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「野放しにした習近平の自業自得」34兆円債務・恒大集団が"道連れ"にするもの

プレジデントオンライン / 2021年10月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/claffra

債務総額約2兆人民元(約34兆円)を抱え、返済のめどが立たなくなっている中国の不動産大手「恒大集団」。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「恒大集団がデフォルト(債務不履行)になると、それをきっかけに、これまで習近平政権がほとんど野放しにしていた不動産のバブル崩壊が始まるおそれがある。過去の事例では、崩壊初期は多くの人がそのインパクトを過小評価しがちで、それが損害を大きくした」と警鐘を鳴らす――。

■日本円にして債務34兆、恒大危機が“道連れ”にするもの

中国の不動産大手恒大集団の債務問題が世界の注目を集めています。総額約2兆人民元(約34兆円、中国のGDPの2%程度)もの債務を抱え、その返済の資金繰りのめどがつかなくなっています。

習近平政権による「共同富裕」という、貧富の格差是正政策が恒大の業績に大きく影響を及ぼしたとのことです。今、中国の一部の都市では、一般のマンション価格が平均年収の数十倍するところまで上昇し、大きな社会問題となっています。

背景にあるのは投機資金の流入です。それを是正することも「共同富裕」の大きな目的であるため、中国政府と中央銀行である中国人民銀行は、昨年8月に大手不動産会社に対して、総資産に対する負債の比率を70%以下にすることを含めた財務指針の適用を開始しました。過剰な借入れによる不動産投資を抑制する動きに出たのです。それにより、過剰債務が懸念される恒大などの企業の資金繰りが危機的状況に陥りました。

恒大危機は、恒大への融資先のみならず、恒大が発行する理財商品(金融商品)を買っている投資家、さらには、恒大が手掛ける開発プロジェクトへの資材供給会社やマンション購入者などへの大きな影響が出ています。

恒大は、中国の230都市以上で1200以上のプロジェクトを手掛けており、債権者の中にはマンション購入契約をしてお金を払い込んだものの、建設が途中となっているケースも少なくありません。恒大の社債などを持っている国内外の投資家も戦々恐々としている状況です。

中国政府は、恒大問題の収束に手をこまぬいているわけではなく、恒大を事実上管理下に置きながら、一部のマンション購入者などを保護しようと努めています。しかし、理財商品の購入者など、金融商品を保有する者は保護しないことは十分考えられます。実際、利払いが滞り始めています。

恒大がデフォルト(債務不履行)になることは、ある程度市場も織り込み始めていると思いますが、私が懸念しているのは、恒大のデフォルトをきっかけとして、これまでほとんど野放しだった中国の不動産バブルの崩壊が起こることです。

そうなった場合に、中国経済、世界経済にどれくらいのインパクトがあるのかを考えなければなりません。その際に参考になるのは、過去の金融危機の事例です。

ここでは、日本のバブル崩壊とリーマンショックを分析しますが、どちらも当初は、その影響を小さく見ていたことが、その後の傷口を大きくし、甚大なダメージを与えたことを教訓にしなければなりません。

■中国発経済危機は来るのか、過去のバブル崩壊を振り返る

(1)1990年代の日本でのバブル崩壊とその影響

まず、日本で起こった金融危機を振り返ってみましょう。

1980年代後半に日本では不動産バブルが起こりました。85年のプラザ合意で円高誘導がなされ、円高不況への対策で日銀が市中にジャブジャブに資金をつけたのですが、それが不動産市場に流れ込んだのです。

バブルの過程で株価も上昇し、89年末には、日経平均株価が3万8915円をつけました。最近日経平均が3万円を超えたと話題になっていますが、30年以上前にそれよりも高かった頃があるのです。ゴルフ会員権も高騰し、小金井カントリー倶楽部の会員権が4億円したのもこの頃です。まさしくバブルです。

しかし、バブルはしょせんバブルですからあえなく崩壊。90年には日経平均は2万円台に下落。不動産バブルも崩壊し、銀行は不良債権の山を抱えました。東京では、短期間に4倍に上がった地価が、ジェットコースターのように瞬く間に4分の1に下落し、元の地価に戻ったということもありました。

私はその頃、銀行員をしていましたが、バブルが崩壊し始めたころには、不良債権は日本全体で20兆円くらいと言われていました。一方、海外では当時、日本はバブル崩壊で100兆円程度、当時の名目GDPの20%に及ぶ額の損害を受けるだろうと予想していたものもありました。結局のところ、海外の指摘が正しく、日本の金融機関は、100兆円ほどの不良債権の処理に追い込まれました。

97年11月の最初の金融危機では、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券などが破綻、98年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行や中小銀行も相次いで破綻、その後、2003年5月にりそな銀行に2兆円の公的資金が注入され何とか金融システムの安定を保つまで、金融界や日本経済は大揺れとなりました。

大手行も次々と倒産回避のための合併を繰り返したのもこの頃です。「失われた30年」の入り口がバブル崩壊だったのですが、日経平均も一時7000円台まで下落しました。そして、その後も長い間バブル後遺症に悩まされました。

■中国発経済危機は来るのか、過去のバブル崩壊を振り返る

(2)2008年のリーマンショック

世界レベルでもバブルの崩壊があったのは、覚えている方も多いでしょう。米国で低所得層向けの不動産ローンである「サブプライムローン」の破綻が続き、サブプライムローンを束ねて証券化した商品を多く買っていたフランス最大手の銀行BNPパリバ傘下の投資会社が破綻したのが2007年8月でした。いわゆる「パリバショック」です。

それが引き金で債券市場が機能不全に陥り、日米欧の中央銀行が連日大量の資金を市場に供給することでなんとか市場を維持しようとしました。しかし、金融は安定せず、金融機関の不安説が流れる中、米国の名門投資銀行ベア・スターンズが破綻、2008年9月にはリーマンブラザーズが破綻しました。いわゆる「リーマンショック」です。

リーマン破綻の翌日、米大手の生命保険会社の株価が1ドルまで下落したときに、米政府はそれまでの放任主義の姿勢を180度転換し、7兆円もの公的資金を注入することで金融危機を食い止めましたが、米国のみならず、日欧はじめ世界の実態経済に大きな打撃を与えたことは記憶に新しいでしょう。

このパリバショック、リーマンショック前にも、バブルの崩壊への警告は出されていました。とくに米国以外のところでは、その声は大きかったと記憶しています。返済能力の低い人たちに、住宅価格が上がることを前提に、低金利で融資するわけですから、どこかで破綻することは明らかだったからです。

中国恒大センターの入り口
写真=iStock.com/LewisTsePuiLung
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LewisTsePuiLung

■恒大危機に中国政府はどう対応するか

そして、今回の恒大の危機です。恒大が破綻してもその負債総額は、冒頭で述べたように中国の名目GDPの2%程度ですから、それだけだと何とかなるかもしれません。

しかし、中国全体が不動産バブルの中で、そのバブルが崩壊すると話は別です。恒大同様、財務内容が悪化した不動産会社が中国には多くあります。また、中国では地方政府の隠れ債務問題も、前々から強く指摘されています。その額は、恒大などの不動産大手の債務額とは比べ物にならない額です。

中国不動産破産のイメージ
写真=iStock.com/Marcos Silva
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Marcos Silva

日本のバブル崩壊やリーマンショックで見たように、バブル期やその崩壊初期には多くの人が、その崩壊のインパクトを過小評価しがちですが、バブル崩壊に際しては、そのインパクトは予想を大きく超え、結局は政府が多額の資金を供給しない限りバブル崩壊を食い止められないということになります。

中国政府も、日本のバブル崩壊やリーマンショックを研究しているはずですから、そのことは十分に承知していると思われます。しかし、中国政府としては、「共同富裕」のスローガンの下に、富裕層や大企業優遇から大きく舵を切っている時期だけに、習近平政権としては、恒大危機への対応は、政策の整合性からしても難しい問題を抱えています。

恒大が抱える約2兆元の債務の約半分は、「買掛金」だと言われていますが、買掛金を救済することで零細事業者などを保護するということや、一般のマンション購入者を保護することで事態を収拾しようとすることも考えられます。

ただ、それだけでバブル崩壊を食い止められればいいですが、中国主要都市で投機対象となったマンション価格が暴落することとなると、中国経済に大打撃を与えかねません。

先にも述べたように、一部の都市ではマンション価格が平均年収の数十倍を超えているという異常な状況ですから、マンション価格の暴落が起これば、その反動は計り知れないのです。その場合、日本の不動産市況や日本経済にも影響が及ぶことも考えられます。

また、理財商品などの金融商品や、融資・社債などの債権者の保護は行われないでしょうから、恒大以外の不動産大手も破綻するということになれば、中国の金融市場の大混乱は避けられません。

いずれにしても、しばらくは恒大と中国政府の動きからは目が離せません。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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