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命にかかわる場合も…「最近やたら眠い人」が疑うべき"3つの病気"

プレジデントオンライン / 2021年10月21日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Poike

「秋になってから眠くて仕方がない」という人は要注意だ。なんらかの病気が隠れていることがある。産業医の池井佑丞さんは「秋から冬にかけては、日照時間が減少することによる“冬季うつ病”で睡眠に異変が起こる場合がある。だが、他の病気が隠れていることもあるので注意が必要だ」という――。

■秋になるとイライラしやすくなる人がいる

食欲の秋、運動の秋、読書の秋……と涼しくなったこの季節は、夏の暑さでバテてしまって何もできなかった、なんていう人も、過ごしやすい気候になったことによりいろいろなことに挑戦したくなりますよね。

その反面、秋は日が短くなるため、日光を浴びる時間が減少することによる「季節性情動障害(ある季節にのみ症状が出る気分障害)」が起きやすい季節であることを知っていますか。この時季に起こる季節性情動障害は「冬季うつ病」とも呼ばれ、秋から冬にかけて症状が現れ始め、春や夏になると治まるというサイクルを繰り返す特徴があります。

原因ははっきりとは分かっていませんが、日照時間が短くなった影響で「セロトニン」というホルモンが不足して起こると考えられています。セロトニンは脳内神経伝達物質のひとつで精神を安定させる作用があり、セロトニンが不足することによって気分が落ち込みやすくなったり、イライラしやすくなったりといった抑うつ症状が起こることがあるためです。

■「冬季うつ病」に特徴的な2つの症状

「冬季うつ病」の一般的な症状には、非季節性(季節にかかわらず症状が出る)のうつ病と同じく、以下のようなものがあります。

・気分が落ち込む
・好きだったものに興味がなくなる
・涙もろくなる
・落ち着かない
・考えたり集中したりすることができない
・体がだるい、疲れやすい
・頭痛や肩こり、下痢などの身体症状

「冬季うつ病」に特徴的な症状としては以下の2つがあります。

(1)食欲の増加(甘いものや炭水化物など)

セロトニンは精神を安定させる作用のほかにも、食欲を抑制する作用があります。そのためセロトニンが不足することで食欲が増加してしまいます。さらに、甘いものや炭水化物などを食べると一時的にセロトニンの分泌量が増えて気持ちが落ち着くため、どんどん食べてしまう、といった依存性があるので、肥満につながる可能性もあります。

(2)過眠

セロトニンが不足すると、「メラトニン」が十分に生成されないといった弊害も起こります。「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンには、体の深部体温を下げて眠りをコントロールし、1日のリズムを整えるという作用があります。メラトニンが不足することによって体内時計が乱れ、慢性的に睡眠の質が下がり、睡眠障害やうつ病へとつながる可能性があるのです。そして、非季節性のうつ病では不眠が起こりやすいのに対し、「冬季うつ病」では過眠が起こりやすいという特徴があります。

■「過眠症=眠りすぎること」ではない

「不眠症」という言葉は皆さん耳にすることが多いかと思います。入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害等、「うまく眠ることができない」ことにより、日中に不調をきたしてしまう状態を指します。では、過眠症とはどんな状態でしょうか。「眠りすぎてしまう」ことを指していると想像する方が多いかもしれませんが、正しくは「夜間十分な睡眠をとっているはずなのに、日中に強い眠気が生じ、居眠りをしてしまうなど起きているのが困難になる状態」を指します。

十分な睡眠時間には個人差がありますが、7時間程度が目安となるでしょう。過眠症になると授業中や仕事中に関係なく眠りを我慢することができないため、仕事や自身の評価にも影響するほか、運転や危険な作業を伴う職業では大きな事故へとつながるリスクもあります。

冒頭でセロトニンは日照時間が短くなると不足しやすい、とお話ししました。これはセロトニンが日光を浴びることにより生成されるためです。一方「睡眠ホルモン」のメラトニンには日光を浴びることで抑制される性質があります。日照時間が短くなり日光が不足すると起床後にもメラトニンが残り続けてしまい、すっきりと起きられないだけではなく体内リズムを崩すことにもつながってしまうのです。

秋の木から落ちていく葉
写真=iStock.com/borchee
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/borchee

■「冬季うつ病」以外でも過眠の症状は出る

ちなみに、過眠は「冬季うつ病」だけでなく、その他の病気のサインである可能性があり、これらが疑われる場合には適切な診察や検査が必要になります。

ナルコプレシー

日中に突然強い眠気が出現し、突然眠ってしまうといった症状が特徴となる病気です。原因は、オレキシンという覚醒に関係する脳内物質を作り出す神経細胞が働かなくなることであるとされています。

代表的な症状として以下の4つがあります。しかし、必ずしも全ての症状が出現するわけではありません。

●睡眠発作
大切な会議や作業中など眠ってはいけない場面でも本人の意思とは関係なく眠ってしまう

●情動性脱力発作(カタキプレシー)
大笑いをする、びっくりするなど強い感情が引き金となって全身や体の一部の力が抜けてしまう

●睡眠麻痺
寝入りばなや目覚めた直後に金縛りが起こる

●入眠時幻覚
寝入りばなに出現する幻覚

■家族に起こされても夕方起床になる男性の「病名」

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

眠っている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりを繰り返す病気です。ほとんどの場合で激しいいびきを伴います。気道が閉塞されることによって起こり、脳が危険を察知して睡眠が何度も中断してしまいます。睡眠時無呼吸症候群は不眠のイメージが強いかと思いますが、睡眠時間だけで言えばしっかりと確保できているのに、日中の眠気や疲労を感じる、といった過眠と同じような症状が出る場合もあります。睡眠時無呼吸症候群は酸素が足りない状態が続くことで高血圧、糖尿病、脳卒中や心筋梗塞等生活習慣病のリスクにもなります。

シーツと枕
写真=iStock.com/Wand_Prapan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wand_Prapan

睡眠時無呼吸症候群が重症化すると、うつ病発症のリスクが2.6倍となることも分かっています(※1)

(※1)eppard PE, Szklo-Coxe M, Hla KM, et al: Longitudinal Association of Sleep-Related Breathing Disorder and Depression. Arch Intern Med 166 (16): 1709-1715, 2006.

働きざかりである30~60歳代の男性に多くみられ、肥満・下顎が小さいなど気道が狭くなる要因がある人が多いとされます。

実際に、私が産業医として管理しているある会社の従業員の方には、朝起きてこず家族に起こされても二度寝してしまい、気が付いたら夕方起床になってしまう、という方がいました。病院を受診し検査した結果、その方は睡眠時無呼吸症候群だったのです。

■睡眠時間が10時間以上になると、死亡リスクは上がる

また、上記のような症状はなく日中問題なく過ごせているが、秋や冬は夜が長いのでつい眠りすぎてしまう、ということもあるかと思います。しかし、睡眠は長くとればよいというものではありません。睡眠時間と死亡リスクの関係については国内外で研究が行われ、睡眠時間は短くても長くても死亡のリスクと関連することが分かっています。

短い場合のリスクについて、過去に自治医科大が行った研究では、睡眠時間が6時間未満の健康な男性は、7~8時間の場合と比べて死亡率が2.5倍となりました(※2)

(※2)Yoko Amagai, Shizukiyo Ishikawa, Tadao Gotoh, Yuriko Doi, Kazunori Kayaba, Yosikazu Nakamura, Eiji Kajii: Sleep duration and mortality in Japan: the Jichi Medical School Cohort Study.J Epidemiol. 2004 Jul;14(4):124-8

また長い場合については、睡眠時間が7時間のグループと比べ、睡眠時間が10時間以上のグループで死亡リスクが男性では1.8倍、女性では1.7倍高い結果となりました(※3)

(※3)Thomas Svensson, Manami Inoue, Eiko Saito, Norie Sawada, Hiroyasu Iso, Tetsuya Mizoue, Atsushi Goto, Taiki Yamaji, Taichi Shimazu, Motoki Iwasaki, Shoichiro Tsugane: The Association Between Habitual Sleep Duration and Mortality According to Sex and Age: The Japan Public Health Center-based Prospective Study.J Epidemiol. 2021 Feb 5;31(2):109-18

睡眠時間は7時間を目安に、できる限り毎日同じリズムでとっていただくのが理想です。

■「冬季うつ病」を予防・改善する3つのポイント

「冬季うつ病」を予防・改善するには、3つのポイントがあります。

(1)日光を浴びる

セロトニンの分泌を促すために、日光を浴びましょう。起床時にカーテンを開けて日光を浴びることで睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が止まり、すっきりと起きることができ、体内時計も整います。

カーテンと光
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

秋や冬は日照時間が短いため、自宅の照明を明るいものに変えることもよいでしょう。

「冬季うつ病」の医学的治療としては光療法(※4)が行われています。

(※4)光療法 5000~10000ルクス程度の照度を30分~1時間程度照射することで1日のリズムを調整する効果がある。季節性情動障害や概日リズム睡眠障害に有効と言われている治療法。他にもさまざまな睡眠障害に有効とされている。

(2)朝は眠くともひとまず起きる

冬は寒いため布団から出られない、という方も多いと思いますが、朝は眠くとも起きるようにしましょう。生活リズムが不規則になると体内時計が狂い、睡眠の質の低下やメンタル不調の原因となります。

(3)適度な運動をする

運動はうつ病の治療として医学的にも効果があるとされています。運動をすることでもセロトニンが分泌されます。外で日光を浴びながらウォーキングなどを行えば、より効果が見込めるでしょう。また、適度な運動は爽快感や疲労感をもたらし、夜ぐっすりと眠ることにもつながります。在宅ワークで外に出る機会が減った、という方も1日1回は外に出る機会を作りましょう。

■月に4日以上勤怠が乱れるなら要注意

「冬季うつ病」は上に挙げたような生活習慣の見直しにより予防や改善が期待されますが、予防をしても症状が出てしまうこともあるかと思います。そのような場合には、自己判断だけで済ますのではなく、受診をすることが大切です。

メンタル不調の医療機関の受診の目安として、憂うつな気分が2週間程度毎日続いている状態、日常生活に必要な行動ができなくなくなった状態が認められるようであれば一刻も早く心療内科や精神科を受診し、原因を探っていきましょう。産業医の立場からみると、遅刻・早退・欠勤など勤怠の乱れが月に4日以上ある場合はメンタルの不調が疑われますので、受診することをお勧めします。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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