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転職、昇進……「身の丈を知る謙虚な40代」が年収アップするために必要な8カ条

プレジデントオンライン / 2021年12月10日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/twinsterphoto

給料に対する不満や不安を感じながらも、「昇給は望めない。いい歳だし今さら転職もできない……」と諦めてはいないか。人事、人材分野のプロフェッショナルに、仕事人生後半戦で評価を上げるための戦略を聞いた。「プレジデント」(2021年12月31日号)の特集「まったく新しい『年収・キャリア・転職』大図鑑 あなたの給料は、安すぎる」より、記事の一部をお届けします──。

■今のパフォーマンスが給与に反映される

今、多くのミドル層(30代後半~40代)が不安な心境で働いている。就職前後にバブルが崩壊し、その後日本の経済は低迷。やがて終身雇用がなくなりだし、ついには大企業もリストラを開始した。そして「若い頃は低収入でも長年勤めたら収入が上がる」と想像していたのに、そうはならない現実に直面しているのだ。

人事コンサルタントの西尾太氏は、背景として給与制度の変化を指摘する。

「これまでの日本企業は基本的に年功序列。若いときに給料を抑えて年を取ったら上がっていく『後払い』型を採用していたため、ミドルぐらいのキャリアから高い年収をもらえていました。しかし経済が停滞したことで、企業はパフォーマンスが低いのに年収が高い社員を許容する余裕がなくなりつつあります。結果、今のパフォーマンスが今の給与に反映される『時価払い』型へと移行しているのです」

転職コンサルタント224名の証言!
転職コンサルタント224名の証言!1
転職コンサルタント224名の証言!2

※出所:エンジャパン・ミドルの転職「『ミドルの転職後の年収』について」/転職コンサルタント224名が回答。アンケート実施期間は2019年4月4~10日。

企業は時価払いを実現する方法として、成果主義やジョブ型雇用を導入。西尾氏は「さらにコロナ禍以降、リモートワークが浸透したことで、社員の働く姿が見えにくくなりました。なので評価の指標が『成果』にならざるをえません」と今後は「時価払い」型が主流になることを予測する。

年を重ねることで収入が上がらないのであれば、転職や昇進などして現状を打破したくなる。西尾氏によれば、一般的な目安になる「年収基準」が役職ごとに存在する。課長クラスは、500万~700万円(成果による加算は除く、以下同)で、部長クラスは700万~950万円。これが役員・本部長クラスになると950万~1200万円になり、社長・上級役員クラスになると1200万円以上だ。

本来はこうした年収基準を見据えながら、転職や昇進への策を練るべきなのだが、自分の市場価値をよくわからないまま、収入アップを期待するミドルが少なからずいる。

「中途採用希望者と話していると、『今900万円もらっています。せっかく転職するんだから1000万円以上ほしい』という人がいます。『せっかく』という自分勝手な発想になるのは、自己客観視できておらず、市場価値を理解していないから。結果、仕事しても成果が上がりません」(西尾氏)

■まず自分の市場価値を知る

人材コンサルタントの小林毅氏も、転職マーケットに無理解なミドルから相談を受けることがあるという。日本企業はメンバーシップ型のキャリアが基本だったため、職種が会社の都合で決められ、専門性を磨くことが難しかった。しかし、今の転職市場では、仕事内容と成果に価値を置くジョブ型人材が求められている。

「メンバーシップ型雇用にどっぷり浸かっていたため、『私、某大企業で課長をやっていました。転職できますか?』という甘い考えで、『私はこれができる。これがやりたい』という話ができません。ゼロからのジョブチェンジが許されるのは、せいぜい第2新卒ぐらいまで。自分の専門性を定めず、キャリアを積んでこなかったミドルが転職マーケットで勝負するのは大変だと思ってほしい」(小林氏)

甘い考えのミドルは、まず自分の市場価値を知る必要がある。識者2名は「転職する・しないにかかわらず」と前置きしたうえで、その方法を説いた。

「1度、転職活動することは有効です。人材紹介会社に登録して、年収の希望を出し、反応があるかどうかを確かめたらいい。もしくは副業を認めている企業だったら、本業に近い副業を試してみましょう。自分のやってることが売れるのか、どのぐらいの値段がつくのかわかるので、正確な市場価値が把握できます」(西尾氏)

「お薦めは、職務経歴書を書いてみること。今までの仕事と自己PRをまとめることで、キャリアにおいて足りないこと、自分の売れる部分・売れない部分が可視化されますから」(小林氏)

まずは市場価値を理解する。それから次のステップとして、今の年収が高いのか低いのか、はたして自分が転職できる人材なのかを考えるべきなのだ。

■職務経歴書は魂をこめて書け!

ジョブ型人材が求められる転職マーケットでは、高い専門性を持っているほど評価が上がる。それでは、メンバーシップ型雇用で専門性を磨かないまま今に至ったのであれば、何をアピールすればいいのだろうか。「その場合、手元にある素材を工夫して見せるしかありません」と小林氏は語る。

「まず覚えておいてほしいのは、転職市場では、現在価値が優先されるということ。10年前に営業、5年前に経理、そして今人事をやっているなら、人事としての能力を中心に評価されます。例にあげたような異動の場合、人事としての転職を考えるべきです」

もし現在のキャリアの経歴がそこまで長くないのであれば、「総務と営業で管理部門を担当していた」など、共通項を探し出し、その二本柱を掛け算してアピールする。人事が重視するのは、同じ仕事を続けてきたキャリアの長さなので、可能なかぎり「積み上げた感」を演出するのだ。

転職希望者に小林氏が「魂をこめて書くべき」と強調するのが、自己PRして面接に呼んでもらうためのツール、職務経歴書である。基本は、自分がどんな人物か、これまでの成果、今後取り組みたい仕事など、「面接官に聞いてほしいことだけを書く」(小林氏)。事実を詐称するのはNGだが、正直にマイナス部分までを書く必要はない。負の歴史や自身の弱さについてふれると、「ダメな部分を理解して採用した」という大義名分を与えかねないため、面接官に警戒される可能性がある。

そして面接にこぎつけた場合、小林氏は「ミドル層は面接するな」というアドバイスを送るという。

「面接は聞かれたことを答えるのが基本。しかし、それでは主導権は面接官にあるので、アピールすべきことを言えないまま面接が終わる可能性があります。また面接官が求職者に求めるのは、予定調和ではない対話です。なので、『求人票からこの会社の問題点はこのように捉えていますが、実際はどうなのでしょうか?』などの質問を最初から投げかけて、自分のペースで進めるように心がけましょう。面接というより、ディスカッションしているような状態になるのが理想ですね」

中途採用は企業の問題解決が目的であることが多いため、探しているのはおもに問題解決ができる人材だ。なので会社の問題を突っ込んで聞いて、解決案を提示していくと、ポジティブな印象を与えやすい。さらに小林氏は、謙虚にならない重要性を説く。

「ミドルになると自分の能力がある程度わかるから、どんどん謙虚になるんですよ。しかし、石橋を叩いても渡らないような法務部門の人ですら、採用面接になると『もっとアピールしてほしかった』と感想を漏らすものです。だから『自分にできるかわかりませんが』のような枕詞は不要。『全部やれます』と大げさにアピールするぐらいでちょうどいいんです」

内定が出るまでは何も決まってないので、どれだけ風呂敷を広げても構わない。話の膨らませ方を判断するのは面接官の仕事と考えていいだろう。ただし、「これができる」と公言して入社したら、口にしたことを完遂する義務があることは肝に銘じておきたい。

そして、気をつけたいのは、転職マーケットで評価される能力を持っていたとしても、転職を選ぶことが必ずしも正解とはかぎらないということだ。

「転職活動で内定が出ても、気に入らなかったら辞退していいし、現状よりよくならなければ今の会社のままでいればいい。選択肢は2つ以上持っておき、今の会社で働くことを基本路線にしながら、転職はセカンドチョイスにしたほうが安全です」(小林氏)

「年収アップを目指した転職は、成功例をあまり目にしません。それは年収を上げることだけが目的化すると、自分の方向性とは違うにもかかわらず、企業側のニーズに無理矢理あわせて転職してしまうからです。結果、スキルや経験が活かせないまま、入社後につらい思いをして長く続かない。たとえ転職して一瞬年収が上がっても、維持するのが難しいんです」(西尾氏)

■自分を「何屋さん」とひとことで言える?

会社に残って収入を上げたいのであれば、昇進に活路を求めることになる。西尾氏は各クラスに求められるコンピテンシー(評価基準)を次のように示した。課長クラスは5~10名ほどのチームを率いて組織の結果を出すこと。部長クラスであれば、3年程度の部門の戦略を描いて目標設定すること。さらに人材育成も必須の役割だ。役員・本部長クラスになると、5年以上の組織のビジョンを示して、戦略を示すことが求められる。

昇進するためには、これらの能力を磨きながら、企業内において自分の価値を高めなければいけない。そのために重要なのは、「会社のミッションを理解したうえで、自らのミッションを明確にすること」と西尾氏は説く。

「世の中にどのような価値を提供するかというミッションをどの企業も持っています。訊ねられて答えられない社員もいますが、ミッションが見えないと提供する価値を増やしにくい。ミッションを実現するために社員としてすべきことや、多くの価値を提供するやり方が自分の中で整理されていると、理念と行動が一致するため、自ずとパフォーマンスも上がっていきます」

また転職市場で重視される専門性を高めることは、社内でも大切だ。これを西尾氏は「自分が『何屋さん』であるかを定義する」と表現する。

「自分は○○ができる、つまり『○○屋さん』だと言い切れて、会社の中でこの分野なら1番だと自負できるものをつくっておく。経理屋、営業屋、新規事業屋……。専門性がないという課長でも、課のミッションをつくれて、必ず目標達成する『課長屋さん』になれば、ポジションを確立できます」

そして、自分の価値を下げないために意識したいのが、「今のままでいい」と考えないことである。かつては上から指示されたことをやっていれば、最低限の評価はもらえた。しかし、今は成果が重視されて、ただ会社にいるだけでは給料が下がる時代。周囲が成長してる中で同じことを繰り返していると、価値は相対的に下がっていく。

■工夫や改善で仕事は楽しく

「なので、仕事をする際、変革や創造を心がける必要があります。といっても難しい話ではなく、『よりよく変える』『新しいことをする』『お客様にもっと喜ばれることをする』ということ。それを念頭に工夫や改善をしていけば、仕事は楽しくなりますから」

西尾氏が重視するのが「仕事を楽しむ」「やりたい仕事をする」ことだった。そうすれば専門性が向上していき、自分の市場価値も上がり、転職も昇進でも通用する人材になるからだ。迷えるミドルはまず目先の仕事を楽しむことから始めてみよう。

転職・昇進も夢ではない? 年収アップを実現する8カ条

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人事コンサルタント 西尾 太氏

西尾 太(にしお・ふとし)
人事コンサルタント

フォー・ノーツ代表取締役社長。「人事の学校」主宰。これまで1万人超の採用、昇格面接、管理職研修、階層別研修を行う。近著に『人事はあなたのココを見ている!』(アルファポリス)。

 

人材コンサルタント 小林 毅氏
小林 毅(こばやし・たけし)
人材コンサルタント
法務系人材を中心に約14年・延べ5500人の相談、サポートに取り組み、大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援を行う。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)など。
 

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(プレジデント編集部 鈴木 工 図版作成=大橋 昭一)

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