「平日に1時間以上ネットを見る子は要注意」長時間勉強しても成績が下がる驚きの理由
プレジデントオンライン / 2021年12月10日 13時15分
■幼児期は親子での利用が重要
デジタルテクノロジーの目覚ましい発展に伴って、さまざまな分野で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が推進されています。
近年は、幼児むけの分野でもデジタルコンテンツを目にするようになりました。気がつくと長時間子どもにスマホやタブレットを与えていた、ということもありがちです。ひと昔前までは、これがテレビでした。
幼児にテレビを見せる際、一人で見せるなど何の会話もない場合に比べ、一緒に見ながら会話をすることが、言葉の発達に僅かながら効果があるという報告があります。また最近では、デジタル絵本によって親子のコミュニケーションが促進され、言語の発達が促進されたことも示されています。
つまり、決してタブレットやテレビを使うことが悪なのではなく、利用するとき、それらに子どもの世話を任せっきりにするのではなく親子で利用することが大事ということがわかります。
■自ら学ぶ意欲や英語や数学の学習が促進される
また文部科学省があげるGIGAスクール構想に加え、コロナによるオンライン教育体制の急速な構築も後押しし、リモートにおけるインタラクティブな教育をする技術は、学齢期の子ども達の学習を促進するのに必要不可欠になりつつあります。
デジタル環境やデジタル教材を使った場合の効果については、まだ新しい領域であり、再現性の高い研究成果が積み上げられてきているわけではありません。しかし、デジタル教材を使うことで、外国語(英語)教育や数学の教育に効果があったことがいくつかの研究から示されています。
また、マレーシアの中学校では、ディスカッションプラットフォームとよばれるインターネット上の掲示板のようなものを利用することが、自ら学ぶ意欲を持って学習を進めていくという、自己調整学習の訓練にとても有効であることが示されました。
一方で、タブレットやスマートフォン、パソコンなどを利用した学習環境を整えたときに、必ず問題になってくるのが「それらを使った学業とは関連のないインタラクティブ技術、例えば、インターネット、ソーシャルメディア、ゲームの利用に簡単に行きがちなのを、どう制限するか?」です。具体的にどのくらいこれらの利用を許すのか? について頭を悩ませている親は多いはずです。
■平日1時間以上ネットを見る子は1年後に成績が下がる
日本の子ども達のインターネットの利用状況はどうでしょうか。令和2年度(2020年度)「青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府)によると、10~17歳のインターネット利用時間は1日平均3時間強、3割強が5時間以上使っており、この使用時間は年々増加しています。
この現状を鑑みると、衝撃とも言える研究成果が最近発表されました。9949人の10代の子ども達のデータを分析した結果、学校がある日に1時間以上、週末に1日4時間以上を、娯楽的に、インターネット、ソーシャルメディア、ゲームに費やす子どもたちは、1年後に、国語、数学、英語などのテストの成績が下がっていたというのです。
![グレード - ストックフォト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/670/img_7d9f29e97a31d5401a67bacc70e02aec340699.jpg)
■学習意欲と集中力が低下する
それだけでなく、この調査では、彼らは学習意欲が低い、授業中の集中力が低い、学校を退屈だと感じるというような傾向も見られました。毎日4時間以上をネットなどに費やす子どもたちは、そうでない子よりも4倍、不登校のリスクが高くなることも示されています。
他の研究からも、学習時間は同程度にも関わらず、ネットやSNSなどに費やす時間が長い子どもの方が、学習意欲や学習成績が低くなることが報告がされています。日本での小学校5年生~中学校3年生を対象にした調査でも、スマホの使用時間と学業成績の関係について行われた調査で1日2時間以上勉強していても、スマホ使用が4時間以上になると、スマホをやらないけれども勉強時間が30分未満の子より成績が悪いことなども示されています。
■SNSやネットは、自己肯定感を下げる
SNSやネットの利用が、学業成績以外の、メンタルにどのような影響を起こすのか、とても気になるところです。
海外メディアでも大々的に取り上げられた研究成果があります。それは、SNSの利用頻度が高い子どもほど、自己肯定感が低く、孤独感を抱えている、といった内容です。日本の研究からも、インターネット依存が強い人では、自尊心が低く、不安・抑うつ傾向が高いことや、共感性や情動制御能力が低いことが示されています。
近年よく耳にする、well-beingとインターネットの利用状況についても、2020年にNatureに発表された論文や米国科学アカデミー紀要に発表された研究があります。ここでは、10代の子ども達にとって、SNSなどの利用状況は、well-beingや人生や生活の満足度にはほとんど影響しないということが示されています。おそらく、SNSの利用と一言に言ってもどのように利用していたか、という個人差の効果が大きく、全体としてwell-beingへの影響が見られなかったのでしょう。何れにしても、インターネットの利用によるメンタルへの影響については、まだ統一的な研究成果は得られていません。それほど研究領域としては複雑なうえ、新しい分野と言えます。
■子どものインターネット利用が脳に及ぼす影響
脳発達とインターネット利用頻度の関係を調べるために224人の子の脳を3年間にわたって追った研究成果があります。この研究からは、インターネット習慣がない、あるいは少ない子どもたちは、3年間で脳全体の灰白質体積が増加しているのに対して、ほぼ毎日インターネットを使用する子どもたちの全脳の灰白質の増加はゼロでした。
大脳灰白質とは、脳の中で神経細胞が集まっているところです。近年、脳はネットワークとして捉えられ、脳の離れた領域を結ぶ神経線維連結も重要であることが多くの研究から示されていますが、この研究では、この神経線維連結も、ほぼ毎日インターネットを利用する子どもでは、発達が止まっていることが示されました。
新しいテクノロジーは、メリットもデメリットも合わせもちます。メリットを得るかデメリットを被るかは、使う人次第なのです。子どもの世話や教育を、デジタル環境に補助してもらいつつも、完全に頼り切らないことが重要なのです。
・Preschool children's learning with technology at home.Plowman, L., Stevenson, O., Stephen, C., and McPake, J. UK, Computers Education, 59: 30-37、2012
・Alabdulaziz MS. COVID-19 and the use of digital technology in mathematics education. Educ Inf Technol (Dordr). 2021
・Escobar Fandiño FG, Silva Velandia AJ. How an online tutor motivates E-learning English. Heliyon. 2020 Aug 6;6(8):e04630. doi: 10.1016/j.heliyon.2020.
・Wen LiAnthony, YuhongZhu, LiaNowera “The Relationship of Interactive Technology Use for Entertainment and School Performance and Engagement: Evidence from a Longitudinal Study in a Nationally Representative Sample of Middle School Students in China” Computers in Human Behavior 122(7):106846, 2021
・Liu D. et al. Social networking online and personality of self-worth: A meta-analysis Journal of Research in Personality, 64:79-89., 2016
・Impact of frequency of internet use on development of brain structures and verbal intelligence: Longitudinal analyses. Takeuchi et al., Human Brain Mapping 2018
----------
博士(医学)
帝京大学先端総合研究機構内にて細田研究室を主催。東京大学大学院総合文化研究科研究員兼任。細田研究室では、素質個人差や、やり抜く力などの個人特性を脳特徴量から定量化し、BRAIN x IOT インタラクションによる、新しいオーダーメイド生涯目標達成支援法の開発とその元となる基礎研究を実施。企業等との産学連携研究も多数実施。内閣補正予算により決定され2021年度から開始された、日本の破壊的なイノベーションに繋がる研究成果を生み出すための「創発的研究支援事業」において全国から採択された約250名の研究者のうちの一人。
----------
(博士(医学) 細田 千尋)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
世界初、eスポーツ対戦直前の脳波から勝敗と強く関わるパターンを発見・実証 〜「実力が拮抗した試合」や「番狂わせ」を約80%の精度で予測〜
Digital PR Platform / 2024年7月18日 15時10分
-
会話の中で「アレ」「コレ」が増えたら要注意…最新研究が明らかにした「おりがみ脳活」の驚くべき効果
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 7時15分
-
富山大、睡眠中の脳で行われている推論の演算を神経細胞レベルで解明
マイナビニュース / 2024年6月26日 19時56分
-
河合塾 × NOLTYプランナーズ 『その面談で生徒が分かりますか?~生徒が動き始める面談での声かけ術~』脳科学の観点から生徒の主体性を引き出す方法を解明!
PR TIMES / 2024年6月25日 14時15分
-
【中部大学】英語学習を支える性格が英語力向上につながることが判明--成しとげる力"L2グリット"の育成が国際化のカギ --
Digital PR Platform / 2024年6月24日 20時5分
ランキング
-
1「健診でお馴染み」でも、絶対に"放置NG"の数値 自覚症状がなくても「命に直結する」と心得て
東洋経済オンライン / 2024年7月21日 17時0分
-
2扇風機の羽根に貼ってあるシール、はがしてはいけないって本当?【家電のプロが解説】
オールアバウト / 2024年7月21日 20時15分
-
3終電間際、乗客同士のトラブルで車内は「まさに“地獄絵図”」泥酔サラリーマンが限界突破して…
日刊SPA! / 2024年7月22日 8時54分
-
4日本カレーパン協会「カレーパン美味い県ランキング」発表 3位北海道、2位京都…1位は?
オトナンサー / 2024年7月22日 8時10分
-
512気筒+モーター「EV前夜」のランボルギーニ 6600万円の値札をつけて「レヴエルト」が発売
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 12時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)