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限界を感じたことは一度もない…大谷翔平が高校時代から続けている「やる気を出す方法」

プレジデントオンライン / 2021年11月30日 10時15分

記者会見で笑顔を見せる米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手=2021年11月15日、東京都千代田区の日本記者クラブ - 写真=時事通信フォト

投打の「二刀流」で大活躍した米大リーグ(MLB)エンゼルスの大谷翔平選手が、最高の栄誉である今季のア・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選ばれた。スポーツ心理学者の児玉光雄さんは「『なりたい自分』を脳裏に鮮明に描き、それに向かってなりふり構わず突き進む。この単純な成功方程式こそが、大谷選手を偉大なメジャーリーガーに仕立てた」という――。

※本稿は、児玉光雄『好きと得意で夢をかなえる―― 大谷翔平から学ぶ成功メソッド』(河出書房)を再編集したものです。

■大谷を本気にさせている「内発的モチベーション」

モチベーションは、大きく分けて2種類存在します。それは「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」です。

大谷翔平選手を本気にさせているのが前者であることは言うまでもありません。探究心が彼に偉大な才能を与えたと、私は考えています。

あるとき、大谷選手はこう語っています。

「正解はないと思うんですけど、人は正解を探しに行くんですよね。正解が欲しいのは、みんなも同じで。『これさえやっておけばいい』というのがあれば楽なんでしょうけど、たぶんそれは『ない』と思うので。正解を探しに行きながら、ピッチングも、バッティングもしていたら楽しいことがいっぱいありますからね」「道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔」(扶桑社)

仕事を探すとき、「仕事内容が面白いこと」を第一に考える人がいます。しかし、趣味ならともかく、少なくともプロの仕事で内容の面白い仕事なんかないと考えたほうがいいのです。

仕事の多くは、日々のルーティンワークのくり返し。大谷選手にしても、ただ単純に数多くのボールを投げ、打つ練習は、典型的な面白くない作業です。しかし、「より良いバッティング」や「より速い球を投げるピッチング」をテーマに探究心をもてば、その面白くない作業も俄然面白い作業に変化するのです。

探究心にかんして、大谷選手はこうも語っています。

「どうしてできないんだろうと考えることはあっても、これは無理、絶対にできないといった限界を感じたことは一度もありません。今は難しくても、そのうち乗り越えられる、もっともっと良くなるという確信がありましたし、そのための練習は楽しかったです」「タウンワークマガジン2017年10月30日」

この情報化社会では、20世紀には重宝された「何でも知っている知識人」は明らかに時代遅れであり、もはやその価値は失われつつあります。「広く、浅く」から「狭く、深く」が、これからの時代のトレンドになることは間違いありません。

■「なんとしても、生きているうちに最高の自分にめぐり会いたい」

そして、探究心同様、大谷選手を本気にさせているもうひとつの内発的モチベーターは、「自己実現の欲求」です。これも探究心同様、自分の底から湧き上がってくる典型的な内発的モチベーターです。

もう半世紀以上前にアブラハム・H・マズローがうち立てた「5段階欲求説」は、いまもなお健在です。彼は人間の持つ5つの欲求をピラミッドに見立て、階層状に表しました(図表)。

マズローの5段階欲求説
『好きと得意で夢をかなえる―― 大谷翔平から学ぶ成功メソッド』より

下位のほうから「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」というふうに積み上がっていきます。彼は「下位の欲求が満たされれば、それは自然に消え去り、すぐ上の欲求に移行する」と主張しました。

ピラミッドのうち、下位の4つは「満たされれば自然に消え去る」欠乏欲求です。ただし、一番上の「自己実現の欲求」だけは唯一の存在欲求です。

「なんとしても、生きているうちに最高の自分にめぐり合いたい」という究極の自己実現の欲求こそ、大谷選手にとって、とても魅力的、永続的、かつ安定的なモチベーションになっているはずです。あなたもぜひ、人生における「自分にとっての自己実現とは何か?」について、自問自答してください。

■大谷のやる気を引き起こしたのは「金銭報酬」ではない

内発的モチベーションの対極にあるのが、「外発的モチベーション」です。つまり、ご褒美を与えられることにより、私たちは素直にやる気を発揮できるのです。

外発的モチベーションには、3つの強力なモチベーター(モチベーションを左右する要素)が存在します。

最初の強力な外発的モチベーターは「金銭報酬」です。しかし、大谷翔平選手が、この強力なモチベーターについて触れている言葉はあまり見当たりません。

大谷選手は2021年シーズンの開幕前に、ロサンゼルス・エンゼルスと2年総額850万ドル(約9億3500万円)で契約延長に合意しました。この契約は2022年シーズン終了まで有効で、今季の年俸は300万ドル(約3億3000万円)、2022年の年俸は550万ドル(約6億500万円)です。

しかし、2021年シーズンの活躍を考えると、エンゼルスが大谷選手と長期契約を結びたいならば、いますぐにでも契約を結び直すことが賢明であり、ある専門家は「年俸5000万ドル(約55億円)の5年契約、総額2億5000万ドル(約275億円)が妥当である」と予測しています。

ただし、莫大な報酬を獲得しても、大谷選手にとって「金銭報酬」は、最大のモチベーターになることはありません。

■「なりたい自分」に向かって、なりふり構わず突き進む

2番目の強力な外発的モチベーター、それは「肩書報酬」です。大谷選手にとっては、レギュラーのポジションにあたります。組織の最前線において、責任ある立場で活躍する場所を与えられることは、プロフェッショナルにとって他の何ものにも代えがたい、魅力的な外発的モチベーターなのです。

そして、3番目の強力な外発的モチベーターは「裁量報酬」で間違いありません。最近の調査で、若い世代のビジネスパーソンが一番欲しがるのは「裁量報酬」であるという事実が判明しています。自分の仕事の裁量権をがっちり握る、すなわち責任と権限を持つということ。これも肩書報酬に勝るとも劣らない魅力的な報酬です。

あるとき、大谷選手はこう語っています。

「基本的に僕は何事も人に相談することが好きじゃなくて、人に相談する時は考えて考えて考え抜いた後にするって決めているんです」(NHKスペシャル『メジャーリーガー大谷翔平 自ら語る 挑戦の1年』2018年11月4日放映より)

「なりたい自分」を脳裏に鮮明に描き、それに向かってなりふり構わず突き進む。この単純な成功方程式こそが、大谷選手を偉大なメジャーリーガーに仕立てたのです。

あなたの人生の最高責任者は、あなた自身。このことをくり返し自分自身に言い聞かせましょう。あなたの人生にかかわる裁量権は、100パーセント、あなたが保持しているのです。

■モチベーションそのものを喚起する3つの要素

大谷翔平選手が2021年シーズンにとてつもない成績を上げたことは、彼にたびたび訪れた人生の転機において、みずからが決断したことと無関係ではありません。

「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」とは別に、モチベーションそのものを喚起する要素が存在します。

それらは「希望系モチベーション」「緊張系モチベーション」、そして「持論系モチベーション」です。

以下に簡単に解説しましょう。

①「希望系モチベーション」(子どもの抱くモチベーション)

「夢」や「目標」を設定して、それを実現しようとするために働くモチベーション。キーワードは「希望」「夢」「目標」「憧れ」「達成感」「ロマン」。

②「緊張系モチベーション」(仕事人の抱くモチベーション)

達成期限を設定し、緊張状態を維持しながら馬鹿力を発揮するために働くモチベーション。キーワードは「緊張」「ハングリー精神」「焦り」「締め切り」「未達成感」。

③「持論系モチベーション」(一流人の抱くモチベーション)

自分が決めたやり方によって、それを貫徹するために働くモチベーション。キーワードは「自分が主人公」「裁量権」「マイペース」「反常識」「独創性」「自分スタイル」。

①の希望系モチベーションには好ましいキーワードが並んでいますが、じつは、夢や目標を抱くだけでは弱過ぎます。目標は「結果目標」と「行動目標」の2種類に分類されます。そして、多くの人たちが「結果目標」に偏り過ぎて、「行動目標」をおろそかにします。典型的な結果目標である希望系モチベーションをもつだけでは、前には進めないのです。

②の緊張系モチベーションは、けっしてバカにできないモチベーションです。仕事における「達成期限」や「締め切り効果」は、私たちに火事場の馬鹿力を発揮させてくれます。学生の方なら、テスト前の一夜漬けがこれにあたります。

■独創的な仕事を作る「持論系モチベーション」

そして、③の持論系モチベーションこそ、最強のモチベーションであると私は考えています。

児玉光雄『好きと得意で夢をかなえる 大谷翔平から学ぶ成功メソッド』(河出書房)
児玉光雄『好きと得意で夢をかなえる 大谷翔平から学ぶ成功メソッド』(河出書房)

これからの時代は、何事も自分で決断し、自信満々の態度と表情を維持しながら、人生を歩むことが求められるからです。それだけでなく、徹底して持論を仕事のなかに吹きこんで、独創的な仕事にしていくことに努めてください。

高校を卒業して、すぐにメジャーに行きたいという大谷選手の強い思いを変えたのが、北海道日本ハムファイターズのドラフト指名でした。そのことを振り返って、大谷選手は以下のように語っています。

「最終的には良い判断ができたと今では思っていますし、今でも野球ができていることを考えたら、あのときの決断はよかったんじゃないかなと思いたい部分があります」『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社)

もちろん、決断するにあたって大谷選手がご両親と徹底的に話し合いをしたことはいうまでもありません。

「あれだけ両親と話をしたことは今までなかったと思います。あの時期は、どんなことがあっても忘れないと思いますし、死ぬまで覚えていることだと思います」『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社)

大谷選手のように、いくら失敗してもトライをつづける人が成功にたどり着けるのです。

一方、エラーを恐れて行動しない人はいつまでたっても、成功できません。「持論系モチベーション」を駆使してトライしつづける人だけに神は微笑むのです。

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児玉 光雄(こだま・みつお)
スポーツ心理学者
追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問。京都大学工学部卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学修士。『逆境を突破する技術』『上達の技術』『一流の本質』など著書多数。

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(スポーツ心理学者 児玉 光雄)

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