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「報われない努力はない」武田真治が再ブレイクするまでサックスと筋トレを続けていた理由

プレジデントオンライン / 2021年10月30日 10時15分

武田真治さん(撮影=前康輔)

努力はいつか報われるのだろうか。タレントの武田真治さんは「サックスや筋トレを続けてきた結果、今は再ブレイクと呼ばれる華やかな時間を過ごしている。僕のレベルでは、報われない努力はない」という――。

※本稿は、武田真治『上には上がいる。中には自分しかいない。』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■努力はいつかきっと日の目を見る

もしあなたに、大好きで人知れず続けていることがあるなら、僕はあえて言いたい。

「それは、いつか日の目を見るよ」って。

僕は『めちゃイケ』というバラエティ番組に関わっていたにもかかわらず、バッターボックスには年に何回くらい立てていただろう。毎週どちらかというと、ベンチに近い立ち位置。たまにバッターボックスに立たせてもらったときには、ありがたいことにヒットやホームランが打てるように共演者や編集に助けてもらっていたんだと思います。

少し前にイチローさんの動画を観ていたら、「努力は報われますか?」という質問に「報われるとは限らない」とはっきり答えていました。

そりゃ、メジャーリーグで10年連続200本安打を打っている人からしたら、努力が必ずしも叶うとは限らないと言うべきでしょう。願いのレベルが高すぎるのです。

なにを目標に設定するかによると思うけれど、僕レベルでは、「願いは叶う」と言いたい。「報われない努力はない」と言いたいんです。

体調を崩し、「強靭な肉体が欲しい」と思って努力した結果、かつての痩せ細った中性的なフェミ男が、いまやベンチプレスで‟TEPPEN”を取れていたりするんです。遅咲きのセカンドブレイクの機会を得たりするんです。

願うところから始めましょう。そうしてコツコツと積み重ねた努力は、いつか必ず日の目を見るべきなんです。

■僕が「みんな、もっと偏れ!」と言うワケ

僕自身の30代で、無駄骨だ、空回りだと思っていたことも、その後の人生できちんと回収されていたりします。

もっと要領よくできなかったのかとも思うけれど、要領がいいように見える人というのは、実はそれ以前に人よりもちゃんと努力していて、その努力した経験がちょっとした「時短」を生んでいるくらいで、要領というものは本来ないのかもしれないと今は思っています。

結局、どんな面倒なことも真正面から受け止め、自分でやっていくしかないんです。

僕は「みんな、もっと偏(かたよ)れ!」と言いたい。

なぜなら僕の場合、サックスと筋トレが好きだと偏り続けた結果が今なのです。

サックスや筋トレは、僕なんかのレベルでも習得するのに数年単位の時間を要します。今日思い立った人が、明日にでもなれる「キャラ」ではありません。そういった特性は市場の規模にかかわらず、個性となり得るのかなと思います。

逆に、特性を伴わない個性は、すぐにでも真似され、誰かに取って代わられます。

個性的でいたいなら、まず自分の特性を伸ばすべきではないでしょうか。

■キング・カズに見る一流の絶対条件

傍(はた)からしたら、僕はバランスが取れているように見えるかもしれないけれど、これは精一杯偏った僕なりの結果。まだまだ未熟な僕の通過点。もっともっと好きなことを追求していきたいと思っています。

もちろん協調性やバランスも大切ですが、実社会では意外と偏った人=スペシャリストが重宝されてはいませんか?

新しい発見や感動なんて、多分ただバランスがいいだけの人からは生まれないんじゃないかな。

ノーベル賞を取る研究者だって、オリンピックで活躍するアスリートだって、人生を懸けて究極に偏った結果ですもんね。

キング・カズ(三浦知良さん)が50代になっても現役で頑張っているのは、「日本代表になってW杯で戦いたい」という夢を諦めていないからだと勝手に思っています。

スタジアムの芝生の上のサッカーボール
写真=iStock.com/NiseriN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NiseriN

1998年のサッカーフランスW杯では、日本のW杯出場にあれだけ貢献したのに、直前になって日本代表からはずれ、W杯の経験を逃しています。

あのときもし代表に選ばれてW杯のピッチに立っていたら、もしかしたらすでに引退してサッカーとは関係のない仕事で活躍されていたかもしれない。それがなんであれ、おそらく成功していたでしょうが、彼はそうしなかった。現役のサッカー選手でいることを今も選択し続けています。

今後その夢が叶うか叶わないかで判断せず、叶うとしたら準備ができていなければありえないと判断しているのではないでしょうか。先の見えない状況で、肉体的にも精神的にも夢への準備をし続けられるのは、一流の絶対的な条件なのでしょう。

画像=『上には上がいる。中には自分しかいない。』
写真=『上には上がいる。中には自分しかいない。』より

■完結したと思っていた上野由岐子投手の伝説

東京2020オリンピック。なにに驚いたって、それはもう、女子ソフトボール日本代表チームのエースとして、上野由岐子投手がまだ投げていたことです。

失礼ながら、彼女のソフトボールの物語は、2008年の北京オリンピックの準決勝、決勝進出決定戦、決勝戦という2日間3試合413球を投げ抜き、見事金メダルを獲得して完結したものだとばかり思っていました。北京オリンピック以降、ソフトボールは公式競技からはずされることも踏まえ、有終の美を飾り、伝説になったんだと。

しかし、公式種目として久々に復活した今回も、決勝戦で金メダルが決まった瞬間、マウンドに立っていたのは上野投手でした。

「13年越しの連覇!」

いやいやいや、そんな言葉あります? 連覇って、翌年か翌大会に使う言葉でしょ。いろいろぶっ飛びすぎていて、頭がついていけなくて涙しか出ませんでした。

■もう、考え方が金メダル

調べたら、2019年の国内のリーグ戦でピッチャーライナーを左顎に受け、下顎骨骨折で全治3カ月の大怪我をしています。普通なら競技をやめる理由にしかならないような出来事ですが、上野投手の見解は「北京で金を獲ってから、惰性でやっていたのを神様が怒った」「東京2020に向けてスイッチが入った」と。

もう、考え方が金メダル。

自分に起きるどんなことも、前に進む原動力に変えられる心のフィルターこそ、上野投手の強みなのではないでしょうか。

直後のインタビューでは「諦めなければ夢は叶う」と、シンプルで力強いメッセージ……。

僕らは何度、あの方から大切なことを学ぶのでしょう。

よく13年間、オリンピックという大きな目標もないまま、同じ夢を自分の夢として掲げ続け、追い続けられたなと、ただただ敬服します。

「これからソフトボール競技はなくなりますが、諦めることなくしっかり前に進んでいけたらいいなと思います」って……続けるんですね!!

その言葉に、得も言われぬ力が湧いてきます。

人生が続く限り挑戦する。こういう人間でありたいと思います。

『上には上がいる。中には自分しかいない。』
写真=『上には上がいる。中には自分しかいない。』より

■眠っている才能や気づいていない特性はある

「自分にはなんの才能もない」って、一体誰が決めたの?

決めつけているのは自分かも。

才能なんてなんにもないほうが、人生の冒険に踏み出さなくてよくて、安心できるからでしょうか。

本当にそれでいいですか?

僕が人よりベンチプレスを多くの回数持ち上げられるなんてことを知ったのは、45歳のときでした。

バーベルにワークアウト
写真=iStock.com/starush
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/starush

それから、ありがたいことに再ブレイクと呼ばれる華やかな時間を過ごしています。

眠っている才能とか気づいていない特性って、本当にあるものですよ。

「君が凡人って誰が決めた? 君が試していないだけでは?」とこっそり耳打ちしたくなります。

凡人という人間はいない。みんなが特別な一人なんですから。

■無駄なことにしか感動はない

子どもの頃にテレビで観ていた変身ヒーローたちは、みんな人助けをしていました。ここぞという場面でカッコよく現れて、悪を倒す。

大人になって思うのは、目の前で危機的な状況が繰り広げられたり、犯罪行為に出くわすことなんて、ほとんどないってこと。

どうやったらヒーローになれるか、人の役に立てるかを考えるけれど、答えなんて簡単に出ません。

でもヒーローになるのを諦めるのではなく、やれることをコツコツとやる。日々仕事をする。そして、きちんと納税する。そのお金が誰かの役に立っていると信じて。信じられないときは、ちゃんと政治に向き合う。

子どもの頃の想像よりはるかに地味だけれど、きっとこれもヒーローなんだと思うのです。

よくよく考えたら、人間は100メートルを10秒を切って走る必要性はないし、氷上を特殊な靴でクルクル回る必要なんかありません。

エベレストに無酸素で登ったり、南極圏を犬ぞりで探検したりする必要もない。

でも、その姿を目の当たりにすると、僕らは心の底から感動します。

他人から見たら無駄だと思えることでも突き詰めると、感動が生まれます。

もしかしたら、無駄なことにしか感動はないのかもしれません。いや、人を感動させられたら、もうそれは無駄ではないですよね。

他人が「なにそれ、無駄!」と思うくらい自らの特性を突き詰めることが、自分が自分自身の人生の主人公になる一つの道なのかも。

思う限りの無駄を突き詰めてみたいものです。

■「自分らしさ」が分からないあなたへ

「人」と言えば済むのに、同じ意味で使われる「人間」という言葉があります。

この「間」という字を入れるのはなんでなのか。ずっと気になっていました。

最近辿り着いた僕なりの結論は、「人と人の間に存在して、どうあるかが人間の価値なんだ」ということ。

人と関わらなければ、いくらでも嘘はつけますから。「僕はチャーリー・パーカー並みにサックスが上手に吹ける。超絶イケメンで、身長は185センチだ」とだって言えるけれど、人と人の間で比べられたら、そんな嘘は通りません。

「自分らしい生き方ができたら」と誰もが望みますが、この「自分らしさ」を見つけるのが、本当に難しいもの。

結局、自分の個性や特性は、他人との違いや比較でしかないからなんでしょうね。

「自分らしさ」の答えが見つからずに悩んでいる人がいるなら、引きこもって孤独に考え込むより、思い切って外に出て、いろいろな人と交わっていくことをおすすめします。

「人を知ることで見えてくる自分」って、実際いるものですよ。

■誰もが無観客の中で生きている

コロナ禍で、音楽でもスポーツでも、無観客での開催が増えました。

無観客だと、ミュージシャンもスポーツ選手も、張り合いがないのはわかりきったこと。

武田真治『上には上がいる。中には自分しかいない。』(幻冬舎)
武田真治『上には上がいる。中には自分しかいない。』(幻冬舎)

僕なんかのサックスでも、ライブで応援してくれる人がいると自然にパワーが出るものです。

でも、そもそも人生なんてほとんどは無観客なんですよね。

努力の過程を誰にも見られてないし、応援されることも褒められることもなかなかないものでは?

コロナ禍になって気づいて恥ずかしい限りです。

だから、僕なんかがこの新型コロナの現状を嘆いてはいけないなと。僕のような仕事をしている人間こそが今、みなさんを応援すべきだと。

ともに頑張りましょうね!

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武田 真治(たけだ・しんじ)
俳優、ミュージシャン
1972年、北海道生まれ。89年、第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリ受賞。翌90年にTVドラマで俳優デビューを果たす。映画「御法度」では日本アカデミー賞優秀助演男優賞とブルーリボン賞最優秀助演男優賞を受賞。演劇・ミュージカルで活躍する一方、NHK「みんなで筋肉体操」で鍛え抜かれた肉体に注目が集まる。また、サックスプレイヤーとして多彩なミュージシャンと共演、ライブをこなす。著書に『優雅な肉体が最高の復讐である。』『上には上がいる。中には自分しかいない。』(いずれも幻冬舎)がある。

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(俳優、ミュージシャン 武田 真治)

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