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「自民党議員よりはるかに高い平均年齢」前回衆院選より4.8歳も上昇した"あの政党"

プレジデントオンライン / 2021年11月7日 11時15分

政治家の若返りが全然進まない――。今回の衆院選で大物議員の引退や落選が相次ぎ、世代交代が進んだ観もあるが、統計データ分析家の本川裕氏は「前回衆院選(2017年)の当選当時の衆院議員の平均年齢は54.7歳でしたが、今回は55.5歳(解散直前時は59.0歳)。閣僚の平均年齢はOECD諸国平均で53.1歳のところ、日本は62.4歳と35カ国中最も高い」。高齢政治家が多いことの弊害とは何か――。

■衆院選で政治家は本当に若返ったのか?

今回の衆議院総選挙で大物議員の引退や落選が相次ぎ、政治家の世代交代が進んだ観がある。

まず、選挙を前に引退を表明し、出馬しなかった大物議員としては、大島理森衆院議長(75)、伊吹文明元衆院議長(83)、鴨下一郎元環境相(72)、川崎二郎元厚生労働相(73)、太田昭宏公明党前代表(76)などが挙げられる。河村建夫元官房長官(78)のように小選挙区で党の公認が得られず、引退を余儀なくされた議員もいた(党名を付さない場合はすべて自民党。以下同様)。

また、立候補したが、小選挙区で敗れた上、自民党「73歳定年制」で比例復活もできなかったため政界から去った有力議員としては、野田毅元建設相・自治相(80)、原田義昭元環境相(77)、山本幸三元地方創生担当相(73)などの名が挙げられる。

さらに、小選挙区で敗れ、惜敗率も上位でなかったため比例復活もなかった有力議員としては、石原伸晃元環境相・党幹事長(64)、平野博文立憲民主党代表代行(72)、辻元清美・立憲民主党副代表(61)などがいる。

なお、小選挙区で敗れたが比例で復活した有力政治家として、甘利明幹事長(72)、桜田義孝元五輪相(71)、立憲民主党の小沢一郎議員(79)などの名も付言しておこう。小沢一郎議員は自民党にいたら定年制で比例復活できなかったところである。

引退や落選で消えた有力議員は、括弧書きの年齢を見る通り、高齢のケースが多く、これが、世代交代や若返りの印象を与えていると思う。

確かに、衆院選の新人当選者は97人であり、前回の56人を大幅に上回った。また、衆議院議員の平均年齢については、解散直前の59.0歳から今回の当選者は55.5歳になった。

しかし、2017年の前回衆院選の当選時の平均年齢(54.7歳)からは、実は、今回わずかに上がっている。前回の選挙から4年も経っており議員もそれだけ年齢を加えていただけだったのである。

図表1には、前回と今回の衆院選の当選者の政党別平均年齢を示した。前回からの変化を計算すると、合計で+0.8歳(54.7→55.5)、自民党は+1.3歳(55.6→56.9)、公明党は-0.1歳(56.5→56.4)であるが、野党の立憲民主党は+1.2歳(53.5→54.7)、共産党は+4.8歳(57.5→62.3)と野党もかなり年齢が上がっている点が印象的である。

ちなみに、平均年齢が最も高かった共産党は今回衆院選当選者10人のうち最高齢の穀田恵二氏(74)を含め70代が2人、60代が委員長の志位和夫氏(67)を含め5人、50代が1人、40代が2人だった。

与野党ともにメンバーの入れ替えはかなり進んでいるにせよ、若返りが進んだとは言えない状況である。目立って平均年齢が下がったのは今回躍進した日本維新の会の-0.9歳(50.3→49.4)だけである。

なお、今回の衆院選では、このように年齢的な若返りがあまり進まなかった上に、女性進出も振るわなかった。今回の当選者の女性比率は、前回の10.1%から9.7%へとむしろ低下しているのである。

■先進国の中でもっとも政治家が高齢化している日本

次に、本題に入り、このように、なかなか若返りが進まない政治家の平均年齢の状況を海外と比較するとともに、政治家の高齢化が進むと何か不都合なことが生じるか、生じているかについての見通しをこうした国際比較から探ってみよう。

国際比較データとして、議員の平均年齢を比較した数字は得られない。しかし、閣僚(大臣)の平均年齢についてのデータはOECDの報告書が公開しているのでそれを見てみよう(図表2)。

日本の大臣の平均年齢はOECD最高齢

民主主義体制が定着しているOECD諸国では、政権トップの大統領・首相は選挙で選ばれた政治家が就くし、閣僚についても政治家が指名されることが多い。すなわち閣僚の平均年齢は政治家、特に有力政治家の平均年齢を反映していると言えるのである。

2018年の時点で、閣僚の平均年齢はOECD諸国平均で53.1歳のところ、日本の場合は62.4歳とそれより10歳近く高く、しかも35カ国中最も高くなっている。

念のため、2018年以降の日本の閣僚の平均年齢を確認しておこう。昨年9月に発足した菅義偉内閣の平均年齢は60.4歳だった。また、先月に発足したばかりの岸田文雄内閣の平均年齢は61.8歳である。日本の閣僚がOECD最高齢という状況はほぼ今でも成り立っていると言えよう。

図の中で、日本に次いで高いのは、韓国、米国、ギリシャ、ドイツ、チリの順である。

米国が平均年齢61.3歳で第3位と高いのは案外と感じられるだろう。ドイツのほか、フランス、イタリアといった主要国も50代半ばとけっこう高くなっている。

欧米主要国で閣僚の年齢が高いのは、政治制度にそれなりの歴史がある国では、政治家としてのそれなりのキャリア、年功序列が国の要職に就くためには必要だからとも言えよう。

他方、若くして閣僚になる国としては、平均年齢の若い方から、アイスランド、ノルウェー、エストニア、デンマーク、フィンランドと北欧諸国が多くなっている。これらの国では平均して45~47歳で閣僚を務めているのである。

欧米主要国の中では英国が51.1歳と比較的若いのが目立っている。

■国民が高齢化しているから政治家も高齢化?

閣僚の平均年齢が高いのはそもそも国民の平均年齢が高いからとも考えられる。そこで国民と閣僚の平均年齢の相関図を掲げた(図表3)。

国民と閣僚の平均年齢には相関が見られる。すなわち、日本やドイツはそもそも国民の平均年齢が高いから閣僚の年齢も高い。アイスランド、ノルウェーは国民の平均年齢が低いから閣僚の年齢も低いという感じになっている。

国民の平均年齢が高いから大臣の年齢も高い?

一方、相関を示す図中の黄色の楕円から上のほうに外れた韓国、米国、チリ、イスラエル、メキシコ、チリのような国では、閣僚は国民の平均年齢以上に政治家として年季が入っていなくてはならないようだ。

日本と韓国は儒教国として年長者を敬う(敬わざるをえない)気風が残っていると思うが、日本の場合は韓国と比べるとかなりドライに処しているとも言えよう。

また、別の見方では、国民の平均年齢とはかかわりなく、それなりに激務である閣僚としての役割を果たすためには、平均の年齢上限として、日本、韓国、米国ぐらいの62歳前後の絶対年齢が存在しているのかもしれない。

■為政者の高齢化で生じる不都合は本当に生じているか?

為政者の年齢が高くなると政策にもそれに対応したバイアスが生じるかどうかについては世界的に関心がもたれており、例えば、年金と教育のどちらが重視されているかが、先に掲げた閣僚の平均年齢に影響されているかについて、両者の相関の分析が別のOECD報告書でなされている(図表4)。

高齢の閣僚が多いと教育より年金が重視されるか?

確かに、年金への公的支出が教育の公的支出をかなり超過しているイタリアやギリシャ、あるいは日本では閣僚の平均年齢が高いほうである。また、閣僚の平均年齢の低いアイスランドでは年金の超過度はかなり低い。

もっとも、閣僚の平均年齢の高い米国や韓国では教育に比して年金がそれほど重視されているわけではない。次世代のことを高齢閣僚も考えているのである。逆に、閣僚の平均年齢の若いオーストリアでは年金がかなり重視されている。まだ年金をもらう年齢から遠い閣僚でも将来のことは考えるのである。このように必ずしも相関度は高くない。

■高齢政治家が国の借金の膨張を放置した

次に、閣僚の平均年齢と国の債務比率との相関を見てみよう。

為政者の年齢が高くなると今を何とかやり過ごせればという「あとは野となれ山となれ」式のモラルハザードが起きて、国の借金を厭(いと)わなくなるのではないかという疑いが生じる。この点についての参考図として、閣僚の平均年齢と国の借金の程度の相関図を作成した(図表5)。

高齢の閣僚は国の借金を気にしない?

ここでも相関度はそれほど高いわけではない。閣僚の平均年齢の高い日本、ギリシャ、米国、ドイツ、韓国のうち、日本とギリシャだけがひどく国の借金を膨らませている。

しかし、全体としては、年金・教育比率よりは、両者にある程度関係がありそうだ。日本においては、政治家が高齢であるから国の借金が大きく膨らむのを放置したという側面がないとは言えないのである。ありえない想定であるが日本の閣僚の平均年齢がノルウェーやデンマークのように、もし40代半ばだったとしたら、現在のような国の債務比率にはなっていないと考えられるのだ。

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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。

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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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