お酒を飲めない人が、深い人間関係をつくるためにものすごく大切な2つのこと
プレジデントオンライン / 2021年11月18日 9時15分
※本稿は、赤羽雄二『マッキンゼー式 人を動かす話し方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■聞く力の正体はアクティブリスニング
普段接する機会のあるすべての人に関しては、人として恥ずかしくない行動をし、前向きな姿勢で接しておくことです。それによって、いざというとき、支えになってくれる仲間やコミュニティができるかも知れません。
一方で、仕事やプライベートで、初めての人と話しながら、物事を進めなければならないことは日常茶飯事です。この場合は、話す前の仕込みができないので、今持っている力で勝負するしかありません。
その場ではごまかしようがなく、人となり、存在感、聞く力、話のわかりやすさ、説得力で勝負が決まります。最初は大変ですが、慣れてくると度胸がついてそれなりに対応できるようになります。
人となりは、急にどうしようもありません。良く見せようとしたり、隠そうとしたりしても不自然になるだけです。相手ができる人ほど、瞬時に見抜かれます。自分はあくまで自分だと考えて、自然体で臨むのがいいです。
存在感は、初対面の場でもおどおどせず、自信を持って自然体でふるまうことで生まれます。カリスマとかオーラとかを妙に気にする人がいるかも知れませんが、そういうこととは別ですので、気にしなくても大丈夫です。
![赤羽雄二『マッキンゼー式 人を動かす話し方』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/200/img_28b4a86509f8c697e98413abd4598aea173976.jpg)
聞く力は、アクティブリスニングに尽きます。アクティブリスニングというのは、真剣に聞いて、疑問に思ったら質問をしてさらに深掘りしていくことです。
何かを想像しながら聞くとか、こちらから何か言おうと考えながら聞くのではなく、本気で、誠心誠意、耳を傾けます。相手の本当の気持ちがよりよく理解でき、落としどころも見えてくるかも知れません。
話のわかりやすさは、こちらが伝えたいことを箇条書きでまとめておけば大丈夫です。自信がないと、ついだらだらと話し続けてしまいがちですが、逆効果です。できるだけ短く言い切りましょう。
説得力は、伝えたいこと・お願いしたいことが相手にとってどのくらい大切に感じられるか、自分の私心のない思いがどのくらい強いかによって高まります。
■その提案の「大義」は何か
物事を進める上で何より大事なのは、「相手がなぜこちらのお願いに合意しなければならないか」という「大義」と、その大義に基づいて「落としどころ」の目星をつけておくことです。
それぞれの会社や相手の事情はあるものの、社会のため、あるいは日本のため、あるいは今困っている人のため、こういうことをしたいので協力してほしいと言われたら、ほとんどの人は理解してくれようとします。
例えば、「プログラミングの才能あふれる高校生が、毎年100人、シンガポールでのプログラミングコンテストに参加できるよう、スポンサーになっていただきたい」と急成長中のITベンチャー企業の社長が依頼されたとしたら、趣旨を理解し、前向きに検討してくれる可能性が高いと思います。
一方、ITにあまり関心がない中小企業の社長なら、重要性そのものを理解していただけるかどうか微妙です。
■大義を伝える際の3つの注意点
「大義」を伝えるにあたり、注意するべき点がいくつかあります。
注意点① 一人よがりな提案
問題は、大義があって思いはよくても一人よがりになりがちなことで、「あなたの言うこともわからないではないが、ちょっと偏っているのではないのだろうか」などと感じさせてしまわないようにしましょう。一方的な印象を持たれてしまうと、理解はしてもらえても、合意はしてもらえません。
注意点② 拙速すぎる提案
拙速過ぎる提案は、こちらの足元を見られてしまい、説得しづらくなります。素早く動くのはいいことなのですが、あせっているように見えてしまわないよう、意識して丁寧にやる必要があります。一部しか見ていなかったり、雑だったりすると、後々問題を起こしてしまいがちです。
注意点③ 無理やりな提案
現実的なステップを考えず、あるいは手順を飛ばして、「いいからやりたい」「これは課題が大きいからやめてしまおう」「今までのやり方はだめだから、多少無理をしてでもこのやり方でやるべきだ」という態度も、相手を動かせません。
思いが強すぎ、聞き手がどう感じどう受け取るかを想像していない場合は要注意です。また人の話を聞かない方、頭が固い方、情報収集をあまりせず、偏った情報だけで判断しがちな方は、このパターンに陥るケースが多いようです。
もし提案に対して指摘されても、しっかり聞きましょう。聞く耳を持たなければ、相手を動かすための出発点に立てません。大義が大義として活きなくなってしまいます。
■落としどころの目星をつける
相手に響く「大義」を明確にした上で、落としどころの目星をつけておくことが大切です。
落としどころとは、「やりとりした結果、互いに合意できるライン」ですね。相手の立場や事情を考えると、こちらの主張がすんなり通ることはまれで、どこかで線引きをして合意する必要があるからです。
そのためには、現実的な見方がどうしても必要です。現実的な見方とは、「あるべき姿を踏まえながらも、実際にやろうとしたとき、過度に無理をせずに実行できる方法」を選ぶ、ということです。
![ビジネスミーティングで議論](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/670/img_55b577ba8042fc91cd52e71263869ded367585.jpg)
1回のミーティングで合意できるのか、2〜3回に分けて議論すれば合意できそうなのか、あるいは、ギャップがありすぎて今はあきらめたほうがいいのかも含めて、冷静に判断します。
感情のおもむくまま「当たってくだけろ」的に動く人がいますが、その姿勢だと継続的にうまくいくことはありません。成功する場合もあるのですが、再現性は低いと考えたほうがよさそうです。
落としどころの目星をつけることはそこまでむずかしくありません。
「落としどころを考えたほうがよい。そのほうがよい結果になる」という考え方をすることが大切です。落としどころに若干の幅があっても、大きな問題にはならず前進するケースが多いです。
■人間関係をつくるためにものすごく大切な2つのこと
いざというときに役立つよい関係をどのようにしてつくっておけばいいのでしょうか。
これこそまさに「仕込み」であり、意識して取り組むべきことです。必ずしも私が得意ではない分野ですが、それでもある程度できるよう努力しています。
必ずしも得意ではない、というのは2つ理由があります。
1つには、お酒があまり強くないので、夜ゆっくり飲み交わすとか二次会、三次会に喜んで行く、ということがほとんどないからです。昼間のミーティングよりは濃い会話ができたり、意気投合しやすかったりしますので、残念だとは思っています。
マッキンゼー時代に韓国で10年間仕事をしていたときは、日本以上に夜の付き合いが重要なので、飲めるふりをしていました。
韓国では献杯、返杯が重要なので、席についたらすぐにその場で一番えらい人に献杯して相手の機先を制し、返杯を受けたら少しだけ口をつけて、あとは横の茶碗などに空けてまた献杯する、という裏技があったからです。
2つ目の理由は、どちらかというと内向的なほうなので、多くの人とずっと一緒にいたいとか、自分のことをどんどんしゃべりたいという気持ちがないことです。
仕事柄、人にはたくさん会いますし、年間100回ほどのセミナーも開催しているのでそれ自体は決して苦痛ではないのですが、夜とか週末とか、1人でいるほうがどちらかというと楽しいのです。
さて、人間関係をつくるために一番大切なことが何か考えてみると、2つあります。それは「好印象を与えること」と「嫌われないこと」です。
好印象を残せるかどうかはやや運の部分もありますが、嫌われないためには、やるべきことがあります。外見や第一印象で決めつけず、相手の話を丁寧かつ真剣に聞くことです。
話を聞いてくれる人を嫌うことはまずありませんので、驚くほど効果的です。苦手意識がある私がどうやって、いざというときに役立つよい関係をつくったか、つくろうとしたかをお話しします。少しでも参考になればと思います。
■関係づくりが苦手な私がやっていること
① 1カ月以内に会食をする
経営改革コンサルティングの場合、クライアントの主要な役員・部長とは早めに会食をするようにしています。クライアントチームとは1週間程度、主要な役員・部長とは1カ月以内に行います。
この会食をしないとどうも落ち着きません。会食を終えるまでは、何か他人行儀なことが起きるのではないかという懸念です。
経営改革が進展して新たなプロジェクトが始まるときは、また新しいメンバーと食事に行きます。LGグループの経営改革を10年間支援したときは特にそうでしたし、日本の大企業の経営改革に際しても会食を重視しています。
会食は、夕食がベストです。昼食だと午後の仕事があるので、ゆっくり話すことができません。お酒を飲み、リラックスできる夕食のほうが会話の深さや相手との親密度の点で比較できないほど優れています。私はほとんど飲みませんが、お酒が飲める方にはどんどん飲んでいただきます。
② 大規模イベントへ出席して関係を構築する
急成長中のベンチャー社長、大企業の新事業担当役員、投資家などが多数参加する大規模イベントが年数回開催されています。こういうイベントに参加すると、多くの社長と知り合いになるチャンスがあります。
私はベンチャー社長と投資家の集まる日本最大級のイベントに数度出席し、社長数十人以上となじみになりました。夜のパーティーや、その後の二次会なども一緒ですし、話が弾めば翌日の朝食あるいは昼食などの約束もできるので、一気に関係が深まります。
これらの方との関係を活用し、日本初の学生アプリ開発コンテスト、ブレークスルーキャンプ2011、2012を開催することができました。
スポンサーをお願いでき、学生100名近くが2カ月間、神田のウィークリーマンションを使って開発に集中する環境を提供できました。宿泊費は無料、食費補助を出し、カップラーメンとカレーは無料、地方からの一往復の交通費も支給しました。
こちらへの参加・スポンサー依頼や当日でのやりとり、その後のフォローなどで関係が大変に深まったのは言うまでもありません。ちなみに、このコンテスト出場者のうちかなり多くの方がその後起業しました。
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ブレークスルーパートナーズ マネージングディレクター
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズを共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』(ダイヤモンド社)、『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』(宝島社)、『成長思考』(日本経済新聞出版社)、『アクションリーディング』(SBクリエイティブ)などがある。
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(ブレークスルーパートナーズ マネージングディレクター 赤羽 雄二)
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