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「学歴の価値」が"爆騰"中…『ドラゴン桜』作者が教える自ら勉強する子を育てる"声かけフレーズ"

プレジデントオンライン / 2021年11月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ranmaru_

もともと学力の低い子供がなぜ東京大学に逆転合格できるのか。2度にわたりドラマ化されたマンガ『ドラゴン桜』の執筆を通じて、長年、教育に向き合ってきた三田紀房さんに、子供の学力を伸ばすための心構えと方法を聞いた――。

※本稿は、『プレジデントFamily2021秋号』の記事の一部を再編集したものです。

■学歴はデータとしてネットに残る時代だ

——『ドラゴン桜』は、学力が低い子たちが「一発逆転」して合格をつかみ取る物語が描かれています。そもそも、どうしてこのようなテーマを扱うことにしたのでしょうか?

自分自身の経験が大きいですね。私自身がある意味、一発逆転の経験者なんですよ。子供時代は、自分が漫画家になるなんてまったく想像していませんでしたから。社会人になり、家業を継いだのですが、うまくいかなくなり、賞金のために漫画を描いて応募したら、運よく賞をいただいた。それから作品を描く機会をいただいて、漫画家になることができた。

だから、こういう「一発逆転」というのは特別なことではなくて、意外と誰にでも起こりうるんだということを、世の中の人にも知ってもらえたらと思ったんです。

漫画の反響を見ても、東大の価値は10年前や20年前より格段に上がっていると感じます。東大に限らず、「学歴の価値」というものが世界的に上がり続けています。近年はSNSの発達もあり、ネットで調べればその人の経歴がすぐに出てくるじゃないですか。学歴はデータとして残るので、その人の価値を測る重要な要素になるのです。だからこそ子供をいい学校に入れて、いい学歴をつけさせる重要性は、これからも増していくと思います。

一方で、教育格差の拡大は社会問題になっています。でも欧米に比べて日本の受験システムのいいところは、「一発逆転」できるところです。

特に国公立大学に関してはペーパーテスト一発勝負で合否が決まるため、平等です。東京から遠く離れた場所の子でも、所得が低い家庭の子でも、親が大卒でない子でも、誰でも逆転合格する可能性が十分にあるわけです。

■「勉強ってかっこいい」と思わせる

——子供の学力を伸ばすために親ができることは何だと思いますか?

「環境整備」が大事だと思います。昔は、勉強は「やらなくてはならないこと」で、やりたくない子も強制されて仕方なくやっていましたが、今は違います。自分から能動的に学ぶほうが、教育効果が高いことがわかっています。

親ができることは「勉強しなさい」と言うのではなく、子供が自ら「勉強しよう」と思うように仕向けることです。子供にいくら口で言ってもスイッチは入りませんし、むしろ反発したくなるかもしれない。

家庭でできることは、たくさんの刺激を与えることでしょう。“ビジュアル”で見せるということは特に有効です。例えばリビングに図鑑を置いておくとか、恐竜でも乗り物でも歴史でも、好奇心を刺激するようなテレビ番組を意識的に流しておくとか。

口は出さずに環境面から、勉強に関心が向くように仕向けるのです。休日に遊園地に行くのもいいですが、たまには博物館に連れて行ったりすると、興味を持つきっかけになるかもしれません。

三田 紀房(みた・のりふさ)
撮影=堀 隆弘
三田 紀房(みた・のりふさ)大卒後、一般企業勤務を経て漫画家に。代表作に『ドラゴン桜』『ドラゴン桜2』『インベスターZ』『エンゼルバンク』や、連載中の『アルキメデスの大戦』、医学生の成長を描く『Dr.Eggsドクターエッグス』などがある。 - 撮影=堀 隆弘

——それこそ、『ドラゴン桜』のような漫画を読ませることも一つの方法ですよね。

そうですね(笑)。私が『ドラゴン桜』を執筆するときに心がけたのは、「勉強している姿がかっこいい」と思わせるような描き方をすることです。子供は「かっこいい」ものに憧れるんですよ。勉強している姿をかっこいいと思ってもらえたら、子供はマネをしたくなるというわけです。

16年前に『ドラゴン桜』をドラマ化したとき、地方からの東大受験生がすごく増えたらしいのですが、それはドラマを見た中高生が、「勉強するのって意外とかっこいいじゃん」と憧れを持ったからでしょう。そして、「自分も合格できるかもしれない」と、ビジュアルでイメージをつかむことができた。

「なんで勉強しなきゃいけないの?」という疑問を子供に抱かせないように、勉強するのが当たり前の環境をつくるのが理想ですよね。自分から「いい学校に入りたいな」とか、「勉強したいな」と思わせられるといいですね。

——親からすると、「言いすぎてもよくない」と思いつつも、「子供のためにも言わなきゃいけない」というジレンマがあると思います。

ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)
ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)

高校野球の強豪校の監督さんとお話ししたときに聞いたのですが、練習したらもっとうまくなるのにしない子ってたくさんいるそうです。その子たちに「もっと練習しろ」って言ったってやらない。じゃあどうしているかというと、「あの子は、毎日自主練しているらしいよ」とほかの子の様子を伝えるのが一番効くそうです。これもある意味、自分から行動するように「仕向ける」ことですよね。

子供に勉強してほしいなら、理屈を説明するのではなく、まず親自身が勉強してみせるというのも一つの手かもしれません。

勉強でもスポーツでも、やらない子供に大人がヤキモキするのは、古今東西みんなが抱えてきた悩みです。子供が自分の可能性に気づくように仕向け、待つ。それが大人の役割なのでしょう。

■過保護くらいでいい!

——ドラマにも登場して大きな反響を呼んだ「東大合格必勝法 家庭の10カ条」が、子育て世代に大変好評でした。三田さんはどんな思いで作ったのでしょうか?

これを作るときに気をつけたのは、「できそうもないことは書かない」ということです。こういう目標って、ついついハードルの高い「理想」を書いちゃうんですよ。でもそれでは習慣化できない。そして習慣化できなれば意味がないんです。家庭内でルールや目標を作るようなときには、「あまり頑張らなくてもできそうなこと」にすることがコツだと思って作りました。

「一緒に朝ご飯を食べる」の項目のテーマは、コミュニケーションです。会話をしてストレスのサインをキャッチすること。中高生になると親も子供も忙しいですから、会話する機会って意外とないんですね。いつの間にか「おはよう」も言わなくなってしまう。でも食事を一緒に取れば、何かしら会話が生まれますし、食べる量が減っていたり、口数がいつもより少なかったりといった子供の小さな変化に気づくことができるわけです。

三田 紀房『ドラゴン桜』(モーニング KC)
三田 紀房『ドラゴン桜』(モーニング KC)

サインに気がついたら、それを指摘するのではなく、さりげなくストレスを取り除くような働きかけをしてやるといいと思います。

「適度に運動させる」という項目のテーマは、体力をつけることです。実は勉強って体力が必要なんですよ。例えば、東大の試験は1科目120分前後あります。知力だけじゃ乗り切れないんです。小学生のお子さんがいるなら、日頃から体を動かすような習慣をつけさせるといいと思いますよ。スポーツの習い事をするのもいいことですし、週末だけでも運動させるのはとても有効です。

——『ドラゴン桜』では「子供を褒めること」の重要性も強調されています。褒めることは大切でしょうか?

子供は褒めるに越したことはありません。有名予備校講師の林修先生も、子供の頃、家族に「すごい! 天才だ!」と褒められたおかげで、勉強を好きになったと話しています。優しく愛情をたっぷり注ぐ。興味を持ったことは好きなようにやらせる。周りから「甘やかしている」と思われることもあるかもしれませんが、「褒める」と「甘やかす」の基準は人それぞれです。だから周りと比べて気にしても仕方ありません。漫画のセリフにもありますが、「過保護くらいでいい」んですよ。自分がかわいいと思ったら、かわいいかわいいって言ったほうがうまくいくと思うんです。

三田さんから小学生へメッセージ
「人は必ず成長する」ということを覚えておいてください。今できないことがあっても、人は必ず変わります。今の自分がそのまま大きくなるなんてありえないわけです。3年後、5年後には、今は想像がつかない自分になっているかもしれません。そう思うと、いろんなことにチャレンジしたくなりますよ。

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三田 紀房(みた・のりふさ)
漫画家
1958年、岩手県生まれ。漫画家。明治大学政治経済学部卒業後、大手百貨店勤務などを経て、30歳のとき講談社ちばてつや賞一般部門入選で漫画家デビュー。社会現象を巻き起こした東大合格請負漫画『ドラゴン桜』(講談社)で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。代表作にはほかに『クロカン』『砂の栄冠』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『アルキメデスの大戦』『ドラゴン桜2』などがある。

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(漫画家 三田 紀房 構成=岡崎拓実)

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