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そもそも苦戦必至だった甘利氏を、なぜ幹事長という重職に起用してしまったのか

プレジデントオンライン / 2021年11月2日 18時15分

当選確実の候補者名に花を付ける岸田文雄首相(左から2人目、自民党総裁)。左端は甘利明幹事長=2021年10月31日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

■与党の圧勝、野党の惨敗で間違いないのだが…

第49回の衆院総選挙が10月31日に投開票された。自民党は公示前の276議席から議席数を減らしたが、単独で総定数465の過半数(233)を上回った。公明党と合わせ、与党の議席数は国会を安定的に運営できる絶対安定多数(261)を獲得した。

一方、野党の立憲民主党は100議席を割って敗れた。日本維新の会は議席を伸ばし、第3党に躍り出た。

首相指名選挙を行う特別国会が11月10日に召集される。岸田文雄首相は同日中に第2次岸田内閣を発足させる。1日午前、岸田首相は自民党本部で記者団に「政権選択選挙で与党が過半数を獲得できた。大変心強く思っている」と勝利の喜びを語った。

今回の衆院選、与党が圧勝し、野党が惨敗した。だが、それは獲得議席数の上での話である。沙鴎一歩の眼には自民党の終焉が見えてならない。

■現職幹事長が落選するという異例の事態が発生

その理由は幹事長の甘利明氏(神奈川13区)が敗れたからである。甘利氏は当選連続12回の72歳のベテラン国会議員だ。現職の幹事長が小選挙区で敗北するのは初めてで、極めて異例だ。幹事長は選挙対策委員長以上に選挙全体を取り仕切って党を勝利に導く、義務と責任がある。その一番の責任者が落選するというのだからどう見ても前代未聞の事態だった。

比例で復活当選したものの、甘利氏は幹事長を辞任する意向を岸田首相に伝えている。31日のテレビのインタビューでは「進退は岸田首相にお預けする」と話していた。岸田首相は「最後は私が決める」と語っている。後任には外相の茂木敏允氏の名前が報じられている。

甘利氏は10月1日の自民党の役員人事で、幹事長に抜擢された。それまでは党税制調査会長を務めていた。甘利氏は元首相の安倍晋三氏や前財務相の麻生太郎氏にかなり近く、安倍、麻生、甘利各氏の頭文字を取って「3A」と呼ばれるラインで結ばれている。甘利氏の幹事長起用は、自民党の悪い体質を温存させるものだった。

自民党の悪い体質とは「ゆるみ」や「おごり」である。「アベ1強」といわれた安倍晋三政権は長期政権ゆえの弊害を生んだ。森友・加計の両学園疑惑や桜を見る会の問題、それに法相経験者が選挙違反事件で逮捕・起訴されるなどの前代未聞の事件だ。

甘利氏には現金授受の疑惑もあり、2016年には第2次安倍政権の経済再生担当相を辞任した。しかし、その説明責任は果たされていない。

有権者はそんな甘利氏に見切りを付けたのである。甘利氏が政権運営の要となる幹事長に就いている限り、自民党の中堅・若手議員が望む党内の改革はできない。有権者はその意志を示したのだといえるのではないか。

■「自民党が変わらなければ、日本は良くならない」

自民党改革を掲げ、9月29日の総裁選で岸田首相と戦った党広報本部長の河野太郎氏(神奈川15区)は野党候補に大差で勝った。当選確実のニュースは早々と流れた。小選挙区で敗れ、比例復活を待つことになった甘利氏とは対照的だった。

自民党改革を目指す河野氏の人気は高い。自民党を支持する有権者が、自民党改革の必要性を強く感じているからだろう。

自由民主党
写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

沙鴎一歩は、10月23日付の記事「『野党に政権は任せられないが、自民党がこのままでは困る』有権者の棄権を招く政治の貧困さ」でこう書いた。

「衆院選で自民党は少々痛い目に遭って目を覚ますべきではないか。これまで日本を牽引してきた政党である。自浄作用に欠けるいまの自民党には改革が必要だ。自民党が変わらなければ、日本は良くならない」

この気持ちは強まるばかりである。

そもそも甘利氏を幹事長に起用したのは岸田首相だ。その意味で岸田首相には大きな責任がある。「政権選択選挙で与党が過半数を獲得できた」と喜んでいる場合ではない。

■「長期政権の緩みに反省を求め、緊張感のある政治を」と読売社説

11月1日付の読売新聞の社説は「自民単独過半数 緊張感持ち政権の安定を図れ」との見出しを立て、こう書き出す。

「長期政権の緩みに反省を求め、緊張感のある政治を期待したい。それが今回示された民意であろう。岸田首相は政策の実行力を高め、難局を乗り切らねばならない」

「反省」と「緊張感」。岸田政権には安倍政権の弊害を強く反省し、緊張感を持って働いてほしい。甘利氏の辞任は大きなチャンスである。長老議員の意見に左右されることなく、党内幹部や閣僚に前向きな若手を多く採用して改革を断行すべきである。

岸田首相は自民党総裁選への出馬表明の際、「自民党の役員に若手を大胆に登用し、自民党を若返らせる」と語っていた。悪い体質から抜け出そうとしない自民党幹部への挑戦状だった。党内の改革を求める若手・中堅の議員の声に押され、自民党内で干されることも覚悟に立ち上がった。いま一度、あのときの強い決意を思い出してほしい。

読売社説は主張する。

「軍事・経済両面で台頭する中国は国際ルールを無視した行動が目立ち、米国など民主主義国との対立が深まっている」
「北朝鮮のミサイル発射や、中国による一方的な海洋進出により、日本の安全保障環境は一段と厳しくなっている。ミサイル攻撃に対する抑止力の強化について、早急に方針をまとめるべきだ」

岸田首相は外相の経験もある。対中国など国際社会の中での日本の役割をよく理解していると思う。

■産経社説は「選挙結果を真摯に受け止めねばならない」と主張

11月1日付の産経新聞の社説(主張)もその冒頭部分から「ただし、解散時と比べ、自民の議席は減少した。政権運営の要である甘利明幹事長は選挙区で敗れ、比例代表で復活したが、岸田首相に辞意を伝えた」と指摘し、こう訴える。

「岸田首相や自民党は選挙結果を真摯に受け止めねばならない。国会で丁寧な議論を重ねていくべきだ。同時に政策遂行で足踏みしてはならないのはもちろんだ。来年夏には参院選がある。公約実現へ働き抜くべきである」

「反省」と「緊張感」を求める読売社説と同じように、「真摯」で「丁寧」を求めている。裏を返せば、政権を擁護することの多い2大保守の新聞社説がそろって「おごり」や「ゆるみ」を強く問題視していることになる。岸田政権はくれぐれもそのことを自覚すべきである。

■「対中抑止を強化しなくては平和は守れない」

産経社説は指摘する。

「外交安全保障は大きな争点にならなかった。4年前の衆院選で北朝鮮の核・ミサイル問題が国難とされたのとは対照的だ」
「だが、今回衆院選の公示日には北朝鮮が日本海へ向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。選挙期間中には中国とロシアの合同艦隊10隻が日本を周回した」

そのうえで「岸田政権が、防衛力充実や経済安全保障を推進し、対中抑止を強化しなくては平和は守れない」と主張する。

日本の安全保障の環境は日増しに厳しくなる。同盟国のアメリカや他の民主主義国家と力を合わせてこの難局を乗り越えていくしか道はない。問題はそれを岸田政権がどこまで実行できるかである。

■「首相に辞任の意向を伝えたのは当然」と強調する朝日社説

朝日新聞(11月1日付)の社説は「真価問われる『丁寧な政治』」との見出しを付けてまずこう指摘する。

「9年近く続いた安倍・菅政治の弊害に正面から向き合い、政治への信頼を回復する。議論する国会を取り戻し、野党との建設的な対話を通じて、直面する内外の諸課題への処方箋を探る。首相が掲げる『丁寧で寛容な政治』の真価が問われるのは、これからである」

果たして安倍・菅政治の弊害を清算することはできるのか。政治への信頼を取り戻せるのか。沙鴎一歩も国民のひとりとしてしっかりと見届けたい。

さらに朝日社説は指摘する。

「派閥の領袖や閣僚経験者が小選挙区で相次いで落選するなど、不人気の菅首相を直前に交代させ、新しい顔で臨んだにしては、国民の期待を糾合することはできなかった」
「疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、『政治とカネ』の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない」

甘利氏に対しては「首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ」と強調する。朝日社説の指摘や主張には、ときの政権を批判することが好きな朝日社説らしさが滲み出ている。

■「進んで『言論の府』の再生に尽くすべきだ」

最後の部分で朝日社説はこうも主張する。

「与野党の議席差が縮まった今回の選挙結果を、強引で恣意的な政権運営の見直しにつなげねばならない。これまで首相官邸に追従し、内部から自浄作用を発揮できなかった与党議員は自らを省み、進んで『言論の府』の再生に尽くすべきだ」
「森友・加計・桜を見る会など一連の疑惑の真相解明も、政権が動かないのなら、国会こそが、その役割を果たすべきだ」

「強引で恣意的な政権運営の見直し」「一連の疑惑の真相解明」と朝日社説は手厳しく求める。ときの政権は日本における最高の権力だ。その権力を批判し、私たち国民のための政治の実現を目指すのは、新聞社説の大きな役目である。その意味で朝日社説の批判精神は重要だが、ときには評価することも忘れないでほしい。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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