「上が言っていることだから」を連発する上司を一発で黙らせる部下の"すごい質問"
プレジデントオンライン / 2021年10月29日 8時15分
※本稿は、見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
■自己愛が強い人
自己愛が強い人は、自分が優位に立ちたい、相手を思い通りにしたい、人を自分より上か下かで判断するといった傾向があります。自己愛型の中でもこの傾向が強い人は、目下の人への態度が高圧的であることが多いでしょう。
自動車メーカーの生産管理部に勤めるSさんは、直属の上司の口ぐせに悩まされています。
ある日の朝礼でのことです。
「来月から、うちが管轄している工場の生産ラインの見直しを行うことになりました。みなさんは、より一層の効率化にむけて準備をしてください」と上司が言ったそうです。Sさんをはじめとする部下たちは、「なぜ、このタイミングで生産ラインの見直しをするのだろう?」と疑問に思いました。というのも、来月は生産管理部の中でも特に忙しい時期であったことと、生産ラインの見直しは数カ月前にすでに行われていてそれなりに効率化ができていたからです。そこでSさんは、「生産ラインの見直しは行ったばかりですし、これ以上の見直しは、難しいのではないでしょうか?」と上司に質問しました。
■「上が言っていることだから」の連発
すると上司はこう言ったそうです。
「これは上が言っていることだから。やるって決まったからには、やるしかないんだよ!」
Sさんは「またか……」と思いました。確か先月も先々月も、不可解な指示があり、その目的は何なのか、と上司に聞いたところ同じように「上が言っていることだから」とかわされてしまったのです。
Sさんは「そういえば、この上司の下についてからは、意見を言うたびに『上が言っていることだから』の繰り返しだったな」とため息交じりに振り返りました。
上司に「上が言っていることだから」と言われるたびに、何も言い返せない自分に腹が立つと同時に、「上司はああ言っているけど、本当に上が言っていることなのか? 上司自身の意向なのではないか」と勘繰ったりもしたそうです。
最近のSさんは、自分の意見をまともに取り合ってくれない上司とのやり取りに疲れ果て、仕事へのモチベーションがすっかり下がってしまったと言います。
■「恨むなら上を恨んでくれ」という卑怯な態度
「上が言っていることだから」が口ぐせの中間管理職は、たくさん存在します。
![上司と部下](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/6/670/img_d679fd3f430bcaf78498d1ec296c59f2619633.jpg)
では、「上が言っていることだから」が口ぐせの上司は、どんな人なのでしょうか。
「上が言っていることだから」と、何でも上のせいにしてしまうのは、「自分のことは、恨むなよ。恨むならその上を恨んでくれ」という卑怯な態度の現れです。また、虎の威を借る狐と一緒で、上役の権力を盾にして優位な立場に立ちたいのでしょう。
「上が言っていることだから」のセリフは、実は大変強力なパワーワードです。何せ、部下が何を言っても、その言葉さえ使えば、部下の追及をかわすことができるのですから。部下が上司に疑問や質問を投げかけても、「それは上が決めたことだから」「上が言っているからね」と言ってしまえば、部下は納得せざるを得ません。いうなれば、部下をねじ伏せるパワーワードなのです。
このようにして部下を支配下におきたいという欲求は、自分が優位に立ちたい、相手を思い通りにしたいという自己愛型の典型的思考でもあります。
■「あなたはどう思っているのですか?」
では、そのように言われた部下は押し黙るしかないのでしょうか。先ほど、上司に「上が言っていることだから」と言われた部下は、納得せざるを得ない、と書きました。確かに会社組織に生きている以上、上からの命令には従うしかないのですが、パワーワードを使う上司に一矢報いることはできます。
「上の意見はわかりましたが、あなたはどう思っているのですか?」と、上司に直接聞いてみるのです。「そんなこと上司に聞けるわけがない」と思うかもしれませんが、聞き方さえ注意すれば上司を怒らせることはありません。
■疑わず、寄り添った目線で質問を
たとえば、いかにも上司を疑るような目で「本当に上が言っていることなんですか?」とやってしまってはダメです。こんな聞き方をすれば、上司に目をつけられていじめの対象になってしまうかもしれません。
![見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/3/200/img_33becc948aa171134e0ca17ccc4176d4365527.jpg)
そうではなく、相手を気遣う気持ちを持って質問します。
「この件に関して、私は疑問があるのですが○○課長自身はどんなふうにお考えですか?」
という聞き方ならば、相手が不快に感じることはないでしょう。さらにこのように、相手に配慮した聞き方をすれば、上司の方でも次からは安易に「上が言っていることだから」という言葉は使いづらくなるという効果もあります。
このように、相手の気持ちを尊重しつつ、自分の意見を素直に伝えることができる状態をアサーティブと言います。アサーティブなコミュニケーションスキルが身に付けば、理不尽なことを言ってくる人に対しても、相手の攻撃を抑えることができます。
アサーティブなコミュニケーションは、嫌なことをしてくる相手にこそ、最も使うべきスキルなのです。
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日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事
1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、98年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。20年かけて開発した2日間の「ヒューマンスキルを強化するマネジメント研修」は大企業を中心に絶大な支持を得ている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。
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(日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事 見波 利幸)
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