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「ここへきて厚労省が注意喚起」ワクチン後の"心筋炎"と"一般的な副反応"の見分け方6つ

プレジデントオンライン / 2021年10月20日 11時15分

出典=厚生労働省 新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について

厚労省が10月15日、「新型コロナワクチンを接種した後、心筋炎・心膜炎の発症事例が報告されている」とHPで注意喚起を始めた。医師の筒井冨美氏は「ウイルス性心筋炎・心膜炎は、心筋梗塞や心筋症とは別物です。ワクチン後によくある発熱などの一般的な副反応との区別が困難な面はあるものの、接種後の心筋炎を疑ったらチェックすべき6つのポイントがある」という――。

■ここへきて厚労省がワクチン接種後の心筋炎の注意喚起し始めた

全ての都道府県で緊急事態宣言が解除されて、約3週間が経過した。猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)デルタ株による第5波の新規感染者数は今も減り続けている。

第5波制圧に最も有効だったのはワクチンであろう。2021年春に高齢者から始まったワクチン集団接種によって、日本国民の66.1%が2回接種を終了しており(10月15日、参照=首相官邸HP)、現在は基礎疾患のない若者への集団接種が施行されている。

しかし10月15日、ワクチン接種を予定している若者に気になるニュースが発表された。厚生労働省が次のようにホームページで注意喚起したのだ。

「メッセンジャーRNA(以下mRNA)ワクチンを接種した後、心筋炎・心膜炎の発症事例が報告されている」
「中でも、10~20代男性・モデルナ社ワクチンではリスクが高い」

接種後の死亡という事例で記憶に新しいのは、プロ野球の中日ドラゴンズ・木下雄介投手のケースだ。6月28日にコロナワクチンの1回目の接種を受け、7月6日の練習中に息苦しさを訴えて緊急入院、8月3日に死去した(享年27)と報道されている。詳細な病名や症状の経過は非公開だけに、多くの人が気になっているニュースではないだろうか。

そこで本稿では、ワクチン後の心筋炎を早期発見し、重症化させないためのポイントを改めて整理してみよう(参照:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院HP、以下同)。

mRNAワクチンは今回のコロナ禍で初めて実用化されたタイプのワクチンである。コロナウイルス表面にあるトゲトゲ部分の設計図となるメッセンジャーリボ核酸(mesenger Ribo-Nucleic acid:mRNA)を脂質膜で包んだ製剤である。

このmRNAワクチンを接種すると、人体内ではmRNAを基にウイルス表面のトゲトゲが産生され、さらにトゲトゲに対する抗体も産生されるので、コロナウイルスへの免疫を獲得できる。ウイルスそのものを注射しているわけではないので接種してもコロナ感染することはなく、接種後数日間で分解されるので人間のDNAに組み込まれることはない。

日本で公認されているコロナワクチンは、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社の3種であり、前2社がmRNAワクチンである。発症予防効果は、ファイザー社が約95%、モデルナ社が約94%と、アストラゼネカ社製の従来型(ベクター)ワクチン約70%に比べて高い効果が報告されている。

なお、開発者のカタリン・カリコ氏はハンガリーから米国へ移民した女性研究者であり、mRNAワクチンの実用化でノーベル医学生理学賞が確実視されているが、2021年の選考には間に合わなかったようだ。

■ウイルス性心筋炎・心膜炎とは?~心筋梗塞や心筋症とは別物~

心筋炎・心膜炎とは耳慣れない病気だが、心臓の筋肉の炎症を「心筋炎」、心臓を包む膜の炎症を「心膜炎」という。心臓の血管が詰まって心筋が動かなくなる「心筋梗塞」、心臓の筋肉が徐々に衰えてゆく「心筋症」とは別の病気である。

心筋炎の原因として最も多いのがウイルスであり、「ちょっとダルい」程度の軽症例から、急激にショック状態となりECMO(エクモ)が必要になるような劇症型心筋炎までさまざまなレベルがある。経過としては、まず「熱・咳」などの風邪症状があり、その数日後に心筋炎・心膜炎を発症するパターンが多い。原因としてはコクサッキーウイルスやインフルエンザウイルスによるものが多いがコロナウイルスやエイズウイルスによる心筋炎も報告されている。

そして確率は低いものの、今回のコロナワクチン(mRNAワクチン)接種後にも心筋炎・心膜炎の発症例が報告されるようになった。コロナワクチン先発国のイスラエルはこのように報告している(Myocarditis after BNT162b2 mRNA Vaccine against Covid-19 in Israel: NEJM Oct 6, 2021)。

「510万人にコロナワクチン接種したところ、ファイザー社ワクチン接種後の心筋炎が136例確認、うち129例(95%)は軽症だったが、1例は劇症型で死亡」
「若年・男性・接種2回目は高リスク」

さらに、厚生労働省によれば、同じmRNAワクチンでもモデルナ社のほうがファイザー社ワクチンよりも、心筋炎発症率が高いことが、判明している。10代男性に限定すればモデルナ社はファイザー社の7.8倍の報告数がある(図1参照)。

心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度(100万人接種当たり)
国内で心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度(100万人当たり) 出典=厚生労働省 新型コロナワクチンQ&Aより

こうした流れを受けて、10月上旬にスウェーデンでは30歳以下、デンマークは18歳以下へのモデルナ社ワクチン接種停止を発表している。

とはいえ、ワクチン後心筋炎の大部分は軽症であり、自然に軽快する。またワクチンを打たずにコロナ感染した場合の心筋炎発生率よりも、ワクチン後の心筋炎のほうが頻度も低い(図2参照)。よって、心筋炎のリスクを考えても、ワクチン接種そのものを回避する必要はない。

心筋炎・心膜炎が疑われた報告頻度の比較(男性)

■ワクチン後に以下の症状があれば、専門機関に相談を

心筋炎の初期症状は、「発熱」「胸や背中の痛み」「全身の倦怠感」などであり、悩ましいことに「一般的なワクチン副反応(※)」との区別が困難である。しかしながら、コロナワクチン接種後に以下のような症状が見られた場合には、心筋炎・心膜炎を疑って専門機関に相談すべきだろう。

※コロナワクチン後によくある発熱や倦怠感など、多くは48時間以内に自然に軽快する症状。ワクチン後の心筋炎も副反応のひとつだが、稀に対応を誤ると命にかかわる事態になることがある。

1:接種後2日目以降に体調が悪化

一般的なコロナワクチン副反応は接種当日夜から翌日をピークに軽快することが多い。2日目以降に「だんだん体が重くなる」「胸が痛くなってきた」など体調が悪化していく場合は、副反応以外の病気を疑うサインのひとつである。

手書きの心臓
※写真はイメージです(写真=iStock.com/cako74)
2:安静にしても心拍数が多い

心筋炎で心臓の拍出力が弱ってくると、生体バランスが働き、心拍数が上がることが多い。普段の心拍数を把握しておき、2割以上高い場合は要注意である。

3:むくみ、静脈がくっきり見える

心不全では心臓のポンプ機能が低下するので、静脈に血液がたまりやすくなり、顔や足がむくんだり、手足や頸(くび)の血管がくっきり見えたりすることが多い。履きなれた靴がスルッと入らないこともある。良くないサインのひとつである。

4:階段を上れない、転倒、失禁

健康な成人なら発熱時でも「コンビニで買い物」くらいは可能である。しかし、心不全が絡むと「階段を上れない」「トイレに行くだけで倒れる」「尿失禁」のように活動レベルが著しく低下することが多い。こういう症状があれば病院受診が勧められる。

5:ピンク色の水っぽい痰(たん)

一般的な咳だと、痰は黄緑っぽいことが多い。だが、心不全の痰は「肺に水がたまる(肺水腫)」ことによる痰なので、ピンク色の水っぽい痰となる。病院受診すべきサインである。

6:脈がとぶ(不整脈)

心筋炎・心膜炎や心不全が進行すると、不整脈が出現することがある。1~5に加えて不整脈が出現したら、救急車をコールしてでも病院受診すべき緊急事態である。

1~3のうち複数、あるいは4~6が単独でも症状が確認できたら、ワクチン副反応相談センターへの電話相談、もしくは病院受診が勧められる。

病院を受診する場合は、ワクチン接種を受けた施設には固執せず、循環器内科があり心臓超音波検査(心エコー図検査)の可能な施設がおすすめである。胸にゼリーを塗って、超音波で心臓の動きを確認する検査であり、痛みや食事制限もない。受診前に電話などで確認しておきたい。

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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)

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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)

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