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「俳優・香川照之の起用は大正解」朝の情報番組でジャニーズを見たくない人はTBSの新番組がいい

プレジデントオンライン / 2021年10月15日 9時15分

TBSテレビのウェブサイトより

TBSの新情報番組「THE TIME,」(月~金曜午前5時20分~8時)が10月1日から始まった。ライターの吉田潮さんは「月~木曜は人気アナの安住伸一郎、金曜は俳優の香川照之を司会に起用するという判断は、同時間帯の他局と比べてみると、戦略的に正解だったように思う」という——。

■安住と香川の投入は戦略的に正しかったのか検証する

数カ月前から話題になっていた。TBSが朝の番組で大勝負に出る、と。

人気アナウンサーの安住紳一郎と俳優の香川照之を投入すると大々的に打ち上げたのだ。紆余曲折あっての禊をすませ、有吉弘行と結婚し、芸能界を引退した夏目三久の「あさチャン!」の後番組だという。

その名も「THE TIME,」。

放送事故や舌禍を迅速かつ穏やかに回収することで呼び声の高い安住アナが朝の顔に……。

しかも、昆虫やボクシングについて豊富な知識と情報をしゃべり倒すことで有名な香川までもが朝の顔に……。

TBSの戦略は正しかったかどうか検証してみよう。

そもそも朝5時台から始まる情報番組(民放キー局)がどんな特性をもつのか、おさらいしておく。

■日テレの「ZIP!」のスタジオには偽善しかない

まず日テレの「ZIP!」。今年の春から水卜麻美をメインに据え、10年の歴史と人気を維持。ファストフードやコンビニの新商品やインスタ映えスポットをこぞって紹介するあたり、他局よりも若年層狙いが明らかだ。

生中継のコーナーもわずかではあるが、存在する。系列局のアナウンサーが地元の情報をこぎれいにまとめて伝えるものの、往年の「ズームイン‼朝!」ほどの土着感と臨場感はない。

曜日パーソナリティーに新しく投入したのが、よりによってDAIGO。相変わらず紹介時に竹下登の写真が登場するのだが、「プレミアム社会科見学」と称して、子育て世代へのイクメンアピール企画を担当。皮のグローブを外して、グレーのスーツを着ていると普通におっさんなんだなと妙な安心感も。

なんつってもジャニーズ事務所まみれ、というか、King & Prince推しが甚だしい。キンプリファンは毎朝確実に楽しめる至福の番組。報道そっちのけの朝番組としては群を抜いて潔い。とにかくキンプリ、何が起きてもジャニーズ枠を最優先。

芸人や俳優を週替わりのパーソナリティーに呼び、エンタメ情報に時間を割く傾向も強い。

スタジオには偽善しかない。中身のないコメント、台本通りにうわっつらだけで対話するスタジオの空気は穏やかで、爽やかな早朝にふさわしい。

■意外と報道魂が感じられる「めざましテレビ」

次に、フジテレビの「めざましテレビ」だ。キリのいい時刻に必ず星座占いで今日の運勢をやっているので、これをルーティンにしている人も少なくない。

月替わりプレゼンテーターとして若手俳優やアーティストを迎えているので、意外とコアなファン層がチェックしているかも。そう書くと、フジテレビらしいチャラい印象がするかもしれないが、意外と報道ベース。

時間が限られた朝番組で伝えるニュースは、たいてい大ネタがメイン。しかも5時台、6時台、7時台に同じモノを入れる。

他局が「岸田内閣」「ノーベル賞」「震度5強の地震」をメインに据え、小さなニュースを割愛する中で、めざましテレビには報道の魂が垣間見える。「大河俳優わいせつ罪」とか「高級ようかん窃盗の瞬間」とかね。横並びの大ネタよりも香ばしい小ネタも報じる姿勢、嫌いじゃない。

あとは交通機関の運休など重要な情報は、アナウンサーの顔そっちのけで、ドデカ文字で知らせるところもいい。他局は小さく流し込んだり、手書きもあった。フジテレビの印象からすると意外でしょ? でもひそかに優しい。

ジャニーズ事務所に魂を切り売りしたコーナーもあるが、ロケ敢行など汗かいて作っている。日テレほど盲従大安売りではない。

エンタメ多め・ネタも若めだが、ニュースの幅広さと三宅正治アナの重鎮感で相殺。以前はトップを走る人気番組だったが、ややくたびれた感も否めず。全国的に猫ブームの令和にあえて「きょうのわんこ」を貫くあたりは「継続は力なり」として評価したいところ。

■「グッド!モーニング」が高齢者に人気なのにはワケがある

さて、年寄り(私)が大好きなテレ朝は「グッド!モーニング」は最も地味で話題になりにくいが、固定客が付いている限り盤石(固定客が生きているうちはな)。

熟年ベテランの坪井直樹&飯村真一アナ、そしてお天気は生中継で観光地紹介も兼務する依田司という安定感。この顔ぶれ、何十年も画面で観ている気がする。

他局よりもスポーツ、特にプロ野球へのこだわりは強い。日替わりで元アスリートのスポーツコメンテーターを呼んでいるのはここだけ。

往年の「やじうまワイド」的手法、つまり新聞各紙の見出しと記事を紹介するコーナーも短めだが健在(あれ、身を粉にし足を棒にして記者が書いた記事をしれっとテレビでかっさらう割に、新聞社へのペイが雀の涙と聞いたことがあり、阿漕やなと思った記憶が)。

ただし、掘り下げるネタは他局と比べて知的水準が高め。ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏のニュースは、他局が周辺取材に重きを置く中、気候モデルを真面目に解説していたもんね。他局のように「どうせ解説してもわかんねーからスルー」とはしなかった。視聴者をナメていない証拠でもある。

テレビ朝日のグッド!モーニングウェブサイトより
テレビ朝日のウェブサイトより

また、ニュースも他局に比べてワールドワイド。フランスのカトリック教会での性的虐待や中国でのドローン大量落下など、他局が落とすネタもそれなりに拾う。

意外と強いのは、被害者目線のニュースネタ。主に監視カメラやドライブレコーダーの映像を基に、被害の状況を訴えるニュースが多め。店先の鉢植えを蹴り落されたとか煽り運転でひどい目に遭ったとか、個人的な訴えを真摯にすくう傾向も。ほら、年寄りは「義憤」が大好きだからね……。

エンタメは日テレとフジに比べれば弱め。キリのいい時間にはドラえもんとクレヨンしんちゃんに頼るものの、功を奏してない。

唯一、若い情報担当の新井恵理那アナのコーナー「新井恵理那のあら、いーな!」が奮闘。

つっても他局もやっている新商品紹介なのだが、注目したいのはテレ朝アナウンサーが駆り出されて小芝居をうつ点ね。商品紹介のために小芝居させられるアナウンサーたちの心の闇をおもんぱかる数分間。

■他局と大きな差をつけた「THE TIME,」の特徴

そこにTBSがぶちこんだのが「THE TIME,」だ。大きな特徴は3つある。

まず、気象情報に力を入れている。スタジオ内はタイムラボと呼ばれるブースがあり、17人の気象予報士が在籍、3人以上はスタジオに常駐。巨大スクリーンを配置、全国54カ所のライブカメラとつなぐ(NASAともつながってるらしい)。

次に、系列局との生中継を毎日2カ所つなぐ点。各地の情報を系列局のベテランアナウンサー(意外とくせ者多し)が伝え、安住&香川がつっこむ構図。秒刻みの時間配分で生中継となると、ハプニングやトラブルも想定される。

これを回収できるのは安住アナならでは。臨機応変に丁々発止を見せようという「賭け」である。

それだけではない。都内近郊の生中継も2チーム。東京大学法学部卒の篠原梨菜アナウンサーをメインに、近隣の朝の表情をきっちり映し出す。

生中継を多く入れることの現場の大変さを考えると、スタッフには相当の負担だ。でも、お天気キャスターか事件現場くらいの生中継しかやらない他局とは、最も大きな差である。

最後に、安住&香川というおじさんふたりの加齢臭を消すために、シマエナガのぬいぐるみキャラを使った時計を設置。他のレギュラーもかなり若手を起用。

生ピアノ演奏はYouTuberピアニストのまなまるとけいちゃん。話題にあった音楽を臨機応変に生演奏してくれる。

坂系のアイドルや新人俳優をスタジオ内のスタンドに配置し、その日発売の新商品や雑誌、トレンドを紹介。若さと新しさの追求は日テレの傾向に近いものがある(ただし、聞き手はおじさんなのでいい意味で相殺)。

生中継による「臨場感」や「地域性」を引き出すには、やはり安住無双。夜の新橋で酔客相手に腕を磨いただけある。

また、芸能事務所に媚びたがために対話がうわっつらになりがちなスタジオに、やんわりと毒気とツッコミを盛り、中年の悲哀を漂わせつつエンタメ性ももたらす安住は、最強の刺客となった。

■香川をはじめ俳優を多数起用する深いワケ

では香川はどうか。昆虫ネタはありだが、ボクシングネタには触れさせない巧みな構成で、圧と長広舌を封印した感はある。しかも進行は江藤愛・杉山真也・宇賀神メグの「TBSアナの3守護神」が完璧にフォロー。香川投入の意義は何なのか。

TBS放送センター
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

実は「THE TIME,」が起用したのは香川だけではない。「朝活RUN」なるコーナーでは、吉田羊や比嘉愛未を走らせて爽やかに時刻を告げる。

人材は週替わりのようだが、俳優陣を登場させることでドラマ宣伝にもつながる。

また、dボタンで生年月日を登録すると、毎朝7時にゲッターズ飯田の占いが届くらしい。このやり方を解説するために、まさかの江口のりこが登場。安住と夫婦設定で小芝居をうったのだ。

「ドラマのTBS」という矜持を改めて徹底するために、「日曜劇場」御用達の香川を囲い込み、安住が「ぴったんこカン・カン」で培った俳優人脈も取り込む。

情報番組は炎上はしてもバズることはないが、ドラマであれば広くあまねく末永く話題に上がり続ける可能性がある。そこも踏まえての俳優起用なのかもしれない。

もちろん、ただの客寄せパンダではない「モノ言う俳優枠」の拡大ともとれる。

時間帯は違うが、「めざまし8」で俳優の谷原章介が暗躍し、ネットニュースで取り上げられることも増え、謎のご意見番的存在になりつつある。

観ていなくてもネットニュースに「香川照之が○○」と見出しが打たれたら、昆虫オタクの子供たちも、ドラマ好きのおばさん(私)たちも、ボクシング好きのおじさんたちも、歌舞伎役者を愛する御贔屓筋も、うっかりクリックしちゃうもんね。

■他局にはない品ぞろえをしたTBSの戦略勝ち

天気&エンタメ重視・生中継多数・生ピアノ演奏に、おじさんコンビ。

媚びも喧嘩も売らないが刺すところは刺す安住と、話題性十分だが第二の張本勲となる危うさもうっすらはらむ香川。他局にはない品ぞろえだ。

TBSの戦略は今のところ間違ってはいない。ジャニーズ最優先のジャ日テレ、早朝から覚醒している高齢層向けのテレ朝、絞りどころが曖昧なフジが、今後この品ぞろえにどう対抗していくのか。

数字ではなく、情報の質、話題性や定着の度合いなど、1年後に判断したい。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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