1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

世帯年収1400万円超「パワーカップル」が自信満々で始めた株式投資の末路

プレジデントオンライン / 2021年11月26日 10時15分

写真=iStock.com/Thithawat_s

一進一退を繰り返しながらも日経平均株価は3万円台をうかがう。いまこそ投資を始めるべきなのか。高収入で手元資金のあるビジネスマンほど、「そろそろ株式投資でも」と思いがちだが、アレス投資顧問代表の阿部隆氏によると、夫婦ともに高年収の「パワーカップル」ほど「大きな損失を出してしまう」おそれがあるという。「プレジデント」(2021年12月17日号)の特集「[図解]金持ち夫婦への道 投資入門」より、記事の一部をお届けします。

■パワーカップルは株式投資に不向きか?

コロナ禍で実体経済が停滞するなか、株式市場は沸きに沸いた。そんな投資バブルの宴の中で資産形成に失敗をした人たちが一定数いる。日経平均株価も一段落した今だからこそ、投資スタイルを見直す時期ではないだろうか。

福岡市在住の田中さん夫妻(仮名・ともに30代)の世帯年収は1400万円を優に超える。夫の輝之さんは大手証券会社勤務。妻の紀子さんは看護師として病院に勤務するパワーカップルだ。家計簿を付けながら、貯蓄・消費・投資にキャッシュをきちんと分け、細かく管理している。とくに株式投資には力を入れており、毎月20万円の投資をノルマと課していた。

■メンタルの面でもパワーカップルは不利

将来を見据えた賢い夫婦のように映るが、田中さん夫妻のようなパワーカップルが株式投資に手を出す際はひときわ慎重になる必要があると、アレス投資顧問代表・阿部隆氏が話す。

「収入の高いパワーカップルは株式投資を始めたばかりにもかかわらず、リスク許容度が大きくなってしまいがちです。値動きの大きい銘柄に資金を集中させてしまうケースが多く、それにより大きな損失を出してしまうのです」

また、メンタルの面でもパワーカップルは不利な面があるという。

「パワーカップルは、仕事での大きな成功体験から、自分の判断を過信する傾向があります。そのパターンに陥ると自分のミスを認めることができず、ロスカット(損切り)に踏み切れないまま、含み損が拡大していってしまうのです。

さらに、仕事の忙しさから銘柄を発掘・分析する時間的余裕がない点も否めません。その一方で情報感度は高い。それゆえ、SNSなどで話題の人気銘柄に飛びつくなど、ネットに溢れる情報に翻弄されてしまうのです」(阿部氏・以下同)

パワーカップルが株で失敗する2大理由

田中さん夫妻も阿部氏の懸念する失敗例から大きく外れることはなかった。

輝之さんが配属されているのは、社内でエリートとされている人材が集まる部署だった。その慢心から、「正確で有益な情報が自分には集まってくる」という根拠のない自信に満ち溢れていたのだ。

毎月投資のために20万円を捻出していたにもかかわらず、どんどん目減りしていく資産に輝之さんは内心焦りを感じていたが、紀子さんには「順調に資産は増えている」と説明していた。

「夫婦で投資するにあたって重要なことは、2人で話し合いを重ねることです。どちらか一方が主導権を握るにせよ、資産が減少するリスクを共有しておくことはマストです。

よくあるのが、夫(妻)に内緒で投資を始めるも、資産が目減りしたことを言えないまま挽回するためにさらに資金をつぎ込み、なお一層状況を悪化させてしまうケースです」

追い打ちをかけるように、輝之さんの失敗を決定的にしたのが、本業の顧客から勧められたフェラーリを使った投資だった。

大手証券会社勤務の輝之さんが3800万円で購入したフェラーリ。維持費と修理費を入れると赤字だった。
大手証券会社勤務の輝之さんが3800万円で購入したフェラーリ。維持費と修理費を入れると赤字だった。

「これからの時代は電気自動車がメインになる。フェラーリのガソリン車はこれで最後。3年後には1.5倍になっている」

という触れ込みだった。

成功者の証しとも言えるフェラーリを手にすることは、輝之さんの自尊心を大いにくすぐり、3800万円で新車のフェラーリを購入した。

しかし、夢の車は予想以上にメンテナンスの費用がかかる。次第に維持費が家計を圧迫するようになった。よくよく聞けば、肝心の利回りは3%ほどにしかならないという。輝之さんはここでようやく、自分の身の丈に合っていないことに気が付き、赤字(維持費と売却する際の修理費を含めると)を出しながら泣く泣くフェラーリを手放した。

その後、突然のフェラーリ購入・そして売却など一連の行動が怪しまれ、紀子さんに株式投資での大きな損失がバレてしまった。5000万円以上あるはずの証券口座の残高はそのときすでに1500万円を切っていた。それが直接の原因となり、現在は家庭内別居中だ。

田中さん夫妻のようにお金に余裕がある「金持ち夫婦」が株式投資を始める際の、注意点や準備するべきことには何があるだろうか。

「お金に余裕がある人はリスク許容度が大きくなることで、含み損が拡大しても我慢することができてしまう。結果的に塩漬け株(現在の価格が買い値よりも下がっており、売ると損が出る状態であるために、やむをえず長期保有している株)になってしまうのです。

さらに資金の余裕から、下落トレンドが続く銘柄や急落している銘柄をナンピン買い(保有している銘柄の株価が下がった際、さらに買い増しをして平均購入単価を下げること)してしまう。これではさらなる深みにはまってしまいます。

そうならないためには、株を始める前に一定の売買ルールを設定しておくこと。利益の確定ポイント、ロスカットのポイント、保有期間の3つは必須です」

一般的には保有する株が「20%下落したら損切りをする」というセオリーがある。しかし、各々の状況によってルールは異なるものだ。どのルールが正解という話ではなく、決めたルールをいかに徹底して守るか。これが重要になるということだ。

■レバレッジをかけると売るに売れなくなる

ここまで田中さん夫妻を例に、金持ち夫婦が株式投資をする際の失敗例について述べてきたが、同じくお金に余裕がある人が失敗するパターンとして非常に危険なのが、「信用取引」だと阿部氏は言う。

「信用取引は保証金の約3.3倍までレバレッジをかけられるため、リターンを大きく狙える一方で、逆方向に動いた場合の損失も大きくなります。損失が大きくなり、追加保証金(追証)が発生。追証を入れるか、ロスカットするか。その選択を迫られた状態で私のもとに相談へ来るお客様が後を絶ちません。信用取引をするにあたって、守るべきことが2点あります。

・銘柄の数を増やしすぎないこと
・自分で決めたロスカットルールを守ること」

株式投資に関する経験がまだ浅く、時間的制約もあるパワーカップルにも当然当てはまるアドバイスだろう。

「追証が発生しているお客様に言うことは、“売って上がればよし、売らずに下がるは罪”ということです。持っている株が売った後に上がるのは悪いことではない。そう思えないと、売るに売れなくなってしまう。信用取引をしている人はとくにその傾向が顕著です」

金持ち夫婦の投資というのは外野から見ると派手であるが、来た球を丁寧に打ち返すことの繰り返しだ。地味な作業をどれだけ続けられるか。そこが成功のポイントだ。

信用取引と追加保証金(追証)

----------

阿部 隆(あべ・たかし)
アレス投資顧問CEO
投資顧問会社のトップアドバイザーを経て、株式投資を通じてお客様に「夢と安心、そして楽しさ」を届けたいとの想いからアレス投資顧問を創業。YouTubeチャンネル「アベタカシの投資TV」が初心者にもわかりやすいと好評。

----------

(アレス投資顧問CEO 阿部 隆 文=神里純平)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください