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「自己申告データは役に立たない」マッチングサービスの相性予測がアテにならない理由

プレジデントオンライン / 2021年10月13日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

相性の予測から不倫する可能性まで、最近の研究はパートナーシップについてどこまで解明できているのでしょうか。脳科学が専門の細田千尋さんは「マッチングサービスが提供する相性予測システムに科学的妥当性はないことがほとんどでした。しかし、最近の研究で脳の状態から相性が予測できることがわかりました」といいます――。

■相性予測システムのほとんどは科学的妥当性がない

夫婦やカップルなど形は色々ですが、パートナーの存在は、個人の状態に大きな影響を及ぼします。最近の研究から、相性の良さは脳から予測できることが明らかになっています。また、パートナーと安定した関係を築くために必要なホルモンやその出し方、裏切り(不倫や浮気)が生まれる要因は何かなどについて、科学的に検証されていることはたくさんあります。

相性の良いパートナーを見つけることは人生で最も重要なのに、最も難しいことの一つです。最近のマッチング業界では、利用者の自己申告による心理テスト結果や、場合によっては遺伝子情報から相性予測システムを提供しているサービスもあります。ところが、それらのシステムに科学的妥当性はないことがほとんどで、実際に100以上の自己報告データを用いても異性間の相性を予測することはできないことを、心理学研究が示していました。

■脳の状態から相性を予測する実験

一方で最近、脳の状態から相性が予測できることがわかりました。この実験では、まず、脳の機能の状態(ぼーっとしているときに脳のどことどこの場所が同じように活動しているかという脳の機能連結の状態)をMRIで撮像します。その後、集団お見合いのように、3分間ずつ異性と会話をしていき、全員と話し終えた後、もう一度話したいと思う異性を選んでもらいました。その結果、もう一度話したいと思うかどうかは、異性と会話をする前の脳の機能的結合のプロファイルがどのくらい似ていたか、という情報から予測することができたのです。

つまり、会う前の脳の状態を見れば、好みかどうかを事前に知ることができるという衝撃的な結果です。脳のMRI検査が気軽にできるようになれば、自分の「脳パスポート」として持って、相手を探せる時代が来るかもしれません。ただし、脳は可塑性を持ち、大人になってからも機能や構造が変化します。そのため、好みや相性が変わることには注意が必要です。

■遺伝子レベルでの相性

遺伝子レベルで男女の相性が決まるという話はよく知られています。今やとても有名な実験に、スイス・ベルン大学のTシャツの実験があります。この実験では、男子学生に2晩、同じTシャツを着て寝かせ、翌日女子学生にそのTシャツの匂いをかがせます。そして、好き嫌いを採点してもらうのですが、HLAという遺伝子の型が似ていれば似ているほど、相手への採点が低くなりました。

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写真=iStock.com/Doucefleur
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Doucefleur

逆に、型が遠いほど、高感度が高かったのです。HLAとは、多くの細胞と体液に分布し、自己と非自己の識別をする重要な免疫機構として働いているものです。HLAが免疫にかかわる遺伝子なので、遺伝子は多様であるほど感染症などに対して強くなるといったメリットがあります。そのため、無意識的に、自分とは異なるタイプの遺伝子を好むものとされています。

■日本の女性が不倫をする理由

パートナーとの関係性を維持するのに、最も重要なことの一つがコミットメントです。この場合のコミットメントとは、その関係性に対する投資量です。関係性の充足感や投資量が高く、投資対象外の選択肢(つまりパートナーとの関係性以外の物事)の価値が低い場合、投資対象に対して強いコミットメントをもっている状態、ということが言えます。

具体的には、会話頻度、育児や家事頻度、セックス頻度などから、パートナーとの関係やパートナーとの時間に対する満足度や投資量が高ければ、関係性は安定し、浮気、不倫も減る、ということがわかっています。ところが、これは海外の研究成果であって、日本で同じことを調査するとこの関係性(夫婦間のコミットと不倫率や満足度の関連)が再現されません。これについては、日本人女性には「諦め」が機能するからという悲しい考察がされています。

日本の夫婦は、パートナーとの関係から得られる満足感と、結婚の機能的な側面(必要性のようなもの)を切り離している。つまり、結婚の経済的必要性や、心理的必要性(結婚しているというステータスへの固執)、離婚や再婚の“面倒くささ”が、結婚を維持しようとする態度につながるという考え方です。これは海外の知見では見られません。

そのため、日本ではパートナーのコミットの低さがダイレクトに不倫率の高さに影響しません。おそらく日本人男性ほどコミットが低いと、海外ではもっと不倫されてもおかしくないはずなのです。

それでも不倫をする日本人女性は一定数存在します。自己申告をしているだけでも40代女性の15%程度が不倫をしているという調査結果があります(日本老年行動科学会が2011年1月から12年12月にかけて関東圏在住の40歳から79歳までの男404人、女452人に調査)。日本特有の夫婦関係のあり方を背景に結婚は維持しつつも、育児がある程度ひと段落した段階で、より優秀な遺伝子を残したいという本能があるからだという考察がされています。

■男性はテストステロンが下がると育児にコミットする

男性の主なホルモンに、性衝動にも関わるホルモン、テストステロンがあります。624人の独身男性をターゲットに、その後の結婚などまで長期的に調査をした研究があります。その結果、独身の時に計測した初期のテストステロンレベルが高いほど、将来父親になる可能性が高いことがわかりました。面白いのは、一度父親になると、彼らのテストステロンは大幅に減少し、4年間で30%減少したのです。

これは、同年代の子供のいない男性に比べて、2倍以上の減少で、新生児のいる男性の場合は特に減少が顕著でした。そして、子供の世話を1日に3時間以上している男性は、育児に関与しない男性よりテストステロンが20%少ないことも示されています。つまり、産後の赤ちゃんの世話をする最も大変な時、男性のテストステロンが減少していることが、育児へのコミットをあげる重要な要素だということです。

■「子孫を多く残すためではない」不倫の真の原因

不義理な男性がよく、「男性は生物学的に子孫を多く残したい本能がある」と言っているのを聞きますが、これは、実は理にかなっていません。確かに、生物学上、どれだけ子供を残せるかは、勝ち組かどうかを決める大きな要因です。ただしこれは、子供が成長するスピードが早く、養育期間が短いからこそ合理的に成立する話です。人の場合は、不倫によって遺伝子をあちこちにばらまくより、特定のパートナーに寄り添ったほうが、遺伝子をきちんと残せる確率が圧倒的に高いわけです。なぜなら、人は、成人まで18~20年必要で、家を空けてフラフラあちこちで子どもをつくっていたら、結局、生活費や養育費が枯渇し、パートナーも取られる可能性が上がります。

ただ、動物実験から、そのような不義理をはたらいてしまう原因が見つかっています。それは、ヴァソプレッシンというのは脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種の受容体量です。これは、性行為などによって脳に多く分泌されます。一夫一妻をとるプレーリーハタネズミは、ヴァソプレッシン受容体量が多く、パートナーとの愛着を形成する一方、ヴァソプレッシン受容体量が少ないタイプのサンガクハタネズミは、メスへの愛着が少なく、次々と浮気するのです。面白いことに、一夫多妻のサンガクハタネズミのヴァソプレッシン受容体の量を増やせば一夫一妻になる(一人の相手だけにコミットする)のです。また、この受容体量は、浮気だけでなく、空間的な記憶力にも関係していることが示され、浮気してしまう人は、自分のいるべきテリトリー、入ってはいけないテリトリーがわからなくなってしまっているのかもしれません。

■関係性を改善するために今すぐできること

ヴァソプレッシン受容体の量は自分ではコントロールできませんが、パートナーとの関係性をよくするのに必要不可欠な、幸福ホルモンとも呼ばれる、オキシトシンは、自分たちで多少コントロールすることができます。

ハグや添い寝やマッサージなどのスキンシップでオキシトシンが分泌されることは有名ですが、単純に目を見て会話をするだけでもオキシトシンが分泌されるという報告もあります。また面白い実験で、オキシトシンを実験的に、鼻から噴霧したのちに、パートナーを見ると、脳の中で報酬系の回路(熱い恋愛中の時などに活性する場所)がとてもよく活性化することが示されています。これは、パートナー以外の人には効果がなく、パートナーを見たときだけに見られる現象でした。

また、通常熱愛中には、ドーパミンが出ているのですが、20年以上夫婦でいて相手への満足度やコミットが高い夫婦では、このドーパミン(通常数年で同じ刺激に対しては出なくなると言われている)とオキシトシン両方がよく分泌されているという報告もあります。

パートナーとの出会い、交際や結婚生活、浮気/不倫まで、自分の意思で行なっていると思っているものも実は、脳の勘違いやホルモンの作用によって左右されている可能性を多くの研究が示しています。その一方で、パートナーの目を見て話す時間を必ず設けるなど、意識的に行うことも、円滑な関係を長期的に続けていくには重要なのです。

<参考文献>
・Kajimura S, Ito A, Izuma K. Brain Knows Who Is on the Same Wavelength: Resting-State Connectivity Can Predict Compatibility of a Female-Male Relationship. Cereb Cortex. 2021 Jun 18:bhab143.
・Joel S, Eastwick PW, Finkel EJ. Is Romantic Desire Predictable? Machine Learning Applied to Initial Romantic Attraction. Psychol Sci. 2017 Oct;28(10):1478-1489.
・Ober C, Weitkamp LR, Cox N, Dytch H, Kostyu D, Elias S. HLA and mate choice in humans. Am J Hum Genet. 1997 Sep;61(3):497-504.
・Gettler LT, McDade TW, Feranil AB, Kuzawa CW. Longitudinal evidence that fatherhood decreases testosterone in human males. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Sep 27;108(39):16194-9
・Pitkow LJ, Sharer CA, Ren X, Insel TR, Terwilliger EF, Young LJ. Facilitation of affiliation and pair-bond formation by vasopressin receptor gene transfer into the ventral forebrain of a monogamous vole. J Neurosci. 2001 Sep 15;21(18):7392-6.
・Scheele D, Wille A, Kendrick KM, Stoffel-Wagner B, Becker B, Güntürkün O, Maier W, Hurlemann R. Oxytocin enhances brain reward system responses in men viewing the face of their female partner. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Dec 10;110(50):20308-13.

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細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
博士(医学)
帝京大学先端総合研究機構内にて細田研究室を主催。東京大学大学院総合文化研究科研究員兼任。細田研究室では、素質個人差や、やり抜く力などの個人特性を脳特徴量から定量化し、BRAIN x IOT インタラクションによる、新しいオーダーメイド生涯目標達成支援法の開発とその元となる基礎研究を実施。企業等との産学連携研究も多数実施。内閣補正予算により決定され2021年度から開始された、日本の破壊的なイノベーションに繋がる研究成果を生み出すための「創発的研究支援事業」において全国から採択された約250名の研究者のうちの一人。

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(博士(医学) 細田 千尋)

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