「どうしてこんなに量が多いのか」明治エッセルスーパーカップが絶対に容量を減らさないワケ
プレジデントオンライン / 2021年10月21日 15時15分
■大容量200mlに合わせた味設計
シリーズ累計販売数55億個以上の国民的人気アイス「エッセル スーパーカップ」。アイス業界の専門メディア「アイスクリームプレス」の調査によれば、2020年度のエッセルブランドの年間売上高は274億円で業界1位に君臨している。
私も「エッセル スーパーカップ」の虜で、毎日最低6個は食べている。
明治 フローズン・食品マーケティング部 フローズンデザートグループの吉岡征史さんに、なぜ27年にわたって味作りとブランドコンセプトをぶらさず展開し続けられてきているのか聞いた。
――味へのこだわりを聞かせてください。
【吉岡さん】大容量(200ml)のカップアイスを最後まで楽しんで完食していただくため、キレのよい後味を出すにはどうすればいいか試行錯誤しております。
試作品を何個も作り、植物油脂の配合や卵黄との最適なバランスを追求しました。
――大容量ありきの味設計なのですね。
【吉岡さん】はい。ですが最初から大容量だったわけではなく、「エッセル」ブランド誕生当時(1991年)の容量は150mlで、その頃カップアイスで主流だった落しぶたスタイルでした。1994年にかぶせぶたスタイルに改良し、ノベルティ商品では異例の200mlの大容量カップアイス「明治 エッセル スーパーカップ 超バニラ」が誕生しました。
――100円カップアイスは150mlが主流だった時代に、200ml容量の登場は衝撃的でした。「かぶせぶた」スタイルを採用したことで、見た目のボリューム感が際立ちましたね。この商品の発売後、他社でも200ml容量のカップアイスが次々と発売されました。1990年代半ば以降、アイス業界では大容量カップアイス戦争が勃発していたんです。明治はカップアイスの新しい歴史を作ったと言っても過言ではありません。
しかし、100円の価格設定は今考えると無理があったのではないでしょうか。価格が据え置きにもかかわらず、容量が少なくなっていることはよく聞く話ですが、価格を据え置きにして、容量を増やす商品は当時としてはとても衝撃でした。
■過去には数々の「失敗作」もあった
【吉岡さん】発売後、当時の心配をよそに、売り上げは初年度からカップアイスのトップを快走することとなりました。
1996年に食品ヒット賞、日経優秀賞をダブル受賞し、発売後9年で累計10億個、2012年夏には累計34億個を突破。その後も堅調に売り上げを伸ばし、大容量カップアイスの定番の地位をゆるぎないものにしてきたからこそ、この200mlという容量は必ず守り続けていきたいと考えています。
――「エッセル スーパーカップ」はさまざまなフレーバー展開も魅力です。新フレーバーの開発において、ベンチマークにしている市場はありますか。
【吉岡さん】エッセルブランドでは、あえて世の中のトレンドは追いかけていません。
例えば、スーパーやコンビニの棚は、季節の変わり目になるとその年のトレンド商品が彩ります。近年ではレモネード、バナナジュースやタピオカ、イタリアの洋菓子マリトッツォが流行しましたが、それらのトレンドにとらわれず、「エッセル(スーパーカップ)ブランドとしてお客さまに愛されるフレーバーは何なのか」を大切にしています。
――つまり、それは過去にトレンドにとらわれて失敗したことがあるのでしょうか。
【吉岡さん】そうです。例えば、05年2月に発売した「小倉」は当時人気のフレーバーでしたが、エッセルのターゲットに合わず苦戦を強いられました。また、07年11月に発売した杏仁豆腐味も、当初アジアンスイーツとして人気を博していたので採用しましたが、人気は出ませんでした。
![明治エッセル スーパーカップ「小倉」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/1/480/img_618f0b70a4edb104fcb2ac45a66b317b381979.jpg)
また、毎年夏には期間限定でヨーグルト風味のさっぱりとしたフレーバーを出していますが、20年に発売した白桃ヨーグルト味や、冬の期間限定フレーバーとして初登場したほうじ茶クッキーは、ターゲットが狭く売り上げとしては振るいませんでした。
■多くて年間6アイテムの新フレーバーが誕生
今までトータルで60種類のフレーバーが誕生してますが、今までの傾向を見ていると“カフェオレ&クッキー(05年)”、“クッキーバニラ(08年)”など具材が入っている定番のフレーバーが好まれているようです。コアなファンがついているのは、とがったフレーバーの代名詞である“チョコミント”(02年夏)で、今もお客さま相談センターに再販売の問い合わせが絶えません。
![明治エッセル スーパーカップ「チョコミント」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/a/480/img_8a7f2122d8a4458786d8e363ed03bc20327740.jpg)
最近面白いと思ったのは、SNSがキッカケで“紅茶クッキー(19年)”の売り上げが伸びるなど、何がきっかけで火がつくかわからないことです。今後もニッチになり過ぎず、お客さまファーストでブランドにマッチした味作りに専念します。
![明治エッセル スーパーカップ「紅茶クッキー」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/480/img_8b756bccac91c9965f8712406336f50b388077.jpg)
――新商品はどれくらいのサイクルで、年間いくつ出していますか。
【吉岡さん】「エッセル」全体で、多くて年間10アイテムを発売しています。「エッセル スーパーカップ」では半期で3商品、高価格帯の「エッセル スイーツ」では半期で2商品です。
――定番フレーバーの超バニラ、チョコクッキー、抹茶が売り上げ1~3位を占めていますよね。それにもかかわらず、次々と新商品を出す狙いは何でしょうか。
■200mlという容量はアレンジレシピに使いやすい
【吉岡さん】定番商品のリピーターに頼るだけではブランドが育っていきません。定番を守りつつも、トライアル(新規)を獲得するために新商品を投下して興味を持ってもらい、柱となる定番商品への購買につながるように常に新商品を出しています。
――最近、特に注力している取り組みはありますか。
【吉岡さん】アレンジレシピの開発で食シーンを増やすことです。
18年ごろからアレンジレシピ開発をSNSチームと連携して行っています。大切にしているのは、「エッセルってこんな使い方があったの!」という驚きです。それこそ、シズリーナ荒井さんが考案したコンビニの冷やし中華に「エッセル スーパーカップ 超バニラ」を入れるレシピや、材料3つ(「エッセル スーパーカップ 超バニラ」、クリームチーズ、薄力粉)だけで作るバスクチーズケーキは社内でもざわつきました。これもある意味驚きですよね。
――94年から守り続けている200mlという容量は、アレンジに最適だと思います。例えば、牛乳200mlや100mlのレシピの場合、エッセルではまるごと1カップや2分の1カップと容易に置き換えられます。
お菓子作りで大切なことは、材料をきっちり量ること。メニューによっては材料が1g違っただけでも失敗してしまうことがあります。だからこそ、「エッセル スーパーカップ」はお菓子づくりやアレンジレシピに最適だと思います。
■今やアイスは通年で楽しめるもの
【吉岡さん】実は、アイスの需要は夏だけではありません。冬に濃厚で特別感のあるアイスの需要が高まることに着目して、16年12月に高価格帯の「エッセルスイーツ」というブランドを立ち上げました。
第1弾として、アイスクリームならではのおいしさを上質なスイーツの味わいに仕立て上げた、ケーキのようなアイスのような層状アイスクリームデザート「エッセル スーパーカップ Sweet’s 苺ショートケーキ」を全国発売しました。おかげさまで、高級デザート路線のアイスで価格が高め〔220円(税別)〕にもかかわらず、こちらの予想を上回り一時販売休止になってしまうほどのブランドになりました。
――確かに発売当時、4層のカップアイスはエポックメイキングな商品でした。この商品が登場してからというもの、他のアイスメーカーも4層のカップアイスやパフェ系のアイスをこぞって出してきましたよね。アイスが夏だけではなく通年で楽しめるようになったのも16年ごろからでした。
新フレーバーやアレンジレシピの開発で、常に新しい挑戦を続ける「エッセル スーパーカップ」。味の“美味さ”もさることながら、定番品が好調なうちに新商品で上乗せを図るというビジネス展開も非常に“うまい”。
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アイス評論家
東京藝術大学出身のアイス研究家として、年間4000種類以上ものアイスクリームを研究する。アイス料理研究家・企業コラボニストとして「雪見カレーヌードル」「エッセル冷やし中華」など、意外な掛け合わせレシピを考案し話題に。テレビ番組やウェブメディアなどに多数出演。インスタグラム
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(アイス評論家 シズリーナ荒井)
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