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「もうイエス様では救われないのか」信者急減キリスト教が有史以来の危機…世界的"宗教変動"の衝撃

プレジデントオンライン / 2021年11月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fauk74

欧米で「教会離れ」が進んでいる。米国の調査機関によれば、信じる宗教は何かとの問いに「キリスト教」と回答した米国の成人は2009年の77%から10年後に65%に急減した。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「逆に増えているのは“無神論者”で、特に20~30代は旧来からの教会のつながりよりも、ネット(SNS)を通じた無宗教コミュニティーを求める傾向がある。また、アップルやグーグルなどで瞑想が取り入れられたり、マインドフルネスや禅への関心が高まったりしたことで、半世紀前にはほとんど存在しなかった仏教徒も増えている」という――。

■世界のイスラム教徒の数がキリスト教徒を上回る日

仏教は減退し、キリスト教は現状維持、イスラム教は繁栄の時代を迎える――。

世界三大宗教と呼ばれる仏教、キリスト教、イスラム教の勢力が転換点を迎えている。将来的にはイスラム教が世界で最大勢力を獲得する見込みで、このような宗教構造の変化は国際政治や生活習慣などにも影響を与える可能性がある。

イスラム教国のブルネイではイスラム教に基づくシャリア刑法が導入され、飲酒、喫煙などが厳しく制限されている(スルターン・オマール・アリ・サイフディーン・モスク)
イスラム教国のブルネイではイスラム教に基づくシャリア刑法が導入され、飲酒、喫煙などが厳しく制限されている(スルターン・オマール・アリ・サイフディーン・モスク)(撮影=鵜飼秀徳)

現在、世界最大の宗教勢力はキリスト教である。世界の総人口73億人のうち23億人(人口比で32%)をキリスト教徒が占めている。次いでイスラム教徒が18億人(25%)、ヒンズー教徒が11億人(15%)、仏教徒が5億人(7%)、民族信仰が4億人(5%)だ。日本の神道は国際的な分類では、「民族信仰」のカテゴリに入る。ちなみに、無宗教は12億人(16%)である。

この宗教構造が、ドラスティックに変化する。

世界の宗教動静を調査している米調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、約40年後の2060年までにはイスラム教徒が30億人(人口比31%)、キリスト教徒が31億人(32%)とほぼ同等になり、その後はイスラム教が世界最大の宗教に躍り出ると見込んでいる。

数の上では仏教を上回っているヒンズー教徒も11億人から14億人(15%)に増える。ユダヤ教は1430万人から1640万人になると予測されている。

では仏教はどうか。仏教は5億人から4億6200万人(5%)に減少する。世界宗教の中では唯一の減退となる見通し。同時に無宗教者も3ポイントほど減少に転じると見込まれる。

こうした宗教構造が変化する背景には、世界人口の激増がある。世界の人口は、2015年の73億人から2060年の間に96億人にまで膨らむと予見されている。この人口増加傾向が高い地域と、イスラム教信仰圏とが重なるのだ。

たとえば、人口2億6000万人のうち9割近くがイスラム教徒というインドネシア。2060年代中頃には6000万人ほど人口が増える見通しだ。

また、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、民族信仰に加えてイスラム教とキリスト教を信じる割合が高い。この地域は合計特殊出生率が4~7という高水準にある。したがってこの地域では、キリスト教も爆発的に信者数を伸ばすようにも思われる。

だが、キリスト教は北アメリカやヨーロッパでは出生率が低下する傾向にあるため、伸び率を押し下げている。

もっといえば、キリスト教は米国や欧州先進諸国においては「教会離れ」「宗教転換」が進み、有史以来の危機的状況に直面している。

■「キリスト教」と回答した米国成人、2009年77%から10年後に65%へ

ピューリサーチセンターが2018から2019年にかけて実施した調査では、「自分が信じる宗教は何ですか」という質問に対し、「キリスト教」と回答した米国の成人は65%。この数字は2009年の77%から12ポイントも減少している。

宗派でみればプロテスタント(51%→43%)とカトリック(23%→20%)では、ややプロテスタントのほうが、減少割合が高いという。全キリスト教徒のうち、定期的に教会に通う割合も52%から47%と減少している。

一方で「無神論者」の割合は、2009年の17%から9ポイント増えて26%になった。現在、米国ではカトリック信者よりも無神論者のほうが多数派になってきている実態があるのだ。

欧州では教会離れが顕著だ(オーストリア・ウィーンの教会)
撮影=鵜飼秀徳
欧州では教会離れが顕著だ(オーストリア・ウィーンの教会) - 撮影=鵜飼秀徳

その背景には、日本とは異なる米国の信仰形態がある。日本の場合は「イエ」で宗教を継承していくことが多い。だが、米国では親や夫がカトリックだからといって、子供や妻までカトリックを信じるとは限らない。

特に現在25歳から40歳のミレニアル世代の教会離れは顕著である。彼らはITリテラシーに長けており、旧来からの教会のつながりよりも、インターネット(SNS)を通じた無宗教コミュニティーを求める傾向にあるとの分析もある。

ヨーロッパでも教会離れは加速している。国によって原因は異なるものの、例えばフランスやイギリス、アイルランド、オーストリアなどでは聖職者による性的虐待問題が大きく影響している。

性的虐待は21世紀に入ってから社会問題化した。フランスでは独立委員会が先月、1950年以降に虐待に関わったカトリック教会関係者が最大3200人にも及ぶことを明らかにしたばかりである。

ドイツでは教会税から逃れたいという理由で、教会からの脱会が相次いでいる。同国では教会に所属するキリスト教徒である場合、所得税の8~10%が教会税として課される。日本に置き換えれば、どこかの菩提寺の檀家であれば「寺院税」を支払う義務が発生するということと同じ。この教会税逃れのためこの数年、毎年20万人以上の信者が教会から離れている。

教会がジリ貧になった結果、教会が売りに出され、替わってイスラム教のモスクが入るという事態になっている。

■「教会離れ」の受け皿のひとつが半世紀前まで存在しなかった仏教

欧米における教会離れの受け皿のひとつになっているのが、仏教である。米国では半世紀前まではほとんど存在しなかった仏教徒の割合が近年、増えてきている。

アップルやグーグルなどで「瞑想」が取り入れられてきた影響もあり、「マインドフルネス」や、「禅」、あるいは最近では「念仏」などに精神性を求める傾向がみられる。インターネットを通じて、仏教の教えに触れる「ナイトスタンド・ブディスト」という人々も増えている。

ヨガ
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

だが、欧米における仏教はまだまだマイナーな宗教であり、教会を離れた人々は「無宗教者」に転じるケースがほとんどだ。

欧米における無宗教者の拡大や、全世界的なイスラム教の広がりは良くも悪くも、国際関係に影響を与えそうだ。確かに経済面ではメリットもある。ムスリムを対象にしたハラール食品やファッションなどのマーケットの拡大が予想できる。

一方で、歴史的にイスラム教はキリスト教との対立関係にあり、宗教的価値観の違いによる摩擦が生じないとも限らない。また、女性に対する人権や教育、社会進出、あるいは表現の自由などが制限されているイスラム教の国家もあり、課題は少なくない。

グローバルな宗教変動が起きている一方で、日本の宗教は当面は安定的に推移すると予測できる。

現在、日本人の信仰は仏教徒が8500万人、神道が8900万人、キリスト教徒が190万人、諸宗が740万人だ(文化庁「宗教年鑑 令和2年」)。

人口1億2500万人にたいし、宗教人口が合計1億8330万人になっているのは日本人の多くが仏教と神道を掛け持ちしているからである。地域の寺の檀家であり、氏子であるといったふうに。

その日本において、中長期的な宗教人口の増減を予測した調査は存在しない。だが、NHK放送文化研究所が実施している宗教に関する調査をみれば、「信仰している宗教」は2008年調査と2018年調査では男性が3ポイント増、女性が5ポイント減であり、さほど大きな変化はみられない。

日本は今後、本格的な人口減少の時代に入るとはいえ、信仰形態は仏教と神道のハイブリッドである状態が当面は続くと考えられる。

日本でも「寺離れ」「無宗教化」が叫ばれ続けているが、欧米の教会離れに比べればまだ楽観視できるレベルである。世界を見回しても、宗教動静が極めて安定しているのが、日本なのだ。

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鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)など多数。近著に『仏具とノーベル賞 京都・島津製作所創業伝』(朝日新聞出版)。浄土宗正覚寺住職、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。

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(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)

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