歯をいつも噛み締めている人に現れる取り返しのつかない「ある症状」
プレジデントオンライン / 2021年11月12日 10時15分
■毎回1時間磨いてくれたら、歯周病は治る
歯を失う原因のひとつとして古くから知られているのが「歯周病」だ。その歯周病の有病率は30代以上という現役のビジネスパーソンを含めた年代で、7割とも8割とも言われている。そうしたなか、歯周病の治療で歯科クリニックに通う人も少なくないのだが、小西歯科医院院長の小西昭彦氏は次のように忠告する。
「歯周病の有病率が7割、8割と言うのは、少しだけ歯石がついているというごく軽度のものを含めた数字で、それほど心配するような状態ではありません。歯周病には『歯肉炎』と『歯周炎』があります。このうち、怖い歯周病は歯を支えている骨をとかしてしまう歯周炎で、歯石が少しついているからといって、あわてて取る必要はありません。歯周病の原因は細菌の塊であるプラークで、そのプラークを取り除くブラッシングが重要になるのです」
つまり、本気で歯周病を治したいと思うのなら、患者自身が主体的に取り組むしかないのだ。そのうえで小西氏が強調するのが、「医患共同作戦」の下で進める「自覚」「自助」「自立」の重要性なのである。自覚は、先ほどの小西氏のコメントにあるように、プラークを取ることが大切だと十分に理解することである。次の自助が毎日のブラッシングになるわけだが、闇雲に磨けばいいわけではない。歯科医、歯科衛生士の指導を受け、自分に合ったブラッシングを行っていく必要がある。
![患者の主体性が求められる歯周病の治療](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/450/img_b0674650700cf25777bb1f217520bd62440258.jpg)
「人によって歯並びが違えば、手先の器用さも違います。プラークのつき方を見ながら的確なブラシの当て方などを指導していきます。重度の歯周病でコロッケを食べることもできなかった人が、朝、昼、晩に1時間ずつ、歯磨き粉を付けないブラッシングを1年間続けたところ、歯周病が治り、いまでは普通に食事をして自立できるようになった症例もあります」(小西氏)
■歯根破折を起こす歯牙接触癖
それと歯科の治療で患者自身が主体的に取り組まないと治らないのが、睡眠時の歯ぎしりや噛みしめなどによって異常な力が歯に加わることだ。激しい歯の痛みだったり、ひどいときには歯根破折を起こしたりする。通常、歯痛の対処に困ると、歯科医は神経を抜いてしまうことがある。しかし、過剰な力が加わって起こる痛みであれば、「力」という根本的な原因が解消されないままであり、不必要な介入を行ったことで、逆に歯を痛めてしまうことになりかねない。
「本来、人はモノを食べるときと唾液を飲み込むとき以外、上と下の歯は離れているもの。しかし、現代人は様々なストレスを受けて無意識のうちに、上下の歯を軽く接触させている状態が多くなっています。これを『歯牙接触癖』と言い、睡眠時の歯ぎしりや噛みしめを誘発してしまう可能性が指摘されています。この癖を解消するためには、上下の歯が接触していないかチェックすることを常に心がけ、接触しているときは口の周りの筋肉の力を抜き、唇を閉じて鼻から息を大きく吸って、『ハッ、ハッ、ハー』と吐き出します。これを繰り返すことで、歯を離すことを習慣づけていきます」(小西氏)
残念ながらこうした指導は保険の点数が低いこともあって、積極的に取り組む歯科医が少ないのが現状だ。また、マウスピースの装着も治療法の1つだが、あくまでも対症療法であり、一部分の歯に加わる異常な力を分散させているのにすぎない。歯牙接触癖を治すのには、患者自身の日頃の心がけが何よりも大切なのだ。
一方、眼科での治療、とりわけ緑内障の薬物治療では、処方された目薬を毎日決められた回数、きちんと点眼することが大切になる。北あやせよつば眼科院長の玄真氏は、「月1回の診察の際に検査をすると、一向に症状が改善しておらず、よく聞くと点眼していなかったということが少なからずあります。なかには半年間、通院してこられない患者さまもいます」と言う。本当に症状を改善したいのなら、患者自身が主体的に治療に取り組まなければならないのは、眼科も歯科も同じ。このことを肝に銘じておきたい。
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小西歯科医院院長
1952年、東京生まれ。80年、日本歯科大学歯学部卒業。85年、東京都新宿区に小西歯科医院を開業し、現職に就く。著書に『歯科治療の新常識』『歯周病は怖くない』など。
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北あやせよつば眼科院長
順天堂大学医学部卒業。1999年、眼科専門医の資格を取得。2010年4月、加平よつば眼科を開院。新たな医療の充実を図るため、15年3月に北あやせよつば眼科を開院。
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(小西歯科医院院長 小西 昭彦、北あやせよつば眼科院長 玄 真 文=プレジデント編集部)
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