「強調したい箇所を赤色にすると逆効果」プレゼン資料で相手の目を引く"意外な色"
プレジデントオンライン / 2021年12月8日 10時15分
※本稿は、越川慎司『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「文字ぎっしりはうんざり」「疲れない資料がいい」
クライアント各社から5万枚以上のパワポスライドを収集し、文字数や色、図形の有無などについて、AIを使ってパターン分析をしました。
「なぜ人を動かせたのか?」を探るために、各社868人の意思決定者(予算を持っている権限者)に対面ヒアリングとウェブアンケートを行い、いくつかのパワポ資料のパターン比較(A/B比較)と、自身の意思決定に影響を与えた資料の提示をお願いしました。そうしたことからも「人を動かす資料」の特徴がわかってきました。
資料の中身はもちろん重要ですが、デザインの特徴だけを見ても、資料作成の本質的な目的を再確認することができるのです。
意思決定者は以下のようなコメントを多くしていました。
「文字ぎっしりの資料はうんざりする」
「わかりやすい資料がいい。受け手が理解するのにエネルギーを使わない疲れない資料」
「大切なことに絞った資料がいい」
こうした言葉からわかるのは、人を動かすことができるのは“重要な点に絞った資料”だということです。調査した意思決定者のうち78%は、10秒以内で「わかりやすい資料かどうか」を判定しているとのことでした。
■「要点は何?」を10秒以内でわからせる
わかりやすさの判定基準は「10秒以内で①資料の要点を理解できること、②それを記憶しておくべきかの判断を終えられること」です。
②についてはコントロールできない部分もありますが、①の「要点は何か?」を10秒以内でわからせるようにすることはできます。
多くの人は、自分の伝えたいことをそのままスライドに書き起こした資料を作りがちです。限られた時間でできる限り多くのことを伝えたいので、必然的にスライド内の文字数が多くなります。それを根拠のない自己満足のデザインでまとめて、凝ったように見えるだけの資料を作ってしまうのです。
しかし、実際に相手を動かせるのは、大切なポイントに絞って10秒以内に「要点は何か?」がわかるようにしたシンプルな資料です。
この点を押さえて資料作成に臨んだ2万3000人の資料作成講座(クロスリバー主催)の受講者は、94%が「効果を実感した」と答えていました。
伝える資料ではなく“伝わる資料”を目ざさなければならないのです。
■赤文字では意外と誘導できない
人は五感を通じて情報を脳に取り込みます。より長く、そして鮮明に覚えてもらうためには、視覚を通じて情報を入れるのが効果的であると昔からいわれています(『産業教育機器システム便覧』1972年)。実際、活躍社員も相手の視覚を意識して資料を作成していました。
そこで、資料においても、相手の視覚を意識することで「伝わってほしいことに誘導できるか」を確かめる実験を行いました。
実験を進めていくと、赤文字では意外と人を誘導できないこと、彩度が高い色は見にくいためなのか敬遠されがちなことなどがわかりました。黄色やオレンジも、アクセントカラーとして使われがちですが、スライドの中で黄色やオレンジが占める割合が多いと、目がチカチカして集中できません。プラス効果のあるアクセントにはならないのです。
■最もインパクトを残せる色は…
実験の結果、最も視覚を誘導しやすいと判明したのは、意外にも「白」でした。とくに効果があるのは、余白の「白」と白抜き文字の「白」です。
伝わってほしいことの周りに余白を増やし、黒い背景などに白抜きの文字を使うことで効果的にインパクトを残せるようになるのです。まず伝わってほしい結論が目に入るようにして、そこから詳細説明に視線を移すようにします。
このルールを頭に入れておけば、デザインをどうするかと悩む時間は減り、「何が最も重要なのか」を考えるための時間に割り振ることができます。
「白抜きの文字」は、聞き手の記憶に長く残っている確率も高くなりました。そこで、資料の中で重要な文字だけを切り出して別スライドにして、黒背景で白抜き文字を強調したところ、聞き手の印象に強く残すことに成功しました。白抜き文字でまず結論を伝えて、「詳細は次のスライドに記載してあります」と発言することで、伝わってほしいことをうまく伝えられたのです。
■アイコンや画像は「対角線上」を意識する
資料を見るときなどには左斜め上から右斜め下の対角線に沿って目線が動きます。この対角線上にアイコンや画像を配置すると、約8割の閲覧者がそのアイコンや画像と、その横に配置された文字を読むことが調査でわかっています。
ルールなく配置された場合と、対角線上に配置した場合を比べると、65%の人は後者がわかりやすいと答えています。それも、即答していました。
この原則は、スライドを10秒見たときに何が頭に残りやすいかを答えてもらった際に、色や文字の大きさといった要素のほかに、左斜め上に配置された文字や図形に目が止まりやすい傾向に気づいたことから発見できたものです。その次にどこが印象に残るかを聞くと、やや中央に移動して目線が右斜め下に移っていたのです。
![資料を見る人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/4/670/img_24fd114572004303c39e89a2819e1b4b309657.jpg)
■「目線を右に移動する」習性を生かそう
似たテーマについて解説している書籍の中には、資料を見るときは視線がZ型に動くものだと書いているものもあります。Z型とは、名称が示すとおり、左上から水平移動して右上へ行き、その後、右上から左下へ目線が落ち、最後は左下から右下へ横スライドする目の動きです。
私たちの実験においても、まず目に留まったものが印象に残り、そこに書かれた文章に興味を持てば、目線を右に移動してさらに文章を読むという傾向があることが判明しています。Z型とイコールではありませんが、それに近い目の動きです。
対角線の法則は、私が講師を務めるパワポ講座の受講生2万3000人のうち78%が実践していて、81%が「視線を動かすことに効果があった」と答えました。「配置するアイコンの数は1スライドに4つ以内。オンライン会議であれば1つ」というルールも適用したところ、62%が実践し、82%が効果を実感していました。
■気遣いでいっぱいの“忖度資料”はほぼ使われない
1万9000人分の資料の作成状況を調べたところ、約23%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていることがわかりました。補足資料や緻密なデータ、詳細な説明文などがそれにあたり、必要だろうという憶測で作成されていたのです。
上司側の協力を得て匿名回答でヒアリングしたところ、こうした忖度(そんたく)資料のうち80%以上のものは実際には使われていませんでした。中にはページがめくられてさえいないものもありました。必要のない資料の作成に部下が時間を割いていたことを知り、不快に思う上司もいたほどです。
資料の「差し戻し」は、作る側と見る側双方の生産性を落とします。じっくりと時間をかけて入念に作った資料が最後の最後でダメ出しされ、作り直すことになれば非効率的です。資料の作成者だけでなくダメ出しする側も、時間とエネルギーが奪われます。
■進捗20%の段階で相手に意見を求めてみる
このような忖度資料と差し戻しを減らすのが「フィードフォワード」です。
成果を出し続ける活躍社員は、仕事の依頼を受けるときには念入りに相手の期待値を確認しておき、作成途中でチェックポイントを設けて提出先の意見を取り入れていました。
![越川慎司『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/5/200/img_e5ca1716cf8c1933d7b8d7080fb3a183289490.jpg)
こうした定期的なチェックの応用として、「進捗20%の段階で提出先から意見を求める」というルールを取り決め、39社で行動実験しました。提出先の相手に、完成前の途中段階で意見をもらうようにすれば、「忖度資料と差し戻しを減らせるのではないか」という仮説を立ててのことでした。「差し戻し」は、作成者と提出先の思いや考えがズレることによって発生するものですから、そのズレを早い段階で見つけてしまおうと思ったわけです。
フィードバックは完成後に得るもので、完成前に意見を聞く行為を「フィードフォワード」と呼ぶことにしました。こうした実験についてもニックネームのように名前をつけると、組織内で浸透しやすくなります。
この実験では、完成度が20%の段階でまず見てもらう相手には、「2分程度の簡単な意見が欲しい」ということもお願いしておきました。
こうしたフィードフォワードを開始してみると、「良かれと思っていたことが本当に良かったのかを確認できた」「相手の思考や興味、関心がわかるようになった」と回答する参加者が続出しました。
■差し戻しが74%減少した企業も
想定外だったのは、作成者よりも資料をレビューする側の満足度が高かったことです。「最初は面倒くさいと思ったが、資料を見る時間が全体的に短縮できた」「質の高い資料を作る人が増えた」というコメントが出てきたのです。
ある物流企業では、フィードフォワード実験によって「差し戻しが74%減少した」という結果が出ました。「必要以上の品質になることも少なくなった」と答えた管理職も43%になっています。
フィードフォワードだけでなくフィードバックも取り入れます。資料を提出、もしくは説明した後に、感想や改善点などをもらうようにするのです。
フィードフォワードとフィードバックの徹底によって「資料作成が楽しくなった」と答えた参加者は81%になりました。
フィードフォワードには3つのベネフィットがあります。作業時間を減らせること、提出先の期待に応えやすくなること、作成者のモチベーションが上がることです。
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株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約2万人が受講し満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)がある。
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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員 越川 慎司)
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