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「むしろ追い詰めてしまう」学校に行きたくないという子に親が言ってはいけない"ある言葉"

プレジデントオンライン / 2021年12月10日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

不登校の子供が年々増えている。『不登校新聞』編集長の石井志昂さんは「不登校は、いじめや学校内での競争、勉強のストレス、友人関係などが重なり合って起きている。人気者や勉強ができる子でも不登校になることがある」という――。(前編/全2回)

※本稿は、石井志昂『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

■誰でも「不登校」になり得る

最初に、どんな子でも不登校になる可能性があるということを知っておいてほしいと思います。

私は長年不登校の子どもたちと接していますが、クラスの人気者も、勉強ができる子も、運動ができる子も、コミュニケーションスキルが高い子も、子どもの中で何かしらの不具合が重なっていくと不登校につながります。

心療内科医の明橋大二先生は、不登校は「心がオーバーヒートした状態」だと表現しています。モーターのスイッチが切れるように体が動かなくなる、つまり安全装置が作動している状態なのです。

■「不登校」でも、週2、3日学校へ行っている

不登校というとずっと家にいるイメージがあるかと思いますが、実際は週に2、3日は学校へ行っている人もたくさんいます。

というのも、年間30日以上学校を休むと不登校の定義に当てはまるからです。月に換算すると3、4日休むと該当します。

それを踏まえたうえで、文科省の調査を見てみますと、小・中における不登校児童生徒数は年々増加を続け、2020年度は19万6127人で3年連続で過去最多を更新しています。

内訳としては、小学校が6万3350人、中学校が13万2777人でした。

2020年度は、コロナ禍の影響もあり、学校に行きづらい子どもが増えていると分析されています。

■理由で一番多いのが「友人との関係」

学校に行きたくない理由は、ひとつではなく、いくつも重なり合っています。不登校になった本人に聞いた文科省の調査によりますと、学校に行きたくない理由が平均3つほどあがっています。

一番多いのが「友人との関係」で53.7パーセント。次が「生活リズムの乱れ」で34.7パーセント。「勉強が分からない」が31.6パーセント、「先生との関係」が26.6パーセントと続きます。

不登校のきっかけ
出典=『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』

多くの人がいじめや学校内での競争、勉強のストレス、友人関係などが複合的に重なり合って、バーストしてしまうというイメージです。

■いじめのピークは小学2年生

学校に行きたくない理由として一番多くあがった「友人との関係」のなかでも、いじめはとくに心配される方が多いと思います。

子どものいる世界は、思っている以上に、過酷です。女子は小4ごろから、男子は中1ごろから、クラスカーストがあると言われています。

文科省の調査によりますと、小・中・高校が認知したいじめはここ最近、低年齢化が進んでいて、2019年度のいじめ61万2496件のうち、小学校で起きたいじめは約8割にあたる48万4545件1。過去5年間で3倍以上に増えています。

ちなみに、中学校でのいじめは10万6524件、高校は1万8352件となっています。

いじめ発生のピークも10年前は中学1年生でしたが、今はなんと小学2年生がピークです。不登校の小学生の人数も2016年頃から急増し、この5、6年の間に倍増しました。

■いじめは大人から見えにくい

いじめは大人から見えにくいところで進行するものです。ある小学生の子が、いやなあだ名でクラスのみんなから呼ばれ、先生からもそう呼ばれてしまった、というケースがありました。

名前の下に「○○菌」とつけて呼んでいたのですが、先生は「YouTuberの『ヒカキン』のようなものだろう」と思い込み、そう呼んでしまったそうです。

また、先日取材した女性は、大学付属の高校に入っていじめを受けたそうですが、偏差値が高い付属高校にせっかく入ったのだからと、3年間通い続けました。

なんとか卒業し大学にも進学しました。しかし、苦しんで学校に通い続けた結果、心がボロボロになってしまい、フラッシュバックも起こり、心療内科でうつ病傾向があると言われたそうです。

ひどいときは夜中に身体が急に震えだして1時間くらい止まらない状態もあったそうです。本人は、大学進学さえできれば環境も変わるだろうと思い、がんばってきたのに「その結果が、これなのかって思うと、やるせない」と話していました。その状態でも、いじめのことはご両親に話していないのです。

さらにはSNSなど大人の見えないところでいじめは広がります。そして、子どもはなかなか大人には話したがりません。私自身、学生時代にいじめがあったということを人に話したのは30歳を過ぎてからですし、親には直接言っていません。

だから、子どもの様子を見て、少しでも何か変だと思ったら気遣ってあげてほしいと思います。具体的なサインとしてはイライラしたり、おどおどしたり、家族に八つ当たりするなど、外に向かって攻撃的になることがあります。

また、ご飯を食べられない、部屋に閉じこもりがちになるなど、内側にこもっていく場合もあります。頭痛や腹痛など、体調が悪くなることもあります。

電車ごっこ
写真=iStock.com/Kouichi Chiba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kouichi Chiba

評論家の荻上チキさんが代表理事を務める「ストップいじめ!ナビ」では、次のような「いじめ発見」チェックシートを作っているので、ぜひ参考にしてみてください。

■いじめによる子どもの異変をつかむポイント

家庭における「いじめ発見」チェックシート(※)

言動・態度・情緒
□ 1.学校へ行きたがらない。「転校したい」や「学校をやめたい」と言い出す。
□ 2.ひとりで登校したり、遠回りして帰ってくるようになる。
□ 3.イライラしたり、おどおどしたりして落ち着きがなくなる。
□ 4.お風呂に入りたがらなかったり、裸になるのを嫌がる。
□ 5.部屋に閉じこもることが多く、ため息をついたり、涙を流したりしている。
□ 6.言葉遣いが乱暴になり、家族に反抗したり八つ当たりをする。
□ 7.学校の様子を聞いても言いたがらない。友だちのことを聞かれると怒りっぽくなる。
□ 8.いじめられている友人の話、友だちや学級の不平・不満を口にするようになる。
□ 9.すぐに謝るようになる。
□ 10.無理に明るく振る舞おうとする。
□ 11.外に出たがらない。
□ 12.電話に敏感になる。友だちからの電話にていねいな口調で応答する。
□ 13.「どうせ自分はだめだ」などの自己否定的な言動が見られ、現実を逃避することや死について関心を持つ。

服装・身体
□ 14.朝、腹痛や頭痛など、身体の具合が悪いと訴える。トイレからなかなか出てこなくなる。
□ 15.衣服の汚れが見られたり、よくケガをしたりするようになる。
□ 16.寝付きが悪かったり、眠れなかったりする日が続く。

持ち物・金品
□ 17.学用品や所持品、教科書を紛失したり、落書きされたり、壊されたりする。
□ 18.家庭から物品やお金を持ち出したり、余分な金品を要求したりする。

その他
□ 19.親しい友だちが家に来なくなり、見かけない子がよく訪ねてくるようになる。
□ 20.親の学校への出入りを嫌う。

※本チェックリストは、あくまで一例であり、各項目を確認することにより全てのいじめを発見できるという性質のものではありません。各ケースについては本チェックリストを参照しつつ、個別の状況を踏まえて検討する必要があります。このチェックリストは、「沖縄県いじめ対応マニュアル」(沖縄県教育委員会)、「いじめ早期発見のための家庭用チェックリスト」(綾瀬市教育委員会)等を参考に編集したものです。

■無理に理由を聞こうとしない

子どもが学校に行きたがらないとき、その理由をなかなか言いません。言葉にならない理由が複数あり、複雑に絡み合っているからです。

たとえば、スマホやゲームがしたいから学校に行かない、と言った場合、それは親を心配させたくないからかもしれません。深刻ないじめがあったと言えば、お母さんお父さんを悲しませるかもしれないし、情けないという気持ちにもなってしまいます。

また、つらい経験を話すと、そのときのことがまざまざと思い出されて、フラッシュバックが起こることがあります。子どもは忘れたいと思っているのに、聞かれて話すことで、忘れられなくなってしまうのです。

理由を聞いても、子どもが言いづらそうにしている。「学校でどんなことがあったのか話せる?」と聞いても、何も答えない。そういうときは、言いづらいんだなと考え、無理に聞こうとしないでほしいと思います。

■「なんで学校に行けないの?」はNGワード

「なんで学校に行けないの?」は代表的なNGワードで、子どもを追い詰める言葉です。

石井志昂『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ新書)
石井志昂『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ新書)

子どもとしては、説明がしにくかったり、まわりにわかってもらえないかもしれないと思ったりして、言葉に詰まることがあります。そこを問い詰められると、非常に苦しいのです。

そんなに苦しい状況にあるなら、ちゃんと話さないとダメだよと言う人もいるでしょう。

「なぜ苦しんでいるのか。それを自分の言葉として説明できるようにしないといけないよ」、私も実際にそう言われたことがありました。

なぜつらかったのかは後でたくさん口にするので、今は子どもの語りにまかせ、問い詰めるようなことはしないでほしいと思います。(後編に続く)

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石井 志昂(いしい・しこう)
「不登校新聞」編集長
1982年、東京都生まれ。中学2年生から不登校となりフリースクールに通う。19歳から不登校の専門紙「不登校新聞」のスタッフとなり、2006年から編集長。20年からは、代表理事も務める。これまで不登校の子どもや若者、識者ら400人以上に取材。「あさイチ」「逆転人生」(NHK)、「news zero」(日本テレビ)、「報道特集」(TBS)などメディア出演も多数。

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(「不登校新聞」編集長 石井 志昂)

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