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「共産党と組むなら入れたくない」枝野氏を辞任に追い込んだ民意を、野党は理解しているのか

プレジデントオンライン / 2021年11月2日 20時15分

立憲民主党の執行役員会で辞任の意向を表明する枝野幸男代表(奥左)。同右は福山哲郎幹事長=2021年11月2日、衆院議員会館 - 写真=時事通信フォト

■特番冒頭、テレビは「自民単独過半数は微妙」と報じていたが

ハロウィーン選挙となった衆院選は、自民党が追加公認も含めて絶対安定多数を確保した。マスコミ各社は、躍進を予想していた立憲民主党が不調だったことを取り上げ「野党共闘の戦略ミス」の大合唱だ。しかし、本当に野党共闘は大失敗だったのか。そこには野党躍進を予想したマスコミが責任をなすりつける構図がすけて見える。

10月31日午後8時。自宅でテレビを観ていた人たちは、政治が大きく動く予感を感じ取っていたことだろう。選挙特番を編成していたNHKは民放各社が一斉に各党の獲得予想議席を報じたのだ。NHKは自民党が「233の単独過半数ギリギリ」と報じた。民放各社や新聞社も概ね230から40の間に収まっていた。一方、立憲民主党は、幅はあるものの公示前勢力の110から上積みをして140程度まで上がる可能性があるとしていた。

最終的な結果は、ご承知の通りだ。自民は追加公認もあわせて261議席に達した。公明党も3議席増の32と堅調。一方、立民は96議席で、まさかの14議席減。共産党も議席を減らし、野党共闘を主導した両党には、厳しい結果となった。立民の福山哲郎幹事長は選挙結果が出た1日「議席を減らしたのは大変残念だ。私自身の対応は腹を決めている」と辞任する考えを表明。2日には枝野幸男代表の辞任が決まり、新しい代表選びが始まった。

一方、岸田文雄首相の方は31日のインタビューや11月1日の記者会見で「引き続き、自公政権の安定した政治の下で、国の未来をつくり上げていってほしいという民意が示され、大変ありがたい。自民党に対しても、貴重なご支援をいただいた。自民党として、国民の負託に応えていく」などと発言。マスコミ各社は「自民勝利、野党共闘失敗で大敗」と声高に叫んでいる。

■なぜこれほどまでに野党に厳しい論調が多いのか

どちらも議席を減らしているのに立民を中心とした野党に厳しい論調が多いのは、予想を外したマスコミの「やつあたり」という側面もありそうだ。コメンテーターの中には「自分たちの予測したように立民は大幅に議席増とするチャンスはあったのに、共産との共闘で世論から嫌われて負けた」というような発言もある。しかし冷静に考えると、このような発言は大いなる矛盾があることがわかる。

マスコミが「自民、単独過半数は微妙。立民躍進」と予測していたのは31日午後8時の段階だ。その段階で既に、選挙結果が決まっていたわけだ。だから、マスコミの予測が外れたのは、立民のせいではない。単にマスコミが読み違えただけだ。その矛先をかわすために立民のせいにしていると言わざるをえない。

選挙中に投票する人
写真=iStock.com/bizoo_n
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bizoo_n

■9月末には「自民党300議席」予測もあったのだが…

今回の衆院選に至る経緯を振り返っておきたい。8月には新型コロナウイルスの第5波が猛威を振るい、政府・与党に対する批判は相当厳しいものがあった。当時の菅義偉首相の支持も急降下。内閣支持率は調査をする度に下がっていた。

その頃は自民の衆院議員の間で「菅氏のままでは勝てない。自公でも過半数維持できるかどうか……」という空気が高まり、菅氏は党総裁選を前に不出馬表明した。岸田氏の他、河野太郎、高市早苗、野田聖子の4氏の争いになった総裁選は、大いに盛り上がりテレビを中心としたメディアも大きく報じた。

この結果、自民の支持は急回復。29日に岸田氏が新総裁に選ばれたころは「自民は300議席近くに圧勝するのではないか」との観測に変わっていた。そこから始まった衆院選なのだ。

2012年、14年、17年の3回の衆院選で自民は、安倍晋三総裁のもと圧勝を続けた。12、14年では290議席を超え、17年には若干減らしたものの284議席を確保した。一方で野党第1党は民主党から17年には立民となったが、50台から70台で推移している。そこから今回の衆院選の結果をひもといてみよう。

■選挙区では「野党共闘」の効果はあった

過半数の233議席を争う政権選択の衆院選において、自民党単独で259議席とったことは立派な勝利ではある。ただし、過去3回の結果と比べると明らかに後退している。立民の96も、衆院選で野党第1党が取った議席としては、まずまずの伸張といえる。ましてや9月末には総裁選効果で自民党は300議席近く取るとの見方もあった選挙である。自民党は、最近の実績や戦前の見立てとくらべれば不振だった。

共同通信社の集計によると289選挙区中、2割を超える64選挙区で当選者と次点の差が1万票未満の接戦だった。このうち5野党が候補を一本化したのは59選挙区で、自民党は32勝した。立民など野党5党が1本化した候補が26勝、日本維新の会が1勝だったという。

今回の小選挙区で自民党の勝利は187。17年の218から大きく後退した。一方、立民は今回小選挙区で57勝。17年の18勝から約3倍になった。勝った選挙区の多くは野党が一本化したもの。これらのデータから、野党共闘は「効果あった」といえるだろう。

国会議事堂
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■ただし比例では「共産党と組むなら入れない」

ただし、比例代表の結果を見ると別の民意も見えてくる。立民は比例代表で17年の37議席から今回は39議席と微増にとどまった、共産党は比例代表での獲得は9議席で、4年前の11より減らした。このことは、立民が共産と組むこと、共産が立民と組むことへの違和感を国民が持っていることが分かる。

「今回は自民党には入れたくない」という有権者は小選挙区では相当程度、野党統一候補に投票。そういう意味で野党共闘効果はあったのだが、比例では立民や共産ではなく、大躍進した日本維新の会や、共産党との共闘に消極的だった国民民主党に流れた。

事前に議席増が予想された維新はさておき、国会の中で埋没している国民民主が公示前の8から11議席に増した理由は、「共産と組む立民に入れたくない」という票が流れたと考えるのが自然だろう。

■問題は「立共合作」と揶揄されるような露骨な接近

野党共闘を議論する中で野党各党の執行部は、選挙区の候補者調整ばかり考えていたふしがある。比例への影響を軽視していたという点では、野党側のミスだ。

つまり、選挙区で野党が一本化すること自体は「悪」ではないが、「立共合作」と揶揄されるような露骨な接近が問題だったということになる。だから、そのような批判を浴びないように工夫して候補者調整を行えば、まだまだ伸びしろはある。

立民はこれから枝野氏の後継を選ぶ代表選に突入する。その議論の過程で野党共闘のあり方がどう総括されるか。今後の政治の行方を左右するだろう。衆院選の結果を「野党共闘の敗北」と決めつけて、それぞれが選挙区に候補を立てる道に戻るのなら、喜ぶのは自民党、ということになりかねない。

(永田町コンフィデンシャル)

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