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70歳以上なら96万円控除に…別居している両親を「年末調整」で扶養家族にする方法

プレジデントオンライン / 2021年11月4日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

「年末調整」の季節がやってきました。控除をたくさん受けるほど、税金が多く還付されます。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「扶養家族の申告で見落としがちなのが、親の存在です。別居している70歳以上の両親に定期的に仕送りしているというケースでは96万円が控除されますから、かなり大きな負担軽減になります」といいます――。

■年末調整の仕組みをおさらい

会社員や公務員はお給料やボーナスから税金が天引きされていますが、これは、想定される年収から大まかに計算された概算の額。実際には昇給や残業代、業績に応じたボーナスなどで年収が決まるため、想定した年収とは差があるのが普通です。また年の途中で扶養家族ができたり、扶養家族が減ったりすることもあり、税額に影響することもあります。

こうしたことから、日本では、ざっくり計算した税額を「源泉徴収」という形で給与などから天引きし、年収などが確定する年末に、「年末調整」で精算する、という手続きが行われています。

税額は、収入から各種の控除を引いたあとの「所得」に対して課税されるため、控除をたくさん受けることが、税の軽減に繋がります。生命保険料控除など、おなじみの控除のほかにも、様々な控除があり、該当するものを漏れなく申告することが大切です。意外と忘れがちな控除について見ていきましょう。

なお、令和3年の年末調整では、申告書について押印の義務がなくなりました。

■令和2年に新設された「ひとり親控除」

シングルマザー、シングルファーザーの人は、「ひとり親控除」という控除が受けられます。

離婚や死別によってシングルになった人には、従来から「寡婦(夫)控除」があり、所得から一定の額が控除されていました。しかし、シングルマザーとシングルファーザーで控除の内容に差があったほか、未婚の場合には控除がありませんでした。そこで、その格差を解消するために、令和2年に「ひとり親控除」が新設(寡婦(夫)控除の改組)されたわけです。「ひとり親控除」では、それまで対象外だった未婚のひとり親も対象となり、控除額は男女の別なく35万円です。

ひとり親控除の対象になるのは、所得が500万円(給与収入677万7778円)以下で、生計を一にする子(総所得金額等が48万円以下)がいること。また住民票の続柄に「未届の夫」「未届の妻」など事実婚の記載がないことも条件となっており、事実婚の状態にある人は対象になりません。

■離婚後に親を扶養、夫と死別のケースは「寡婦控除」

夫と離婚したあとに再婚しておらず、扶養親族がいる女性と、夫と死別したあとに再婚していない、もしくは夫の生死が明らかでない女性には、「寡婦控除」が適用されます。令和2年に改正され、対象となるのは、所得が500万円(給与収入677万7778円)以下で、住民票の続柄に「未届の夫」「未届の妻」など事実婚の記載がないことが条件です。控除額は27万円です。

「ひとり親控除」と「寡婦控除」は、いずれか1つしか受けることができず、両方の控除を受けることはできません。夫と離婚し、扶養家族として子どもがいる場合は、控除額が大きい「ひとり親控除」を受けるとよさそうです。子どもがいない場合は「ひとり親控除」の対象になりませんが、親を扶養している女性なら「寡婦控除」が受けられます。

なお、「寡婦控除」は女性に対する控除であり、妻と離別・死別したシングル男性は対象外です(ちょっと不公平ですね)。

■親を扶養しているなら親の分も「扶養控除」

扶養家族の申告で見落としがちなのが、「親」の存在です。

老親
写真=iStock.com/mykeyruna
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mykeyruna

親が経済的に自立している場合は対象外ですが、同居する親の生活費を負担している、別居している親に定期的に仕送りしている、という人は、親を扶養家族として扶養者控除を受けることができるのです。

条件は、収入が年金のみなら、年金額が158万円以下であることです。控除額は親の年齢によって異なり、65~70歳では38万円(住民税の計算では33万円)、70歳以上では、同居なら58万円(同45万円)、別居では48万円(同38万円)です。

ポイントは、自身の親でも、配偶者の親でも扶養家族にできること。所得税や住民税は、所得が多いほど税率が高くなる「累進課税」ですから、税率が高い人、つまり、所得が高い人が控除を受けた方が税の軽減効果が大きくなります。58万円の控除を受ける場合、税率10%の人なら軽減額は5万8000円、税率20%の人なら11万6000円です。妻の親だから妻が控除を受ける、などと決めつけず、所得の高い人が控除を受けるようにしましょう。別居している70歳以上の両親に定期的に仕送りしている、というケースでは96万円が控除されますから、かなり大きな負担軽減になります。

■節税効果抜群のiDeCoも、手続きしないと効果なし

ほかにも大事な控除があります。

まずはiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

iDeCoは、年金づくりのために任意で利用できる制度で、掛金が全額、所得から控除され、所得税や住民税が軽減される、というのが大きなメリット。節税しながら、年金づくりができます。

ただし、所得控除を受けるには、年末調整で手続きをしなければなりません。10月~11月頃、国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要ですので、届いているか、確認しましょう。

iDeCoの掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。年末調整の書類に「小規模企業共済等掛金控除」の「個人型又は企業型年金加入者掛金」という欄がありますから、そこに、証明書に記載されている掛金の総額を記入します。

年収400万円(40歳)のシングルの方が、毎月2万3000円拠出した場合、所得税は1万4000円、住民税は2万7600円、合計で4万1600円の節税になります。60歳までの20年間、拠出を続けると、節税額は83万円以上に及びます。年収が高くなるほど税率が高くなるため、たくさん稼いでいる人ほど、税メリットも大きくなります。

なお、今年からiDeCoを始め、最初の拠出が10月以降だった人や、拠出が年1回の場合は年末調整では手続きすることができません。翌年の2~3月頃の「確定申告」で手続きをする必要がありますから、しっかり申告してください。

■子どもの国民年金保険料を払うなら社会保険料控除が増額に

また私たちは健康保険料や年金保険料などの社会保険料を負担しており、それらは「社会保険料控除」として所得から引かれています。これらは勤務先が把握してくれていますが、場合によっては社会保険料控除の額が増える可能性もあります。20歳以上の子がいて、国民年金の保険料を親が負担している、といったケースです。

その場合、支払った金額を支払った親の「社会保険料控除」の額に含めることができます。子どもと同居していなくても対象になります。

子どもの年金保険料を親が負担すべきかどうかは悩ましいところ。月額1万6610円、1年分の前納(4月に口座振替)で19万5140円(令和3年度)で、教育費を負担しながら年金保険料も払う、というのは軽い負担とはいえません。ちなみに、学生の間は、きちんと手続きをして学生納付特例制度を利用すれば、保険料を支払わなくて済み、加入期間には算入される、というメリットがあります。ただし、年金額には反映されません。年金を増やすためにも納付するのが理想であり、負担をする分、税の軽減をしっかり受けましょう。

■年末調整できないものは、年が明けたら確定申告を

そのほか、医療費の自己負担が一定額以上だった場合には「医療費控除」や、住宅ローンを組んで自宅を購入・リフォームした場合には「住宅ローン控除」が受けられます。いずれも年末調整では手続きできず、確定申告が必要です(住宅ローン控除は2年目からは年末調整で手続き可能)。

ちなみに住宅ローン控除については、新型コロナウイルスの影響で入居が間に合わない場合、一定の期日までに契約していれば入居期限が2022年12月31日に延長されるなどの措置が設けられています。

また、ふるさと納税も、税金に大きく関係する制度です。1年間の寄付先が5自治体以内の場合に利用できる「ワンストップ特例制度」を選択した人は、年末調整での手続きは不要です。税の手続きなく、応援できる自治体に寄附ができ、返礼品というお得も受けられるのは、かなり魅力ですね。なお、ワンストップ特例制度を利用していない人は、年末調整ではなく、確定申告が必要ですから、忘れず手続きしてください。

■申請し忘れなどは確定申告で手続きできる

受けられる控除はすぐに受けるのが最もお得ですが、「年末調整で申告し損ねた」という場合も、確定申告を行えば、控除を受けることができます。

払い過ぎた税を戻してもらうための申告は、控除を受けられる翌年から数えて5年以内であれば確定申告できるということも覚えておきたいポイント。「還付申告」の手続は、時期を問わず、年間を通じて可能です。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事(非常勤)。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください』(日経BP社)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。

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(ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者) 井戸 美枝)

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