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「なんで私にしわ寄せがくるのよ」36歳妻が正社員→専業主婦で世帯月収半減、赤字転落でも変えない浪費癖

プレジデントオンライン / 2021年10月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

都内在住の30代の夫婦は共働きで手取り世帯月収は60万円近くあったが、育児のため妻は専業主婦に。その影響で月収は半減し、月3万円の赤字に転落。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「共働き時代は夫婦別財布で家計管理もせず、それぞれ自由にお金を使っていました。奥さんは専業主婦になってもその支出習慣が抜けなかったことが赤字の主因です」という――。

■月3万円の赤字垂れ流すのに「資産の作り方教えて」の本末転倒

「家計は大丈夫だから、どう投資をすれば資産を作れるのか教えてほしい」

最近、こうした家計相談が増えています。投資に興味が向いている世の中の傾向が色濃く反映されています。投資に興味を持つことはよいと思いますが、家計や貯蓄などの根幹部分を軽視し、資産形成ばかりを考えて、目の前の家計はあまり気にしない偏向を感じるのです。

先日ご相談に来られた都内在住の会社員・金川昌弘さん(38歳・仮名)も、家計(節約)よりも投資を始めることが先、と考えていました。

聞けば、現状では家計は赤字。月の手取り世帯収入34万円に対して、支出はマンションの家賃10万円を含む37万円。ボーナス(年間80万円)で補塡(ほてん)してなんとか回っている状況で、預貯金(120万円)も十分ではないため、万が一、お金が入り用になれば、家計はすぐさまピンチになってしまいそうな状態です。

この状況に危機を感じ、「まずは投資を」と思ったようですが、誰がみても今のまま投資を始めることは絶対にすべきではないのは明らかです。投資で伸ばして帳尻を合わせようという見え見えの意図は極めてリスクが高いです。

■赤字の原因は正社員から専業主婦になった妻の浪費にあった

金川さん宅はなぜこのような本末転倒な状況になっているか。

原因は、妻の由紀子さん(36歳・仮名)の退職(正社員)にあるようでした。金川さんご夫婦はもともと共働き。長男(5歳)と長女(1歳)を保育園に預け、由紀子さんも仕事を継続する予定でした。

長男出産後はなんとか仕事を続けていました。しかし、2人目となる長女を出産し、育児休業期間に入ってから1歳児が入園できる保育園を探したもののなかなか見つかりません。保活にも疲れを感じ、子供2人が小学生に上がるまでは、専業主婦でもよいのではないかと話し合ったうえ、育児休業を延長せず、終了日に退職しました。

退職後は収入が半減する(以前は手取り世帯月収が60万円近くあった)ことはわかっていましたが、支出がなかなか減らせません。

第一の問題点は、それまでは夫婦それぞれで収入を管理し、世帯としての支出が把握できていなかったこと(つまり、2人とも自由に使っていた)。第二は、妻の支出が以前から多く、専業主婦になった今も多いこと。

化粧品、同僚やママ友との交際費、娯楽費などが、共働きの時ほどではないにしろ、かかっているのです。それに疑いを持たず、当たり前にお金を使っているため、支出は当然のように減りません。昌弘さんは気になる支出を節約しはじめていても、妻はそのことに気が付いていない様子です。そして昌弘さんは優しい方なのか、妻に支出を抑えてほしいことを言えないでいます。

■「今すぐ3000円投資をしたい」なら、今すぐ家計改善を

恐らく、その状況を改善したかったのでしょう。毎月平均3万円の赤字、預貯金は複数の口座の額を合計すれば120万円あるかというところでしたが、相談にやってきて「3000円投資をしたい」とのです。

3000円投資とは、主に投資初心者向けに私が書籍などでお薦めしているものです。毎月たった3000円の積み立てですが、年率3%の投資信託で30年間続けると、総投資額108万円に対して、利益は約66万円となり資産額は174万円に。また、投資に慣れ、1年ごとに1000円ずつ投資額をアップすると、30年後には総投資額630万円に対して利益は258万円、総資産額は888万円にまで増加します。

ただし、大前提として3000円投資は貯金をしながらその一部を投資に回していくものです。収入が増えたり、支出を見直したりして毎月の余剰金が増えるなら、投資額を増やすなどして、将来へ送る金額を多くし、20年、30年後の資産形成を目指すのです。

金川さん宅の場合、月3万円赤字の状況では、貯金するお金も、投資原資となるお金も出せません。ボーナスも毎月の赤字補塡、年に数回の帰省などの費用でなくなっている状況ですから、投資を始めるとさらに赤字に傾き、家計状況がおかしくなってしまいます。つまり、家計の立て直しを優先しなければ、金川さんのお金面の状況は、どうにも改善していけないのです。

■「化粧品代」は月1万8000円だったが、これを0円にする

やはり支出の改善を考えることが優先事項になります。

メタボ家計BEFORE→AFTER

昌弘さんのほうはすでに支出カットを独自に始めていたので、由紀子さんの支出を中心にメスを入れざるを得ません。会社に出勤していた暮らしから家で育児という暮らし方に変わったため、化粧品は必要最低限に抑える(1万8000円→0円)、そしてその化粧品代は家計から出さず、由紀子さんの小遣いを少し増額してやりくりしてもらうことに(小遣い4万円→4万5000円)。かつて計上していた交際費(1万円)、娯楽費(1万3000円)もこの小遣い内に収めました。

今までよりかなり制限されるため、やりくりは厳しいともいますが、小遣いは5000円だけアップし、何とか頑張ってみることにしました。

また、旅行積立は、家計状況がよくなるまで中止(1万円→0円)。他、食費はムダな食材を出さない、買いすぎないなど基本的なことにしっかりと取り組むスタンスに(5万4000円→4万8000円)水道光熱費は、入浴時の湯の使い方の注意と、賃貸住宅ではありましたが電気小売事業者の変更が可能でしたので、その変更をして削減を試みました(2万6000円→2万1000円)。使途不明金もできるだけ減らすようにし、こまごまとした節約も加えながら、合計で5万円ほど支出を削減することが可能になりました。

■劇的な家計改善で年間60万円を「貯蓄・投資」に回せるように

もとの赤字が月3万円ですから、月2万円が余剰金となります。合わせて、赤字がなくなり、ボーナスから生活費の補塡をする必要がなくなりました。ボーナスの使い方をこれまでと変えなければ、赤字補塡に使っていた約36万円のボーナスも余剰金とすることができます。月の2万円と合わせると、年間60万円を「貯蓄・投資」に回せる計算となるのです。月にすると、5万円ほどです。

ようやく3000円投資のスタートに立てました。あとは貯金や投資の金額を決め、実践していくだけです。相談した結果、運用はしっかり、積極的に取り組んでいきたいという思いが強いため、投資は月2万円ずつ積み立てていくことにしました。貯金は月3万円です。

始める前に口座も整えました。いつも給料が入金される口座には、支出見直し後の必要生活費32万円の約1.5カ月分である50万円を基準に置くようにしました。生活をすると減りますが、給料が入るとまた元に戻り、突発的な支出があってもその口座の中で支払いが可能な状態です。

それ以上のお金は、引き出さない前提の貯蓄用の口座へ。金川さんご夫婦の場合は、証券口座と連動させると利率が優遇されるネット銀行を開設し、そこに置いています。節約を意識し、1.5カ月分である生活費用口座のお金が増えれば、その都度、貯める用のネット口座に移していくとし、この2つの口座で生活費の1年分、約420万円を貯める目標です。

現金と通帳
写真=iStock.com/SB
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SB

投資をする2万円は、iDeCoとつみたてNISAを活用し、長期投資をしていきます。iDeCoが1万円、つみたてNISAも1万円という金額でやってみたいということで納得されスタートです。今後はiDeCoの拠出上限額まで、可能ならつみたてNISAも年間最大のところまで拠出していきたいとのことです。

ここまで変化するのに10カ月ほどかかりましたが、その間、口座の数字が増えていくのを見て、当初は「節約が大変、なんで私にしわ寄せがくるの……」と不満顔だった由紀子さんも、ムダな支出を減らすことにどんどん協力的になってきました。

下の子は2歳になり、上の子は来春小学生。下の子が幼稚園にいけるようになったらまずはパートをはじめ、さらに貯金、投資にお金を回せるようにしていきたいと意欲的です。

投資をするには、やはりそのベースとなる家計が非常に大切です。また、投資だけではなく、貯金も必要。今と将来を守るようなお金の使い方、貯め方を考えていくことが必要なのです。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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