうしたら「じゃあ、試しに……」とうなずく気にもなります。

ですから、もしこの手の「エセ親切押しつけ」に遭遇したら、すかさず心の中でこう唱えましょう。

「あ、はい、それって、あなたの感想ですよね」
「へー、あなたはそうなんですね。でも、私はそうじゃないんですー」

よく、健康食品のCMで「個人の感想です」っていうテロップ出てきますよね。あれです。あれを相手の顔の下にこっそり表示するイメージ。するととたんに、「あやしい……」と思えて、「あ、だいじょうぶです」と言えるでしょう。断るときにも心が痛まないはずです!

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五百田 達成(いおた・たつなり)
作家・心理カウンセラー
1973年生まれ。東京大学卒業後、角川書店、博報堂をへて独立。コミュニケーションをテーマに執筆・講演を行う。『察しない男 説明しない女』ほか著書多数。

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(作家・心理カウンセラー 五百田 達成)

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