1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「計12万5400円のすごい知育玩具」藤井聡太"四冠脳"を育てた藤井家の秘密

プレジデントオンライン / 2021年11月19日 11時15分

藤井三冠が3歳の時に作ったキュボロの作品。写真を基に藤田さんが再現。最上部からビー玉を落とすと、内側を通って手前の通路を通り、手前右奥に玉が落ちるという作りになっている。(写真提供=木のおもちゃカルテット)

AIにも勝るとも言われる「将棋脳」はいかにして構築されたのか。藤井聡太四冠の幼少期や藤井家の教育方針を知る関係者を、今夏、プレジデントFamily編集部は取材した。今回は、祖母に買い与えられたスイス製の木製玩具を藤井少年がどのように遊んでいたかを報告しよう――。

※本稿は、プレジデントFamilyムック『藤井聡太 天才の育て方』の記事の一部を再編集したものです(肩書は取材当時のものです)。

■脳を育てるスイス製の玩具

藤井聡太三冠が幼少期に遊び親しんだ「キュボロ」というスイス製の知育玩具がある。

藤井三冠が使っていた、とテレビ番組などで紹介されてから、全国的に品薄状態が続いた。どのような玩具なのか。キュボロに詳しい日本知育玩具協会代表理事・藤田篤さんは次のように語る。

「溝や穴があるキューブ状のブロックを組み合わせてビー玉の通り道を作り、上からビー玉を転がして、途中で詰まることなく下まで転がったら成功という玩具です。ビー玉の動きをイメージして、見えない部分でビー玉がどう進むか、トンネルがとぎれていないかを頭の中で思い描けないと、うまくビー玉が転がりません」

藤井三冠が3歳のころに作り上げたという作品を藤田さんに再現してもらった。

「彼が作ったルートを組んでみてわかったのは、パーツをすべて無駄なく使っているということです。特にビー玉の動きが外から見えないトンネルを多用していて、玉の軌道をイメージする空間認知能力が高いと感じました」

キュボロは昔からある積み木遊びの一種で、電源を入れるとすぐに楽しめるといったような、今風のわかりやすい玩具ではない。自分で考え、失敗しながら徐々に上達していくことで楽しさが少しずつわかるようになるのが特徴だ。

「まず、ブロックを積み上げて玉が転がるルートを作り、上からビー玉を落としてみる。もしも玉がゴールから出てこなければ、ブロックの配置を変えてルートを組み直すという仮説検証作業を繰り返す玩具です。ゴールからちゃんと玉が出るまで、じっくり考えるプロセスが、子供に思考力や考える喜びを教えてくれます。一度楽しさがわかると、子供たちはもっと難しいルート、複雑なルートを作ることにチャレンジするようになります」

■幼児期に藤井家がやっていたこと

こうした、子供自身に試行錯誤をさせながら知能を育てる玩具は、欧州では一般的だと藤田さん。

「キュボロはもともと、心身に障害のある子供たちの知育のために1979年にスイスで生まれました。木の手触りを大事にした玩具を繰り返し何年も使うという文化が、欧州にはあります。愛子さまが遊ばれたことで有名になったネフスピールといった積み木もこうした玩具の一つです」

一般的な玩具店ではあまり見かけないが、実は愛知県では15年ほど前から広がりを見せている。

「2005年に愛知県で開催された愛・地球博で、スイス政府が自国を代表する玩具として展示しました。それがきっかけで、キュボロに親しんだ世代が多方面で少しずつ活躍し始めています。16年に全国ジュニア発明展で最高賞を取った野々山瑞紀さんがその代表です」

スイスやロシアでは学校の授業でもキュボロが使われている。
スイスやロシアでは学校の授業でもキュボロが使われている。(写真提供=木のおもちゃカルテット)

キュボロの教育的な効果は、科学的にも立証されているそうだ。

「将棋棋士の研究を長年にわたって行っている理化学研究所の脳科学総合研究センターの田中啓治さんの分析によると、キュボロは棋士として活躍するうえで重要な脳の“けつ前部”を活性化させることがわかったそうです。田中さんは17年、キュボロがけつ前部と、直観をつかさどる大脳基底核を活性化させるとコメントしています」

藤井三冠は幼少期から、こうした知育玩具に囲まれて育った。

「私の運営する愛知県の店舗の玩具は、聡太さんのおばあさまが近くにお住まいということもあり、藤井家にはひいきにしていただきました。聡太さんが通っていたふみもと子供将棋教室もおばあさまが見つけたとお聞きしたので、情報感度が高い方なのだと思います。キュボロはスタンダードタイプで4万1800円と決して安くはないのですが、藤井家は3セットお持ちでしたし、それ以外にも欧州製の木製の玩具などで遊んでいたようです」

■3歳からキュボロで遊び、プロ入り直前にも将棋の研鑽の合間に遊んだ

藤田さんは、藤井三冠が3歳からキュボロで遊んでいたことから、藤井家の育児を次のように推測する。

「キュボロで遊ぶには三つの条件が必要です。一つ目は積み木で遊んだ経験。指先を使って上手に積み上げないと、ビー玉は正しく転がっていきません。

二つ目はものを落とすという動作の体験が豊富かどうかです。垂直に落ちる、落ちて弾む、転がっていくという自然の法則が小さいうちから実体験として身に付いているか。子供が積み木を積んで崩したがるのは、こうした蓄積を欲しているからです。

三つ目は絵本に親しんだ経験です。絵本は場面と場面のつながりをイメージできないとあらすじが追えません。この時間感覚が備わっていないと、玉が転がった先をイメージできないのです。

これらの点を踏まえると、藤井家ではしっかり積み木などを触り、絵本を読むという丁寧な子育てをしてきたのではないでしょうか。こうした考え方は、スマホやタブレットといったデジタル機器に頼らず、手触りや実物を重視する欧州の知育玩具の考え方とも一致しています」

藤井三冠の祖母がたびたび訪れたという知育玩具店「カルテット」。海外の木製玩具を中心に扱っている。
藤井三冠の祖母がたびたび訪れたという知育玩具店「カルテット」。海外の木製玩具を中心に扱っている。(写真提供=木のおもちゃカルテット)

藤井三冠は幼少期だけでなく、プロ入りの直前にも将棋の研鑽(けんさん)とともにキュボロで遊んでいたという。

「将棋で使う脳の部位を違った角度から刺激するのが、ストレス解消になるのかもしれません。藤井三冠はキュボロに早くから出合うことができましたが、脳の成長には遅すぎるということはありません。手を動かす知育玩具を通じて、集中力、思考力を育てていってほしいと思います」

(プレジデントFamily編集部)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください