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知らないと確実に損をする…「ネットカフェのパック料金」で考える"期待値"の算出方法

プレジデントオンライン / 2021年10月8日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zhang Rong

あなたは「期待値」という概念を正しく理解できているだろうか。塾講師の鍵本聡さんは「期待値とは、1回の試行で得られる値の平均値のこと。期待値を使えば、インターネットカフェで『最もお得な料金プラン』を選ぶこともできる。数学的に考える習慣を身につけておけば、長い人生では確実に得をするはずだ」という――。

※本稿は、鍵本聡『世の中は期待値でできている』(MdN)の一部を再編集したものです。

■料金表はけっこう複雑

みなさんは、インターネットカフェを利用したことはありますか? 私は、以前よく利用しました。

通称「ネカフェ」には、なんでもあるんですよね。パソコンは使い放題。マンガや雑誌はもちろん、フリードリンクのサービスがついていたり、お店によってはアイスクリームなんかもあって、加えて、シャワーが完備している施設も多くあり、宿泊も可能です。一言でいうと「至れり尽くせり」な場所です。

で、料金はというと……これが、けっこう複雑なことがあります。行かれたことがある方は、みなさんご存じかもしれませんが、基本料金と「○○時間パック」のどちらかを選択する必要があったりします。

ここで、実際にあるネカフェの料金表を【図表1】に載せてみました。座席によって値段も違っていたりして、さらに複雑なシステムのところもありますが、今回は次の設定の料金で考えてみます。

【図表1】インターネットカフェの料金表
出所=『世の中は期待値でできている』

目がクラクラしそうですね。

そこで、これらを1時間あたりの料金にしてみましょう(図表2)。

【図表2】インターネットカフェの料金表(1時間あたり)
出所=『世の中は期待値でできている』

まあ当たり前のことですが、傾向でいうと、

・長い時間いればいるほど、1時間あたりの値段が安い
・夜間受付したパックのほうが若干値段が高い

というわけですね。

ここまでの話だと、普通に電卓を叩けばどのパックがお得か単純にわかる話ですが、ここからは少し難しいことを考えてみましょう。

「何時間滞在予定なのかわからない場合は、どれを選べばいいの?」

というシミュレーションです。

■滞在時間を1~10時間の10通りとして考える

例えば今が午前9時だとして、あなたは友人の就職面接が終わるのをネカフェで待つことにしました。その友人の面接は、早かったら1時間ほどで終わりますが、もしかすると10時間かかるかもしれません。果たして、どのパックにしたらいいでしょう?

とりあえず【図表2】のパックのうち、関係のある料金だけをもう一度おさらいしましょう。

【図表3】インターネットカフェの料金表(1時間あたり)の一部
出所=『世の中は期待値でできている』

この場合、実はかなり計算が複雑になるので、問題を少し単純にしたいと思います。

友人が戻ってくる時間は、1時間~10時間の10通りとしましょう。

この場合、次の6通りの戦略を考えます。

(1)基本料金のみ
(2)最初は3時間パックを1回使い、あとは基本料金
(3)3時間パックをくり返し、最後の1時間だけ基本料金
(4)最初は6時間パックを1回使い、あとは基本料金
(5)最初は6時間パックを1回、次に3時間パックを1回使い、あとは基本料金
(6)最初から12時間パック

それぞれの時間で、各パック料金を使ったらどうなるかを考えてみます。【図表4】は1時間あたりの料金で、*はその時間の最安値です。

【図表4】インターネットカフェの料金比較(1時間あたり)
出所=『世の中は期待値でできている』

■「最初はパック、あとは基本料金で延長」がおすすめ

計算式はすごく複雑なので、表計算ソフトを使いましたが、こんなシミュレーションとなります。

この傾向から見えることは、パックをくり返し使うよりは、パックを最初の1回だけ使って、残りは基本料金という方策が意外と悪くないということです。

パック料金は割引率が高いので、例えば6時間パックを5時間で使っても安いし、逆に7時間、8時間の場合は、その分を基本料金で延長しても、そこそこ安い料金でいけるということです。

ある程度時間が読めるけど若干幅があるという場合は、とりあえず最初はパック、あとは基本料金で延長という手がよさそうです。

逆に最安値とはいきませんが、おおよその時間が読めなくて困っているときは、3時間パックをくり返す手も悪くないようです。

ただし、1時間でお友達が戻ってきたら大損するということだけは覚悟しておいてください。1時間で戻ってくることがあり得ないのであれば、使えそうですね。

■期待値を計算するために必要なもの

こうした計算をする習慣を身につけておくことは、長い人生で換算すると相当にお得になるはずです。

今回はネカフェを例にしましたが、カラオケボックスやボウリング場などのパック料金でも知っておいて損はしない知識です。

ただし、パック料金の割引率にもよるので、そこはご注意ください。最近は自動切替制で最安値の料金で利用できるチェーン店も増えていますが、よく行くお店があるのであれば、一度、料金表を先ほどのように研究して、表計算ソフトでシミュレーションするのもいいと思います。

コンピュータルーム
写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

さて、「期待値」が実生活で役に立つ例を挙げてみましたが、期待値の概念がいかに大切かといわれても、「それがなかなか計算できないのだ」と思っている人は多いかもしれません。

実は期待値を計算するためには、ちょっとしたバランス感覚と割り切りのようなものが必要です。

どういうことかというと、期待値を計算するためには、次の作業が必要になります。

1:まず起こりうるすべての場合を列挙する
2:それぞれの場合について起こりうる確率を計算する
3:さらにそれぞれの場合について得られる(損をする)値段や値を計算する
4:それらから期待値を計算する

この中の特に2が難しいとされています。

期待値をさっと計算できるためには、確率をそこそこ正確に計算できるか、が鍵なわけです。

■ビジネスでは必ず数学が必要になる

高校時代に「文系」を選択した人は「理系」の人に比べて、2や3の部分の問題練習量が圧倒的に少なくなります。これが期待値の概念を知るという上での「文系」と「理系」の差だということもできます。

たとえ、あなたが、「昔から数学が苦手で……」と、理系の領域から逃げてきたとしても、ビジネスの世界では逃げてばかりはいられません。「できるだけ素早く」かつ「正確に」判断を下すことが必須になることが多々あります。

例えばある商品の価格をいち早く発表したほうが、競合他社よりも優位に立てるというようなケースは数多くあります。

そして、仮に先に発表できた場合でも、適正な価格を出せないと、安すぎて大損をしたり、逆に高すぎてぜんぜん売れなかったり、という結果になることも考えられるわけです。

つまり、売上を最大にするための適正価格をさっと決断できる能力が、ビジネスマンには求められるわけです。

そもそも最大最小問題は、高校数学の一番重要なトピックでもありますが、さまざまな関数で最大最小を求めさせる練習をしていないと、その発想にも至らない可能性さえあります。

鍵本聡『世の中は期待値でできている』(MdN)
鍵本聡『世の中は期待値でできている』(MdN)

例えば、たまたま原価が1個3円の商品を大量に輸入することになって、自社の店舗で売りさばかないといけないとしましょう。原価が安いので、価格をいくらにしたらいいのかまったく見当がつきません。

街の商店やインターネットなどで、その商品がいくらで販売されているか調査することは可能です。ただし、それらと同じ値段では誰も買ってくれそうにありません。もちろん安くしたらみんな飛びつくでしょうが、あまり安すぎると儲けが少なくなります。このように価格の設定というのは、想像するより難しいものです。

こういうときに、頭のなかに「上に凸な放物線」のような図が描けているだけでもかなり考えやすいのですが、それはやはり「理系」の選択者ならではの発想です。

とはいえ、高校時代や大学時代に数学を避けてきた人でも、ビジネスでは必ず数学が出現します。

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鍵本 聡(かぎもと・さとし)
KSP理数学院 代表講師
1966年、兵庫県西宮市生まれ。京都大学理学部、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修了、工学博士。ローランド(電子楽器開発)、高校教員、予備校講師などを経て、現在は関西学院大学、大阪芸術大学、大阪女子学院大学などで非常勤講師として教鞭をとる。同時に学習塾「KSP理学院」を大阪で運営、中学高校生を対象に算数・数学教育および大学進学サポートに最前線で携わる。教育関連の講演も多数。20万部超のベストセラー『計算力を強くする』シリーズをはじめ、『高校数学とっておき勉強法』『理系志望のための高校生活ガイド』(以上、講談社ブルーバックス)など著書多数。

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(KSP理数学院 代表講師 鍵本 聡)

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