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「良かれと思って」…中学受験直前に"子供の足を引っ張る親"がやりがちな失敗

プレジデントオンライン / 2021年12月13日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

中学受験の入試本番が近づいてきた。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「直前になって勉強量を増やす親がいる。だがそれは逆効果だ。中学受験を成功させる秘訣は“親が俯瞰の目を持つこと”にある」という――。

■直前期の「苦手の深追い」は禁物

12月に入り、いよいよ受験生は入試本番まで2カ月を切った。ここまで親子で必死に頑張ってきたことを思うと、なんとしてでも合格してほしいと誰もが願っていることだろう。だが、実際のところ中学受験はそれほど甘い世界ではない。第一志望校に進学できる子は、受験生全体の約3割にすぎないのが現実だ。しかし、合否の分かれ目は僅差だ。最後は何が決め手になるのか。

直前期の勉強量を増やす? 苦手単元を何度もやらせる?

どちらも不正解だ。

直前期になると「できていないもの」が気になるものだ。応用問題が解けないと「基礎ができていないからだ」と考え、基礎をやらせると新たにできていないところが見つかり、さらに基礎を掘り下げていく親がいる。だが、基礎をやらせようとすればするほどすそ野が広がり、学習量を増やしてしまい、子供に負荷をかける。大量学習は子供を疲弊させ、集中力を奪う。その結果、成績が伸びないだけでなく、自信まで失ってしまうという悪循環に陥ってしまう。この時期の苦手の深追いは禁物だ。

中学入試は4教科の総合点で合否が決まる。その単元が苦手だとしても、他の教科や単元で点が取れればいい。まずは得点を上げやすいところから勉強をさせよう。合格平均点まであと15点足りないのならば、算数であと5点、社会であと5点、理科であと5点といったように、どの教科で何点上げていけば合格平均点に達することができるか、という視点を持って取り組んでみるのだ。そうすると、「算数はあと5点頑張ればいいんだな」と気持ちがラクになる。そうやって、合格のイメージを作っておくのだ。

■「親が俯瞰の目を持つこと」が成功の秘訣

中学受験の勉強は、大手進学塾の受験コースがスタートする小学3年の2月から3年間かけて準備をするのが一般的だ。入試本番を目前に控えている受験生の親に、4、5年生の話をしたところで、「もう遅い!」と反論が来るかもしれないが、これから中学受験を予定している家庭には何年後かに迎える“受験直前期”に慌てないために、ぜひとも知っておいてほしいことがある。

ずばり、中学受験を成功させる秘訣は、親が俯瞰の目を持つことだ。多くの親は、中学受験をするのなら、小3の2月から塾に通うのが一般的だということは知っている。ところが、そこから3年間、各学年でどんなことを学び、どんなテストがあり、どんな力が求められるかまでは頭が回っていないことがほとんどだ。ただ、塾にさえ通わせておけば、なんとかなる、またはなんとかしてくれると思っている。そうやって、なんとなく始めた受験勉強は、遅かれ早かれつまずくことになる。

■3年後のゴールに向けたロードマップを準備しよう

わが子に中学受験をさせるのであれば、親はその準備期間にあたる3年間が、どのような構成になっているのか、きちんと把握しておくべきだ。ロードマップにたとえてみるといい。スタート地点から3年後のゴール地点までどんな道を進むのか。途中、大きな山や走りにくい道はないか。走りにくそうな道があったら、回避するべきか。事前に心構えをしておき、頑張って越えてみるか。

事前に進む道を把握していたら、たとえ途中で走りにくい道が出てきても、慌てずに済む。ところが、何も知らずに出くわすと、慌てるだけでなく、大事故を起こしてしまうこともある。中学受験もそれと同じで、事前に3年間のカリキュラムを把握できているかどうかが、実はとても重要なのだ。ひと学年ずつ説明していこう。

GPS位置のピンとポイントマーカー
写真=iStock.com/azatvaleev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/azatvaleev

■4年生は「勉強のやらせ過ぎ」に要注意

中学受験における4年生の学習ポイントは、学習習慣を身に付けることと、基礎を固めることだ。低学年のうちからすでに受験を意識してきた家庭は、学習習慣を身に付けるという点はすでにできているかもしれない。だが、そういう家庭は先走る傾向があり、すでに子どもにあれこれやらせ過ぎているケースが多い。

4年生の勉強は基礎が中心なので、塾の授業についていけなかったり、宿題でアップアップしてしまったりすることはあまりない。すると、まだ余裕がありそうだから、別の問題集もやらせておこうと、4年生のうちから勉強をやらせ過ぎてしまう親がいる。

4年生のうちは、上位クラスをキープできるだろう。だが、その成功体験が5年生になったときに足を引っ張ることになる。このままたくさん勉強をさせれば、難関校に合格できると思い込んでしまうのだ。5年生になって塾の勉強が基礎から応用へとステップアップすると、学習量が増え、難度が一気に上がる。それまでの「大量学習による好成績キープ」という勉強のやり方が通用しなくなるのだ。

■学習量を増やすより「納得して覚えること」を大切に

4年生における理想の学習は、塾の勉強がスタートしてから半年間で、まずは毎日勉強する習慣を付けることだ。その際、いつ何をやるか明確にしておいたほうがいい。4年生のうちは、学習スケジュールは親子で話し合って決めるようにする。そのときに親が何でも決めてしまうのではなく、「あなたはどうしたらいいと思う?」と子供に自由裁量権を与え、「自分で決める」経験を積ませてあげてほしい。

学習習慣がついたら、4年生の学習はとにかく塾で習ったことをしっかり覚えることだ。ここで大事なのが、「ただ覚える」のではなく、「納得して覚えたかどうか」だ。「先生が覚えておけと言ったから覚えた」ではなく、「○○は○○だから○○」といったように、理由とともに説明できるかどうかが重要なのだ。ここを疎かにしてしまうと、5年生で必ずつまずくことになる。

4年生の勉強は、学習の量を増やすことではなく、納得して覚え、きちんと分かった状態で解くことだ。そこさえ押さえておけば、あとは遊んでいていい。むしろ、その遊びがのちのち勉強につながっていくこともある。

心地の良い学習机まわり
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

■5年生の鬼門は算数の「割合」と「比」

中学受験で押さえておくべき単元は、5年生で一通り学習し終える。それは、すなわち5年生の勉強は猛スピードで進んでいくことを意味する。5年生の学習は、学習量が増え、授業の進度が速まるだけでない。学習する内容が高度化していく。特に小学生の子供が苦手とするのが、算数の割合と比の学習だ。

多くの塾では、5年生の6月に割合を、夏休みに比を学習する。これらの単元は抽象的な概念の理解が必要になるため、小学生の子供には難しく感じ、「中学受験の壁」とも言われている。だが、それも事前に知っていれば、慌てることはない。5年生の6月以降、算数で苦戦するかもしれない。「それなら、5年生の春にもう一度、割り算を復習しておいた方がよさそうだな」「5年生の夏前後は算数に時間が取られそうだから、今のうちに理社の復習をやっておこう」といったように、事前に対策を採ることができる。そうやって、来るべき山場をスムーズに乗り越えられるように、事前準備をしておくのだ。

4年生の学習がその単元の基礎知識を学ぶことであれば、5年生の学習は考え方の基礎を学び、それを活用することだ。例えば算数なら、こういう問題を解くときは「何を書いて解くか」「どういう順番で解くか」といった頭の使い方が必要になる。

■スタートから合格までのイメージを持っておく

最後に6年生の学習だ。1学期はこれまで学習したことの総復習を行う。そして、夏以降は演習が中心となる。これまで学んできたことの再現性を高めていく学習に変わる。秋以降、やるべきことは、過去問演習だ。ここからは塾の成績から切り離して、志望校に合格するための勉強に切り替えていく。目指すのは高得点ではなく、合格者平均点に到達することだ。

6年生の9月から続いた合格判定模試も、12月を最後に終了する。最後の模試で、合格可能性が30%なんて数字が出ると、もう受からないのではないかと不安にさいなまれるだろう。だが、合格可能性が20%より上ならまだ合格を目指せるラインにいることを知っておいてほしい。もう一度、言う。中学受験で合格できるかどうかは僅差なのだ。

そして、何よりも今見るべきものは、模試の結果ではなく、過去問で合格平均点に到達しているかどうか。まだ足りないという場合は、どの教科であと何点取れば合格平均点に到達できそうか、しっかり考えてみることだ。

解答用紙に書き込む手元
写真=iStock.com/smolaw11
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/smolaw11

■「ダメなら公立でいい」はお勧めしない

中学受験をスムーズに進めていく方法は、3年間のロードマップを把握しておくこと。そして、「うちの子はここでつまずきそうだな」「うちの子だったら、なんとかなりそうだ」と、その都度、わが子の成長と照らし合わせながら、事前に対策を考えておくことだ。そうやって、合格までの長い道のりをイメージできる親は、直前期で焦らないし、本番にも強い。親が焦らなければ、子供も落ち着いて、目標に向かって頑張ることができる。

すでに受験を目前に控えている受験生は、とにかく今は合格平均点に近づく努力をすること。それが難しそうなら、第一志望校は思い切りチャレンジしてもいいから、第二、第三志望校に現実味のある学校を選択しておくことだ。

「ダメなら公立でいい」という親は少なからずいる。特に父親にその傾向がある。しかし、私は全落ちだけは避けるべきだと考える。中学受験で挫折感が残ると、中学に入ってから反抗期も始まって、親子の関係が悪くなったり、勉強嫌いになったりするケースが非常に多いからだ。中学受験は人生のゴールではない。その先、わが子を伸ばしていくには、この学校がベストな環境だと信じて、挑戦するものだ。たとえベストは叶わなかったとしても、ベターな環境は考えておくべきだ。

■最後は「あなたなら大丈夫」の一言を

わずか12歳の子供が挑戦する中学受験は、最後まで何が起こるか分からない。当日、慌てないためにも、事前に入試当日の動きをイメージトレーニングしておくことを勧める。そして最後に、子供に自信を与える声かけをしてあげること。「あなたなら大丈夫!」、その一言でいい。そうすれば、どんな難問を前にしても、「まずは問題文をきちんと読んでみよう。読んだら何かヒントが見えてくるかもしれない」と一歩踏み出すことができる。「丁寧に問題文を読めば、解けるかもしれない」、そう思えるかどうかが、合否の分かれ目となる。最後の合否を決めるのは、子供自身が合格をイメージできるかどうかなのだ。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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