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「離職率はなんと8割」次々と社員が辞める太陽光発電の営業会社が生まれ変われたワケ

プレジデントオンライン / 2021年10月26日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

福岡に拠点を置く太陽光発電・蓄電池の訪問販売会社・新日本エネックスは、2019年まで次々と社員が辞める会社だった。離職率は8割に達していたという。ところが、社員の働き方を見直した結果、離職率は5.4%にまで下がった。船井総合研究所のウェブメディア「社長online」から紹介する――。

■「離職率8割」を5.4%に激減させた秘策

人手不足かつ、転職・起業も容易になっている昨今、「社員に自社に働き続けてもらうこと」は今の時代の経営が抱える課題の1つと言える。特に訪問販売という業態は、離職率が高く、人材の流出が激しい。

そんな業態にあって、同業他社に比べて異例と言えるほどの低離職率を実現させた会社がある。福岡市に本社を置く新日本エネックスだ。一時は8割に上った離職率は、現在、5.4%にまで改善。会社の業績上昇に合わせて営業担当者は常時増やしているが、退職者は少なかった。

同社は、太陽光発電・蓄電池システムやオール電化製品などを訪問販売している。営業所は九州のほかに中国地方や東京など4カ所にあり、営業担当者は約60名在籍している。2015年の設立以来、業績は好調に推移し、2020年の売上は前期実績の約2倍となる21億円を記録した。

テレビCMや地元福岡のスポーツチームへのスポンサードなども行っており、コロナ禍でも数字を伸ばしている。アジア太平洋地域13カ国、100万以上の企業を調査対象とした「High-Growth Companies Asia-Pacific 2021」(アジア太平洋地域の急成長企業ランキング 2021)で48位にランクイン、日本の企業では6位に入る急成長企業だ。

船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)
船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)

訪問販売の多くは「成果報酬」だ。売れば売るほど報酬が増える、非常にわかりやすい形態である反面、売れずに苦戦する人も多く、数字を伸ばせず離職する人も多い。働く人も、自分の腕一本で稼ぎたいと考えている人がほとんどで、稼げればそれでいい、稼げなくなったらほかに行く、という感じで、会社への帰属意識は低かった。

社長の西口昌宏氏はその状況を根本的に変えた。具体的には、これまで重視してこなかった「社員満足度」を上げる取り組みを進めた。研修やシフト勤務を取り入れ業務の一環として花見やBBQなどの社内行事を設けた。成果主義を見直し、営業成績一辺倒の完全成果報酬型給与体系をやめた。その結果、大幅な離職率の改善につながったと言える。

■採用面接で「辞めない人材」を見極める

西口社長が最初に取り組んだのは、採用面接の方法だった。バラバラだった社員を一つにするには、価値観を共有できる人に入社してもらうのは一番だからだ。創業から3年ほど経った2019年ごろから共感重視の面接に切り替えた。ポイントは以下の3つだ。

1.包み隠さず会社の内情を伝える
2.前職の悩みを聞く
3.社長がビジョンを話して面接者の目が輝くかを見る

一般的に、訪問販売、歩合制営業の採用は、焦点が「何を売るか」「どのくらい報酬を払うか」が中心で、それ以外の部分をあまり重視しない傾向にある。だが、新日本エネックスは、入社前に会社に関する説明を徹底的に行う。

「入社前に言っていたことと実際が、会社に入ってみて違うとなったら、まず不信感が生まれますから、それをなくすことが大事です。面接は最低でも2~3回行い、新卒採用では5回くらいします。表面的な話にとどまらず、会社内部に深く関わってもらうことが大事にしている点です。求職者には社風や理念の説明のほか、実際の営業体験などをしてもらい、外から見ての姿と中で働いての実際の姿を一致できるようにしています。面接では“ぶっちゃけトーク”もしています。会社にしてみれば言いたくないようなこともすべて伝え『このような会社ですが、入ってもらえますか?』という合意形成をしっかり行います」(西口氏、以下同)

就職面接を待つ人々
写真=iStock.com/BartekSzewczyk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BartekSzewczyk

■最低でも2~3回、面接で3時間ほど向き合うことも

面接では伝えると同時に「聞く」も重視しているという。

「中途入社が8割の会社なので、全員が新卒の会社に比べれば、統一の価値観の形成は難しい部分があります。そのため、中途入社の人に対し重視するのは素直さです。中途入社の人は、それまで勤めた会社でのやり方がその人の働き方の基本になっているものです。それは構いませんが『前の会社ではこうだった』とそのやり方に固執されても困るので、今までのやり方を変えられるかをしっかり確認します。『やり方を変えられるか』と聞いても、全員が『変えます』と答えるに決まっていますから」

採用面接で、西口氏は志望者から前職の悩みを聞く。理由はこうだ。

「面接で聞いているのは、前職で抱えていた悩みです。それをじっくり聞くと、その人の考え方がわかります。『自分が力を発揮できないのは、それまで勤めていた会社が悪いから』という前提に立って考えていないか、は大事にしています。周りのせいにせず、自分が変わる意欲がある人は、新しい会社のやり方を身につけてくれますから」

「悩みを聞きながら、これからその人がどんな人生を歩んでいくのが望ましいか、悩み解決や夢や目標の設定を、それこそ個人コンサルにつくくらいの感じで、時間をかけて行います。そのような感じなので、面接は1回で1時間は必要で、長いと3時間くらいすることもあります」

■「質問しない人は採用しない」共感重視の採用

面接では「共感してくれる人に入社してもらう」ことを重視するようにした。西口氏は、今後の目標設定をしていく中でも稼ぎたい意欲があるかを必ず聞くことにした。全員と面接し、共感してもらえているかを見極めるという。

「私がビジョンを話して、面接者の目が輝くか、興味がなさそうかを大事な基準にしています。やはり会社の言うことに共感してもらえるか、その会社が目指すもの、言っていることに納得できるかが大事ですから。それなしに働くのは、会社も本人も喜ばしい状態ではないでしょう。また、私が会社の大事なことを話して、それに関して質問がない人は、関心がない、共感ができていないと考えています」

■業務の一環で花見、BBQ、飲みニケーション…

採用面接を切り替えたのと同時期に、新日本エネックスでは社員が参加する社内イベントを設けた。部署ごとや、花見やバーベキューなど部署横断のイベントを、すべて給与を払って「懇親を深める業務」としている。

飲み会などの「飲みニケーション」も実施し、会社としての部活動も支援する。釣り部、カート部など、ある程度人数が集まっているものに関しては、会社が費用を一部負担しているのだ。イベントは社員が発案するものもある。

「訪問販売の営業は、個人プレイになりがちです。社内の人もライバルだから、大事な情報は共有しない、誰かに仕事が集中しても、手柄をほかの人には回さない。そうなると、メンバー間の関係はギスギスしますし、成長も個人任せで、ノウハウや情報など会社としての財産が蓄積していかない。そこで当社は『営業のユニット制』営業担当者を小さなチームに分けて、団体での達成を大事にしてチームの和を保つようにしています」

桜が満開の上野公園で花見をする会社の同僚たち(2018年3月29日)
写真=iStock.com/501room
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/501room

「会社も成長し、大きな組織になってきていますから、そうなると自分の関わる部分が減り、責任感が薄くなると感じる人が増えてきます。そこで、ユニット全体での目標を定め、みんなでそれを目指す形にしました。『チームで』にしたことで、離職率が低下しました。仕事を自分ひとりでやっていない、ほかの人にも見てもらえている感覚が、従業員満足度が高まりやすいのです」

新日本エネックスがイベントを多々、業務として行うのは、社員の家族の理解を深めることも目的としてある。

「この仕事はどうしても平日の夜や土日に稼働することが多く、仕事を優先するとプライベートが犠牲になりがちです。『会社が好きだし仕事も気に入っていますが、家族との時間を取れないので辞めます』という声が多くありました。そこで、会社の主催イベントには家族の参加もOKにしました。その費用も会社負担です。家族も一緒のイベントは、家族の仕事への理解も進みます。家族に『大事な休日にお父さんを会社に取られた』と思われると『家族のためにその会社を辞めてよ』と会社、仕事が敵になりがちです。家族も会社のイベントに入ってもらい、いわば家族も当事者にするのです」

■あえて研修を重視する社長の狙い

新日本エネックスの特徴は、研修の機会が多いことだ。2020年ごろから社内の研修プログラムを整備した。「研修など受けているヒマがあったら1件でも多く営業に行け」という考えが一般的な業界において、例外とも言える。そこにも西口氏の考えがある。

「社員が会社に勤めることで得られるものは給与以外にも、スキル、マインドなどたくさんあります。本人たちがその会社に勤めることで、本来ならば高額のお金を払わなければ得られない研修を受けられれば、満足につながると考えました。もちろん研修ですから、その内容を営業やマネジメントに生かしてもらいたいと思っています。『社員みんなの人生においてこういう知識、スキルが必要と思う』という研修を、私が選んで受けてもらっています」

研修を受ける社員たち
写真=iStock.com/kasipat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasipat

「先日は、元福岡ソフトバンクホークスの選手が、野球選手という人生の夢を終えて、新しい夢を見つけるためにどのようなことをしたか、どう考えを変えていったか、を話す研修を受けてもらいました。何かしら夢をあきらめてわが社の社員になっている人もいるので、どう今の仕事に向き合うか、全力で臨めるかを考えるきっかけにしてもらいました。売り方のスキル研修やロールプレーイングなどの研修もありますが、研修内容はもっと大きな話のことが多いです」

「この業界は、エース営業マンが出世して管理職に就くことが多いのですが、マネジャーになったら現場にいた頃のような活躍ができない、というケースがよくあります。やはり『売れる』と『マネジメントする』はまったく違う能力ですから、そういう人にはマネジャーとして必要な能力をどう伸ばしていくか、を考えるための研修を受けてもらっています」

「研修は2カ月に1回は受けてもらい、受講者にはフィードバックを出す、研修を受けてどうするか、のアクションを決めてもらいます。研修は『いい話を聞いた』で終わってはダメで、行動につながらないと意味がないので『実践』を会社では口を酸っぱくして言っています」

■“社員満足度”を高めたシフト勤務

西口氏は「会社は自律した組織であるべき」と語る。勤務日をシフト制にしているのは、新日本エネックスの勤務体系の大きな特徴だろう。

「BtoCの業態なので、平日夜や土日は休みを取りにくいところがあります。そうなると社員は家族と一緒にいる時間が取れません。そのなかでも少しでも家族と過ごせる状況を作ってほしいと、シフト制にしています。ただし、もっともお客さまに会いやすい土日を外して、平日だけで営業成績を上げるならば、頭を使う必要があります。『頭を使って数字を出しさえすれば、休んでもいいよ』という形です」

「社員に対し厳しいように見えるかもしれませんが、この制度は会社、経営する側としてもやりづらいです。社員が一同にそろうこともないですし、研修に稼働時間の10%くらいを割いているので、営業日数も限られます。マネジメントは容易ではありませんが、そこは会社と社員の関係は対等でありたいと考えています」

「当社では『権利と義務』という考えを大事にして、社員にはあらゆる権利を与えています。休みをもっと欲しいとか、出資を受けて独立したり、同業者になるといったこともOKです。これはダメ、できません、と言っていることはほとんどありません」

■営業成績一辺倒の給与体系やめた結果…

社員の満足度を高められるような“働く基盤”を構築したことで、仕事は好きでも辞めざるを得なかった社員も、自身の努力や工夫次第で辞めなくてよいようになった。

これらの施策を実施したことにより、かつて8割だった離職率は2020年現在5.4%まで低下した。離職率が高かった頃の課題はクリアされた。

多くの会社が、創業から順調に成長しても、創業から5年ほど経つと一度成長が鈍化する経験をするが、新日本エネックスは成長速度を落とすことなく、2020年の売り上げは前年比175%を達成した。

「ただし、社員がその権利を行使するには“数字”が要ります。そこは明確にしている部分です。権利を得るための義務、大前提は営業成績。それが5割。それ以外の『姿勢点』。あいさつ、仕事に臨む態度、ごみを捨てるなど、会社がよくなるための行動を評価しています」

「トップセールスでも権利獲得のためには50点でしかないですから、売り上げを上げているだけでは権利を獲得できません。サンクスカードのアプリを作るなどして、どのくらい周りの社員に貢献し、感謝されているかなども評価しています。3カ月に1回の個人面談で、フィードバックを出しています。わかりにくい仕事でも、わかりやすいように定量、定性で評価。しっかり決算賞与に組み込んでいくことを大事にしています」

高い従業員満足度と低い離職率は、自然に達成できるものではない。きちんとした制度設計が必要と言える。

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