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「生命保険は今すぐ見直しなさい」お金のプロが教える本当に必要な保険の選び方

プレジデントオンライン / 2021年11月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Moyo Studio

いざというときの備えとして、民間の生命保険や医療保険は本当に必要なのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「サラリーマンが加入している社会保険で人生のリスクはほぼカバーできる。生命保険に加入している人はすぐに見直したほうがいい」という――。

※本稿は、荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■何も起こらなければ、ただただ保険料を支払うだけ

日本人は無類の保険好きです。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2018年)によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は88.7%、医療保険の加入率は88.5%、一世帯当たりの年間払込保険料(個人年金保険の保険料を含む)は平均38.2万円と、月約3万2000円を保険につぎ込んでいる計算です。

こんなに多くの人々が保険に多額のお金を使っているなんて……。貯蓄があるのに高額な保険に入っている人をよく見かけますが、それは意味なしです。

私は、原則、生命保険も医療保険もそれほど多くは必要ないと思います。そもそも、生命保険とは、自分の健康や命を賭けた「賭け」です。

保険は死亡や病気、ケガ、事故に遭うなど「不幸くじ」を引き当てることで保険金がもらえます。不幸を心配ばかりして保険で備えると、保険料はどんどんかさんでいき、何も起こらず健康に過ごせれば、その間の保険料はすべて無駄になります。

例えば、死亡保障の基本的な保険の仕組みは、「万人は一人のために、一人は万人のために」という相互扶助のシステムを作り、そのシステムの加入者が死亡した場合、その人にみんなから集めたお金がいくようにみんなでお金を出すというもの。

仮に100人のグループで、死亡保険料を毎年1人1万円ずつ集めるとします。すると年間100万円が集まり、胴元である保険会社が収益と運営費を差し引いた額が、その年に亡くなった人に渡されて終わります。

亡くなる人が少なければ、配当という形でその年に保険料を支払った人に返され、そこで清算されます。つまり、一年ごとのクジのようなものです。

■保険は死亡や病気に備えた「不幸くじ」

では、この生命保険という、命や病になる確率を賭けた「不幸くじ」の還元率はどれくらいなのでしょうか?

宝くじの還元率は、46.5%で半分以下と低く、パチンコは還元率80〜85%といわれておりギャンブルとしては高い還元率です。

保険の還元率は、商品や加入者の年齢、性別によっても違いますが、「当たればもらえ、当たらなければもらえない」という意味では一種のギャンブルで、一般的な生命保険だと、還元率はそれほど高くありません。

保険会社は、売る保険の中に、死亡したり病気になって入院した時の保障費用のほかに、収益や維持費、運営費、広告費などを織り込んでいます。運営費の中には、保険加入の契約を交わした営業販売員の給料と歩合なども含まれています。

保険は、加入者間の公平を期すために、同じ年齢、同じ性別の人でグループをつくり、その中でその年に死んだ人や病気で入院した人に、みんなが支払った保険料(純保険料)が行き渡る仕組みになっています。

日本人が死亡したり入院する確率はみんな同じですから、同じ保障の保険なのに保険料が違うというのは、保障の費用に上乗せされる、保険会社の経費比率が違うのです。

もちろん、商品は認可制なので9割が経費などというとんでもない商品は作れませんが、短期間で低い保障のものだと半分が経費というものもあります。保険会社は経費率を開示していませんが、一般的には同じ保障でも、経費がかからないネット保険は安く、人件費がかかる勧誘型で売る保険は高くなっています。

■生命保険は死亡保障を減らす

自分が亡くなったとき、残された家族が生活に困らないように入るのが生命保険の死亡保障です。ですから、養う家族がいない独身の人は、生命保険で死亡保障を確保する必要はありません。自分が死んだ後に保険金をもらっても、自分では使うことができないからです。

また、家族がいても、妻が働いてそこそこに稼いでいるという場合にも、保険金を残す必要はないでしょう。例えば、夫が亡くなった妻は悲しみに打ちひしがれるでしょうが、やがて悲しみが落ち着けば、また立ち直って生きていくだろうし、もしかしたら再婚をするかもしれない。

残された妻が専業主婦の場合も、サラリーマンの夫が死亡して幼い子どもと残されたら、後述しますが、食べていくくらいの遺族年金は子どもが18歳になるまで出ます。

ですから、残された家族の生活については、それほど心配する必要はないでしょう。

問題は、生活するのにはそこそこ大丈夫でも、子どもの教育費までは手が回らないケースです。子どもは放っておいても勝手に育ちますが、進学したいときの教育費だけは準備しておきたいもの。

高校・大学に行くには一人1000万円かかるので、子どもが大学を卒業するまでは死亡保障のみのシンプルな掛け捨て保険で、子ども一人につき1000万円を保険で備えればいいでしょう。

■医療費はさほどかからない

病院は患者の回転率を上げなくてはならないので、病気になっても長期の入院をさせてはくれないのはご存じの通り。患者にとっても働きながら治療をするのが理想です。

しかも、「病気になったらお金がかかる」とは、単なる思い込みです。

そもそも日本人は全員健康保険に加入しているので、病院で手術や治療を受けても自己負担は3割です。さらにその3割がいくらかさんでも、高額療養費制度があるので、一般的なサラリーマンなら医療費は月9万円程度です。

会社を休んで収入が減るのが心配だという人もいらっしゃるでしょうが、病気で会社を休んでいる間は最長1年6カ月の間、給料の3分の2を支給してもらえる傷病手当金があります。

このように病気やケガに関しては、手厚い社会保険があるので、民間の医療保険に加入してわざわざ保障を上乗せしなくてもいいかもしれません。

■保険過多は迷わず解約しよう

現在、必要以上に高額な死亡保障のある生命保険や医療保険に入っている人は、亡くなったり、入院したりしないと、この先もずっと無駄な保険料を払い続けていくことになりかねません。

バブル時代に加入した予定利率の高いお宝貯蓄保険を除き、「死亡保障が大きく保険料が高額な人」「更新で保険料が上がる人」「特約がたくさんついている人」「複数の保険の保障が重複している人」は、不必要なものは解約して保険料を下げ、その分貯金に回したほうがいいかもしれません。

保険は、「当たるか当たらないかわからない不幸くじ」ですが、保険に入ったと思ってお金を貯めておけば、確実に現金が増えるからです。

そのお金は医療費にも使えます。現金はいくらあっても邪魔にはならないので、必要以上に保険料を支払っているなら、健康に留意し、貯蓄をしたほうが賢明です。

■サラリーマンは4つの保険に加入済み

サラリーマンなら給料天引きで雇用保険、年金保険、健康保険、介護保険(40歳以上)という公的な4つの保険に加入しています。

あまりにも身近なので忘れがちですが、これらの社会保険に、私たちは毎月、多額の保険料を納めています。また、会社が加入している労災保険の保障も受けられます。

私の友人で中小企業に勤務するSさんの給料明細を見せてもらう機会がありました。ザックリですが、基本給30万円、役職手当15万円、残業手当が5万円、交通費が1万円で支給額は51万円でした。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料はトータルで月約7万6000円です。社会保険料は会社が半分払う労使折半(雇用保険を除く)なので、Sさんは月15万円もの保険に入っていることになります。

これらはSさんに万が一のことが起きた場合、いの一番に助けてくれる保険でしょう。まずこれらの保険の機能をチェックし、足りないと感じてから民間の保険に入っても遅くはありません。

ここからは、実は驚くべき「社会保険の威力」を見ていきます。

■大黒柱の死亡で遺族年金がもらえる

一家の大黒柱として働く配偶者が死亡したとき、残された家族の生活が困窮しないように支給されるのが遺族年金です。

故人が国民年金加入者であった場合、要件を満たせば「遺族基礎年金」を受給できます。故人が厚生年金加入者であった場合、要件を満たせば「遺族厚生年金」を受給できます。

支給額は子どもの数によって異なりますが、年収600万円のサラリーマンの場合、妻と子ども2人を残して亡くなったとすると、残された家族には、月に15万円前後の遺族厚生年金が、子どもが18歳になるまで支給されます。

また、サラリーマンであれば、会社からまとまった額の死亡退職金が出る可能性があります。仕事関係が理由で亡くなったとなれば加算もあるでしょう。

さらに、マイホームを購入し、住宅ローンを組んだ配偶者が亡くなったら、団体信用生命保険が残りのローンを払ってくれる可能性もあり、残された家族が家を追い出されることはないでしょう。これはマイホームを持つ強みの1つです。

例えば、一家の大黒柱である夫が亡くなることは、妻にとってとても悲しいことで、これから先、子どもをどう育てていったらよいのか不安になるでしょう。

けれども、その後も住宅ローンがなくなった家に住み、夫の会社から死亡退職金をもらい、子どもが18歳になるまで遺族年金をもらい、妻自身も働けば、民間保険に入らなくても一家が路頭に迷うことはないはずです。

ただ、唯一心配なのは、子どもの教育費用です。夫が亡くなり家計が苦しくなったとしても、子どもが大学や専門学校に進学したいと願うなら叶えてあげたいものです。進学をあきらめるのは亡くなった夫も本意ではないでしょう。

心配なら、子どもの成人まで1人につき1000万円のシンプルな死亡保障を夫は保険で確保しておくとよいでしょう。

なお、子どもが社会人になれば自分で稼ぐので、1000万円の死亡保障はいりません。

■病院に払う治療費や薬代は3割負担で済む

健康保険料は高額で、20代でも月1万円以上、先ほど中小企業勤務のSさんは4万円弱払っています(本人の負担分のみ)。これだけの保険料を払っているのだから、使わない手はありません。

大企業なら健康保険組合、会社に健保組合がない人は協会けんぽ、自営業は国民健康保険に加入し、種類は違えども働く世代の医療費負担は3割。つまり病気になっても健康保険対象の治療なら医療費の7割は健康保険が負担しています。

点滴を受ける患者
写真=iStock.com/kckate16
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kckate16

さらに、健康保険は私たちが病気にならないように、年1回の健康診断の費用まで負担してくれます。

■大病をしても医療費は月9万円程度で済む

健康保険には、がんや心筋梗塞など重大な病気や大ケガをしても、医療費で家計の負担が重くならないよう、3割負担をさらに下げてくれる高額療養費制度があります。

年収によって上限額は異なりますが、例えば、月収28万〜50万円のサラリーマンが、月100万円の治療を受けても3割負担の30万円ではなく、自己負担は9万円程度で済みます。

つまりどんな大病をしても医療費には上限があるということです。病気が治らず治療が長引くと、さらに安くなる仕組みになっています。

この制度を知っている人は、「月をまたいだ入院はしたくない」と入院を月はじめにずらしています。

ここで、民間の医療保険やがん保険が必要かを考えてみましょう。今、がんは多くの人が罹る病気であり、がんと共に生きている人が多くいます。

近年では抗がん剤治療も進歩し、副作用に対しても治療が行われます。手術をしても入院は短めで、通院で治療することも多くなっています。

がんだけでなく、どの病気も入院日数が少なくなっているので、医療保険に入っていても入院日額を稼ぐことができません。日額5000円の保険で10日間入院しても、1日目から給付金が出るタイプでもらえる保険金は5万円です。

ということは、自分で5万円の貯蓄をして病気に備えれば、医療保険は必要ないかもしれません。

■会社を病気で休んだら傷病手当金が出る

サラリーマンが病気やケガで、4日以上連続で会社を休み、給料がもらえないときは、健康保険から最長1年6カ月分の傷病手当金がもらえます。

支給される金額は、働いているときの給料の3分の2。大手企業の健康組合なら組合からの補助金が上乗せされ、給料の8割をもらえるところもあります。

民間の医療保険は入院で治療した日数で給付金が出ますが、傷病手当金は自宅療養でも出るのが素晴らしいところです。

最近は、会社での人間関係やストレスで、うつ病やパニック障害になる人も増えていますが、精神障害も傷病手当金が認められ、長引く治療も安心して受けることができます。

ただし、国民健康保険に入っている自営業者には傷病手当金がないので、いざ働けなくなったときのために貯蓄で備えるか、民間保険も検討する必要があるかもしれません。

■通勤や仕事中の病気やケガは労災で治す

通勤中の災害や、仕事中の事故やケガに備えるのが労災です。

労災といえば通勤途中に多くの会社員を巻き込んだ地下鉄サリン事件や、作業に従事した作業員が健康被害にあったアスベスト事件などを思い浮かべますが、近年は過剰労働によるうつ病や自殺なども労災に認定されています。

労災とは労働者災害補償保険の略で、立派な保険です。会社の経営者は労災に入る義務があり、従業員(パートやアルバイトを含む)のために保険料を支払わなくてはなりません。

従業員が業務中や通勤途中にケガや病気になったとき、労災と認められれば治療にかかった費用や看護料、移送費などを全額出してもらえます。

また、それにより会社を休まざるをえなくなると、給料の6割の休業補償給付がもらえます。さらに条件によって休業特別支給金も上乗せされると約8割もらえます。

■再就職まで生活を支えてくれる雇用保険

会社員に突然襲ってくるかもしれないのが、リストラや会社の倒産です。自己都合で転職するにしても、収入が一時的に途切れる心配があります。そんなときに頼りになるのが雇用保険、別名・失業保険です。

失業保険がもらえるのは会社に2年以上勤めていて、雇用保険に1年以上入っている人。もらえる金額は、退職前の1日当たりの給料の50〜80%を1日分として、90〜150日分で、年齢や勤続年数によってはもっと多くもらえます。

申請は、住まいの住所を管轄しているハローワークへ。失業中は再就職先まで紹介してくれるありがたい保険です。

■老後も安心できる介護保険

40歳以上の人は、全員が介護保険に加入し、健康保険に上乗せして介護保険料を払っています。健康保険は健保組合が運営していますが、介護保険は各自治体が運営しています。

介護が必要であると認定されると、認められた範囲内で介護サービスを自由に選び、利用することができます。介護認定度によりますが、自己負担額は1〜3割です。

65歳以上の高齢者が介護保険を利用できるのはもちろんですが、40歳以上65歳未満の人の初老期における認知症、脳血管疾患など老化にともなう病気によって介護や支援が必要であると認められた場合には利用することができます。

■人生のほとんどのリスクをカバーする社会保険

このように私たちは病気やケガをしたら「健康保険」で治し、その間、病院や自宅で療養しても「傷病手当金」や「労災給付」で生活をし、子どもは「医療費無料」、一家の収入源が亡くなったら「遺族年金」がもらえます。

荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社)
荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)

失業したら「失業保険」で収入が途絶えることを防ぎ、再就職先を紹介してもらい、老後に介護状態になったときには「介護保険」、障害者になったら「障害年金」もあります。

さらに、出産費用は「出産育児一時金」が全員に出るし、会社員から「出産手当金」も出ます。会社員の育児休業中は子どもが一歳になるまで育児休業を取れば育児休業給付金が給料の67%(その後最長2歳まで50%)支給されるし、親が介護状態になったら雇用保険から「介護休業給付金」として休んだ日数の給料の67%がもらえます。

私たちは安くはない保険料を払う代わりに、手厚い保障を受けているのです。このような国のお助け制度を「社会保険」といいます。

民間の保険はこれらの社会保険に上乗せする形になります。

まずはしっかりと「社会保険」を使いこなし、その上で最低減必要だと思われる額だけ民間保険に加入するといいでしょう。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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