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「売るに売れない物件をつかまされる」マンション購入で絶対見落としてはいけない"2つの視点"

プレジデントオンライン / 2021年12月3日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/goto-photo

新築マンションも中古マンションも高い。損しない物件を見つけるにはどうすればいいのか。スタイルアクト代表の沖有人さんは「最近の新築価格は高過ぎる。購入の際には2つの視点を持つべきだ」という——。

■判断を誤ると、売るに売れなくなってしまう

現在、マンションは新築・中古とも売れている。そして、価格は需給バランスを反映して強気で、端的に言ってかなり高い。こんな時にローンを組んで2~3割高い価格で購入したら、それこそ売るに売れなくなってしまう。今は売れなくなるマンションを買ってしまうか、逃れられるかの“ババ抜きゲーム”の真っ最中だが、ゲームは早々に終わりそうだ。そんな折に、賢明な判断をするためには現状の正確な理解と今後の見通しが必要で、そこを論理的に説明しておこう。

■今の新築物件価格は「適正価格」より高すぎる

新築物件価格は1~3割ほど高い。どうして高いと言えるかと言うと、適正価格が分かるからだ。新築物件は竣工して1年すると、中古扱いになり、中古取引市場で取引される。新築の際は、売り主のデベロッパーから直接購入することになり、比較対象になる物件は少ないので、その物件が高いのかどうかが分かりにくい。

しかし、1年後中古になったら、周辺の多くの中古物件と比較されて取引される。マンションの価格は立地でほぼ決まる。周辺の成約した事例はたくさんある。築年の違いを補正すれば、すべての中古物件は比較対象になる。こうして、築1年の中古としてはいくらで取引されるかを想定することができる。築1年と新築の乖離(かいり)幅は決まっているので、これを補正すると売り出されている新築マンションの適正価格が分かる。それを「沖式新築時価」と呼んで、住まいサーフィンで全新築物件を査定している。

しかし最近、この沖式新築時価に対して実際に売り出されている新築価格は1~3割高い。相場が上昇している時なので、1割は許容範囲だとしても、2~3割は高過ぎる。この高過ぎる分は購入した人の含み損となる。これがババ抜きに負けた罰である。

■休日に家探しをする人の急増で起きた「コロナ特需」

こんな高い価格になっているのは、新型コロナによるところが大きい。月に休日は約10日あるが、レジャーや旅行やイベント等に行くことができない中で、家にいる時間は長くなり、家への不満は溜まる一方となった。「リモートワークができる部屋が欲しい」「郊外に行ってでも、もう1部屋多い家に住みたい」というニーズが湧いてくる。そこで、持て余していた休日を家探しにあてる人が急増した。これを「コロナ特需」と呼んでいる。

モデルルームや実際の物件の内覧は、予約すれば家族全員で、安全に無料で楽しむことができる。こうして、売れ行きは好調になり、在庫は減少に向かい、売り手は強気になり、買い手は不利になった。在庫の急減が単価の高騰に拍車をかけたのだった。不動産業界はコロナのダメージが少ないどころか、特需に沸いている業界の1つなのである。

不動産について話し合う人たち
写真=iStock.com/staticnak1983
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/staticnak1983

■2025年までは新築価格が上昇する見込み

中古は価格調整の余地はあるが、新築にはない。なぜなら、原価がすでに高いからだ。マンションの原価は土地と建築費である。土地仕入れは高値を追う展開が続いている。安倍政権以降、金融緩和が異次元で行われている。お金を多めに刷れば、モノの価格が上がってインフレするという期待で行っているが、これが終了しそうにない。インフレ目標に届かないので政策継続なのだが、この多めに刷られたお金は担保が取れる融資に向かう。その際たるものが不動産業への貸し出しになる。

そこで、潤沢な資金を得たデベロッパーは用地を高値で購入する。都心・駅近で広い土地は稀少性がある。競争入札が行われ、最も高い価格をつけた会社が購入するだけだ。常に仕入れた用地の価格は最高値を更新している。建築費も高い。震災復興、公共事業の復活、東京オリンピックなどが重なり、ゼネコンの営業利益は過去最高を続けている。

土地仕入れから約2年して販売が始まるので、2年後の新築価格は今よりも高いことは既に確定している。この金融緩和は少なくとも黒田日銀総裁の任期である2023年までは続きそうな様相である。つまり、2025年まで新築価格は上昇することがすでに決まっていると思った方がいい。新築は購入時期を遅らせていいことなど何もない状況にある。

■コロナによる住宅特需が、曲がり角を迎えている

新築は原価ありきで価格が高くなるものの、中古はあくまで市場での取引価格で形成される。2021年は行動制限がずっと行われていた年だったが、緊急事態宣言が9月末で終了した。時短要請や人数制限などは緩和・解除の方向で進み、近いうちにGo To キャンペーンも再開されるだろう。新型コロナの感染者数が急減する中で、これまで行くことができなかった鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、観光地で新たな別の特需が生まれることになる。

飛行機と滑走路
写真=iStock.com/guvendemir
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/guvendemir

土日祝日はレジャーや旅行に行く人が増えると、住宅需要は減らざるを得ない。こうして、まもなくコロナ特需は終了する。来場者数はすでに前年割れを始めているし、旺盛で1年半近く続いた住宅特需は曲がり角を迎えている。

そもそも分譲市場で売れ行きの良い時期は短命で終わっている例が多い。コロナ前の水準を見ると、18カ月のうち14カ月は前年同月比割れで売行きが悪かった。そこに来てのこの高価格なので、需要が減れば売れ行きは急に落ちる。買い手の数が減れば中古の販売価格を見直さなければならなくなる。

■2022年は売れ行きが悪化するところも

先ほど見たように、新築価格は2025年まで上昇を続ける。これに、売れ行きは関係ない。原価が高いから仕方ないことだ。2022年は売れ行きが悪化し、閑古鳥が鳴くところも出てくるかもしれない。住宅は気持ちが冷めると、優先順位が圏外に落ちるものだ。それは過去の増税前の駆け込み需要とその反動減が何度も起きたことが証明してくれている。結婚や出産や入学というトリガーに端を発する一定の持ち家需要はコンスタントにあるものの、「みんながやっているから」的な浮かれた需要も多いのが住宅需要なのだ。

■購入時に持っておくべき「2つの視点」

新築でも中古でも購入の際に知っておくべきことは、2つある。1つは、その物件の資産性だ。全ての新築物件は、過去の周辺物件の取引価格の推移によって1年の平均値下がり率が決まる。都心・駅近の物件ほど資産性が高くなる。こうした物件の資産性が高いのは、中古で買いたい人がたくさんいることを暗示している。人気の物件は値下がりしにくいのだ。

もう1つは、適正価格だ。新築にも中古成約価格から想定される適正価格があったように、中古にはその物件の取引価格の推移から分かる各住戸の適正価格がある。同じ物件でも高層階の眺望がいい住戸と下層階の墓地が見える住戸の単価差は非常に大きい。それを正確に当てるには、大量のデータと適切なロジックが必要となる。

中古の号室別査定価格は、「住まいサーフィン」の物件詳細から自宅査定という機能で無料提供しているので、それを使うのも一つの手だ。その結果査定された価格で購入したいものだ。相場が上昇している中で、適正価格より1割高くても検討に値すると考えている。中古は同じ条件のものがいつ出てくるか分からないので、何が何でも適正価格以下で買いたいと言っていたら、いつまでも買えなくなるかもしれない。

■「適正価格の判断」が購入の成否を左右する

「コロナ特需」がある以上、購入環境はいいとは言えなかった。買いたくても買えないことが多いし、買う時は指し値(売出価格よりも低い価格で購入意思を伝えること)も入らない程、割高に買うことになりがちだ。値引かなくても売れる時期には売出価格も高くなりがちで、適正価格の2割高で設定されている物件は現状まだ多い。

しかし、通常の場合、売出価格は平均すると成約より10%高い価格が設定されているものだ。これに指し値を入れて買うのが通例だ。売れ行きが落ち着き、在庫が増えてきたら、売出価格は改定され、この水準まで落ちてくるものが増える。来年の2~3月に引っ越しを控えていて売り切りたい売主は多いので、適正価格に近いところで取引すれば、失敗することはない。そのためにも必要なのは適正価格の判断なのである。

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沖 有人(おき・ゆうじん)
スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。

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(スタイルアクト代表 沖 有人)

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