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「結婚はコスパが悪い、でも孤独死はしたくない」せっせと働き、貯金を続ける"高収入女性"の理屈

プレジデントオンライン / 2021年10月25日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

高収入な独身女性は何にお金を使っているのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「私のお客様には働く女性が多くいます。高所得者の女性たちは、使えるお金があっても無駄遣いをしません」という——。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

■「結婚はコスパが悪い」と嘆くパワーウーマンたち

私のお客様は働く女性が多く、相談に来ていただく皆さんの年齢は20代後半から40代が大半を占めます。

たくさん勉強して一流大学に入り、正社員で大企業に就職した女性。大学病院の女性医師、女性経営者……。いわゆる“バリキャリ”の彼女たちの年収は800~1200万円で、高所得者といえます。

最新データによると、女性の平均賃金は251万円。女性の20代後半から40代の年齢階級別の賃金を見ても、最も高い年代で45~49歳と55~59歳の271万円でしたから、彼女たちは紛れもないエリートといえるでしょう(厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より)。

そして彼女たちの多くが「結婚はコスパが悪い」と語り、一人で生きていくためのマネープランをとても大切にしています。

出会いがないわけじゃないし、恋人もいる。それでも彼女たちの口からついて出る質問はいつも、「このまま一人でもやっていけますか?」。

そこで今回は「パワーウーマンたちの結婚観」を、ファイナンシャルプランナーの視点から考えてみたいと思います。

■「パートナーに子供がほしいと言われたら困る」

私が若い頃は、「結婚(または同棲)=世帯収入がアップして生活が楽になる手段」でもありました。上京してきた地方出身者同士がカップルになると、「電子レンジを2個買うより1個で済む方がいいよね」と、軽いノリで同棲をはじめることがよくありました(だから別れる時に大変なんですが)。

そして時は変わって2021年現在。大手出版社勤務の高木華子さん(仮名/29歳)は、「結婚して自分のペースが乱されるのが嫌」と言います。彼女は長年交際しているパートナーがいますが、同棲する気も、婚姻関係を結ぶ気もありません。

美容外科医の原たか子さん(仮名/44歳)は、30歳の時に都内の高級マンションを6000万円で購入。60平米の1人暮らしにしては広い部屋で悠々自適な生活を送っています。

かつて結婚を考えた相手はいましたが、「パートナーに子供がほしいと言われたら困る。自分のお金と時間を自分だけのために使いたい」と、シングルで生きていくことを決めています。

■使えるお金はあるのに「無駄遣い」をしない

高給取りで家族もいない彼女たちは、自分のためだけに使えるお金が非常に多いです。ゆえに、毎日外食で高級ブランドの洋服を買い揃えて……と想像されるかもしれませんが、無駄遣いをしている人はほとんどいません。

大手出版社の編集者・高木さんの趣味は読書で、「今月、本買いすぎちゃいました‼︎」と連絡があっても、せいぜい10万円。彼女の手取り月給70万円からすれば、まったく問題ない範囲です。

唯一、皆さんがお金をかけているなと思う部分は、健康面でしょうか。ジムで定期的に汗を流し、体にいい食材を使って自炊する。これはもう、ハードワークゆえの体力作りという面と、貯金と同じで、先行き不安に備えているのだと思います。

ただ所得が多いからか、医療費控除を一度も申請したことがなかったり、携帯はキャリア携帯のままで毎月数万円の電話代を払っていたりするので、そういった点は私から細かなアドバイスをさせてもらっています。

皆さん真面目なので、投資の知識を教えるとすぐに取り組むし、ギャンブル要素の高いものには手を出さず、コツコツ地道に貯められるんですよね。努力できる人たちなんだなあと感心します。

人間のシルエットと野菜
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■シングルで頑張って、最期は老人ホームで迎えたい

高木さんや原さんのように、積極的に独身を貫く女性たちは、自分の人生の中に「不確定要素」を入れないようにしているように見えます。

「結婚すると夫の趣味や家族計画に影響を受けざるを得ない。それによって、自分の思い描く資産形成が阻害されるのが我慢ならない」

「今は離婚する人も多いから、なおさら結婚はお金と時間の無駄」

彼女たちと話すと、よくこんな言葉が聞かれます。今のところの彼女たちの不確定要素は老後、それも「孤独死」については皆、心配しています。だからシングルでいけるところまでは頑張って、最期は老人ホームで迎えられるよう、せっせと貯金をしているんです。

ファイナンシャル的な視点で言えば、結婚で世帯収入が増えればマイホーム購入の際に選択肢の幅が広がる可能性が高いですし、貯蓄だって、互いにお財布の中身を開示し合って効率よくお金を貯めることも可能です。

要は、家庭における資産形成は相手とのコミュニケーション次第であり、「結婚=自分のお金が相手に搾取される」ではないんですよね。

■自分に投資を続けることで身を守ってきた

ではなぜ彼女たちが頑ななまでに、人生に他人という「不確定要素」を入れたくないのか。それは輝かしい経歴が原因ではないかと、ある時ふと思い当たったんです。

医者、公認会計士、全国紙の記者、国家公務員……彼女たちはエリートですが、その肩書を手に入れるまでには、血のにじむような努力がありました。自分の努力によって階段を一歩一歩上がってきたという強い自負が、彼女たちの中にはあります。

そして今現在もハードな職場で、この先どれだけ走り続けることができるのかと、不安と戦いながら日々を過ごしている。彼女たちは結婚やパートナーに頼ることなく、自分に投資を続けることで己の身を、将来を守ってきたのだと思います。

家族を持てば相手が失業したり、病気になったりすることもあるでしょう。特に子供なんて小さい時はいつ熱を出すかわからないし、親の思い通りに育つことはないという意味でも、不確定要素しかないですよね。

彼女たちは、自分で何でもやってきたらからこそ、“自分の努力”でカバーできないことに、極端に不安を覚えるのかもしれません。夫の再就職は自分ではどうにもできないし、子供の夜泣きや将来も、親の努力でコントロールできるものではありません。だから彼女たちの世界はある意味、「自己完結」しているのかもしれません。

39.2度を計測した体温計
写真=iStock.com/yaoinlove
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yaoinlove

■余裕があっても「一人で生きることに不安」

美容外科医の原さんのタワマンに遊びに行った時でした。マンションには24時間管理人が常駐し、スポーツジムは徒歩3分。家の真下にコンビニもあれば、都心の一等地だけあって、ウーバーイーツで有名料理店のご飯も選び放題。原さんはマンションの半径3km以内で「自己完結」した暮らしを送っていました。

ただそれも、ウーバーイーツの配達員がいるから家にいても食事がとれるわけで、コンビニの店員さんがいるから、24時間いつでも買い物ができるわけですよね。もちろんその先には流通の人や生産者の人たちがいる。言うまでもないですが、一人で生きているように思える都会の一人暮らしは、多くの人の支えがあって成り立っているのです。

結婚するかしないか、子供がいるかいないかで、人の幸せをはかることなどできません。高い社会的地位を持ち、仕事に邁進(まいしん)する彼女たちが、シングルで生きることを幸せだと感じているなら、それが一番です。

ただ、これだけ高給取りで生活に余裕がある彼女たちですら、一人で生き続けることに不安を覚えていることは確かです。これはもしかすると、いくら資産形成の方法を教えても拭えないものなのでは……と感じています。

一人でも安心して老後を迎えられる社会制度や人とのつながりがあれば、「不確定要素」を受け入れられる心の余裕も生まれるのではないか。そんな気がしてなりません。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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