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「東大卒も騙される」自称資産家に440万、自称弁護士に100万、連続でむしり取られた女性をバカにできない訳

プレジデントオンライン / 2021年12月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itasun

30代女性はネットで出会った自称資産家の男にロレックス転売話を持ちかけられ440万円を騙し取られた直後、その相談をした自称弁護士にさらに100万円詐取された。ジャーナリストの多田文明さんは「こうした卑劣なハイエナ詐欺は巧妙に仕組まれており、被害者には東大卒のような超高学歴の人も少なくない」と警鐘を鳴らす――。

■440万円を騙し取られた直後、自称弁護士にも100万円を…

最近、高級時計ロレックスが高値で買い取られる傾向に便乗する形で、転売や出資を持ちかけお金を騙し取る手口の犯罪が増えています。

11月15日に配信した、〈警戒しながらも「アラブ皇太子と友達の男」にロレックス転売話で440万円騙されるまでの一部始終〉はその一例でした。

今年初め、30代女性は、マッチングアプリで出会った40代の自称資産家の男性から「高級時計を転売すれば儲けられる」と、ロレックスのデイトナの購入を持ちかけられました。直接会って、その雰囲気や話し方から信用できる人物と判断し、計440万円ものお金を振り込みました。しかし、待てど暮らせどが時計が送られてくることはなく、その男もお金を預かったまま行方をくらましました。

筆者がその後の被害経緯について女性に聞き取り調査を進めたところ、その中でこの女性がさらなる被害に遭っていたことがわかってきました。

「弁護士に相談して、100万円を支払っています」

安心しきった様子で事情を説明する女性でしたが、この言葉から、新たな被害がみえてきたのです。それは、「ハイエナ詐欺」と呼ばれる卑劣な手口。被害に遭っている人に群がり、さらに金を騙し取ろうとするものです。

「弁護士に100万円を支払った」と語る女性に対して、筆者は当初弁護士への着手金かと思い「そうですか。解決に向かうといいですね」と話すと、女性も「はい」とうなずきます。しかし、その後の話がどうもおかしいのです。

「ちなみに、どちらの弁護士さんですか?」
「*藤さんと言います」
「下の名前は?」
「わかりません」
「わからない? では、弁護士さんオフィスの住所はどちらになりますか?」
「教えてくれないのです」
「はい? 教えくれない……おかしいですね。苗字しかわからないのでは、その方が本物の弁護士かの確認のしようがありません。偽弁護士の可能性もありますよ」
「え~! 私、また、騙されたんですか。でも、3回も彼に会って、親身になって相談にのってもらっているんですよ」

■「僕は弁護士なので、440万円を取り戻してみせる」

「詐欺や悪徳商法の取材をしてきて、これまでにたくさんの弁護士さんと知り合っていますが、身元を明かさない弁護士さんなど一人もいませんでした」

筆者がこう説明しても女性はまだ相手の男性を信じている様子でした。こちらがこれ以上、否定し続けると心が頑なになってしまい、聞く耳を持ってくれなくなる恐れがあったので、彼女自身がおかしさに気づけるように、経緯を詳しくお聞きしました。

「どこで探した方でしょうか? ネットで検索したのでしょうか?」
「いいえ、マッチングアプリで知り合いました」
「マ、マッチングアプリで、ですか……」

筆者は言葉を失いました。自称資産家によるロレックスの案件に続き、今回の自称弁護士案件も、きっかけはSNS。ネット上では何者かになりすますのは簡単です。偽弁護士であることが、かなり濃厚になってきました。

「では、この男性のアプリでの自己紹介を見せていただけますか?」
「はい」

見てみると確かに、「30代」で「弁護士資格を持っている」の記述がみられます。女性はこの言葉を信じたのでしょう。

ロレックス ディープシーの側面
写真=iStock.com/felixmizioznikov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/felixmizioznikov

この男に相談するに至った経緯は次のようなものでした。

女性は相手が弁護士だと思い、「時計の代金として440万円をある40代の男性に払ったけれど、なかなか商品が送られてこない」という話をすると、男から思いがけない言葉が返ってきます。

「あなたは詐欺に遭っているかもしれない」
「そうなのですか!」

男は「僕は弁護士なので、お金を取り戻してみせる。その(440万円を振り込んだ先の)男のLINEのIDを教えてほしい」と言います。彼女が連絡先を教えると、後日、この弁護士を名乗る男から、「毎日『お金を返すように』との連絡をしている」とのメッセージが届き、40代男とのやりとりのスクリーンショットが送られてきます。

「詐欺に遭っているというショックな思いを抱えていたので、その時の彼の行動は、とても力強く、私に寄り添ってくれているように感じました」と彼女は当時を振り返ります。

■「100万円を預けてくれたら、10倍にして返せる」

そうすると、男は彼女の気持ちを見透かすように、電話で次のような話を持ちかけてきます。

「もし自分に100万円を預けてくれたら、あなたのお金を投資して10倍の1000万円にして返してあげられる」

心が弱っていた彼女は、ロレックスで騙された被害金が戻るなら、との思いで、お金を用意します。数日後、彼女は30代男と喫茶店で会い、100万円を渡してしまいます。

カフェでホットコーヒーのカップを持つ手元
写真=iStock.com/Farknot_Architect
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Farknot_Architect

自称弁護士が巧妙なのは、その時の対処法です。彼女がロレックスの被害相談のために警察に行くことを話すと、自称弁護士は止めることなく、いろいろとアドバイスします。例えば、こんなふうに言ったそうです。

「もし、警察が被害届を受理しないと言ったときには、その理由を聞いてください。また、担当者の名刺は必ずもらってください。それに、男の前科前歴の有無も聞いてください(女性は男の免許証コピーを持っており、名前を把握)。警察には、男と最後に喫茶店で会った日に、男が引っ越していたことがわかったことなどを、詳しく話してください」

つまり、騙す意図があって彼女と会っていることを強くアピールするように促しています。このあたり、法律に精通していることがうかがえます。さらに「民事では、僕が担当して頑張るけれども、警察にはぜひとも刑事事件として扱ってほしい」と、それらしい話も付け加えます。

警察への応対レクチャーまでしてくれるのですから、まさか彼女自身、2度目の詐欺行為に遭っているなどとは疑うはずもありません。

一連の話を聞いて、筆者は「本当の弁護士が契約書面も渡さずに、着手金ではなく、投資金名目でお金を預かるということをするはずがないと思います」との見解を述べました。

しかし、彼女はいまだ信じられない様子です「でも、すごく親身になってくれました! 彼は『女性を騙すなんて、絶対に許せない! あなたが貯めてきた大切な貯金を取るなんて』と言ってくれたんです」

彼女がここまで信じてしまうのは、なぜなのか。実は、この男のアフターフォローが事細かなところにまで及んでいたからです。

最初の男からロレックスの代金の被害に遭った時、彼女は40代の男のマンションを訪れて、管理人からすでここを退去していることを聞き出し、警察や回収会社などが家を訪れたことも把握しました。

その後、この自称弁護士とともに、440万円を騙し取った男が借りていたマンションのオーナーのいる住所へ女性とともに出向いています。 そこで、オーナーの連絡先を知り、電話をかけて「自分は弁護士だ」と名乗り、オーナーから「家賃を滞納して、マンションを出て行った」事実を聞き出していました。この様子をみて、彼女はますます自称弁護士を信じてしまったのです。

「でも、もし本物の弁護士なら、フルネームを伝えるはずです。名刺ももらっていませんよね。それにお金を預かった時に、書面も渡さないのはおかしいです」
「詐欺をするような人にはみえませんが……、やはり、違うのでしょうか?」

彼女は、“信じてきたものを手放したくない”そんな思いのなかで揺れ動いているように思えました。

■「自分はエルメスのVIP客、バーキンを送るからお金を払って」

ロレックスの被害に続き、2度目の騙しに遭ったことを理解するには、やはり自ら真実を調べるなどして、心を整理するための時間を持つことが必要です。

そこで、「もし本当の弁護士であれば登録しているはずですので、ネットでも弁護士の検索はできますので、調べてみてはどうですか?」と伝えました。

信じた相手を疑うことは、たやすいことではありませんが、ひとつでも多くの客観的な情報を目にすることで、その真実に気が付く道標(みちしるべ)になります。

後日、彼女は、「*藤」の名前で日本弁護士連合会のホームページなどで検索をしました。この名前の弁護士は、全国に100人以上いました。彼女は30代男がいないかを必死に調べましたが、該当者はいませんでした。「やはり、騙されたのかもしれません」と落胆のメッセージを送ってきました。

弁護士バッジと六法全書
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

雲行きが怪しくなってから半年たった頃、自称弁護士の男は音信不通になったわけではありません。ただし、女性には「(440万円を奪った男性へ)内容証明を作る」と言いながら、「忙しい」「海外にいる」などと言い訳して、結局、何もしていません。

彼女が執拗(しつよう)に返金を促すと、ついに「100万円を返す」と男は言い出します。そこで彼女は銀行口座を教えますが、まったく振り込みはありません。

それどころか「自分はエルメスのVIP客なので、バーキンのバックを送れるから、商品が届いたら、お金を払ってください」という新たな提案をしてくる始末です。偽の弁護士をかたるような人物です。もしかすると、偽ブランド品を送りつけ、また100万円以上を騙し取ろうとする可能性も高く、筆者は、商品を絶対に受け取らないようにお話をしました。

その後さらに彼女が執拗に返金をお願いすると、男は「今、滞在しているヨーロッパのある国で病気になって入院した」というメッセージを送ってきました……。

被害がほぼ確定した今、彼女は憔悴(しょうすい)しきった様子で次のように話します。

「誰も、周りに味方になってくれる人がいないなかで、彼だけが頼りでした。その時は、彼が神様のように映りました。しかし今振り返れば、メンタル崩壊しているところにつけこむ悪魔のような存在としか思えません。お金を取られたこと以上に、信じていたことに裏切られたことがとても悔しいです」

今、高級時計などの転売を持ちかけて、お金を騙し取る手口が横行するとともに、ハイエナのように、被害に遭った人から、さらにお金をむしり取ろうとする人もいます。

ネット上では、何者にもなりすますことができます。公式なホームページの情報でない限り、その肩書や名前は信じないでください。そして何より、身元のはっきしない人物にお金を渡すことがないようにしてください。

■脳科学者・中野信子さん「もし私が詐欺師なら『高学歴の人』を狙う」

雑誌『プレジデント』(12月17日号)では特集「投資入門」の中で、投資成功者やマネーの専門家によるノウハウなどとともに、脳科学者の中野信子さんによる「私が詐欺師なら、ターゲットは東大生 うまい話に騙される人、騙されない人」という記事が掲載されています。

雑誌『プレジデント』(12月17日号)の特集は「投資入門」。脳科学者・中野信子さんによる投資で騙されないための対策のほか、「年代&手元資金別 人生安心マネープラン 到達額シミュレーション45コース」などを紹介している。
雑誌『プレジデント』(12月17日号)の特集は「投資入門」。脳科学者・中野信子さんによる投資で騙されないための対策のほか、「年代&手元資金別 人生安心マネープラン 到達額シミュレーション45コース」などを紹介している。

中野さんは、よくある騙しの手口として6つのパターンのカラクリを解説しています。例えば、SNSで知り合った相手を言葉巧みに騙して多額の金銭を送金させる古典的な【ロマンス型】、金融庁など公的機関を装ったり権威を利用したりする【公的機関装い型】、詐欺被害に遭った人に「損失を取り戻せる」と持ちかける【被害回復型】などです。

今回、30代女性が、ネットのマッチングアプリで仲良くなった男に騙された直後に、弁護士を名乗る別の男からも騙されたのは、まさにこうした典型例の合わせ技だったのです。

中野さんは「詐欺師の手にかかれば超高学歴であるはずの東京大学の教授もまんまと騙される」「負けているギャンブラーほど大穴に突っ込む」「もし、私が詐欺師なら『高学歴の人』を狙う」と話しています。

ネットでは確かに気軽に相談しやすいですが、それに流され、大事な個人情報をうっかり伝えてしまうこともある。くれぐれもそのことを心に留め置く必要があります。

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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
1965年生まれ。北海道旭川生まれ、仙台市出身。日本大学法学部卒業。雑誌『ダ・カーポ』にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に一度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100カ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。著書に『サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術』、『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』、『マンガ ついていったらこうなった』(いずれもイースト・プレス)などがある。

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(ルポライター 多田 文明)

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