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金曜日は15時には全員帰宅…「仕事をしない根性なし」というドイツ人への評価が一変したワケ

プレジデントオンライン / 2021年12月22日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

仕事で成果を出すにはどうすればいいのか。エグゼクティブコーチの玉本潤一さんは「ドイツ人の働き方が参考になる。彼らは自分の人生を最優先することで仕事の生産性を高めている」という――。

※本稿は、玉本潤一『ステートファースト 幸せな成功者になれる「頑張り方」革命』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■目標を達成したければご機嫌でいること

最初に質問があります。

世の中には、

「成果目標を達成できるけれど、日々苦しい道」

もしくは、

「日々ラクをして良い感情状態だけれど、ほどほどの成果しか手に入らない道」

その二つしかないのでしょうか?

いえ、決してそんなことはありません。このトレードオフ(どちらかが成り立てば、もう一方が成り立たない)の考えは、まさに日本人のよくある思い込みです。

私の経験からお伝えできること、それは、

「成果目標を達成したければ、とにかく良いステートでいることが大切」

ということです。

「ステート(State)」とは、日本語で言うところの「状態」です。状態とは、国語辞典を引くと「ある時点における人や物事のありさま」という意味で、人について言う時は主に感情や健康の状態のことを言います。ここでは、健康状態もほぼすべて感情状態に影響すると考えて、「ステート=感情状態」と定義します。いわば、「ご機嫌」と言い換えてもかまいません。

■ドイツ人の働き方に衝撃を受ける

私がステートの大切さに気がついたのは、前職のコニカミノルタで、27歳の時にドイツの子会社へ赴任し、その後のベルギー子会社への異動を含めて合計9年間、現地駐在員として海外赴任の機会をいただいた時です。

赴任した当初、「成果を出すために死に物狂いになって仕事をすることは当たり前。ましてや高給取りのマネジメント層は馬車馬のように働いて当然だ」と思っていました。

そんな私は、ドイツ人の働き方に衝撃を覚えました。

仕事もせずに廊下で雑談ばかり。明日できることは明日する。何かを依頼してもまず「できない」と言う。金曜日は15時には全員帰宅して、オフィスはもぬけの殻。夏のバカンスは職場の人たちが順々に2週間以上取る。よって、7、8月は開店休業状態。この時期は、どんな依頼事項があっても「同僚が帰ってくるまで待つしかない」として、仕事がストップする。さらなる驚きは、取引先すら我々の従業員のバカンスシーズンに気を遣って問い合わせを遠慮してくれたことです。

そうした一方で、日本本社は、そんな仕事の仕方など受け入れるわけがありません。私は完全に板挟みです。そのため、ドイツ赴任1年目の私は、そうした価値観の違いが原因で常にイライラしたステートでした。

コワーキングオフィス内のイスやデスク
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■人生を楽しむことを最優先しているのに、仕事でも好業績

当時の私は、彼らドイツ人のことを“仕事をしない根性なし”だとナメていました。赴任して1年間は、私の頭の中で、苦しい成果目標達成至上主義と、ドイツ人の人生を楽しむことを最優先する価値観の間でバトルが繰り広げられていました。

ただ、その時幸いだったのは、「郷に入っては郷に従えと言うじゃないか。自分のほうが変わらないとだめだ」と思えたことです。

結局、腹をくくって現地組織にまず人として認められることを考え、コツコツ信頼を積み上げていくことにしました。受付から社長まで、1300名ほぼすべての従業員に接触。彼らの価値観に合わせた言動・行動をしていったのです。

そうした努力の甲斐あって、彼らから心から受け入れられると、何故か私も彼らの価値観をすぐに心から受け入れることができるようになりました。視界が一気にクリアになっていく感覚でした。

そのクリアな視界でよくよくドイツ人の働き方を見ると、彼らは自分たちの人生を楽しむことが最優先、その上で最善の仕事の仕方を選んでいることに気がつきました。驚くかな、それでいて会社は、ドイツでマーケットシェアNo.1という高い実績を出していました。

■忙しく働くことは美徳ではない

当時、私の先輩で同じくドイツに赴任している日本人がいました。仕事ができる人で、非常に忙しい人でした。その先輩はあちこちのプロジェクトで引っ張りだこなので、よく廊下を走る癖がありました。私にとっては、すごく献身的で努力家で“デキるすごい先輩”です。

ところがある時、ドイツ人の同室の同僚が真顔で私にこう質問しました。

ドイツ人同僚「Tama、彼はなんでいつもせわしなく走っているの?」

玉本「 そりゃあ、仕事が忙しいからに決まっているじゃないか。なんでそんなこと聞くの……(あっ、そういうことか!)」

彼のこの些細な質問で、私はいよいよわかりました。彼らが最も大事にしているのは、「ステート」なんだと。私たち日本人にとっては忙しく献身的に働く姿勢は美徳ですが、彼らにとっては美徳でもなんでもない。美徳どころか自分のステートをコントロールできない人、と映っていたようです。

「この人たちは、機嫌良くいるためにいろんなことを考えているんだ」
「自分のステートを大事にしているからこそ、他人のステートを犯さないようにも気をつけているんだ」
「だから、“Tama, Wie geht es dir?”(ご機嫌どうよ?)の掛け声が多いのか」
「日本では自分のステートは二の次で、ムスッとしている人が多いな」

■「自分の機嫌は自分で取る」という自立した生き方

今まで見えてなかったものが、すべてスーッと入ってくる感覚でした。

振り返ると、ドイツでは成果を出したり生産性を高めたりしようとするからといって、人間関係はギクシャクさせない。人としてお互いへの関わりも忘れていない。絶妙なバランスでした。

また、日々ステートが良く、何より多くの人たちがご機嫌でした。廊下で人とすれちがう時は、誰とでもどんな時でもニコッと笑顔で挨拶をする。私が外国人だから気を遣っているのではありません。

「自分の機嫌は自分で取る」

ドイツで参考になったのは、彼らの「自分のステートを他責にしない、究極の自立・独立した生き方」です。かたや日本は、良くも悪くも全体組織への協調を重んじる文化です。自分の感情を押し殺して組織やチームに従うことが多いためか、「自分の機嫌は自分で取れない」「自分の機嫌は周り次第」、そんな深い思い込みがはびこっているように思います。

■ご機嫌でいるほうが生産性も上がる

こうした気づきから、私は自分のステートを最優先する生き方をするように変わっていきました。すると、私のキャリアも発展していきました。前職のコニカミノルタではたくさんの機会を与えていただき、最終年度は全社売上1兆円(当時)のうちの30%を管轄するという大変責任のある仕事をさせていただきました。

玉本潤一『ステートファースト 幸せな成功者になれる「頑張り方」革命』(PHP研究所)
玉本潤一『ステートファースト 幸せな成功者になれる「頑張り方」革命』(PHP研究所)

現在は、エグゼクティブコーチとして、経営者・経営幹部の成果目標達成をお手伝いしています。私のクライアントは、「苦しんだ先にこそ成功がある」と思って自分に鞭打って頑張ってきたけれど、ある程度の成果を収めて“人生の踊り場”に来た時に、「あれ、この先どうしたらいいの?」と悩みを抱えて悶々としている、そんな30代、40代の方々が多くいらっしゃいます。

そこで、ステートを最優先にする目標達成法を「ステートファースト」と呼んで、クライアントとの間で掛け声的に使っています。そして、この言葉が日本中に広まって、ご機嫌な日本人で溢れかえることを夢見ています。

「良いステートでいることを最優先する」というと、いわゆる快楽に走るようなイメージ、あるいは、何も行動しないゆるいイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、逆です。良いステートのほうが集中力が高まり生産性も上がり、行動量が増えます。

また、仮に良いステートで日々過ごす人と苦しいステートで過ごす人がいて、両者とも行動量がまったく同じだったとしても、良いステートでいたほうが単純に喜びが多くて豊かな人生であることは明白です。

■「頑張り方」を変える

苦しい成果目標達成思考は世代を超えて伝播します。ご機嫌で人生を謳歌(おうか)している、それでいて一本軸のある、そんな大人で溢れかえっている日本。その背中を見て多くの子どもたちが未来に希望を持って、笑顔が絶えない日本。そんな幸福度の高い日本になることを祈っています。

「頑張る」、頑なに張る。

どこか言葉の響きが、苦しいイメージを帯びています。これからは、「頑張る」という言葉をあえて使うのであれば、自分や周囲が良いステートであり続けることに対して、とことん「頑張る」ようになってほしい。日本人の「頑張り方革命」を、皆さんと一緒にぜひ実現していければと願っています。

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玉本 潤一(たまもと・じゅんいち)
エグゼクティブコーチ
LIFE SHIFT JAPAN代表。インサイトアカデミーの研修動画「国別駐在員研修シリーズ ドイツ編」登壇講師。起活会理事。エンジェル投資家。1978年生まれ。2001年、ミノルタ(現・コニカミノルタ)に入社。以来17年間、情報機器事業部に所属。27歳から9年間は、ドイツとベルギーの子会社にて経営企画を担当。組織再編のプロジェクトマネージャーとして、欧州クロスボーダーの組織変革に参画後、日本に帰国。本社にて海外各国子会社の事業管理に従事。40歳で独立し、経営者・経営幹部向けにエグゼクティブコーチング・経営コンサルティングを提供している。ビジネス・ブレークスルー大学大学院にてMBAグローバリゼーション専攻課程修了。

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(エグゼクティブコーチ 玉本 潤一)

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