「母親の責任問題を息子が負うなんて」小室さん母子への誹謗中傷に海外識者はアンビリバボー
プレジデントオンライン / 2021年11月3日 11時15分
■子供が母親の責任を負わなければいけない日本…全く理解できない
国民の関心を集めた眞子さんと小室圭さんの結婚問題。国民世論を二分するような大騒動に発展してしまったが、おめでたい話題がここまでこじれてしまった根底には、皇室・宮内庁と国民との間に不信感やミスコミュニケーションがあるのではないだろうか。
世界の王室情報を伝える専門ニュースサイト「ロイヤルセントラル」の副編集長で、アメリカ人の王室ジャーナリスト・ブリッタニ・バーガーさんに、今回の問題への見解やこれからの皇室のコミュニケーションのあり方について話を聞いた。
Q:眞子さん、小室圭さんの結婚についてどう思いましたか
愛する人と結婚できてよかった。日本では女性皇族は結婚すれば皇室を出るのだから、誰と結婚しても問題ないはず。基本的には小室さんの母親(佳代さん)の問題(元婚約者との金銭トラブルなど)であり、なぜ、子供がその責任を負わなければいけないのか、全く理解ができない。海外の王室で同様のことがあっても、問題になることはないだろう。
Q:日本の皇室だけでなく、世界的に見て人々の“ロイヤルファミリー”への関心は高まっているような印象があります。
王室が人々の「エスケープ(現実逃避)」の対象になっている。美しいウエディング、かわいい子供たちなど、おとぎ話のようなストーリーに人は惹かれる。退屈で、つまらない日常生活からのエスケープ先として、王室への関心が高まっている。
われわれのサイト「ロイヤルセントラル」は、世界の王室情報を一手に集めた専門ウェブサイトで、2012年に始まった。ライターはすべてボランティアで、アメリカやイギリス、オランダ、ノルウェー、ベルギーなど世界各国から発信している。
年々、王室への関心は高まっており、われわれのサイトへのアクセスも増加。今や1日100万ビューのアクセスがある。人々は「最強のセレブリティー」である王室の一挙手一投足にくぎ付けなのだ。
Q:ロイヤルファミリーがまるで芸能人のような存在になってきているということでしょうか? その存在価値はどのように変わってきていますか。
例えば、英国のエリザベス女王などは尊敬されており、別格の存在だが、ダイアナ妃の頃から、王室のセレブ化が顕著になった。ロイヤルファミリーの大衆化が始まり、人々はまるで芸能人のように王室をとらえ、メディアはそのゴシップを量産するようになった。権威というものより、より身近な存在ととらえられ、親しみやすさが求められるようになってきている。
■どの国の王室にもプレスオフィサー、広報担当官が何人もいるのに
Q:世界のロイヤルファミリーの役割はどう変わってきましたか。
かつては統治者だったが、今では、サウジアラビアなどを除けば、彼らの役割は「象徴」的なもので、求められる役割も変化している。例えば、外交などでの役割。海外訪問で、国産のファッションブランドを着て、さりげなくその宣伝をする。自分の国をプロモートし、観光・ツーリズムPRにも積極的に取り組んでいる。海外から多くの人が宮殿など、王室関連の施設を訪れ、関連のお土産を買う。そうやって、莫大な経済効果を生んでいる。
また、チャリティーや社会的活動のイニシアチブをとっている。環境問題や精神医療、孤独問題などについても積極的に声を上げている。スウェーデン、モナコ、デンマークなどの王室も自分たちで財団を立ちあげ、社会貢献活動に熱心に取り組んでいる。市民の模範として、積極的に社会の中で活動をするという姿勢だ。
Q:日本の皇室とは異なるスタイルですが、国民とのコミュニケーションに関して世界の王室のスタンスはどのように変化していますか。
ソーシャルメディアの活用など積極的にコミュニケーションを進めている。スウェーデンの王室メンバーはそれぞれ、インスタグラムのページを持っており、彼らがコメントし、子供たちの写真を上げている。そうやって情報開示に熱心な一方で、メディアも私生活などを執拗(しつよう)に追いかけたりはしない。プライバシーと情報公開のバランスがとれている。
ノルウェーの王室もインスタなどを活用。英王室もツイッターやYouTubeなどを活用し、頻繁にコミュニケーションをとっている。パンデミック下でも、ビデオメッセージ、ビデオでの国民との対話など熱心に行っており、常にオープンであり続けようとしている。
エリザベス王妃いわく「信じてもらうためには見てもらわなければならない」(You have to be seen to be believed)と言っている。国民の信託を受けるには、何より国民と向き合い、コミュニケーションを続けていくことが大切だという考え方だ。
アジアでも例えば、ブータンの王室にも、インスタやフェイスブックのアカウントがあるし、頻繁にプレスリリースを出す。広報の担当者がおり、すぐに応答してくれるなど、積極的にコミュニケーションを取っている。国の伝統を守りながらも、王室の近代化を進めている印象だ。
Q:王室(皇室)にとっても、コミュニケーションが何より大切、ということでしょうか。
「皇室がただ皇居にいるだけ」では、なんで彼らが必要なのか、と人々は思うだろう。それは危険なゲームだ。税金を使う存在である以上、コミュニケーションは必須だ。
どの国のロイヤルファミリーにも、プレスオフィサー、広報担当官が何人もおり、戦略的にコミュニケーションを展開している。日本(の宮内庁)には、コンタクトするべき広報責任者もいない。発信する情報も決して多くはなく、そのやり方も一方的で、対話という形になっていない。これでは、国民の満足も得られないのではないか。
■「日本の皇室は世界でも最も閉鎖的で秘密主義的だ」
Q:世界の「王室」の形は歴史や仕組みは国によってさまざまだと思いますが、日本の皇室の印象はどのようなものでしょうか。
世界の中で最も古く、最も(規律などが)厳しい。女性が王位を継承できないし、結婚したら、皇族の地位を放棄しなければならない。女性が王位に就けないのは、中近東やリヒテンシュタインなどほかにもあるが、少数派。そうした特殊な事情ゆえに、日本では、今、皇位継承者が限定されており、まさに存亡の危機と言える難しい状況にある。世界的に見ても、ここまで存続が危ぶまれるロイヤルファミリーはない。まさに、絶滅の危機にある王室だ。
Q:日本の皇室は日本人にとってどのような存在に映りますか。
高い血統と伝統を持ち、神道にも結びついており、非常に特別な存在だ。人々から「尊敬される」存在だ。しかし、極めて保守的で、若い世代はもっとアップデートが必要と思っているのではないか。日本は非常に現代的で、先進的。世界の王室が進化し続けているのに、日本の皇室はそうなってはいない。
王室は人々の模範である。女性たちに、「結婚したら、あなたは皇室を出なければならない」「女性は皇位を継承できない」というのは、現代社会においては時代遅れの側面がある。日本には、かつて女性天皇がいたこともある。女性が皇位に就くことは女性のエンパワーメントにおいても大きな意味がある。
リヒテンシュタインやサウジ、ヨルダンなどは男性しか王位に就けない。モナコでは、双子がおり、女の子が先に生まれたが、弟が王位を継ぐ。スペインでは王女が継ぐが、彼女に弟がいたら、弟が継いでいただろう。男の子がいない場合だけに女性が継げるというケースも多い。イギリスでは、最初に生まれた子が男女問わず、継ぐことができるように法律を変えた。伝統も大切だが、王室も時代に即して、変えるべきは変えていくという柔軟性も求められるのではないか。
Q:日本の皇室・宮内庁のコミュニケーションのあり方に問題はあると思いますか。
日本は先進国なのに、皇室は過去を生きている。世界でも最も秘密主義的で、それは非常に不可解だ。プライバシーは大事だが、オープンであるべき。いまだに情報発信手段として、ソーシャルメディアもない。まるで、皇室の人たちは、皇居という「檻」に閉じ込められているかのようだ。情報をほとんど開示しないし、プレスリリースもほとんど出さない。宮内庁にも何回もコンタクトしたが、ほとんど情報が得られない。
上皇殿下は、開かれた皇室に向けていろいろ努力してきたようだが、パンデミックの影響か、現在の皇室(宮内庁)はコミュニケーションという観点では、世界で最も閉鎖的な王室の一つになっている。今回の(眞子さん、小室圭さんの結婚を巡る)騒動も、そうしたコミュニケーション不足や行き違いが大きな要因となっていることは間違いないだろう。
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コミュニケーション・ストラテジスト
グローコム代表。企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化支援のスペシャリスト。リーダーシップ人材の育成・研修などを手がけるかたわら、オジサン観察も続ける。著書に『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)などがある。
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(コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子)
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