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「退職は64歳11カ月がベスト」誰も教えてくれない年金受け取りで損をしないためのコツ

プレジデントオンライン / 2021年11月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/banabana-san

老後に受け取る年金で損しないためにはどうすればいいか。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「年金は繰り下げ受給で最大184%になる。受け取り時期は選べるので、国民年金と厚生年金に分けて考えるといい」という――。

※本稿は、荻原博子『買ったら一生バカを見る金融商品』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■将来もらえる年金額は「ねんきん定期便」でチェック

漠然と「老後が不安だ」と心配するその前に、将来もらえる年金額がいくらになるか知らなければ事は始まりません。老後の生活費のうちのどれくらいを公的年金でまかなえるかは、これから貯めるべき老後資金にも関わってきます。

年金は、働き方によって入る年金制度が異なり、厚生年金なら収入によってもらえる額が決まり、また、日本の経済動向によってももらえる額が変わってきますが、現時点での「見込み額」は1円単位で知ることができます。

年に一度、誕生月にハガキで、35歳、45歳、59歳の年には封書で、日本年金機構から郵送されてくる「ねんきん定期便」には、あなたが長年納めてきた年金保険料の情報が記載されています。

また、50歳以上の「ねんきん定期便」には、現在の加入条件が60歳まで続くと仮定した年金の見込み額が記載されています。

50歳未満の「ねんきん定期便」には、これまでの加入履歴に応じた見込み額が記載されており、こちらは今後支払う年金保険料を考慮せず、これまでに支払った分だけで計算しています。

■「ねんきんネット」の試算はやったほうがいい

もっと詳しく知りたい人は、日本年金機構の「ねんきんネット」を活用してください。「ねんきんネット」では、年金の加入記録、見込み額、電子版の「ねんきん定期便」の閲覧などができます。

サイト上で見込み額を試算することも可能。60歳まで現在と同じ条件で加入し続けた場合の見込み額や、自分で今後の加入条件を細かく設定した見込み額などを試算できます。

試算すれば興味深い数字が出てくることでしょう。「こんなに少ないなら、自分でお金を貯めなければ」、あるいは「意外と多いから、これなら暮らせる」のどちらかです。

利用するには登録が必要です。年金手帳などに記載されている「基礎年金番号」と「ねんきん定期便」に記載されているアクセスキー(有効期限が切れている場合は、ねんきんネットに接続して取り直せる)で利用申し込みを行い、交付されたユーザーIDとパスワードを登録して、利用しましょう。

■現役時代にできる年金額を増やす方法

自分の年金額を増やしたければ、次のような方法があります。

厚生年金は収入を増やす、もしくは働き続ける期間を長くすると増えます。60歳以降も会社の継続雇用なら厚生年金に加入しなければならないので、その分受け取る年金額は増えます。

国民年金は、付加年金に加入する、未納期間があれば、60歳以降任意加入するなどの方法で増やせます。付加年金は、国民年金の保険料に月額400円を上乗せして支払うと、将来もらう老齢基礎年金に200円×付加保険料納付月数の付加年金がプラスされます。

例えば、10年間、月400円の付加保険料を払うと、4万8000円になりますが、老後に受け取る年金額は年2万4000円増えるので、2年で元がとれ、その後は長生きするほど丸々の儲けになります。

国民年金の加入期間は、基本的には60歳までですが、それ以前に未納期間があれば、60歳以降も任意加入して保険料を納めれば、加入期間を40年まで伸ばせて、将来受け取る年金額を増やすことができます。

■年金の受け取り時期は自分で決められる

原則として公的年金の受け取り開始年齢は、65歳です。しかし、60歳から早くもらい始めることも、70歳から遅くもらい始めることもでき、受給開始時期は自分で決めることができます。

65歳前からもらう年金を「繰り上げ受給」といい、早い時期から長い期間年金をもらうことになるので、1カ月繰り上げるごとに年金額が0.5%(2022年4月1日以降、60歳に到達する人を対象として0.4%に改定)減額されます。

繰り上げ受給は、一度請求すると減額率は一生変わらないので、よく検討してから決断しましょう。

一方、65歳以降70歳までもらう年金を先延ばしすることを「繰り下げ受給」といいます。こちらは遅くから短い期間年金を受け取ることになるので、1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額されます。

例えば、1年繰り下げると8.4%、5年繰り下げて70歳から受け取るようにすると本来もらえる額の142%になります。

■75歳まで繰り下げると184%になる

2021年4月、「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、70歳までの就業確保が努力義務となりました。高齢者が大手を振って働く時代の到来です。

高齢期の働く期間が延びることを踏まえ、高齢者が自身の就労状況などに合わせて年金受給の方法を選択できるよう、2020年5月に成立した「年金制度改正法」では、繰り下げ制度について、より柔軟で使いやすいものにするための見直しが行われました。

現行制度では、60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始時期について、その上限が75歳に引き上げられました。繰り下げ増額率は1カ月につきプラス0.7%となります。

この制度改正は、2022年4月から適用され、2022年4月1日以降に70歳に到達する人(昭和27年4月2日以降に生まれた人)が対象です。

つまり、75歳まで我慢すれば、受取額は本来もらえる額の184%です。

受け取る年金の総額は、金額×期間で決まるので、定年後も働き続ける人は、なるべく年金の受給を遅らせましょう。ただし、75歳からもらうなら91歳以上生きないと有利にならないので、100歳まで元気に生きるつもりで生活しましょう。

窓辺に立ち自信のある表情を浮かべるシニア男性
写真=iStock.com/twinsterphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/twinsterphoto

■加給年金をたくさんもらうテクニック

繰り下げ受給をするときに気をつけたいのは、厚生年金の繰り下げ期間中は、本来受け取る予定だった「加給年金」が受け取れなくなることです。

加給年金とは、20年以上厚生年金に加入して保険料を払い続けている夫が、65歳になって年金をもらい始めたときに、夫よりも年下で扶養されている妻がいる場合に支給される家族手当てのようなものです。

また、加給年金は、妻だけではなく18歳未満の子どもや、20歳未満で1級または2級の障害を持った子どもがいる人も、それぞれの年収が850万円未満なら支給されます。

■国民年金と厚生年金の受け取り時期をずらす

覚えておいてほしいのは、年金の繰り下げ受給をするとき、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)を分け、それぞれの受け取り開始の時期を決められるということです。

例えば、老齢基礎年金の部分が月5万円、老齢厚生年金の部分が10万円だとすると、老齢基礎年金を65歳から受け取り、老齢厚生年金の10万円を75歳まで繰り下げすれば、老齢厚生年金が184%になるため、75歳からは老齢基礎年金5万円+増えた老齢厚生年金18万4000円で、23万4000円が生涯受け取れます。

ただし、加給年金の受給がある人はこの逆で、老齢厚生年金を65歳から、老齢基礎年金を75歳からにするとよいでしょう。なぜなら、老齢厚生年金と加給年金は、セットになっているからです。

年下の妻がいて加給年金をもらえる人は、厚生年金は65歳からもらって加給年金をもらいそびれないようにし、国民年金は75歳からもらうテクニックがあります。この場合は、老齢基礎年金が184%になって9万2000円+老齢厚生年金は10万円で、75歳からの受給額は19万2000円です。

また、夫と妻の年金受給開始時期をずらして受け取るというテクニックもあります。繰り下げを選んだあとに受け取る際には、「繰り下げによる増額請求」のほかに、「増額のない年金をさかのぼって受給」を選ぶこともできます。

繰り下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給される額の年金を一括で請求するのです。これはまとまったお金が必要な場合の選択肢になります。

このように年金を増やすにはさまざまなテクニックがあります。年金は65歳からもらい始めるのではなく、働き方や家計の状況に合わせ、受け取り方の工夫をしたほうがよいでしょう。

■年金をもらいながら働くのが理想

原則として60歳で年金保険料の払い込みは終了しますが、その後も継続雇用で働くことを選んだり、ほかの会社に転職をする人は、厚生年金に加入し続けます。

そこで、「在職老齢年金制度」を知っておく必要があります。

「在職老齢年金制度」とは、企業に雇われ、給料と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組みです。

こちらも今回の年金制度改正法で見直されました。

60〜64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、2022年4月から、年金の支給が停止される基準が現行の賃金と年金月額の合計額28万円から47万円に緩和され、賃金と年金月額の合計額が28万〜47万円の人は、年金額の支給停止がなされなくなります。

■年金法の改正で定年後の就労を後押し

この改正で、多くの人が「年金額が減らないように、収入が一定の額に収まるように調整しながら働く」という働き方をしなくて済むようになります。

60〜64歳の在職老齢年金制度について、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げが完了する2025年度(女性は2030年度)以降は、対象者はいなくなる予定です。

なお、65歳以上の在職老齢年金制度について、現行の基準は47万円で、この点についての変更はありません。

在職老齢年金制度は、厚生年金に加入しながら働き、厚生年金を受け取っている人が対象となるものです。会社員や公務員は対象になりますが、自営業やフリーランスになれば、いくら収入があっても年金はカットされません。

また、今回の年金の制度改正では、「在職定時改定」という制度が新設されます。これは、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する制度です。

これまでは、退職するまで老齢厚生年金の額は改定されなかったため、この制度の導入で、就労を継続しながら年金が増える実感を得ることができるようになります。

■継続雇用で働く人の退職は64歳11カ月がベスト

勤務先の継続雇用で働くことを選んだ人は、定年後65歳まで働いて退職し、その後、年金生活に入るパターンが多いのではないでしょうか。その場合、退職するなら65歳になってからではなく、64歳11カ月で辞めたほうがおトクです。

65歳までに会社を辞めた場合、雇用保険より次の仕事に就くまで90〜150日分の失業給付が受け取れますが、65歳以降に退職した場合は、「高年齢求職者給付金」で、30日もしくは50日の手当てを一時金でもらうことになります。

両者を比べると、受け取れる金額に大きな違いがあるので、65歳になる前に退職して失業給付をもらったほうが断然有利です。

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また、65歳になる前に会社を辞め、失業給付をもらう人は、特別支給の老齢厚生年金(65歳前に支給される厚生年金)との併給はできませんが、65歳以降に失業給付を受給する場合は、老齢厚生年金と両方受け取れます。

時期を選んで退職することで、失業給付と厚生年金の両方を受け取ることができるのです。

ただし、失業給付の受給が可能な期間は退職日の翌日から原則1年です。あまり早い時期に退職してしまうと、受給できる期間が退職日から1年以内に入らず、残りの日数分が受給できなくなってしまいます。

そのためぎりぎりまで働いて、65歳にいちばん近い、64歳と11カ月での退職がベストな選択なのです。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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