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「冬に第6波が来ても、緊急事態宣言は必要ない」現役医師が空気を読まずそう断言する理由

プレジデントオンライン / 2021年10月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

新型コロナの新規感染者が急速に減ったが、多くの専門家は「第6波」について注意を呼びかけている。医師の大和田潔氏は「コロナ専門家が新規感染者の数字にこだわった結果、長期の自粛を強いられることになった。もし感染者数が増えることがあっても、もう緊急事態宣言は必要ない」という――。

■急減した新型コロナの「新規感染者」

「感染者数」(陽性者数)が急減しています。全国でも数百人、ゼロの県も増えている状況です。緊急事態宣言も終了して普通の暮らしが戻りつつあります。遠い道のりでした。みなさんお疲れさまでした。のんびり考えるのに最適な時間です。

8月に、政府分科会の尾身茂会長は、東京の新規感染者は最悪の場合1日1万人もあり急激に減少することは考えにくい(注1)とし、陽性者は8月下旬には1日4万人に上るだけでなく激増をつづけて東京の医療がベッドが足りなくなり崩壊するだろうと試算していました(注2)。どちらも大きく外した予想でした。陽性者の急減も納得の行く説明がなされていません。

ホッとすることに、コラムにお書きしたように陽性者と死亡者数のリンク切れも起こしていました(注3)。陽性者が増えても死者数や重症者数と連動しなくなり、PCRによる陽性者数のカウントは意味を失っています。

下げ止まりは「リバウンド」ではなく、どこを探しても陽性者がいる季節性になりつつあることを意味しています。日本の復活には、感染者数を恐怖と不安の材料として世の中を動かそうとしてきた専門家から距離を置くことが必須です。

■政治家として発言を繰り返した“コロナ専門家”

『中央公論』2021年11月号に、「菅政権がコロナに敗北した理由」と題する尾身氏のインタビュー記事が掲載されました。

驚いたのは、東京五輪について「観客を入れても、私は、会場内で感染爆発が起きるとは思っていませんでした。しかし、観客を入れたら、テレワークなどによって人と人が接触する機会を少なくしてほしいと国民に求めていることと矛盾したメッセージを送ることになります」と明言していることです。

この記事に哲学者の東浩紀氏は「この発言には、尾身氏のスタンスがはっきりと表れている。ひとことでいえば尾身氏は、専門家として『政治の素材としての客観的分析やデータ』を提示しているのではない。世の中に与える影響をあらかじめ考慮にいれて発言している。つまり科学者ではなく政治家として発言している」(2021年10月8日 Twitter)と指摘しました。

まさにその通りです。「オリンピックが有観客でも感染爆発が起きるとは思っていなかった」と専門家は考えていたそうです。みなさん、そう受け取っていましたか? 驚きです。そういえば、菅義偉首相(当時)の頭ごなしにIOCにオリパラ中止も進言していましたし、私権制限の法整備にも熱心に言及していました。

■専門家は、やるべきことをやらなかった

東京都で検査陽性者に何が起きていたかを少し整理してみましょう(注4)。第5波では、自宅療養や入院調整中の方が激増し、医療機関への負荷が強まりました。政府は補助金のインセンティブを設けましたが、入院数は頭打ちになっています。

検査陽性者の療養状況(公表日の状況)
図表=(第68回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年10月21日)より

専門家たちがコロナ用分類を早急に策定して、適切に助言を行い全国で初期治療を指示し病床を整えるという「やるべきこと」をやっていたら自宅療養で苦しむ人も減り国の行事も無事に行えたことでしょう。こういった、やるべきことはやらず自粛強要と政治的な領域にまで越権して「政治的メッセージ」を送っていたわけです。

フタをあけたらこんなことだったのです。自分たちは一切間違えていない。自分たちのアドバイスを聞かずに、政府が勝手にやった。なぜやるかの国民への説明も不足してできなかったから首相は辞任したのだ――。こんな主張をしています。

専門家は言うことを聞かない国民を自分たちに従わせる法整備の必要性も、恐怖を背景にして繰り返し発言してきました。厳しい選挙を経た「選良」ではない人々が、国難でもないコロナを使って政治家を越える力を発揮するのは間違っています。彼らは、「感染者数増大」に対する私たちの恐怖心を力の源(みなもと)にしてきました。だから私たちが、感染者数の呪縛から解き放たれなくてはいけないのです。

■新規陽性者数を目安にした弊害

私は、選挙で国民に選ばれた政治家の人々が国の方針を運営すべきだと思っています。彼らの下に、日本のために働く専門家より賢いエリート官僚もついています。岸田首相が、医療体制を拡充し、「『幽霊病床』の見える化を進める」(注5)と述べたのは、専門家によってブラックボックス化したものを政治家主導で透明化させる一歩だと思っています。

大切なのは「ウイルスがどれだけ人々に被害を与えるか」です。これから冬を迎えて陽性者は増加するかもしれません。しかし、陽性者数に一喜一憂する必要はありません。これからは重症者数だけをカウントし、それに応じた病床を準備すればよいでしょう。

もし重症者が増えずに感染者数だけが増えるなら、免疫をつけるためにかえって良いことです。感染者が増えたら警戒すれば十分です。専門家が蠢(うごめ)き出しても政(まつりごと)を行う人々が自ら指揮を取って人流制限による過剰な社会破壊を行わないようにする必要があります。

■陽性者減少を説明できない専門家

未知のウイルスだったのにもかかわらず専門家と呼ばれる人々は、意見の異なる人々の声に耳を傾ける謙虚さを持ちませんでした。さらに新型コロナ感染症を「ちょっとでもかかってはいけない病気」だと国民に植え付けたことも罪深いと私は考えています。

幸い、日本は欧米のようなロックダウンをしないで、やり過ごすことができました。それでも危機には陥ることはありませんでした。すでにコラムをお書きした通り、日本では“ユルユル対策”が正解だったと言えるでしょう(注6)

PCRから簡易抗原検査にすれば騒ぎもおさまり、地方経済も戻るだろうと県知事さんや市町村長さんの会議でお伝えしたのも1年ぐらい前のことです。懐かしい思い出です。私なりに現状を整理してみました。

☆古来からある季節性コロナウイルスに新型コロナウイルスが混ざり込み、コロナウイルス間でも競争がおきて感染力が高く弱毒のものが世の中を席巻したと考えています。

☆日本では最初から世界に比して少ない被害でした。日本には調査方法によっては集団免疫形成の兆候があり(注7)、さらに流行の波のたびに免疫を獲得していきました。ワクチンも追加されました。

☆中国では2019年の夏ごろから流行り始めたかもしれないとも予測されています(注8)。国内にすでに持ち込まれ2年以上経過し、5波では、はっきり陽性者数と死亡者数の間に大きなリンク切れが観察されました。

☆これから被害が急に増大することは考えにくいと予想します。被害が急増するようなら突発的な別な要因が働いたときです。

■長期自粛が招いた“社会の副反応”

私たちは長期にわたって自粛を求められてきました。新規感染者を減らすことに偏ったことが原因です。さらに自粛は日本社会に深刻な影響を与えました。

私は、来院する患者さんとよく会話をします。なかでもうつになりながらも、飲食業を守った40代後半の男性のお話が印象に残っています。

男性は、奥様と一緒に店を切り盛りしながら、東京下町の1号店を皮切りに10年かけて渋谷などの繁華街に店を徐々に展開していきました。しかし、緊急事態宣言で状況は大きく変わりました。客足は途絶え、デリバリーに変更しようにも、お金をかけたしゃれた内装をお客さんが楽しむ形態でしたのでムリがありました。店舗を閉じるたびに男性は落ち込んでいくのが伝わりました。うつの治療も開始しました。

マスクを着用し、窓の近くでスマホを確認する女性
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

奥様につらくあたるようになり、手塩にかけた従業員は店を離れていきました。みんなで作り上げた店が壊される、そのつらさは尋常ではなかったそうです。

下町の1号店だけは何とか残すことができたそうです。しかし、開店休業の状態。「原点を考えたんですよ。何が原点なのかって」と奥様と涙ぐむ姿は、長期自粛を私たちに求めた専門家の誤った選択の結果だと思います。

■「無症状のPCR陽性者狩り」に意味はない

新規感染者を減らすことに偏った取り組みは、社会の分断という副作用を生みました。PCR検査で陽性になれば、無症状でも隔離され、断罪されるという状況でした。知らないうちに陽性になってしまって叱責された人も出る始末でした。

私は「陽性者狩り」とひそかに呼んでいました。コロナ専門家が、保健所職員を使ってPCRで国民を狩っていくように思えたからです。

専門家は濃厚接触者追跡の無限の作業を保健所に担わせ、治療の管理までさせました。陽性者が増えれば自宅療養者に目が届くわけありません。テレビでは保健所がパンクしていることがたびたび報道されていました(注9)。私は「治療ネグレクト」と名付けました(注3)

無症状の陽性者が多発する新型コロナウイルスでは、従来の保健所管理の2類では最初から破綻することが明白でした。それこそ専門家たちが新しい分類を作るなりして、アドバイスして解決すべき問題だったわけです。

■若者への自粛の副作用

入学してもリモート授業しかなく、顔を合わせる同級生がいませんでした。頭痛がひどくなってしまった中学生、学校をやめた大学生などたくさんの被害に遭った学生さんにお会いしました。

「人間は人間に会うのが自然です。お母さんから生まれたあと、携帯端末じゃみんな生きられないでしょう? 人間は人間に触れて、手触りや匂い、体温を感じて、人間の中で生きていくようにできているんです。不自然な環境で体調を崩すのは、病気ではない正常の反応です」と何回も子供たちを励ましました。

若者たちに、新型コロナは被害がほとんどありません。子供のうちに軽い症状で感染することによって、ウイルスの中で人類は生きのびてきたのだと思っています。陽性になっても構いません。

もし若いうちに感染しておけば、数十年後にコロナに強い高齢者になることでしょう。私は、さまざまな国で若年者への接種が規制されてもいる遺伝子ワクチンは、全体的に被害の少ない日本ではなおさら不要だと主張してきました。ワクチン接種は、陽性者数減少にはつながらないとの報告もあります(注10)

■これからやる3つのこと

新型インフルエンザが流行したときに教訓になったはずのものが、今回も作られることがなくデジャブのようだと記しました(注11)。これからやるべきことは3つだと思っています。コロナ入院治療の動線の分離、感染症に合わせた分類のシステム、必要な薬剤の許認可の迅速化の3点です。

病院に補助金を出すことで解決すると思いきや、看護師さんなどの給料にもならず私たちの病床にもならず、専門家直轄の病院ですら病院経営や投資に回ったりしました。首相が直接、幽霊病床の解消に向けてコロナ入院治療の動線分離の対策を直接指示することは評価されるべき内容です。

感染症法上の2類相当のまま2年近く放置されている分類も、5類にはそぐわない部分を改訂して、弱毒コロナ用の分類や治療検査の補助方法などを早急に策定すべきです。「陽性者数しか念頭になく、状況を俯瞰せず人流制限と私権制限にやりがいを感じる専門家」は有害不要です。経済や社会を統合して問題解決することを最初から放棄していました。

また、政府からは、国産治療薬や新規メカニズム国産ワクチンの認可迅速化への法整備、海外輸出の振興による国力強化も発表されました。政府は、コロナ関連経済が今後の国家間の綱引きのキモなのを良く理解していると思っています。国難は去りましたので政府直轄でやっていけば良いでしょう。

■陽性者が増えても慌てないようにしよう

冬になって、もし陽性者が増加しても私たちは「一歩引いて冷静になって観察し続けること」にしましょう。重症者が増えなければ問題ありません。1日に新規陽性者が5万人近くに増加発生しているイギリスでは、死亡者数が1日に100人台で変化しないため警戒しながら行動制限の撤廃が継続されています(注12)

英国における新型コロナウイルスの新規感染者数・死者数の推移
出典=worldometers

これが正しい姿勢です。慌てないようにしましょう。日本で複数のロックコンサートを開催してもプロ野球でも感染拡大は観察されていません。

『すでに起こった未来』というマネジメント創始者のドラッカー氏の教えがあります。すでに過去に起きたことは観察できる。それを謙虚に考察して変化を続ける未来に対応していこうということです。コロナ流行や遺伝子ワクチンについて「空気が読めない」と異端視されたことが、後で正しい観察や考察だったと判明したことがたくさんあります。私は「空気を読む」より「人々を守る真実を読む」ことの方が大切だと思ってコラムをつづってきました。

これからは、コロナより大切なことがいくつも起きてくると思います。私たち国民がいつまでもコロナ陽性者数にかかずらわっていると足を引っ張るだけです。若者が豊かになり子供が増えていく、そんな経済が上向く長期展望の上に立った次のフェーズに移るべきです。私たちがコロナで経験し学んだことを糧にして、よりよい未来をめざしていきましょう。

■English abstract

The lack of necessity of a state of emergency for the next epidemic: Withdrawal from the Novel Coronavirus Expert Meeting who are particularly focused on the number of new positive

 In Japan, the number of positive cases of COVID-19 has sharply decreased and reached nearly zero. Experts in Japan who predicted that the infection would explode are unable to explain this reality.
 
 My opinion is that management created by experts has failed from the beginning, and the man-made disaster is worse than expected. Nonetheless, experts have released political statements that deviate from the position of advisors apart from politicians.
 
 In hindsight, the extent of the damage incurred by COVID-19 on Japan was less than on other countries. Since the beginning of 2020, I have been paying attention to the fact that the damage is minimal in countries around China in terms of geopolitics, repeatedly mentioned in this column by me. Further, I believe that immunity to the conventional coronavirus and other pandemic waves of COVID-19 may protect people from its severe effects. Experts have continued to implement excessive self-restraint policies to reduce the number of new positive cases despite the small damage. However, they have overlooked the establishment of a treatment system for COVID-19 affected people.
 
 They have continued to use the number of new positive cases to arouse public fear and anxiety and have promoted only self-restraint and vaccination. In the United Kingdom, the number of deaths remains stable despite the increase in the number of new positive cases, leading to its free opening.
 
 The youth in Japan report nearly no damaging effects as a result of COVID-19. Therefore, I presume that gene vaccination (i.e., mRNA vaccination) is unnecessary. I believe that acquired immunity from natural infections is more multi-layered and powerful than vaccination. Moreover, experiencing viral infections that are mild in early childhood and severe in adulthood is common.
 
 The action that I think is necessary for the public is to withdraw from experts who are particularly focused on the number of new positive cases. The situation has completely changed all over the world. Thus, the need for excessive self-restraint policies, such as lockdowns, is no longer applicable. Moreover, vaccines should only be given to elderly people and people with preexisting conditions who need them.
 
 In sum, the right choices should be made to build a constructive and prosperous future.

参考文献
1.「最悪の場合、1万人もある」 東京の新規感染者について
2.「東京都では病院のベッドが足りなくなるかもしれない」
3.「重症化するまで患者を放置するのはおかしい」現役医師が"コロナ専門家"に憤る理由 自粛だけでコロナは終わらない
4.(第68回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和3年10月21日)04 グラフ(新規陽性者数 他)
5.「感染力2倍」想定して医療体制整備へ…首相「幽霊病床の見える化を」 読売新聞 10月15日
6.現役医師が断言「緩い日本のコロナ対策はむしろ多くの命を救った」 日本のやり方こそが最適解だった
7.新型コロナ、首都圏ほぼ全員既感染⁉ 日本の死者が欧米より少ない要因の一つに「集団免疫説」 専門家の新抗体検査で明らかに 産経新聞 2020年8月17日
8.19年夏にPCR機器を中国が大量発注 米英豪チームが解析 コロナ12月発生説を疑問視 日本経済新聞10月5日
9.コロナ感染第3波 東京・大田区保健所の1日 NHK 2020年12月9日
10.Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States(68カ国間と米国の2947の郡間では、ワクチン接種のレベルとCOVID-19の増加は無関係だった) Eur J Epidemiol. 2021 Sep 30 : 1-4
11.現役医師「恐怖を煽るテレビを消して、私たちは外に出よう」 11年前の新型インフルと状況は同じ
12.イギリスで再び感染者増加 行動規制撤廃、過去3カ月で最多に 毎日新聞 2021年10月19日

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大和田 潔(おおわだ・きよし)
医師
1965年東京葛飾区生まれ、福島県立医科大学を卒業後、東京医科歯科大学神経内科にすすむ。厚労省の日本の医療システム研究に参加し救急病院、在宅診療に勤務の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。東京医科歯科大学臨床教授を経て、あきはばら駅クリニック院長(現職)。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、米国内科学会会員、医学博士。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)など。監修書に『のほほん解剖生理学』『ホントは看護が苦手だったかげさんの イラスト看護帖~かげ看~ 』『じにのみるだけ疾患 まとめイラスト』(いずれも永岡書店)などがある。

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(医師 大和田 潔)

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