「オンライン授業でも対面授業でも成績が上がる子」は親の"声かけ"が全然違う
プレジデントオンライン / 2021年10月20日 10時15分
■「聞き続けるだけの授業」は知識が定着しにくい
新型コロナウイルスの感染者が減少傾向になり、9月末をもって緊急事態宣言が解除された。それまで小学校が分散登校になったり、塾の授業がオンラインになったりしていたため、久しぶりに友達と会えるのを喜んだ子は多いだろう。ところが、いざ対面授業が始まると、「授業のスピードについていけない」「騒がしくて集中できない」などの声が多く上がっている。
子供たちに一体何があったのか? その原因はオンライン授業にあると考える。
オンライン授業は、一方通行の授業だ。なかには「うちは双方向型の授業を行っている」と説明する大手進学塾もあるが、実際に参加者全員が音声をオンにすると、家族の声が丸聞こえだったり、遠くで救急車のサイレンが聞こえたりと雑音が入り、うるさくてとても授業にならない。そこで今は先生が説明をしているときはミュートにし、質問の時間だけオフにしていいとルールを設けているようだ。だが、そうなってしまうと、双方向型授業とは言えない。
オンライン授業は、基本的に先生が一人で話す。すると、子供たちは受け身の姿勢になる。オンライン授業で「聞き続けるだけ」に慣れてしまった子供たちは、対面授業では自然にやっていた「考えながら聞く」「書きながら聞く」ことを忘れてしまう。聞いているだけの授業は、身体感覚に落とし込むことができないので、知識が定着しにくい。オンライン授業には参加していたけれど、きちんと理解できていない子は少なくないのだ。
■子供部屋で授業を受けるのは良くない
感染防止の観点からいえば、オンライン授業の選択は正しいと考える。また、オンライン授業は、授業の後にアーカイブ動画で視聴できる。これまで塾の授業のスピードについて来られなかった子が、もう一度見返したり、分からなかったところをストップして、そこだけ重点的に学習しなおしたりすることもできる。そういう子にとっては、オンライン授業はメリットが大きい。成績を伸ばした子もいる。一方で、後から見られるからいいやと授業を疎かにしてしまう子も出てきてしまった。だが、そういう子に限って授業を見返すことはない。
小学生の子供にオンライン授業を受けさせるときに、いくつか気をつけてほしいことがある。まず、子供部屋で受けさせるのはやめた方がいい。ゲームやマンガなど誘惑が多く、勉強の妨げになる。子供任せにするのもよくない。顔は画面に向いているけれど、手元は遊んでいることもあるからだ。
塾側では子供たちの顔しか見られないので、さぼっているかどうかの判断は難しい。やはりそこは親がチェックするべきだろう。四六時中、付き合う必要はない。ときどき様子を見たり、声かけをしたりするだけでも十分効果はある。
■オンライン授業向きなのは「リビングのテレビ」
コロナ禍で親がリモートワークになっている家庭も多い。そういう家庭では、親もパソコンを使うため、子供に渡せるパソコンがなく、スマホでオンライン授業を受けさせていることがある。
だが、スマホのサイズではまともに勉強はできない。私はノートパソコンでも小さいと感じている。できれば、リビングのテレビの大画面で授業を受けさせたい。画面が大きいと、先生の動きや表情がよく見えるからだ。先生が力を込めて説明しているところは、その単元のポイントになることが多い。対面なら同じ空間にいるので感じ取ることができるが、小さな画面ではそれに気づきにくい。できるだけ対面授業に近づけることをすすめる。
コロナ禍の家庭学習は、子供に任せっぱなしの家庭と関わりすぎの家庭の二極化が見られる。親がリモートワークの場合、付きっきりで見るのは不可能だが、時折、子供の様子を見てあげてほしい。特に小学生の子供には親の目が必要だ。ちゃんと勉強をしているか監視するためというよりも、「お父さん、お母さんが私を気にかけてくれている」と安心感を与えるためだ。子供は親に見守られていると心が安定し、勉強に集中することができる。
■リモートワークで「親子バトル」が激化
逆に過干渉になりすぎるとうまくいかない。共働き家庭は、日ごろ忙しくて子供の世話が十分にできないというジレンマを抱えている。ところが、コロナでリモートワークになったことで、子供と一緒に過ごす時間が持てるようになった。すると、これまでの穴埋めをするかのように、「この子の勉強は私が見なきゃ!」と張り切りだす親がいる。
だが、親子の距離が近すぎると、子供のダメなところばかりに目が行ってしまう。そして、「なんでこんな問題が解けないの?」と責めたり、「こんなんじゃ合格できないわよ!」と嫌みを言ったりしてしまう。そう言われて、「なにくそ!」と頑張る子は少なく、親子ゲンカに発展するのがオチだ。親がリモートワークになり、子供がオンライン授業になったことが引き金で、反抗期を迎える子供も多い。
せっかくそばにいられるのであれば、親は子供のやる気をそぐような言葉を投げるのではなく、やる気を起こすような言葉をかけてあげてほしい。ただでさえ子供たちは、コロナ禍で制限のある生活にストレスがたまっているのだ。そこにさらに親の小言が加わったら、たまったものじゃない。
■「分からないこと」が「分からないまま」になりやすい
ほったらかしがダメ、過干渉もダメ。だったら、どうしたらいいのだ? と言いたくなるだろう。
オンライン授業は、発信側のペースで授業が進められていく。対面授業であれば、先生は生徒たちの反応を見て、理解が難しそうなら、もう一度説明をするなどフォローができる。しかし、オンラインではそこまで生徒の反応が見えないので、理解できたということにして先へ進む。そうやって、生徒が理解できていないまま授業が進むと、「分からないこと」が「分からないまま」になってしまう。
また、オンラインになると、宿題の強制力が弱まる。宿題をやってこなかったら、次の授業で怒られるということもなく、だったらちょっとサボっちゃおうかな、と自分に甘くなってしまう。しかし、授業の後に振り返りをし、宿題で知識を定着させるというルーティンなしで、成績アップは望めない。そこで、親の管理が必要になる。
■「1週間の学習スケジュール」は親子で一緒に考える
オンライン授業になったときに、親がやるべきことは、子供が授業を理解できたかどうかの確認と、宿題を含めた学習進捗の管理だ。オンライン授業を親がすべて見る必要はないが、授業の最後に、その日の授業のポイントや課題について触れるところだけ一緒に確認しておくと、モレを防ぐことができる。課題は必ずメモに残すよう促してほしい。
授業が終わったら、その日どんなことを学習したか、子供に説明をしてもらうといい。その時にぎこちない説明だったら、理解できていない可能性が高い。アーカイブ動画を見直すなどして、「分からないまま」にしないことだ。
1週間の学習スケジュールは親子で一緒に考えてみよう。塾からの課題は何か、それをいつ何時にやるか具体的に書き込んでいく。ただしその時、子供に自由裁量権を与えてあげること。親が何でも決めてしまうと、子供は受け身の姿勢になり、自分事として受験勉強をしなくなってしまうからだ。学習スケジュールは「できた」「できない」にあまりこだわりすぎないこと。できなかったことばかりを指摘すると、子供のやる気をそぐ上、親子げんかに発展する。できなかったときこそ、親の声かけが重要だ。どうしたらよかったのか子供と一緒に考え、改善していこう。
■久しぶりの対面授業でストレスを感じる子もいる
オンライン授業は、家というプライベート空間の中で行われる。それに慣れてしまうと、塾のような大人数で勉強することにストレスを感じ、集中力が続かなくなることがある。また、聞いているだけだったのが、発言を求められるなど、授業のスタイルが変わり戸惑う子もいる。対面授業の感覚を戻すには、先生の力量にかかっている。うまくまとめられないと、クラスが荒れてしまうこともあるので注意が必要だ。親もオンライン授業から対面授業に変わったときは、子供の様子を気にかけてあげてほしい。
コロナが落ち着き、しばらくは対面での授業ができるだろう。だが、いつまた感染が拡大し、オンライン授業に切り替わるか分からない。いつオンラインに変わっても慌てることのないように、オンライン授業における注意点を親は知っておくべきだ。
コロナ禍の受験はまだ続く。
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プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)
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