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行く先々に仲間由紀恵似の美女が…中国の諜報機関が日本人官僚を落とすために使った"ある手口"

プレジデントオンライン / 2021年10月28日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/OSTILL

女性スパイが男性に対して色仕掛けで迫る「ハニートラップ」。スパイ映画では定番のシーンだが、現実に存在するのだろうか。『警視庁公安部外事課』(光文社)を書いた勝丸円覚さんは「実際に中国やロシアの諜報機関は、キャリア官僚や大企業の幹部にハニートラップを仕掛けている」という――。

※本稿は、勝丸円覚『警視庁公安部外事課』(光文社)の一部を再編集したものです。

■女性スパイを訓練所において全裸で生活させる

スパイ映画では、よくハニートラップの話が出てくる。

ハニートラップとは、主に女性スパイが男性に対して色仕掛けで行う諜報活動のことをいう。

結論から述べると、日本の公安がハニートラップを仕掛けることはない。その理由は単純明快で、費用対効果が悪すぎるからだ。

しかし、海外の諜報機関などでは、今なお横行しているのが現状だ。

アメリカや韓国なども使うことがあるが、特にこの手口を多用するのは中国、そしてロシアだろう。ロシアがソ連だった頃は、女性スパイを訓練所において全裸で生活させたり、同僚男性と肉体関係を持たせたりすることで、性的な羞恥心を取り去ったという。

東西冷戦時代には、主にヨーロッパでソ連の美人スパイが暗躍した。

近年では、「美しすぎるスパイ」と言われたアンナ・チャップマンが有名だ。

チャップマンはロシア対外情報庁(SVR)の命を受け、表向きはアメリカ、マンハッタンの不動産会社のCEOを務めながら、アメリカの核弾頭開発計画などの情報を色仕掛けで収集していた。

■「後から協力者に仕立て上げる」という手口が多い

日本の公安がハニートラップを仕掛けることはない一方で、仕掛けられることはある。

中国やロシアなどの国々からで、公安捜査員だけでなく、キャリア官僚や大企業の幹部なども標的にされる。

ところで、ハニートラップというと「訓練されたプロフェッショナルな女性」というイメージがあるかもしれないが、それは間違い。

かつてはそういうこともあったが、現在は、わざわざ専門のハニートラップ要員を育てるようなことはまずしない。

では、どうしているのかというと、「後づけ」。

対象者が好意を寄せている、あるいは気になっている女性を把握し、彼女に金銭を渡すなどして「後から協力者に仕立て上げる」という手法だ。

少々荒っぽい気もするが、これが結構な成果を挙げている。

しかもゼロからプロの要員を育てるよりもはるかに楽、かつ安上がりなので、理にかなった方法といえるだろう。

たとえば中国の場合、ターゲットがたまたま気に入った女性を、後から金銭を渡すなどして協力者に仕立てる手口が多いようだ。

■至るところに「仲間由紀恵」が現れる

外務省のある若いキャリア外交官(将来の大使候補)が、中国人の経営するバーに行った時のこと。

バーのオーナーに好きな女性のタイプを聞かれた彼は、即座に仲間由紀恵と答えた。

すると後日、「仲間由紀恵」が至るところに現れた。

自宅近くのコンビニ内で肩が触れ、外国語訛(なま)りで「ごめんなさい」と謝ってきた「仲間由紀恵」、行きつけのバーや居酒屋でたまたま隣に座った「仲間由紀恵」、帰宅時に外務省から出たところで出くわした「仲間由紀恵」、電車の中で目が合った「仲間由紀恵」……。

みな同一人物だった。

怖くなった彼は警察にかけこもうとしたのだが、正式に相談するのはキャリア外交官のプライドが許さない。

そこで、かねてから面識のある私に、「裏口」からコンタクトをとってきた。

調査したところ、この「仲間由紀恵」は中国人留学生であることが判明した。

バーの中国人オーナーのもう一つの顔はスパイと目されていて、外交官の話を聞くやただちに日本語ができる仲間由紀恵似の女性を見つけてきたのである。

こうした工作を日常的に行うには、相当な規模の予算や人員が必要になる。

バーカウンターで微笑するアジアの美女
写真=iStock.com/CandyRetriever
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CandyRetriever

■パーティーで近寄ってくる美しい女性にご用心

スパイ機関というのは、標的を決めたらそこに予算と人員を惜しみなくつぎ込み、あらゆる策を講じる存在だということを覚えておいたほうがいい。

ハニートラップが盛んな某国大使館主催のパーティーでは、必ずといっていいほど美しい女性がたくさんいる。

公安の中でも外事課に勤務していると、こういう場に顔を出すことがある。

男性の同行者には、あらかじめ「美人がたくさん寄ってくると思うけど、気をつけてくださいね」と釘をさしておく。

にもかかわらず、アルコールが入った状態で、美しい女性が近づいてくると、たちまち腰砕けになってしまう。

後日、その美人から同行者に連絡がくるのだが、誘いに乗るのは絶対危険。

鼻の下を伸ばしている彼に対して、「わかっているとは思いますが、会うのは危険ですよ。ましてや、のこのこホテルまで行かないように」と強く念を押す。

こうしたことを何度も続けてくると、仕事以外のパーティーやレセプションなどの場で女性と知り合っても、まずその場の挨拶で終わってしまう。

公安の悲しい性で、身構えてしまうからだ。女性が身構えるのは普通だけど、男の側が過剰に警戒すると、相手の女性に引かれてしまう。

なので、最初からこういう場で、女性と仲良くなる可能性は捨てて、自然に振る舞うようにしている。

■日本で暗躍する世界のスパイたち

ここで、各国の諜報員に対し、私たち日本の公安警察がどのような目で見ているか、そのことを簡単に触れてみたい。

勝丸円覚『警視庁公安部外事課』(光文社)
勝丸円覚『警視庁公安部外事課』(光文社)

【ロシア】
ロシアには諜報機関が主に三つ存在する。
旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)の流れを汲み、ロシア国内で防諜活動に従事するFSB(連邦保安局)、国外で情報を収集するSVR(ロシア対外情報庁)と軍直轄のGRU(軍参謀本部情報総局)だ(下図参照)。
日本では本格的な訓練を受け、実践を積んだFSBやGRUのスパイが諜報活動に従事している。
パーティーやセミナーに出席し、名刺交換をするなどして、独自のネットワークを構築している。

【中国】
その時々の情報関心により、日本にいる中国人の中から、エリートビジネスマンや、大学で教職にある者、事業で成功している者などを選別し、硬軟様々な手段を使って諜報活動に従事させる。
スパイが直接活動に関わることは少なく、自分の意を汲む者を間に挟むことが多いので、足跡をたどりにくい。
また優秀な留学生の青田買いにも積極的で、それには大使館の敷地外にある別館が関わっていると言われている。
必要とあれば、美人留学生をハニートラップに使用することも。

中国のハッカー集団
写真=iStock.com/vchal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vchal

イスラエル
イスラエルの諜報員といえば、映画や小説によく登場するモサド。
その存在や影響力の大きさから「スパイ大国」とも評されるイスラエルだが、実は、どのイスラエル大使館にもモサドは配置されていない。
普通のビジネスマンとして日本に滞在している人間が、諜報活動を行っているのである。

【オーストラリア】
私たち日本人が想像する以上に、オーストラリアの人たちは日本に関心を持っている。
日本が「信頼できる同盟国であり続けてほしい」と願っているのが、ひしひしと伝わってくる。
彼らの活動の中心は、オーストラリアに対する日本人の印象をよりよくすることである。

【イギリス】【フランス】【イタリア】
これら欧米の国々は、実は日本にあまり関心がない。

【北朝鮮】
在日北朝鮮人の動向を調査し、北朝鮮人スパイや協力者のリクルートや運営をしている。「日本におけるテロ」という意味では、最も要注意とされる存在。

【韓国】
朝鮮総連の動向を中心に情報収集している。
中国と同様、必要があればハニートラップを繰り出すと言われているが、日本国内で日本人に仕掛けてもメリットはないので、実際はあまり聞かない。

【アメリカ】
日本における活動だけで本が書ける、と言われるほど、様々な局面に登場する。
予算、人員、作戦等、いずれをとってもズバ抜けた実力を保持している。
ひとたび「必要」と判断されたことなら、どんなことでも実行する。

【ベトナム】【タイ】【マレーシア】【シンガポール】
これらアジア各国は、諜報活動を通して自国への悪い印象になる原因を探し、なくす努力をしている。

これを読んでどんな感想をお持ちになっただろう?

実感はないと思うが、実はあなたのすぐ近くにも世界各国の諜報員は存在していて、日々秘匿の任務を遂行しているのだ。

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勝丸 円覚(かつまる・えんかく)
元公安捜査員
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてからは、一貫して公安、外事畑を歩んだ。途中、数年間、アフリカ某国の大使館にも勤務した。数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活動。『警視庁公安部外事課』(光文社)が初の著書。

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(元公安捜査員 勝丸 円覚)

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