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「テレビに出るときも1990円のワイシャツ」元プロ野球選手・里崎智也が節約を続けるワケ

プレジデントオンライン / 2021年12月15日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/frema

幸せな人生を過ごすためには、なにが大事なのか。元プロ野球選手で野球解説者の里崎智也さんは「お金があればあるほど不幸を回避できる確率が高くなり、幸福を得ることにも結びつく。だから、できるだけ幸せをお金で買えるように、卑しいと思われても『お金が大事』を口に出すようにしている」という――。

※本稿は、里崎智也『シンプル思考』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

■人生における最優先項目は「お金」と言い切るワケ

「人生で守るべきもの」は、大きく四つに分けられると思っています。

1.お金……これさえあればほとんどのことは叶えられると思います。
2.仕事……稼ぎが少なくても、やりたい職業に就けるだけで幸せ。
3.趣味……自分が好きなことができていれば満足。
4.家族……好きな人たちと幸せに暮らせるなら、どんな苦労も乗り越えられる。

ほとんどの人が、四つのなかに「最も大事なこと」が当てはまるかと思います。このうちひとつでも叶えられているのであれば、幸福感は得られるはず。こればっかりは価値観の問題なので、人それぞれだと思いますが。

言わずもがな、僕にとって最優先項目は「お金」です。なぜなら、これさえ担保できてしまえば、残りの三つも守られると確信しているからです。

■毎月10万円を積立貯金していた現役時代

僕が1998年、ドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団した際の契約金は1億円でした。

源泉徴収で2000万円引かれ、母校などお世話になった場所に寄付などもしたため、全額が自分のものになったわけではありませんが、車を購入した約1300万円(ちなみに、この車が里崎史上最高の高級車です)を差し引いても数千万円単位で手元に残ったはずです。

いまは親が管理してくれているので、残高はわかりませんが。当時22歳。同年代のなかでは、かなりの金銭的アドバンテージを手に入れたことになります。

そんな僕ですが、”財テク”は欠かしませんでした。入団してから積立預金の口座を開設し、毎月の給料から10万円が自動で引き落とされるようにしました。

■「けち」と笑われても財テクは欠かさなかった

すでに数千万円のお金があるのになぜか? いつロッテを戦力外になってもいいように。野球以外でやりたいことが見つかったときの運転資金にするためです。

2001年7月20日、最優秀選手(MVP)に選ばれた全イースタンの里崎智也捕手(ロッテ)(東京ドーム)
2001年7月20日、フレッシュオールスターの最優秀選手(MVP)に選ばれた里崎選手。年俸が上がっても貯金の習慣は続けていた。写真=時事通信フォト

仮に5年でプロ野球をクビになったとします。月に10万円を貯金しているわけですから、その間に600万円を貯められたことになります。それを元手に、資格を取得するために専門学校に行ったりと、引退後の準備をするには十分な金額だろう──そういうプランを立てていました。

結果的にはプロ野球の世界に16年もいさせてもらうことができ、年俸だけでも十分に稼がせてもらいましたし、この積立預金は最終的に2000万円近くまで貯まりました。もちろん手をつけていませんが、あるに越したことはありません。

これを堅実と評価していただくか、けちだと嘲笑されてしまうのか。僕からすれば、そんなことどうだっていい。それだけお金に対して執着した結果、手元にたくさんのお金があり、人生を豊かにできているわけですから。

■「野球選手が金を貯めてはダメ」という風潮

ロッテ入団1年目の年俸は1300万円でした(自分で書くのも変ですが、本書で出てくる年俸は推定とさせてください)。

前の年まで大学生で、1万円でも結構な大金だという認識だった僕にとってその額は天文学的な数字であり、さすがに度肝を抜かれました。

プロ野球選手は年俸制ですから、総額の12分の1の額が毎月振り込まれます。つまり、僕の「月給」は約100万円。さすがに最初はブランド物を買いました。なにを買ったか忘れましたけど。でも、散財したのはこれくらいで、あとは控えるようにしていました。

お金とは、捉えようによっては麻薬のようなものです。

いままで見たことのないような金額を、一夜にして手にしてしまった。または僕のように大金を稼げる職業に就くことができた。金銭面で余裕が生まれるわけですから、いつの間にか浪費癖がついてしまう。プロ野球界では、そういう人が多いです。

僕らの仕事は、基本的に夜型です。土日や祝日はデーゲームが多いですが、たいていはナイターで、試合が終わるのはだいたい21時過ぎ。

そこから選手たちは食事に繰り出します。これが結構、負担になります。お酒好きで飲み屋をはしごするような人であれば、一日のうちに数十万円使ってしまうこともざらです。

その点僕は、そこまでお酒が好きじゃありませんでしたし、毎日のように飲み歩くこともありませんでした。

たまに、後輩を4、5人引き連れてご飯に行き、自分がごちそうしたとしてもせいぜい10万円ちょっとです。だから僕は、夜の街への貢献度はかなり低かったと思います。

■「野球選手が金を貯めてはダメなんだ」

プロ野球界にはそんな風潮が少なからずあります。お金を稼ぎ、ブランド物の服を着て、高級時計を身につけ、外車を乗り回す──そういう姿を見せて、野球少年に夢を与えたいんでしょうけど、興味がないものにお金を使うことこそ僕にとっては無意味なんです。

お金があればあるほど不幸を回避できる

ダメと言われようが、けちだと囁かれようが、僕にとってはお金が一番。

だから無駄だと感じたことには一銭も出したくないし、できるだけ貯金をしたい。プロ野球選手となり、お金を稼ぐようになってもそこだけは終始一貫していました。引退後のいまもそうです。

「お金では買えない大事なものがある」

よくそんな言葉を耳にします。そのこと自体は否定しませんが、生活で必要なものはお金で買える現実があります。「大事なもの」があるのは結構ですが、まずはそこから目を背けないほうがいいと思います。

何度も書かせていただきますが、お金があればあるほど不幸を回避できる確率が高くなり、幸福を得ることにも結びつきます。つまり僕は、できるだけ幸せをお金で買えるように、卑しいと思われても「お金が大事」を口に出すんです。

普段、着ているワイシャツは1990円
撮影=内藤サトル
里崎さんの近影 - 撮影=内藤サトル

■普段、着ているワイシャツは1990円

最近、ふとこんなことを思う瞬間があります。

「俺、今日、1円も使ってないんじゃないか?」

朝、自宅を出たときから、これまでの行動を時系列で追ってみる。すると、「あ、自動販売機でコーヒーを買ったわ」。残念、120円使っていました。

僕は必要以上にお金を使うことはありません。自分の趣味に使うお金だけで言えば、月に3万円、多くても5万円も使っていないような気がします。なにせ欲しいもの、とくに高価なものに対する物欲がないからお金が減らない。

僕はプロ野球解説という仕事柄、スーツを着ることが多いですが、かといって年間でそこに何十万円も使いませんし、シャツにしたってユニクロで買っていますから、せいぜい1990円です。テレビに出る、人前に出るからといって高いものを身につける必要なんてありません。

大事なのは見た目の清潔感です。僕はプロ野球選手時代、さまざまなスーツを購入し、若いころはブランド物を着ていたこともありました。高いものを買うと、質がいいものの基準ができます。いまでは安くていいスーツを知っていますんで、それで十分です。

高いものを知れば、安いものでも価値を見極められる。それまでには多少の出費はあるかもしれませんが、のちに生かされると思います。

■欲しいものがなければお金は使わない

普段着に至ってはラフそのものです。

たまに自分の意思で購入する服もありますが、現役時代からお世話になっているメーカーさんからジャージやポロシャツを支給してもらっているので、いまでもありがたく着させていただいています。YouTubeの「Satozaki Channel」での半袖ポロシャツ姿、あれが普段着だと捉えていただいて結構です。

小さいお子さんがいる人ならわかってもらえるかと思いますが、そもそも子供と一緒にいると遊びに付き合うことも日常的となり、どうしても服が汚れるときがある。

そういう想定があらかじめあるので無駄にファッションにこだわる必要性はありません。僕に支給してくださるメーカーさんはスポーツブランドですから機能性に優れた服ばかり。しかも普段着にも使えるとなると、これ以上ないメリットがあるわけです。

質素であることに悪い要素はなにひとつとしてありません。お金があるからといって、無理に使っても損をするだけ。欲しいものがなければ使わない。これがベストです。

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写真=iStock.com/GoodLifeStudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoodLifeStudio

■ドラマは大好きだけどサブスク加入には慎重

2020年4月。新型コロナウイルス感染拡大によって、初めて緊急事態宣言が発出されました。プロ野球の開幕が6月まで延期されたこともありますが、評論や解説で球場へ行くことが多い僕は仕事の自粛を余儀なくされ、およそ2カ月間、不要不急の外出を控えることとなりました。

僕に限らず、社会人のほとんどがそんな生活を強いられたことでしょう。なかには収入が激減し、仕事を失った人もいたはずです。

こんなことを書いてしまうと不謹慎だと思われるでしょうが、僕にとってこの期間はいい休養となりました。

どのように過ごしてきたか? 基本的に自宅から出ませんでしたから、ひたすらドラマを観ていました。

5年ほど前からHDDレコーダーに録画して溜まりに溜まっていた作品を、文字通り一気観。

池井戸潤さん原作の大ヒットドラマ「下町ロケット」と「半沢直樹」の第2シーズン、大河ドラマ「麒麟がくる」など「早く観たい」と楽しみにしていながら仕事が忙しくて観られなかった作品を、時間を忘れるくらいに見入りました。実に有意義な期間でした。

僕は国内ドラマが大好きです。

そのため、話題作もそうでない作品も興味を持ったらまずは録画します。そして、前述のように時間ができたら一気観したり、数日間で集中的に観ます。

最近、周りからよくこんなことを聞かれます。

「そんなにドラマが好きなら、サブスクで観ればいいのに」

ここ数年話題の「Amazon Prime Video」「Netflix」「Hulu」といった、サブスクリプション(定額料金)でたくさんの作品が楽しめる動画配信サービスがあります。自分の好みに応じて加入すれば楽しめるし、経済的です。ただ、観る時間がないのに加入してしまったら、それは余計な出費。

だからこそ、僕は必要なサービスを慎重に選ぶようにしています。いまはHDDに録画したドラマを「制覇」するので手いっぱい。だからサブスクには入りすぎないようにしています。

■「ジャンプ黄金世代」だけれど今のジャンプを購入しないワケ

僕は毎週必ず1080円を使います。「週刊少年マガジン」(税込み320円)、「少年サンデー」(税込み340円)、「週刊漫画ゴラク」(税込み420円)。このマンガ雑誌3誌だけは譲れません。

そのほか、好きな作品の単行本が出れば購入するので、多ければ月に5000円近く消費します。

1976年生まれの僕は、「週刊少年ジャンプ」黄金世代です。

「北斗の拳」「キン肉マン」「キャプテン翼」「ドラゴンボール」……いまの若い世代も知る名作をリアルタイムで読んできた、恵まれた世代です。

それだけ身近にマンガがあったため、のめり込むのは当然で、学生時代はいまも買う3誌に加え、ジャンプや「週刊少年チャンピオン」と、少年マンガ雑誌はひと通り買ってきました。

ここで、勘のいい人は気づいてしまったかもしれませんね。

「里崎、ジャンプ黄金世代とか言っているのに、いまは読んでないのか?」

さらに鋭敏な察知能力をお持ちの人は、こうかぶせてくるでしょう。

「この本、集英社から出してるんだよな」

そうです。今回、集英社さんのご厚意により著書を出版させてもらったにもかかわらず、僕はいま、ジャンプを購入していません。

里崎智也『シンプル志向』(集英社新書)
里崎智也『シンプル思考』(集英社新書)

理由は「嗜好とは違う」から。僕はスポーツなら、サンデーの「MAJOR」(現在は「MAJOR 2nd」)のような「スポコン青春もの」が好き。もっと言えば、ストーリー性がわかりやすい作品のほうがのめり込みやすいタイプなんです。

ジャンプは「ONE PIECE」や「鬼滅の刃」など世界的大ヒットを記録するような名作ぞろいですが、細かいキャラクター設定や綿密に張り巡らされた伏線など、なかなか凝ったものが多く……個人的には、それこそ80年代のように、ジャンプの理念である「友情・努力・勝利」をストレートに読ませてくれる作品と出あいたいな、と思うわけであります。

つまり、僕が「面白い!」と思ったらお金を出します。「世間で話題だから」という理由で読むことはしません。もしこれから好きな作品と出あうことがあれば、毎週ジャンプも買うようになるでしょう。

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里崎 智也(さとざき・ともや)
野球解説者
1976年、徳島県生まれ。鳴門工高(現・鳴門渦潮高)、帝京大を経て、1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズを逆指名。2014年に現役を引退。2019年にYouTubeチャンネル「Satozaki Channel」を開設。著書に『非常識のすすめ』(KADOKAWA)など。

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(野球解説者 里崎 智也)

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