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「年の差カップルは女の子が産まれやすい」不妊治療の最新研究で分かっていること

プレジデントオンライン / 2021年11月12日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

不妊症で悩むカップルは多い。そして、その約半数は男性側に原因があると考えられている。書籍『なぜオナニーはうしろめたいのか』(星海社新書)より、男性不妊症が専門の医師・小堀善友さんとTENGAヘルスケア広報の西野芙美さんの対談をお届けする——。

■不妊症のうち男性が原因とされる割合はどれぐらいか

【西野】泌尿器科の医師である小堀先生には、医学的な見地から「性」について掘り下げていただきたいと思います。先生のご専門は、「男性不妊症」ですね。

【小堀】不妊の問題は世界的に深刻で、6カップルに1カップルが悩んでいる、という報告があるんですよ。

ごあいさつ代わりに、読者のみなさんにクイズをお出ししましょう。「不妊症のうち、男性が原因とされる割合は、次のうちどれでしょうか?」という問いです。

①28%
②38%
③48%

【西野】一般的には、不妊症と聞くと、女性のほうに何らかの原因があると考えられがちです。

【小堀】特に男性の側に、そうした認識が強いと思います。しかし、答えは③の48%。WHO(世界保健機関)による調査で、不妊症の原因は「男性のみ」24%、「男女両方」24%、「女性のみ」41%、「不明」11%——という結果が出たのです。

【西野】不妊の半分近くに男性が関わっているわけですね。意外に比率が高いと感じる方が多いのでは。

【小堀】でも、人口の半分は男ですから、ある意味当然の結果とも言えるでしょう。まずは、そういう事実を知っていただきたいのです。同時に、ひと口に「男性の不妊症」と言っても、「原因」にはいろいろあります。

【西野】すぐに思い浮かぶのは、無精子症とかED(勃起障害)とか。

■男性不妊症を引き起こすさまざまな原因

【小堀】この点については、「厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業」(2015年度)の「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」を基に説明したいと思います。グラフ(図表1)を見てください。日本全国の生殖医療専門医を対象に行ったアンケート調査の結果です。

疾患別患者内訳の変遷のグラフ
出典=『なぜオナニーはうしろめたいのか』

グラフにある「造精機能障害」というのは、おっしゃるような無精子症、あるいは乏精子症という、精液の中に精子がまったくなかったり極端に数が少なかったりする疾患です。

また、「閉塞性精路障害」は、名前の通り精子の通り道が塞がれてしまっている疾患です。精子は生産されているのに、外に出られない。これには、生まれつきパイプカットのような状態になっている場合、クラミジアなどの感染による性感染症が原因で管が詰まってしまう場合などがあります。

一方、「性機能障害」とは何かというと、1つは精子などに問題はないけれど、勃起が不完全で膣への挿入がうまくいかないED。そしてもう1つが、勃起はして挿入もできるのに、肝心の射精に問題を抱える射精障害です。

【西野】ほとんどの人が知っているEDに対して、「射精障害って何?」という人は多いのではないでしょうか。

【小堀】おっしゃる通りなのですが、疾患を訴える人は、確実に増えています。そして私自身、男性不妊の中でも、射精障害に重点を置いて治療や情報発信を行っているんですよ。

■「精子は毎日生産されているからいつも新鮮」は本当か

【小堀】さて、図表1を見ると、男性不妊で1年間に診察した患者数自体が、およそ20年前に行われた同様の調査時に比べて、大幅に増えているのが分かります。原因としては、不妊カップルや婦人科医などの間で、男性不妊症が広く認識されるようになったことや、晩婚化で不妊自体が増えていることなどが考えられます。

【西野】疾患別には、やはり無精子症などの造精機能障害が圧倒的に多くて、8割近くを占めるという比率は変わっていないようです。

【小堀】男性の場合は、やはり精巣(睾丸)に問題を抱えている場合が多いということです。ちなみにこの造精機能障害は、精索静脈瘤手術、生活習慣の改善、抗酸化療法、ホルモン療法などで改善される可能性があります。

閉塞性精路障害も、手術で精子の通過路を開通させるといった治療が試みられます。ともに、人工授精、体外受精といった方法を選べる場合もあります。もちろん、有効かどうかは、それぞれの患者さんの症状によるのですが。

【西野】治療技術も、昔に比べれば向上して、選択肢も増えたのでしょうね。

【小堀】あえて言っておくと、精子の数や運動率は、病気や機能障害がなくても10代後半ぐらいをピークに、徐々に低下していきます。

よく、卵子は年齢に従って“古く”なるので、高齢出産は流産などのリスクが高まる。一方、精子は毎日生産されているから、いつも新鮮——などと言われますが、それは大いなる誤解なんですよ。

精子だって、加齢に伴ってDNAの損傷が進行し、受精率も落ちていきます。やはり男性も高齢のほうが流産の率が高い、という報告もあるのです。

【西野】精子も老化は避けられない。

■年の差婚をした夫婦の子どもの性別に偏りがでるワケ

【小堀】ですから、例えば不妊治療を始めるのならば、なるべく精子が「若い」うちがベター、ということになります。

精子については、こんな事実もあります。時々、中高年男性が何十歳も若い女性と一緒になる“年の差婚”が話題になりますよね。こういうケースでは、子づくりをすると、女の子の生まれる確率が高くなるのです。

【西野】え、なぜですか?

【小堀】女性の性染色体はXX、男性はXYということは、ご存じだと思います。受精前の精子は、そのXかYかのどちらかを持っています。それに対して、卵子はすべてX。卵子と受精したのがXの精子ならXX、YならXYというふうにして、子どもの生物学的な性別が決まるわけです。

これはアメリカの学会誌に載った研究報告なのですが、5000人を超える男性の精子を調べてみたら、55歳を超えるとY染色体の比率が減少していることが分かりました。相対的にXが多くなるため、生まれる子どもは、よりXXになりやすい。

【西野】精子自体も、「女性」のほうが長生きだったということですか。それにしても、毎日体内で造られている精子だけれど、とてもデリケートな存在であることが分かりました。

■勃起と射精のメカニズム

【小堀】さきほどのグラフに戻ると、造精機能障害が高い比率をキープしている一方で注目されるのが、性機能障害の増加です。2014年度の全体に占める割合は、13.5%に上りました。この場合の性機能障害とは、平たく言えば「男性の機能に問題が生じたために、セックスがうまくできない」ことです。具体的には、EDと射精障害がこれに当たることは、すでに説明しました。

ただし、同じ「機能障害」に括られているこの2つは、似て非なるものです。ある意味、両者は正反対。相反する病態とも言えるんですよ。

【西野】正反対、ですか? どういうことでしょう?

【小堀】勃起と射精のメカニズムをごく簡単に説明します。いろいろ専門用語が出てきますけど、暗記の必要はありませんよ(笑)。

まず勃起について。脳の視床下部という部分が、視覚や聴覚などにより性的興奮を感じると、脳はその興奮を指令に変えて、脊髄を通して腰のあたりにある「勃起中枢」という神経に伝えます。指令を受け取った勃起中枢の働きにより、ペニスの海綿体というスポンジ状の組織に血液が流れ込み、その「血圧」によって勃起状態になるのです。

では、射精はどうなっているのか? こちらも、興奮を感じた脳の指令は脊髄を下り、「射精中枢」という神経に届きます。すると、前立腺、精囊といった関連部位に収縮が起こって、精液が精路の中をどんどん押し出されていきます。そして、最後にはペニスの先から勢いよく排出される。これが大まかな仕組みなのです。

【西野】それぞれ、別の神経によってコントロールされているわけですね。

【小堀】そうです。当然と言えば当然なのですが、性欲を起こしてセックスを行い、快感とともに目的を達するというのは、男女ともすべてが脳に支配されたふるまいです。

男性の勃起と射精に関して言えば、脳という司令塔からの指示が神経に的確に伝わり、さらにペニスをはじめとする関係器官がそれに基づいて正常に機能して、初めて完了できるプロジェクト、と言えばいいでしょうか。セックスやオナニーのたびに、男の体内では、けっこう複雑な回路が働いていたわけです。

さて、そこでさきほどの「勃起と射精は相反する」というお話です。人間の自律神経には、交感神経と副交感神経があるということも、お聞きになったことがあるはずです。

■「勃起と射精は相反する」

【西野】仕事や運動など、活発に活動しているときに働くのが交感神経で、好きな音楽を聞いたりしてリラックス状態にあるときには、副交感神経が優位になるんですよね。

赤川学・小堀善友・シオリーヌ(大貫詩織)『なぜオナニーはうしろめたいのか』(星海社新書)
赤川学・小堀善友・シオリーヌ(大貫詩織)『なぜオナニーはうしろめたいのか』(星海社新書)

【小堀】その通りです。では、勃起はどういう状態で起きるでしょうか? 「性的興奮」と聞くと仕事や運動と同様に活発な活動状態というイメージもあるのですけど、実は勃起自体は、リラックス状態でないと難しいのです。例えば、社運がかかったド緊張のプレゼンの最中に勃起する人は、まずいない(笑)。

【西野】そうなったら、ちょっと困るシチュエーションかも(笑)。

【小堀】ところが、です。射精のほうは、逆に交感神経優位の状態でないと難しいんですよ。最終的なミッションを達成するためには、やっぱり気合を入れて勝負をかける必要がある、ということなのでしょう。

【西野】なるほど。ゆったり構えて準備をしたうえで、勝負どころでは神経のスイッチまで切り替わる。また1つ、男性の大変さが分かったような気がします。

【小堀】そういう「ややこしさ」も、性機能障害の背景にはあるわけです。そのことを女性の方にも理解していただくのは、とても大事なことですね。

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小堀 善友(こぼり・よしとも)
プライベートケアクリニック東京東京院院長
1975年生まれ。金沢大学医学部卒業。日本泌尿科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本性機能学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性科学会セックスセラピスト。男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症を専門とする泌尿器科医。主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)『泌尿器科医が教える正しいマスターベーション』(インプレス)などがある。

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西野 芙美(にしの・ふみ)
「TENGAヘルスケア」広報/TENGA国内マーケティング部部長
1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部で史学、文学、哲学等を学び、卒業後は人材紹介会社、出版社での勤務を経て2017年に株式会社TENGAに入社。TENGAグループが展開するブランド「TENGA」「iroha」、医療・福祉・教育分野の専門家と連携して性の問題解決を目指す「TENGAヘルスケア」の広報、PR業務を担当。2021年3月よりTENGA国内マーケティング部部長。

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(プライベートケアクリニック東京東京院院長 小堀 善友、「TENGAヘルスケア」広報/TENGA国内マーケティング部部長 西野 芙美)

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