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「朝食は1日のなかで最も大切な食事」という常識は科学的にはウソである

プレジデントオンライン / 2021年11月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gu Studio

健康のためには朝食をとったほうがいいとよくいわれる。それは本当だろうか。医学博士のジェイソン・ファン氏は「お腹がすいていなければ、朝食は不要だ。私たちの体は朝食を食べなくても、エネルギーチャージを勝手に行っている」という――。

※本稿は、ジェイソン・ファン著、多賀谷正子訳『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■「朝ご飯を食べる=健康的」は完全な印象操作

多くのアメリカ人が、「朝食は一日のなかで最も大切な食事」だと考えている。

しっかり朝食を食べることが健康な食生活への第一歩だ、と。朝食を食べないとお腹がすき過ぎて、そのあとは一日食べ過ぎてしまうといわれる。私たちはそれが正しいと思いこんでいるが、実はこれはアメリカだけでいわれていることだ。

フランスでは(スリムな人が多いことで有名だ)、朝はコーヒーだけを飲んで、朝食を食べない人も多い。

フランス語で朝食を意味する言葉“ささやかなランチ”は、朝食は軽いほうがいいということを示唆している。

1994年に〈ナショナル・ウェイト・コントロール・レジストリ(全米体重管理登録)〉が設立され、モニターとなった人たちは14キロの減量に成功し、その体重を1年間維持した。その参加者の大半(78%)は朝食を食べていた(※1)

『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版)
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』(サンマーク出版)

よって、この結果は、「朝食を食べるのは減量に効果があることの証拠だ」といわれた。だが、減量できなかった人は朝食を食べていなかったのだろうか? それがわからないと、結論として確定できない。減量できなかった人の78%も朝食を食べていたとしたら? このデータは明らかにされていない。

それに、この研究に参加した人たちは実験機関が選んだ人たちであって(※2)、世間一般を代表するような人たちではない。たとえば、参加者の77%は女性、82%は大卒、さらに95%が白人だった。

2013年、朝食に関する研究のシステマティック・レビューを行ったところ、ほとんどの研究が、得られた結果を自分たちの意向に添ったかたちで解釈していたことがわかった(※3)

朝食を食べると肥満になりにくいと信じていた研究者は、調査結果を自分のバイアスに合うように解釈していたのだ。

■体にとって「朝食」は不要なもの

結論から先にいうと、起きてすぐに食べる必要はまったくない。

これから始まる一日に備えて「エネルギーを補充しなければ」と私たちは考える。だが、私たちの体は自然とそれを行っている。

毎朝、目覚める少し前に、体の概日(がいじつ)リズムによって、成長ホルモン、コルチゾール、アドレナリンとノルアドレナリンといった興奮作用のあるホルモンが一斉に分泌されて体を刺激する。

こうしたホルモンのカクテルが、肝臓に新しいグルコースを産生するよう促し、それにより私たちは目覚めるのに必要な刺激を受け取る。これは「暁(あかつき)現象」と呼ばれ、何十年も前からよく知られる体のエネルギーチャージ現象だ。

朝、お腹がすいていない人は多い。体内で産生されるコルチゾールとアドレナリンが、軽い闘争・逃走反応を促すような刺激を与え、交感神経系が活性化されるからだ。つまり、朝、私たちの体は行動を起こす準備をしていても、食べる準備はしていないということだ。

こうしたホルモンの刺激によってグルコースが血中に放出され、すぐにエネルギーが使える状態になっている。食べなくても、すでに燃料が補給され行動を起こせる状態になっているということだ。

砂糖がかかったシリアルやベーグルなどで、さらに燃料を補給する必要はまったくない。朝、お腹がすくというのは、ほとんどの場合、子どもの頃から何十年とかけて獲得されてきた「習慣」にすぎない。

“breakfast(朝食)”という言葉は、文字どおり”fast(食べない時間)“を”break(断つ)”するという意味だ。”fast”は、何も食べないで寝ている時間を指す。起きてから最初の食事を昼の12時に摂るとすると、グリルドサーモン・サラダが朝食ということになる――それで、何の問題もない。

■「朝からしっかり食べる」人ほど太りやすい

朝食をしっかり食べれば、そのあとの一日に食べる量が減るという意見もある。だが、いつもそうとはかぎらないだろう(※4)

いくつかの研究によれば、朝食でどれだけのカロリーを摂ろうと、昼食と夕食で摂るたんぱく質の量は変わらないことがわかっている。

それどころか朝食をしっかり食べれば食べるほど、一日の摂取カロリーは増える。さらに悪いことに、朝食を食べると、一日のなかで食べる回数も増える。

だから、朝食を食べる人は、食べる量が多くなるうえに、食べる回数も多いということになりがちだ――悪い組み合わせだ(※5)

また、「朝起きたばかりのときはお腹がすいていないけれども、朝食を食べるのは健康や減量にいいだろうから無理して食べている」という人はとても多い。おかしな話だが、やせようとしているのに、無理してたくさん食べている人が大勢いるのだ。

2014年に16週間にわたって行われた朝食についてのランダム化比較試験では、「一般的にいわれていることとは異なり、朝食を食べることは減量に何の効果もない」ことがわかった(※6)

■朝食を食べても抜いても「燃焼率」は同じ

「朝食を食べないと代謝が悪くなる」ともよくいわれる。英国バース大学が朝食に関するランダム化比較試験を行ったところ、「一般的にいわれていることとは異なり、朝食の代謝適応作用は認められなかった」ことがわかった(※7)

一日の総エネルギー消費量は、朝食を摂っても摂らなくても変わらなかったのだ。反対に、朝食を食べた人は、朝食を抜いた人に比べて、一日で平均539キロカロリー多く摂取していた――ほかの研究結果とも一致している。

朝はいつも時間がなく慌ただしい。だから、私たちは手軽に食べられて、安価で、賞味期限の長い加工食品を求める。子どもを主要ターゲットにした砂糖がけのシリアルは、朝食の王様だ。圧倒的な数の子ども(73%)が、砂糖がけのシリアルを定期的に食べている。

逆に、朝食に卵料理を食べている子どもは、わずか12%だ。

ほかにも、手軽に食べられるトースト、パン、加糖ヨーグルト、デニッシュ、パンケーキ、ドーナツ、マフィン、果物のジュースなども人気がある。精製された炭水化物を使った安価な製品が多いのは明らかだ。

歩きながらドーナツを食べている女性
写真=iStock.com/yumi yamao
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yumi yamao

■朝食を食べるとき、お腹がすいているだろうか

朝食は一日の食事のなかで最も大切な食事だ――大手食品会社にとっては。利益率の高い、高度に加工された朝食用の食べ物を売り込む絶好の機会なので、大手食品会社は傷ついた獲物に群がるサメのように利益を貪(むさぼ)っている。

「朝食を食べましょう!」と彼らは声高に叫ぶ。「朝食は一日のなかで最も大切な食事です!」と大声で言う。医者、ダイエット専門家、医療関係者を“教育する”いい機会にもなる。

こうした職業の人には、大手食品会社にはない社会的信用がある。彼らを利用した結果、利益が食品会社に流れていくわけだ。

自分自身にごく当たり前のことを問いかけてみてほしい。朝食を食べるとき、お腹がすいているだろうか? すいていないなら、自分の体の声を聞き、無理に食べないことだ。

もし、朝、お腹がすいていて朝食を食べたいなら、食べればいい。だが、砂糖と精製された炭水化物は避けたほうがいい。また、朝食を抜いたからといって、クリスピー・クリームのドーナツを、10時のおやつに食べてもいいということではない。

※1 Wyatt HR et al. Long-term weight loss and breakfast in subjects in the National Weight Control Registry. Obes Res. 2002 Feb; 10(2):78‐82.
※2 Wing RR, Phelan S. Long term weight loss maintenance. Am J Clin Nutr. 2005 Jul; 82(1 Suppl):222s‐5s.
※3 Brown AW et al. Belief beyond the evidence: using the proposed effect of breakfast on obesity to show 2 practices that distort scientific evidence. Am J Clin Nutr. 2013 Nov; 98(5):1298‐308.
※4 Schusdziarra V et al. Impact of breakfast on daily energy intake. Nutr J. 2011 Jan 17; 10:5. doi: 10.1186/1475-2891-10-5. Accessed 2015 Apr 8.
※5 Reeves S et al. Experimental manipulation of breakfast in normal and overweight/obese participants is associated with changes to nutrient and energy intake consumption patterns. Physiol Behav. 2014 Jun 22;133:130‐5. doi: 10.1016/j.physbeh.2014.05.015. Accessed 2015 Apr 8.
※6 Dhurandhar E et al. The effectiveness of breakfast recommendations on weight loss: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2014 Jun 4. doi: 10.3945/ ajcn.114.089573. Accessed 2015 Apr 8.
※7 Betts JA et al. The causal role of breakfast in energy balance and health: a randomized controlled trial in lean adults. Am J Clin Nutr. 2014 Aug; 100(2): 539‐47.

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ジェイソン・ファン(じぇいそん・ふぁん)
医学博士
1973年生まれ。トロント大学医学部卒業。同大学の研修医を経たのち、カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて腎臓専門医の研修を修了。2型糖尿病と肥満に特化した独自の治療を行う「インテンシブ・ダイエタリー・マネジメント・プログラム(集中的な食事管理プログラム)」を開発。著書に『The Obesity Code』『The Complete Guide to Fasting』など。雑誌『ジャーナル・オブ・インスリン・レジスタンス』の編集長(科学部門)も務める。

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(医学博士 ジェイソン・ファン)

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