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アラフォー独身の僕が「憧れのロマンスグレー」になるまでの老い方プラン

プレジデントオンライン / 2021年11月26日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/batuhan toker

素敵に年を重ねるにはどうすればいいのか。エッセイストのウイさんは「自分は老いとうまく折り合いをつけているはずなのに、白髪だけはどうしても許せない。それは独身だからではないかと思うようになった」という――。

■顔のシワ、おなかの贅肉…突きつけられる老い

たとえば一人暮らしをして自分で家賃や光熱費を支払うことや、選挙に行くこと、失恋すること、童貞を卒業すること、タバコを吸ったり居酒屋で泥酔したりすること……。

そんな数々の儀式を経て「大人になったな」という実感と共に、すっかり頂上まで上り切ってしまった大人の階段。いつ上り切ったのか、明確な自覚はありませんが、38歳男性独身、僕はまごうことなき「大人」です。

しかしアラフォーとなった今、目の前に新たな階段が現れたではありませんか。その名は「中年」の階段です。

いつまでも若いつもりでいるものの、遅れてやってくる筋肉痛、顔のシワ、おなかの贅肉、歯の具合、無茶できる日数の減少、飲んだ翌日のお酒の残り方など、身体の老化を否定することはできません。テレビに出てくるアイドルの顔の見分けもつかなくなってきました。

しかも、大人の階段はある程度自らの意思で登るタイミングを決めることができたのに、中年の階段は否応なしに登らされます。すごい強制力です。

フィジカルもメンタルも確実に、20代前半のそれではありません。30代も終盤となった最近は、社会的にも自分が「若者」という大きなカテゴライズから外れていることが多くなってきたことを感じます。

そんな様々な事象を通じて、自分がすっかり「大人」から「中年」に変わりつつあるのを実感する日々。それがアラフォーの毎日です。

■僕が考える中年の「最高の着地点」

しかし、やられっぱなしではありません。我々は老いに抗えるのです。

お腹が出てこようものなら糖質制限とランニングで抗い、シワにはスキンケアで抗います。

中にはすべてを放棄し、ただ受け入れている人もいるし、全力で抗う人もいる。そんな同世代を横目に、僕はすべて受け入れるのでもなく、全部拒否するわけでもない。

たとえば僕は、自分の中で「これでOK」というラインを設定しています。体型に関しては毎年同じサイズの洋服が着られて、腹筋が薄っすらでも割れていればOKとしているし、スキンケアも自分が毎日欠かさず行えるケアでよしとしています。今はまだありませんが、目立つシミができたら医療の力で取る予定です。

ウエスト
写真=iStock.com/michellegibson
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/michellegibson

そうやって、しっかり老いには抗ったうえで、理想と現実の間に最高の着地点(妥協点ともいう)を見つけ、そこにヒラリと着地しています。それが、中年の階段を上手に上るコツだと思います。

■だが白髪はどうしても許せない…

しかし、数々の中年化現象の中で、いつまで経っても折り合いがつかないものがあります。

白髪です。

朝、起きる。洗面所に行き、全裸になり体重を測る。体重は自動的にスマホのアプリに転送され、折れ線グラフ化される。服に着替え、歯を磨き、顔を洗う。ここまでは毎日のモーニングルーティーンです。そしてここからもう一つ、大事なルーティーンが始まります。

寝癖を直す際に、洗面所の鏡の前で髪の毛をこねくり回すのです。右手には毛抜きを持ち、左手で髪の毛をこねくり回し、角度を変え、視線を変え、血眼で、可能な限り髪の毛を観察します。白髪を見つけるためです。

運よく髪の毛は潤沢です。自分の長所を挙げろと言われれば迷わず「毛量」と答えます。しかし、35歳くらいからでしょうか。大量の黒い髪の毛に混ざり、ちらほらと白髪を見かけるようになったのです。これを、僕は許すことができない。

右から左に分け目を1センチずつずらし、ローラー作戦でじっくり観察していきます。もみあげや額の生え際は要注意。見逃しがちです。コツは、ゆっくり探すこと。なぜなら、白髪を見つけた瞬間に動きを止めないとすぐに見失ってしまうのです。一度見失った白髪を再び探し出すのは困難です。

白髪探しはゆっくり、確実に。これが鉄則です。白髪を見つけたら地の果てまで追いかけ抜かないかないと気が済みません。

■「三面鏡購入」白髪との戦いに死角なし

そんなある日、ふと気がつきました。「これまで洗面所の鏡で見える範囲ばかり気にしてきたけれど、頭頂部や後頭部は白髪だらけの可能性があるのでは……?」と。

すぐに、Amazonで縦に開く三面鏡を購入します。通常三面鏡は横に開くことで横顔を見ることができますが、購入したものは縦に開くことで頭頂部から襟足までを確認することができる優れものです。

到着した三面鏡は、想像していたものよりはるかに大きなものでした。

早速、頭頂部や後頭部をくまなく捜索します。予想していたほどではないのですが、何本か白髪を見つけることができました。ここでのコツはたっぷりの自然光の下で行うことです。発見できる数が全く違います。

三面鏡に写った髪の毛を抜く作業は思ったよりも手の動きが難しく、苦戦しながらもじっくりと時間をかけ、白髪を抜いていきます。まだ生えてきたばかりと思われる短いもの、こんな状態になるまで気付かなかったのかと驚くほど長いもの、様々な白髪を1時間かけて10本近く抜きます。

ピンセットと白髪
写真=iStock.com/Jennifer Miranda
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jennifer Miranda

そこで、発見してしまったのです。半分白い白髪です。先端は黒いのに、途中からスパッと白髪になっているものがあったのです。もしかしたら肉眼で確認できないだけでゆっくりグラデーションで白髪になっているのかもしれませんが、ぱっと見はある日を境に色素を作り出す毛根の機能が死んだように白髪になっています。黒い部分は太く張りがあるのですが、白髪の部分からは細くなっているような気もします。

髪の毛は1カ月で約1cm伸びるといわれています。白髪になっている部分は約6センチ。つまりこの白髪は、半年前に確実に僕が老化した証なのです。また中年を実感します。

■理由は「モテたい」

ともかく。なぜこんなにも、白髪に対して折り合いがつかないのでしょうか。考えた結果、白髪に対して折り合いがつかない大きな理由は二つ。

一つめは「自分でコントロールできない」ということです。お腹が出てくれば痩せればいい。肌はスキンケアすればいい。薄毛も今は薬で対策できます。お腹も肌も毛量もしっかりかけた時間とお金と労力に応えてくれるのです。

でも、白髪はこっちの努力に直ぐに応えてくれない。対応策を見ても「血行を良くしよう」や「ストレスをためないようにしよう」というものばかり。僕はそんな、打つ手なく、否が応でも老いを可視化してくる白髪に躍起になっているような気がします。

そして、もうひとつ。それは「下心」ではないかと考えます。その下心とはもちろん異性に対するものです。ストレートにいうと、モテたい。そのために、若々しくいたい。この下心が、白髪を認めることができない要因な気がします。

■既婚者は白髪を気にしない人が多い

あくまで僕の周囲の話ですが、同世代で白髪を気にしてなさそうな人の共通点は「既婚者であること」です。みんな「もう少し増えたら白髪染めしようかな」というスタンスであり、僕のように一本一本探し出し、親の仇のようにしている人は皆無です。なぜこんなにも、独身と既婚者の間に、白髪への執念の差が出るのか。

妻や夫という“最愛の人”がいれば、もう他の異性からよく見られたいなどという助平心は消え去るのかもしれません。もし子供がいれば、子育てが大変すぎて「それどころではなくなる」のかもしれません。

■最愛の人に受け入れられたら変わるのか

さらに、これは僕の憶測ですが、「配偶者」という絶対的なパートナーを手に入れると、男は「かっこつける方法」が違ってくるのではないかとも想像します。僕のような独身は女性にアプローチするために、内面も大事ですが、まずは外見に気を使う必要があります。

それに対して既婚者は外見よりも良き夫や良き父としてのかっこつけかたが重要で、それは外見よりも内面や日々の行動が重要視されているのではないかと思うのです。結果、既婚者の方が白髪をはじめとしたフィジカル面での老いに対し寛容になっている気がするのです。

笑顔高齢者夫婦
写真=iStock.com/TAGSTOCK1
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TAGSTOCK1

よって、僕も結婚すれば己の白髪と何かしらの折り合いがつくのかなと期待はしていますが、結婚しても相変わらず三面鏡の前で髪の毛をこねくり回しているような気もします。そして最愛の人との幸せな生活の中で、いつかこねくり回せる根気がなくなったり、白髪の量がもうどうしようもない量になったりした日に、僕は白髪を受け入れると思うのです。こればっかりは結婚しないとわかりませんが。

■いつか白髪を許せるその日まで…

みんな、どうやって白髪を受け入れているんだろう。同世代の方が白髪をそのままにしているのを見るたびにいつも「いつ受け入れたのですか。きっかけとかあったんですか」と聞きたくなります。

ウイ『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)
ウイ『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)

……さんざん白髪について折り合いのつかない話を続けてきましたが、一方で、僕はロマンスグレーに憧れています。

あの余裕、あの貫禄。

知的で経験値の多さを物語るようなロマンスグレー。特に松重豊さんや吉川晃司さんのようなやや短めのグレーを経由して、最終的には坂本龍一さんや宮崎駿監督のような、長めの全頭白髪になるというルートに憧れを抱いているのです。

しかし現実には、40歳が見え隠れし、ロマンスグレーに憧れながらも三面鏡を使ってまで必死に白髪を根絶やしにしようとしている自分。

その大いなる矛盾を自分でも滑稽だと思いながら、きっといつか白髪を受け入れ、白髪を許し、白髪と共に生きることを決意できるようになると信じて、今日も白髪を血眼で探しながら、中年の階段を一歩一歩上っています。

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ウイ(うい)
ライター、コラムニスト
本名、ウイケンタ。1982年7月23日、山形県生まれ。東京や名古屋で暮らした後、現在は横浜在住。著書に『ハッピーエンドを前提として』(KADOKAWA)、『エンドロールのその後に』(大和書房)がある。オンラインサロン「喫茶 クリームソーダ」主宰。趣味はアウトドア。好きな食べ物はカレーとざる蕎麦、飲み物はレモンサワー、犬種はゴールデンレトリバー。

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(ライター、コラムニスト ウイ)

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